精神医療に関する条文・審議(その84)

前回(id:kokekokko:20051028)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。法案などはid:kokekokko:20051026にあります。

第145回参議院 国民福祉委員会会議録第8号(平成11年4月15日)
【前回のつづき】
小池晃君 日本共産党小池晃です。
【略】 次に、精神科医療の問題について取り上げたいのですが、国立病院の精神科看護の問題についてここではお聞きしたいというふうに思います。
 昨年五月、国立療養所の犀潟病院の事件がございました。これは指定医の診察と指示がないのに患者を拘束して患者さんが吐物で窒息死されたという、あってはならない事件であります。もちろん最低限の法的手続を守らずに患者の人権をなおざりにした、こういう病院側にも大きな責任と問題があるし、意識啓発など重要ではあると思うのですが、それだけで根本的な事件の防止、患者の処遇改善につながるかという問題であります。
 そこで、ちょっとお聞きしたいのですが、国立病院・療養所の看護婦の夜勤の実態について、二人夜勤の八日以内といういわゆる看護の二・八体制は実現しているのかどうか、これをお聞きしたいと思います。
【略】
○政府委員(伊藤雅治君) 国立病院・療養所の看護婦の夜勤の実態でございますが、平成十年十月におきます調査によりますと、国立病院の夜勤回数は八・一回となっております。また、二人夜勤の状況でございますが、これは国立病院におきましては一〇〇%でございます。また、国立療養所におきましては夜勤回数は七・九回。また、二人夜勤の率につきましては、病棟単位で申し上げますと九九・四%の病棟が複数夜勤となっております。
 おおむね二・八体制が図られている状況であると認識しております。
小池晃君 これは平均で八日ということですからね。あくまで平均ですから、そのすべてが達成しているわけじゃないので、これで達成したというふうに言われると困る。
 その上で、看護婦の体制について、一病棟ごとの看護婦の数、国立病院、国立療養所のうち精神療養所について数字を教えていただきたいのと、さらに夜勤の問題でいうと、国立療養所犀潟病院の看護婦の夜勤の実態についてはどうか、お聞きしたいと思います。
○政府委員(伊藤雅治君) 国立病院・療養所の平成十一年一月現在の一病棟当たりの看護婦数でございますが、国立病院が二十二・四名、国立療養所が十九・七名、国立精神療養所が十七名となっております。
 また、国立療養所犀潟病院の看護婦の夜勤の状況でございますが、平成十年十月におきます調査によりますと八・五回となっております。
小池晃君 先ほど、全体としては平均八・〇だったということですが、犀潟病院は八・五ということで、二・八をクリアしていないわけです。そのほかを見ても、東尾張病院、ここも九・〇、ここはもう全病棟が精神科の病棟だと。それから五百七十四床の肥前療養所、ここも八・二ということでクリアしていない。全日本国立医療労働組合の夜勤の実態調査の結果というのもこれに符合するものであります。
 昨年七月の調査ですけれども、犀潟病院、先ほど月八・五とおっしゃったけれども、これは病院全体、重心とか結核の病棟も入れてですから、精神科の病棟だけを見ると深夜勤務月九回以上の方が八十九人、八六%です。
 その他、今の全国の数字、厚生省の調査を私もいただきましたけれども、例えば厚生省が政策医療ネットワークということで国立精神病院の頂点に置いている国立精神・神経センターの武蔵病院、ここは八・四日です。それから、国府台が八・六であります。国立病院の精神医療のナショナルセンターと言われている、いわば見本になるべきところで看護婦の夜勤の実態が基準を達成していないということであります。
 犀潟病院ですが、事件の起こった六病棟、ここは五十四ベッドで、昨年五月、まさに事件が起こったときの患者数は一日平均で五十二・九人、九八%のベッド利用率です。ほぼ満床だったと。夜勤可能な看護婦さんはこの病棟では十五人だが、そのうち三人はいわゆる不当な扱いを受けている定員外の賃金職員であります。八人の看護婦さんが夜勤を九回やられている。あの事件は、やはりこういう国立病院精神科医療の、特に看護労働の実態が背景にあるのではないか。
 大臣、こういう国立精神病院の看護婦さんの労働実態をどのように思われるか。こういう労働の実態がその一因となっているのじゃないかということでいえば、やっぱり改善の必要があるのではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
国務大臣宮下創平君) 看護婦さんの定員の問題でございますけれども、定員事情は全体としてかなり厳しいコントロール下にありますけれども、十分その必要性を勘案して、看護婦の方については重点的に増員を行ってきておるところでございます。
 なお、具体的数値等は省略させていただきますが、犀潟病院の場合に看護婦が少ないからああいう事件が起きたと私どもは考えておりません。これは指定医と看護婦との包括医療の問題等々、いろいろの要因が重なり合ってできておりますので、必ずしも看護婦が多くいればああいう問題が排除できたとも考えられませんが、いずれにしても看護要員というのは非常に病院の基幹的な要員でございますので、今後とも重点的に増員を図っていきたいと思っております。
小池晃君 私は、別にそれが原因だと言っているんじゃないんです。それが一つの要因になっているのではないか。それはお認めになると思うんです。こういう実態を解決することなしに根本的な解決は図れないということははっきり認めるべきだし、増員に向けて今努力すると、それはぜひやっていただきたい。
 しかしその一方で、今国立病院を取り巻く状況ということでいうと、むしろ収入増のための患者確保、人減らし、それから二交代制の導入、こういった徹底した合理化がやられている。独立行政法人化が計画されていますけれども、やはりこうした傾向に拍車をかけるものである。
