精神医療に関する条文・審議(その85)

前回(id:kokekokko:20051029)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。法案などはid:kokekokko:20051026にあります。

第145回参議院 国民福祉委員会会議録第8号(平成11年4月15日)
【前回のつづき】
○入澤肇君 次に、今回の規定で非常に重要なところは、いわゆる仮入院の規定が削除されました。条文をそれぞれ読んでみますと、「精神障害者の疑いがあつて」という言葉は一切消えております。「疑いがあつてその診断に相当の時日を要すると認める者」というのが仮入院の要件の一つにありましたけれども、これは消えております。
 しかし、医療保護入院と、恐らくこの疑いのある方は任意入院になるかと思うんですけれども、この場合の当事者の判断能力からしまして、どちらに行くべきかというのは非常に難しいんじゃないかと思うんです。その場合のいわゆる対応の仕方の基準、こういうことについてはどう考えておりますか。
○説明員(今田寛睦君) まず仮入院の廃止でございますけれども、仮入院というのは診断に相当の時日を要するということで、精神障害者について一週間を限度として仮に入院をする、しかもそれは強制行為を働かせる、こういう仕組みでございます。それで、最近診断技術も発達してまいりましたし、一方で精神障害であるかどうか不明確な段階で強制的に入院させるというのはいささか人権の侵害につながるおそれがあるのではないか。それから、現実に年間二十件程度全国で適用されているという意味で、事実上非常に診断については早くこれが行われるようになったということから、そういう人権侵害につながるおそれのある仕組みを今回廃止しよう、一つはこういう趣旨でございます。
 と同時に、医療保護入院と任意入院の違いということでございますが、最近の病院の不祥事なんかを見てみますと、同意能力があるのに医療保護入院になったことがあって、医療保護入院の要件を明確にする必要があるという観点から、法二十二条の三の規定による入院、つまり任意入院が行われるべき状態にない人をもって医療保護入院とする、こう規定したわけであります。
 この二十二条の三の規定による入院が行われるべき状態にないということそのものは、患者さんの精神障害によって入院の必要性を理解できない状態ということでございますので、この判定について精神保健指定医が医学上の専門性に基づいて個別に判断せざるを得ないのではないか、そういう意味もございまして、これは医師の判断にゆだねたいと。しかし、規定をこのたびつけましたように、任意入院ができないんだという一つの基本的基準というものは明示した、こういうことで取り扱っていきたいと考えております。
○入澤肇君 よくわかるようなわからないような話なんですが、専門分野のことですから、ぜひトラブルが起きないように明確な指針をつくって各医師に提示していただきたいと思うのであります。
 そこで、先ほど清水先生からも質問がございましたけれども、今回精神保健指定医の診療録の記載義務というのが拡充されました。ところが、新聞報道とか何かによりますと、いわゆるカルテそのものの法制化については厚生省は非常に消極的である、あるいは医師会等が必ずしも前向きでないという報道がなされていますけれども、この点についてはどのように対応するお考えですか。
○政府委員(小林秀資君) カルテ等の診療情報の開示につきましては、昨年の六月にカルテ等の診療情報の活用に関する検討会というものがありまして、そこから報告書が出てまいりました。それをもとにこのカルテ開示のところについては審議会で御議論が進んでおります。昨年の秋から審議会が始まって、まだ現在も審議会で御議論いただいているところであります。
 この審議会は、御存じのように公開でやっておりますので先生も多分お聞きになっていらっしゃるのではないかと思いますが、これまでの審議の中では、カルテを患者さんに開示するということについては大方の委員がもう皆さん御賛成という感じになっていますが、実は検討会の報告書の中にそれを法律に書きなさい、努力義務で書きなさいという一節がありまして、そのことについて意見が二つに分かれております。
 一つは、開示というのはプロフェッショナルの仕事でやるのだからそれは法律に書かないで自分たちでやります、だから法律には書かないでほしいという意見と、いや、それはやるんだから法律に書いた方がいいんじゃないかという御議論と二つありまして、そこについてまだ議論がある。法律に書くかどうかというところで御議論があると。
 要は、患者さんにカルテの開示をするということ自体は医療をよりよくしていくために必要だから、それをやりましょうということについてはそんなに御意見が分かれているということではございません。
 いずれにしましても、最終的には審議会の御報告をいただいて、そして法制化に向けて努力をしていきたい、このように思っております。