 中央省庁の改革大綱によりますと「独立行政法人会計基準企業会計原則によることを原則とするが、公共的な性格を有し、利益の獲得を目的とせず、独立採算性を前提としない」、こんなふうに書いてあるんですけれども、実際は企業会計への移行ということで、経常収支率の一律の目標設定がされているという実態があります。
 ことしの一月二十五日の国立病院・療養所の全国事務長会関東信越支部幹事会、ここで地方医務局の経営指導課長がこういう報告をしているんです。これは、犀潟病院で職場にまで配られている報告ですが、十一年度の事業計画の策定に当たっては、独立行政法人を視野に入れて具体的数値目標を設定すること。十一年度からは一〇〇%達成計画に加えて一〇五%達成計画を求めていくとはっきり書いてあるんです。これは経常収支率です。
 国立病院の担っている医療の性格からいって、こういう一律の目標の強制は現場に混乱をもたらすだけだし、こういう精神医療の実態からすると、こういう数値目標が押しつけられるということはやはり現場の実情を考慮しないやり方ではないか、改めるべきだというふうに考えるんですが、いかがですか。
○政府委員(伊藤雅治君) 国立病院・療養所の経営改善につきましては、平成四年六月に提出されました国立病院・療養所経営改善懇談会報告に基づきまして各般の施策を実施しているところでございます。独立行政法人化の有無にかかわらず、国立病院・療養所は経営改善に努力すべきというふうに考えておりまして、この平成四年以降、各般の施策が功を奏しまして経常収支率の改善を見ているところでございます。
 そこで、御指摘の点でございますが、この経営改善目標の設定に当たりましては、それぞれの病院・療養所の事情を勘案いたしまして、私どもは個々の施設の診療機能、病床規模等の現状を踏まえて個別に相談をしているわけでございます。御指摘のように、厚生省から一律の経営改善目標を示しているということはございません。
小池晃君 実際こういう文書が配られているんですよ。病院の看護婦さんの職場にまで配られているんです。一〇五%と地方医務局から言われている。犀潟病院は文書で出ている。口頭ではいろんな病院でもう一〇五%という話がひとり歩きしているんです。もちろんその経営改善は必要ないとは言いませんよ。それはそれぞれに応じて必要だと思いますけれども、一律に一〇五%というようなことを押しつけることはやはり医療の実態をゆがめるものだ。こういうことは認めません。ぜひやめていただきたい。
 さらに言えば、国立の実態を今までお話ししましたけれども、民間病院はさらに過酷なわけであります。もうお話にならないぐらいひどいわけです。厚生省の九七年の医療施設調査、これを見ますと、開設者別に見て、看護婦、看護士一人当たりの一日の入院患者数は、厚生省開設、国立機関で四・七、医療法人では八・二人であります。ですから、国立病院の半分のスタッフでやっていると。こういう看護労働によって日本の精神科医療が支えられているということだと思うんです。ぜひやっぱり光を当てるべきだというふうに思います。
 それで、先ほどから議論がありましたこうした背景にある精神科特例の問題ですが、先ほど大臣もこれは疑問を持っているというふうにおっしゃいました。これと低い診療報酬の問題があると思うんです。こういった基準が人員不足を招き、やはり拘束や隔離などの温床となっているのではないか。
 ただ、この間の現場の努力で、実態を見ますと、日本精神病院協会加盟病院の看護基準というのは、一九九八年で、特一類と特二類で二九・八%、基本一類で四一・三%ですから、合わせて七一・一%、これが一般病院の基準に到達をしているわけです。看護の分野では実質的な特例解消の方向に向かっているのではないかというふうに考えるわけです。
 先ほど特例の見直しを検討するという答弁がございましたが、先ほどの大臣の検討するという答弁というのは、やはりこの特例の廃止ということも含めて検討するというふうにとらえてよろしいんでしょうか。
国務大臣宮下創平君) 先ほど特例の見直しを必要とするということを申し上げたのは、今、一般論としても一般病院と精神科病院との格差が開き過ぎておりますので、それを是正する必要があるということで、必ずしも一本化するということを申し上げたわけではございません。合理的な範囲内でバランスのとれたものにしていきたいということでございます。

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小池晃君 少なくとも今の特例については、そういう意味では廃止の方向で検討しているというふうにとらえさせていただきます。
 同時に、精神科の診療報酬の問題をちょっとお聞きしたいんですが、これも一般科との大きな格差があります。社会福祉医療事業団の調査を見ると、全入院患者の二〇%を占めている精神科が診療報酬ではわずか五・一%、一ベッド当たりの入院収入は一般科の四三%、こういう実態がございます。
 例えば、具体的な問題で言うと入院精神療法、これが精神保健指定医の三十分以上の精神療法に対して三百六十点、三千六百円です。こうした例。かなり低いんではないかと思うんです。全体として時間をかけてじっくり相手のお話を聞いて治療をするという精神科の特性からいって、こういう技術料の評価の低さ、これがやはり精神科診療報酬全体の水準を低水準にしているというふうに考えているんです。ぜひこの技術料を抜本的に引き上げるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○政府委員(羽毛田信吾君) 入院精神療法につきましてのお話を具体的にお挙げをいただきながら、精神科領域における技術報酬の引き上げについてのお尋ねでございました。
 私どもも、精神科領域における診療報酬につきましては、必要な部分については段階的に評価を拡充してきたつもりでございます。具体的にお挙げをいただきました入院精神療法(I)といういわゆる急性期の患者に対しまして濃厚な精神療法を行うことを評価するという趣旨の部分につきましても、これは平成八年の診療報酬改定時に、従来の入院精神療法を二段階に分割いたしまして、より濃厚なそういう精神療法をしていただくところについて、従来との関係からいえば、今お挙げいただきました三百六十点でございますけれども、これは従来の二倍以上の点数をつけたという形になっております。また、平成十年の改定におきましても、算定要件を緩和するということで、従来の要件ですと四十分以上必要というようなことを要件にしておりましたけれども、これを三十分以上に短縮するというように、段階的な評価、段階的な拡充を図ってきているところでございます。
 今後におきましても、医師の技術評価のあり方ということにつきましては、これは精神科領域だけではございませんけれども、今後における診療報酬改革のいわば重要事項の一つでございますので、今後におきます中央社会保険医療協議会におきます具体的な検討という中で、精神医療の分野における評価につきましても議論をし、取り組んでまいりたいというふうに考えております。
小池晃君 今まで上げてきたというお話はこちらもわかっているんですが、まだまだ引き上げの水準が足りない。精神療法だけじゃなくて、例えば入院時医学管理料の問題も、先ほど御議論あったように一般病院との格差がまだまだあるわけで、やはりこういったことを、全体を含めて抜本的に引き上げるべきであるということを主張したいと思います。
 その上で、精神科救急の問題をお聞きしたいんですが、応急入院の指定病院の数、先ほど議論があって、現在三十七県、五政令指定都市で六十四施設だということでありました。十の県で今もない、政令指定都市でもあるのは千葉と名古屋、大阪、神戸、広島のみということであります。九三年四月の段階で二十九県四十二施設で、これは国会で審議がありまして、当時の保健医療局長が、指定病院のない県については、こういう県についての設置の促進ということを指導していきたい、そう答弁されているんです。ところが、それから八県しかまだふえていないというのが実態であります。
 何でこのようにふえないのか、その背景についてどう考えるのか、お聞きしたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 応急入院指定病院の設置が少ないという理由でございますけれども、一つにはその対象が限定されているというようなこともありますし、また応急入院の指定基準が厳しい内容になって、この基準がクリアできないというようなことも理由になっているというふうにお聞きをしております。
 こういった状況を踏まえまして、平成八年におきまして、応急入院の施設の基準につきまして、精神保健指定医についてはオンコール態勢を含むこと、それからCTにつきましては、これもCTを置くようにということになっておるわけですが、必要に応じて他の医療機関の協力が得られる場合には当該精神病院において整備することは必要がないというようなことで、若干の基準の弾力化を図ったところでございます。
 今後とも各都道府県にこの応急入院指定病院が整備されるように努力をしていきたいと思います。
小池晃君 いろいろと基準にも問題があるということですが、応急入院制度というのは精神科救急制度のシステムのごく一部でしかないわけでありまして、移送ができたからといってこれだけで全体として救急体制ができるというわけではないわけです。もちろん大臣が言われたように、応急入院制度の拡充というのはぜひやっていただきたいというふうに思いますが、やはり大事なのは、例えば地域における電話相談とか救急外来とか、あるいは短期入院のための病床を一次医療圏、二次医療圏レベルでつくっていくとか、あるいは緊急介入のための往診チームみたいなのをつくって対応していくとか、そういう全体としての精神医療の救急ネットワークづくりが必要ではないかというふうに思うのです。そういうことも含めて、先ほど御答弁があったように、応急入院指定病院についてももちろん強化していただきたいのですけれども、それだけではなくて、精神科の救急システム全体の強化をぜひやっていただきたいなというふうに思います。
 その上で、法案の条文に関して幾つか聞きたいんです。今回の改定で、先ほどから御議論があるような保護者規定の問題、自傷他害の監督規定削除、これは大切な改正だというふうに考えております。
 ところで、そのほかに四十一条に、先ほどあった引き取り義務の問題があります。この引き取り義務の規定ですが、厚生省の精神保健福祉法規研究会というところが監修している「精神保健福祉法詳解」、これを読みますと、この規定は、四十一条は二十二条の保護者の一般的義務を措置入院の場合に入念的に規定したものである。要するに、もう二十二条で一般的な義務規定はあって、念を入れて、引き取り義務については入念的に四十一条で規定したと、そういうふうに書いてありますが、そういう理解でよろしいんですね。
○説明員(今田寛睦君) 四十一条に規定しております保護者の引き取り義務の趣旨につきましては、先ほど大臣からも御説明がございましたけれども、措置入院を解除した場合などにその者の医療及び保護が中断されることがないということを確保するという観点で、具体的な内容としては、現実に精神障害者を引き取る場合、医療保護入院等へ移行させる場合、社会復帰施設に入所させる場合、こんなことがあろうかと思います。
 保護者の義務につきましては、法の第二十二条で一般的、総括的に今規定をされております。このような保護者に関する一般的、総括的な義務を前提として、精神障害者に適切な医療を確保するために保護者が担うべき具体的な役割の一つとして引き取り義務等を具体的に定めているものと考えております。