○入澤肇君 今の答弁でわかったんですけれども、私も健康診断をやったときにカルテをのぞきましたら、女医さんにえらく怒られまして、この人はカルテをのぞくのよなんてみんなに言われてしまいまして、自分の診断をしてもらったんだからのぞいてもいいと思うんです。ただ、ドイツ語の専門用語で書いてありますから見てもわからないんです。しかし、患者に開示することを今ごろ議論しなければならないというレベルにあるのかなという思いを今深くしたわけであります。
 そこで次に、今度の精神医療の関係でいただいた資料等を読んでいまして、医療全体の中で非常に特別な位置にあるのではないかということが指摘されております。例えば、医療法の特例で精神科特例というのがあるんだそうです。患者何人に対して医師の張りつけ方が何人だとか看護婦の張りつけ方が何人だとか、こういうふうなこともあるということで、精神科の関係者は精神科特例は廃止すべきじゃないかということを指摘している人もたくさんいるというふうに聞いております。
 それからまた、先ほど申しましたけれども、医療費全体の精神科関係の額、これも少ないし、さらに精神科の福祉関係は一層少ないということでございます。全国の自治体病院の一般病床と精神病床とで入院患者一人にかかる一日当たりの医療費の比較というものも出ています。これを調べてみますと、一般病床が二万九千二百二円、精神病床が一万二千四百七十六円という数字が出ております。
 こんなに差があるのかなと思うんですが、この差は精神科関係の疾患とほかの疾患との関係からして実態に合うリーズナブルなものであるのかどうか、合理的なものであるのかどうかということについてどうお考えか。さらに、このような精神科特例的なものは本来であれば廃止すべきものであるかどうか、専門家の立場からひとつ御意見をお聞かせ願いたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 精神科特例につきましての御質問でありますけれども、その特例ができた経緯といたしましては、やはり医療機関が非常に少なかった、精神病院が非常に確保しにくかった時代、そしてそれに従事する職員が非常に少なかった時代背景の中で規定された部分もございますし、また一方で、精神疾患の特性として非常に慢性疾患の方が多いというようなこともあって今日に至っているというのが現状であります。
 現に、実態を見てみますと、百床当たりの医師数で見ますと、精神病床の場合は医師が二・七人、一般病床だと十一・二人というふうな状況でありますし、看護婦は百床に対して精神病床が二十七・五人、一般病床は四十六・二人、看護婦さんは比較的格差が実態としては縮んできているということは言えようかと思います。
 診療報酬との関係でありますけれども、現在の診療報酬体系では看護料というのは基本的に看護婦さんの配置されている実人員を反映するように評価していただいておりますので、結果としては、少ないという意味においては診療費が下がってしまいますけれども、たくさん看護婦さんを置いているところでは、それはそれなりの評価を診療報酬で受けているというふうに私どもは理解をいたしております。
○入澤肇君 累次にわたるこのような精神衛生関係の法律改正があるわけでございますから、やっぱり専門家の皆さん方が集まって、こういうものは廃止したらいいという意見が出ているとすれば、財政当局の問題はあるかもしれませんけれども、実態に合わせて改善の努力を一層やっていただきたいと私は思うんです。
 例えば、外国に比べて、資料をいただいた中で、特に精神疾患の平均在院日数がOECDの中では日本が一番長いというんです。一体なぜこのようなことになっているのか。これは、きょうの法案の中で地域医療、地域福祉施設を充実させるということがあるから、それで対応すれば短くなるというふうに恐らく答えられるのかもしれませんけれども、実際にそれだけなんだろうか。
 今までの医療体制のあり方、そういうことについてOECDと日本ではこのような違いがあるんだという特徴的なことがあったら、それの御説明を願いたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 諸外国との比較というのは、その国の医療提供体制の制度の差でありますとか、調査の対象となった施設に差があるものですから必ずしも単純に比較することはできないわけでありますけれども、一つは我が国が諸外国に比べて長いという実態に合わせて精神病床も多いという実態もございます。したがって、病床が多いということが結果として長期入院と相関する可能性があるという点も指摘されております。
 それから、先ほども御説明申し上げましたけれども、五年以上も入っているような方々の社会の受け皿を整備する必要があるのではないか。それが、要は長期入院そのものがかなりのウエートで支配しているという意味からしますと、半分近い患者さんが五年以上入院しているというこの実態、これをやはり社会復帰のための施策の充実によって少しでも改善するように努力するというのはやはり大事なことではないかと思います。
 いずれにいたしましても、平均入院期間が長い、あるいは病床の問題も含めて、今後こういった地域医療という視点から充実をすることが私どもにとってはまず喫緊の課題ではないかということで努力していきたいと考えております。