小池晃君 今のお答えにあったように、一般義務としては規定されていて、入念的規定だということなんです。ですから、これはなくても一般的な二十二条の義務規定で十分ではないか。わざわざ四十一条があるから、これによって家族が義務感に駆られて、社会から孤立した状況を強いられるような事態が起こっているんじゃないかというふうに思うんです。例えば、四十一条があるから、こういう規定があるから引き取らなければいけないんですよというふうに家族が迫られると、これはやはりかなり圧迫感があるんじゃないだろうかというふうに思うんです。入念的規定だというのであれば、この規定はやはり削除すべきだ、できるのではないかというふうに私は考えるんですが、大臣いかがでしょうか。
国務大臣宮下創平君) 法律の構成の中で、保護者の義務を一般的に規定しながら、特に措置入院等に関することで具体的にさらにメンションをしていくという手法は、私はあっていいと思います。そういう意味で、今回これは特に削除いたしておりません。
小池晃君 あってもいいと。なくてもいいわけです。なければいけないわけではないわけです。ですから、ぜひこれは検討する必要があるのではないかというふうに私は考えます。
 さらに、精神医療審査会ですが、これは機能強化が非常に求められている。先ほども議論がありました合議体の構成の問題であります。医者三、法律家一、その他学識経験者一という構成、三、一、一の構成であります。やはり客観的、公正な第三者機関という大臣答弁の見地からしても、医師だけで過半数三を占めるということはいいことなのかどうか。これは、先ほど医学的判断が中心だから医師が三なんだという御説明がありました。ところが、これにも疑問があるんです。
 まず第一に、精神医療審査会が医学的に判断するのは患者への一時的な権利制限が適切かどうかということだと思うんです。基本任務は不当な人権侵害の防止だと。患者の権利擁護機関であるということからすると、やはり中立性、独立性ということが必要なのではないかというふうに思うんです。
 第二に、例えば麻薬中毒審査会とか結核診査協議会、こういったところでは過半数を医師と決めていないわけです。さらに言えば、感染症の協議会は過半数なんですが、この審議の中で、昨年四月十六日の当委員会でその根拠について政府はこう答えています。感染症の診査協議会は「症状が急性で、迅速かつ的確な対応が必要とされる一類及び二類感染症等の患者の入院の必要性等について学問的、専門的に審査する機関であることから、精神医療審査会とはその性質を異にする」というふうに答えているんです。
 そういう点でいうと、医師が過半数でなくてもいいのではないか。三対一対一から、例えば二対二対一にするとか、あるいは先ほど御議論があったようにソーシャルワーカーを加えるとか、そういう法改定を考える余地は十分あるのじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 先ほど御説明申し上げましたように、入院患者の入院の継続の必要性の有無あるいは処遇の適否ということを審査するわけでありますが、これが患者の症状に応じて、また医学的な判断に基づいてなされる部分が非常に多いということで三名ということにしているところであります。
 なお、人権の確保を図る観点から、法律に関し学識経験を有する者、その他の学識経験を有する者、こういうことで五名構成になっております。
 法律家の委員には、裁判官の職にある者、検察官の職にある者、弁護士、大学の教授などである者を、また有識者の委員につきましては、社会福祉協議会の役員その他公職経験者等であって、精神障害者の保健福祉に関して理解を有する者を充てることとされておるところでございます。
小池晃君 いわゆる国連原則というのを見ても、こういう精神病者の人権を守る審査機関については医者が中心ということじゃない。書き方としては、一人またはそれ以上の資格を持つ自主的な精神保健従事者の助言と助力を得た司法的または他の独立かつ公正な機関と。医療的な役割は助言であって、あくまで患者の人権を守る機関として存在すべきだということが国連原則にもあります。やはりそういう観点で見直すべきではないかということを申し上げたい。
 最後に今後の問題ですが、先ほどから何度も議論があったので質問にはいたしませんが、多々課題は山積している、一歩前進にしてもゴールはまだまだ遠いという感じではないか。
 同時に、今後のことを考えますと、介護保険制度があり、医療法改定の議論があり、社会福祉事業法の議論もされようとしているということの中では、この法案をめぐる情勢が大きく今後も変化していくことは十分考えられるというか、現実問題としてあるわけでありますから、やはり今後の動きから見て見直し条項を入れることはどうしても必要なのではないかというふうに考えております。
 そういう意味では、ぜひ全体でよく議論をして、当事者の皆さんの期待と不安にこたえる精神保健福祉法をつくり上げていきたいという決意を表明させていただいて、質問を終わります。
清水澄子君 社民党清水澄子でございます。
 ただいまの質疑もありましたけれども、精神医療審査会というのは、いわゆる宇都宮病院事件の反省に立って一九八七年に法改定されて設置された制度であるわけです。そして、その目的は、精神障害者の人権を尊重しつつその適正な医療や保護を図ることである、そういう行政組織だと書かれているわけです。
 そこで、先ほどから皆さんもいろんな御質疑をされております。答弁も、本当に医療的判断が多いから構成メンバーは医療関係者が多いということをおっしゃっていましたけれども、はっきり精神障害者の人権を尊重することが目的で、そこには適正な医療とあわせて保護を図るということがあるわけです。
 そうであるならば、この審査会に、人権確保を第一に考えるような観点から精神障害者の患者側の意見を反映できる委員を加えるべきではないでしょうか。さっきPSWもという御意見もありました。そういう方も、またそのほか人権問題に取り組んでいる人を加えていくように、今後この法の運用面でも、都道府県の判断で構成メンバーにそういう人たちを加えるような運用をすべきだと思います。
 大臣に、そのことについて、前向きにやってみます、検討するというお答えをいただきたいんですが、いかがでしょうか。
国務大臣宮下創平君) 精神医療審査会の委員の構成についてはたびたび今まで議論が出されております。そして、お答え申し上げているのは、精神障害者の人権擁護といいますか、そういうことでございますので、医学的な見地が非常に強いというのでこういう構成になっていることはしばしば局長から申し上げているとおりでございます。
 しかし、その中には「その他の学識経験を有する者」という規定がございます。これは一般的には社会福祉協議会の役員でありますとか、その他の公職経験者等で精神障害者の保健福祉に関し理解を有する者というように私どもは前提として考えております。しかし、回復者がそういう要件を満たしておるものであれば、資格を特定するものでもございません。そういう角度から選定をさせていただきます。
清水澄子君 ぜひ前向きにひとつ実践をしていただきたいと思います。
 このことは専門委員会の報告でも「委員の構成について検討する」ということがうたわれておるわけです。そしてまた「精神医療審査会の独立性を高めるために、都道府県における監督部局とは別の事務局を設けること。」と述べているわけです。
 審査会がそういう強い独立性を持つということは非常に大事なことだと思うんですが、審査会の事務局を監督部局に置く場合と精神保健福祉センターに置く場合とどこがどう違うんですか、そしてどのような面で独立性が確保されているのか、そのメリットは一体何なのか、お聞かせください。
○説明員(今田寛睦君) 精神医療審査会の位置づけにつきましては、一つは、この事務局が措置入院の事務を担当している課であり、なおかつまた審査会の事務もその課が担当しているというようなことに対して見直しが求められたところでございます。
 このために、措置入院等の事務に直接関与していないということ、それから都道府県の本庁担当課よりも独立性が高くてなおかつ精神保健福祉に関する専門家をそこに有しているということから精神保健福祉センターに審査会の事務局を担わせることとしたところでございます。
清水澄子君 精神保健福祉センターにはそういう審査をする場所とか機能はこれからちゃんと準備できるんですか。
○説明員(今田寛睦君) 審査会は常駐して審査するというわけではございませんので、そういった場所の確保は十分にできると思います。
 それから、それに係ります事務局でございます。これにつきましては、従来も県の本庁でやっていた人たちが当然センターの方に移るということでございますので、そういった意味ではそういう体制づくりにおいて何らそごを来すことはないというふうに考えております。
清水澄子君 その点はちょっと私はまだ非常に疑問がありますから、次の機会に質問いたします。
 次に、応急入院させるための移送についてなんですけれども、今回の改正案では、指定医の診断の結果、都道府県知事は医療保護入院に該当する者について、緊急を要する場合には保護者の同意を得ることができない場合であっても応急入院させるため指定病院に移送することができるとしているわけですが、この規定は一歩誤ると非常に大きな人権問題が生ずると思います。ですから、非常にこれは慎重な運用が必要だと思うんです。
 そこで、まずここで確認しておきたいのですが、この条文の「指定医による診察の結果、」「移送することができる。」という点は、あくまでこれは診察を前提としておりますね。これは移送した後に指定医が診察するというようなことはないと確認していいかどうか、これが一点。それからまた「保護者の同意を得ることができない場合」というのは、どういう場合のことを言っているのか。その二つを確認したいと思います。
○説明員(今田寛睦君) まず、指定医による診断は移送の前提条件でございます。したがって、診察した上で移送する、こういう仕組みでございます。
 それから、応急入院につきましては、保護者が物理的に見つからないという場合には、時間を限定して入院させる仕組みでありますが、そういった人たちも移送の対象となる。
 そこで、この運用におきまして、やはりどうしてもその移送制度を使わなければならない、こういうことへの、それまでの判断の持っていき方だと思いますが、当然、家族による努力、それから保健所の保健婦さんなり精神保健福祉相談員の方々の努力、あるいは主治医がいらっしゃれば主治医の皆さんの努力、そういった人たちのお力でできれば自発的に病院に行っていただくという努力をやった上で、それでもなおかつ必要な措置としてこの移送制度を使わざるを得ないという場合にこれを適用する、このように考えております。
清水澄子君 そこで、応急入院の場合の移送ですが、これは二年ほど前でしたか朝日新聞に、警備会社が精神病院への搬送をしているということが出ておりました。その後、これを厚生省ではどのように調査なさったでしょうか。そして、実態はどういう状況にあったのでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 御指摘のことにつきましては、平成九年七月に朝日新聞の紙上で搬送に関する報道がなされたわけであります。本人の意思を無視して強制的な搬送を行うということは、当然人権侵害につながる場合もあるということでありますが、必ずしもその実態は明らかではございません。
 平成九年度の厚生科学研究事業におきまして、精神障害者の精神医療へのアクセスに関する調査というものを実施いたしております。これはアンケートでございます。対象につきましては県庁所在地の保健所、指定都市・特別区の保健所、それから管内人口三十万人以上の保健所を対象にしておりますけれども、ここで百五十一件の回答が得られました。その結果、複数回答ではございますけれども、緊急時の搬送につきましては家族等の協力で説得するというのが百三十三件、救急隊員の依頼が三十七件、保健所の職員が説得するというのが九十四件、それから警察職員に待機依頼するというのが百九件とありまして、民間会社による搬送というのが十六件ございました。
 さらに、十六件あるということから、警備会社等の民間業者が有料で精神障害者の搬送を引き受けている事例を管内で聞いたことがあるかというような質問をしましたところ、三二%の方がある、このような回答がございました。
 いずれにいたしましても、民間警備会社の有料搬送業務が約三分の一の保健所で報告があったということでございますし、人権に配慮した搬送等、適切な受診援助の構築の必要性があるということがこの報告書で指摘されているところでございます。
清水澄子君 そういうふうに民間の警備会社が搬送するということの実態がまだ十分明らかではないというお話でしたけれども、改正後は指定医の診療が前提であるわけですから、その後の移送手段も警備会社に委託するのではなくて、やはり患者の人権尊重に沿った手段を取り入れるべきだと思いますが、その点はどういうふうにお考えになっていますか。
○説明員(今田寛睦君) 新しく設けます移送制度でございますが、これは夜間とか休日などに病院への搬送手段を持たない保護者等が民間の警備会社を利用するというような実態に対する裏返しの対応というふうにも位置づけられるわけであります。このために、都道府県知事の責任において適切な医療機関へ移送する制度を整備するということが基本的な考え方でございます。
 したがいまして、都道府県知事の責任において搬送するということがまず基本でございますので、単に業者に任せるといったことは念頭にございません。
清水澄子君 その点はぜひ明確にこういう状況を解消するように徹底していただきたいと思います。
 次に、当事者への情報開示でございますが、この改正案では、精神保健指定医の診療録記載義務を拡充しようとしておりまして、その記載内容は厚生省令で定める事項となっているわけですが、省令では何を定めようとしておられるのでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 政省令で定めます幾つかの事項の中で、十九条の四の二にございます政省令で定める事項につきましては、その職務を行った日時でありますとか精神保健指定医の氏名等を想定しておりますが、さらに詳細につきましては今後検討したいと考えております。
清水澄子君 この指定医に関する事項には、措置入院とか医療保護入院といった当事者の同意に基づかなかった強制入院を行ったとき、そういう場合に事後的に当事者が記載の内容を求めた場合には、当事者に開示していくことを指定医の義務にぜひ加えるべきではないかと思うのです。
 それは公衆衛生審議会の意見書及び答申にも精神医療に係る情報公開の推進ということが指摘をされておりますし、またなぜ自分が入院をしたのかわからない場合があるわけです。だから、当事者が自分の健康、体に関しての診療録の情報開示を要求したときには、カルテの開示がどうとは私は全然言っていませんよ、そういう答えは要りません、これは医療法が改正されないからとおっしゃるに決まっているんですから、そういうことじゃなくて、本人が自分は何で入院したんだろうかというのがわかるような精神医療に係る情報の開示ということを私はやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 精神医療に係ります情報公開の方策ということでございますが、これにつきましては公衆衛生審議会の意見でも御指摘のように早急に検討すべきだという御意見をいただいております。この精神医療に関する情報につきましては、医療提供体制等に関する内容も含まれることもあって、精神保健福祉法だけの問題ではないのではないか。現在、医療法等の見直しの中で情報公開についての検討が行われているということでございますので、その検討も踏まえながら、私どもの方もあわせて検討を進めていきたいと考えております。
清水澄子君 指定医がなぜそういう判定を下したのかという理由はやはり当事者に開示すべきだと思うのです。ですから、それは指定医の義務に加えていくということをぜひ検討されるべきだと思います。
 また、精神医療審査会の判定理由についても当事者に開示される制度を設けるべきではないでしょうか。とりわけ精神医療においては、当事者が自分の病気についての病識というのがない場合があるため、症状が安定期に入った場合には入院が必要と判定された理由とか経緯を当事者みずからが了解できるようにすることが精神医療におけるインフォームド・コンセントの観点からも非常に重要だと思います。
 そういうことによって、当事者が自分の健康についても納得をするということで治療の上でも効果があるものと考えますけれども、この点についてもぜひひとつ進めていただきたいと思いますが、大臣、検討しますとぜひ答えてください。
国務大臣宮下創平君) 審査過程の問題でございますから、プライバシーの保護の問題が当然ございます。しかし、それ以外の点についてどういう開示が可能か、あるいは本人にどういう知らせが必要であるか等々について、なお検討すべき点があればさらに引き続き検討させていただきます。
清水澄子君 次に、長期入院が減らない理由についてお聞きしたいんです。これまでも精神衛生法から精神保健法になり、そして精神障害者ノーマライゼーションに向けた取り組みという形でずっと法改正が行われてきたわけですけれども、やはり患者の数というのは横ばいです。むしろふえているというのが現状だと思います。
 そこで、このように長期入院傾向が是正されない理由というのは何であると認識をされておられるでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 精神病院に入院していらっしゃる患者さんの平均在院日数につきましては、平成二年から平成八年にかけて四百九十六日から四百四十一日と短くはなってきておりますけれども、一方で五年以上入院している者の割合というのは昭和五十八年が四七・八%、平成八年で四六・五%とほとんど変わっていない。非常に長期の人たちがいる一方で、新しく入院される方については比較的短い期間で退院していただいているというのが今の状況ではないかと思います。
 いずれにいたしましても、入院期間が長いということについての理由でございますが、一つは入院医療を終えて社会復帰をするという時点で、社会復帰を援助するための施設、マンパワー等が必ずしも十分ではないという点が一つあろうかと思います。それから、諸外国との比較にもなりましょうが、ナーシングホームのような仕組みを持っている国もありますが、集中的な医療にある程度特化した治療が必要でない精神障害者についても、引き続き精神病院が処遇することを余儀なくされているという実態ももう一つあるのではないかと思います。さらに、社会復帰に対する理解が必ずしも十分でないということから、結果として社会的入院が容認されてしまっている傾向があるのかなと。
 このような点が私どもは入院患者の減らない一つの要素として考えているところでございます。
清水澄子君 結局、精神障害者を地域でケアしていくための社会的な受け皿といいますか、資源の不足が長期入院の是正が進まない大きな理由であると思うわけです。ですから、先ほどの応急入院の場合でも、むしろもっと気軽に治療を受けられる環境が、地域に日常的にそういうシステムが必要だと思うんです。
 地域ケア体制の不足が結局病院以外に居場所がない、そして今度はそのことで社会復帰が進まないためにいわゆる地域ケア体制の整備も進まないという悪循環に陥っていると思うんですが、その点を今後どのように改善しようとされておりますか。
国務大臣宮下創平君) 長期の入院患者に対応することを含めまして、精神障害者の社会復帰を促進することは極めて重要でございます。今御指摘のように地域ケア体制、地域における精神障害者の生活支援体制の整備は極めて重要なことであると認識しております。
 そこで、今まで障害者プランに基づきまして精神障害者授産施設あるいは精神障害者福祉ホーム、生活訓練施設、福祉工場などの社会復帰施設や、それからまた地域生活援助事業としてグループホーム等の整備を今までやってまいりました。
 今回の改正案におきましては、それに加えまして、地域で生活する精神障害者が身近なところで相談、指導や福祉サービスの利用、援助を受けることのできる精神障害者地域生活支援センターというのを設置することにいたしております。また、そのほかにも精神障害者の居宅に食事あるいは身体の清潔の保持等の介助を行うホームヘルパーを派遣する精神障害者居宅介護等事業、ホームヘルプ事業等の法定化を盛り込んでございます。
 今後、精神障害者の地域生活のより一層の支援を図らなければなりませんが、今回の改正によって相当前進するのではないか。また、裏づけに施設の整備等も図っていかなければならないというように思っておりまして、今後一層地域の精神障害者の生活支援体制の整備の促進を図ってまいりたいと考えております。
清水澄子君 その点は、次のときにまたいろいろ質問させていただきます。
 次に、保健所のマンパワーについてなんですが、この改正案では、市町村、都道府県、精神保健福祉センター地域生活支援センター、保健所、市町村保健センターというふうに、今後これらの精神障害者の社会復帰施設等の利用に関する相談とか助言とかあっせん等の業務を市町村が行うために保健所が技術的な協力を行うとなっているわけですが、先ほど申し上げたそれぞれの施設の役割分担というのはどのようになっていくんでしょうか。それらを考えたときに、今日の保健所の機能とか人員で本当にそれがカバーできるのかどうか。
 そういう点で、むしろ保健所はこの地域保健法以来、統廃合がずっと進められてきているわけでして、最近の一月十八日の厚生関係部局長会議においても、保健婦の人材確保は厳しい状況だと、それから保健婦さんの確保が計画よりも大幅に下回っているという報告がなされているわけです。
 一方で、市町村はこれまで精神障害者福祉施策での蓄積というのはほとんどないと思うわけです。そういう中で、市町村主体の福祉サービスの定着までに保健所がこれを支える役割というのは非常に大きいと思うんですけれども、それらを現状のままで十分カバーできるのかどうか。もっと財政的な支援も含めて根本的に保健所の役割というものを強化すべきだと思いますが、それらについてお答えいただきたいと思います。
○政府委員(伊藤雅治君) 平成六年に保健所法の改正など地域保健法の全面改正を行ったわけでございます。この改正が平成九年に全面施行されたのを契機といたしまして、保健所が地域におきます専門的、技術的拠点としての役割を発揮することができるよう、各都道府県に対しまして、保健所の機能強化計画の策定を初め、所管区域の拡大に伴う保健所の統廃合とともに、精神保健対策を担当する専門職員の確保を含め、機能の強化を進めているところでございます。
 ちなみに、平成六年におきましては保健所数は八百四十七でございましたが、平成十年には六百六十三に減っております。技術職員、例えば保健所の保健婦につきましては、都道府県の保健婦数が平成六年の五千二百十五人から四千六百六十三人と若干減っておりますが、政令市の保健所におきましては三千三百十一から二千八百四十五、また母子保健等の市町村への業務の移譲に伴いまして平成六年の一万二千五百二から一万六千四百六十六と、総体といたしまして都道府県の保健婦は若干減っておりますが、市町村の保健婦をかなり重点的にふやしてきている、そういう対応をしてきているところでございます。
 いずれにいたしましても、平成九年からの地域保健法の全面施行の目的といたしました保健所の機能強化が目的どおり進んでいるかどうかということにつきまして、私どもといたしましては、平成十年と十一年の二カ年をかけまして地域保健法施行後の保健所機能の強化推進の評価に関する研究というのを今依頼しておりまして、検証をしていきたいと考えているところでございます。
 いずれにいたしましても、厚生省といたしましては、今回の精神保健福祉法の改正も踏まえまして、今後とも保健所機能の強化を図っていくために、地方交付税措置を講じ保健所職員の確保に努めるとともに、保健所職員の知識、技術の向上を図れるよう各種研修などを実施してまいりたいと考えております。
清水澄子君 終わります。
【略】
○入澤肇君 今回の法律の改正の要点につきまして、先ほど大臣から人権への配慮を徹底させたということ、それから地域福祉の充実を念頭に置いて必要な条文を入れたということ、これはそのとおりであると非常に評価していいんじゃないかと思うんです。
 ただ、私は、若干の疑問がありますのは、五年ごとの見直しを行う規定があるために、どうも前回の改正のときに当然入れておくべきことを入れないで小出しにしているんじゃないかな、そういうふうな感じが実はするわけであります。
 感染症予防法の継続審議で私は初めて質問に立たせていただいたんですけれども、あのとき衆参両院の委員会議事録を全部読みましたら、百年に一度の改正がなぜ行われたか、見直しの規定がなかったからという答弁が中に入っていました。そんなことはおかしいんじゃないか、むしろ常時緊張感を持って時代の流れに即した改正をすべきじゃないかという質問をいたしましたら、そのとおりだという答弁があったわけでございます。
 この精神衛生関係の法律は累次にわたって改正が行われていますけれども、五年ごとに見直しをするということで、本来、前回の改正で入れておくべきことも入れないまま残していたんじゃないかと疑わざるを得ないような規定がかなりあるんです。
 例えば規制を緩和したんでしょうか。指定医の取り消しの規定、これなどは「期間を定めてその職務の停止を命ずる」ということが新しくつけ加えられましたけれども、当然のことながら、取り消しの前にもっと緩い要件の期間を定めた職務の停止というのが考えられてしかるべきであったと思います。それから、指定医が職務を行う場合に遅滞なくその氏名その他厚生省令で定める事項を診療録に記載しなければいけない、これなども当たり前な規定で、前の改正のときに入ってしかるべきだったと思います。さらに、処遇の改善のために必要な措置をとられるように努めるものとする、これも当たり前の規定であります。
 こういう中で、しかし人権に配慮をして精神医療審査会の機能の強化あるいは医療保護入院等に関する事項につきまして明確な規定が入ったということは、これは非常に評価すべきだと思うんです。今後、同じように小出しでやるようなことはできるだけやめた方がいいと私は思うんです。
 これは私も役人をやったから経験があるんですけれども、土光臨調以来、十数年にわたって行政改革をずっと行政当局はやらされてきました。そうしますと、点数を稼ぐために少しずつ出すんですよ。思い切ってやらない。だから、十年に一度ぐらい行政改革をやると思い切った効果が上がるんですけれども、毎年やるものだから一向に行政改革の効果が上がらないまま終わって現在に至ってしまう、そういうふうなことがあるわけです。
 ですから、今回はこの法律を契機にいたしまして、思い切って、精神医療関係の予算が全体の医療費に占める予算としては少ないし、さらに大臣が先ほど申されましたように、地域福祉の充実ということに焦点を置いて改正したのであれば、医療費への配分と同時に精神福祉に対する予算の配分にも重点を置いてやるようなことにエネルギーを使ったらいいんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
国務大臣宮下創平君) 今回の改正案を提案している直接的な原因は、見直し規定もあるということはこれは否めない事実でございますが、そういうものがなくても、やはり医学の進歩あるいは情勢の変化、経済社会の変化に応じて、私どものつくった制度でございますから、それに適合するように常時見直しの気持ちで眺めていくことはぜひ必要だと思います。その結果として、不備な点があったり、あるいは時代に適合しないような点があったりすれば、それは改正していくのは当然でございます。
 この法律につきましては、二十五年ごろからつくられておりますが、その流れとしては社会防衛的なものから人権擁護という方向へずっと来ておりますから、大きな流れに沿った中で必要な改革をやっているというのが現状でございます。ことしはまだなすべきことがあるけれども、また来年あるいは次の機会になどという考えはないわけでありまして、私どもはこれがベストなものだということで提案を申し上げているところでございます。
○入澤肇君 そこで、具体的な質問に入りたいと思います。
 今回、精神医療審査会というのが委員の数の制限を撤廃し、さらに機能強化を図るということで規定されていますけれども、いろんな人がいろんなことを言っています。病院の関係者だけだとお互いにかばい合って、本当は不適切だと指摘したいところもそうでないというふうに言うんじゃないかとか、それから医療施設に勤めている職員も自分の身分の問題があるからなかなか思い切ったことが言えないんじゃないかとかいうことがありまして、先ほどからも議論がありますように、審査会の構成メンバーについては非常に重要な課題だと思うんです。
 他の国の例を若干調べてみますと、例えばカナダなどでは人権擁護のために全く第三者的な機関、こういうところに審査会の機能をゆだねているということが言われているんです。そのように透明性、客観性、公平性、それからまたお互いにかばい合うようなことのないような仕組みにすることを考えているかどうか。当然のことでしょうけれども、決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) このたび、審査会につきまして精神保健福祉センターの方へ事務局を置くということにいたしましたけれども、公衆衛生審議会の議論においても、現在の体制であれば精神保健福祉センターにこれを置くということはそれはそれで前進であろう、しかし今後、そのあり方についてはもう少し検討していこうではないかというような御意見もございました。
 審議会の御意見等もまたお聞きしながら、将来本当にどうあるべきかということについてまた考えていきたいというふうに思います。
【次回へつづく】