○入澤肇君 努力をするというのはわかるんですが、例えばアメリカとかヨーロッパ、こういうところでは入院医療から地域の医療、保健、福祉、こういった施策に重点を移しているということなんですけれども、日本では今これが始まったばかりなんでしょうか、国際的に見て本当におくれているんだろうか、そこら辺はどうでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 福祉施策という視点から見れば、スウェーデンなり北欧の福祉施策のあり方というものに比べてさらに充実を図らなければならない分野もあろうかと思います。また一方で、それを支える福祉の財源を出す仕組みそのものにも国によって差があるということもありますので、現実論としてやはり西欧の福祉にできるだけ近い、あるいはいいところがとれるようなそういう形での努力をするのが大事ではないかというふうに私は思っております。
○入澤肇君 このように日本とヨーロッパ、アメリカとの間で非常に差があるという場合に、先ほどもほかの先生からそんなことも調べていないのかという御質問がございましたけれども、もっと積極的にデータを集めまして、例えば新ゴールドプランあるいは障害者福祉プランと同じように精神衛生関係の福祉の充実のための長期的なプランをきちんとつくって、そして財政的な充実を図るというふうなことも当然のことながら約束していただきたいんですけれども、約束してもらえますか。
○説明員(今田寛睦君) 平成七年に障害者プランを出されたわけでありますが、このとき初めて身体障害と知的障害に加えて精神障害を対象とする福祉施策について数値目標を設定するということをやっております。したがって、平成十四年を目途に社会復帰施設等の整備あるいは地域生活支援センター等の整備、そういったものについて今目標を定めてこれに邁進したいと考えているところでございまして、御指摘のように三障害あわせて一定の目標を定めて、その実現方に努力していくということが今当面の最大の課題だというふうに思っております。
○入澤肇君 せっかく法律を出すんですから、大臣が御答弁されましたように、人権に配慮し、それから地域福祉を充実させるという極めて明確な目的意識を持って法律改正をやっているわけですから、ぜひその裏づけの施設整備とか何かについても格段の努力をしていただきたいと思います。
 それから、今度の法律でもう一つ、これは本当にプラスなのかマイナスなのかよくわからないんですが、保護者の義務のところで、自傷他害防止監督義務を法律上廃止しましたけれども、果たしてこれを法律の条文から削っただけで家族の負担というのが軽減されるのだろうかという疑問を持つわけであります。負担軽減をする場合には、当然患者というか、要するに疾患を持っている方本人が安定、自立するようにしなければいけないでしょうし、そのためにはホームヘルプを初めといたしましていろんな政策の組み合わせが必要なわけです。
 これらについて、特に家族の負担を軽減するということを明確に言ったわけですから、具体的にはどのような対応策を講ずる考えであるかをお聞かせ願いたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) まず、精神障害者の家族の方々というのは本当に高齢化が進んでまいりましたし、それから精神障害者自身も単身がふえてきているという状況にありまして、家族に依存するということがだんだん難しくなってきている。こういう認識に立った上でのお話でございますが、そういう背景に基づきまして、今回の改正案では、在宅精神障害者の支援をするということから、市町村に責任主体を置いて、ホームヘルプサービスでありますとかあるいはショートステイ、こういったものを創設する、これによって一時的であれ、また訪問していただくなりして家族の負担の軽減につながるのではないかということで一つの役割を演じていただけるのではないかと思います。また、さまざまな家族の御相談に応じるということから、地域生活支援センターを法定化するということで相談体制の整備も充実させることといたしております。
 御指摘の自傷他害防止監督義務などの義務でございますけれども、今回それを廃止すること、あるいは一部の保護義務の対象となる精神障害者を限定するなどの保護者の保護義務の軽減を行うことにいたしております。こんな点が障害者の家族の負担という視点に立った上での一つの改正案の内容ではなかろうかと思います。
○入澤肇君 家族の負担を軽減するということの一つの方法といたしまして、やっぱり疾患を持っている人でも安定したときには自立した生活ができるような条件を整備しなければいけない。
 その意味で、いわゆるいろんな資格試験等の欠格条項がございます。他に危害を与えるとか何かの心配のないいろんな資格もあると思うんですけれども、そういうものについての具体的な考え方、欠格条項について、これはもう外していいんじゃないかとか、これは残すべきじゃないかということについての基本的な考え方をお聞かせ願いたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 各種の制度には精神障害者を欠格条項として置いているものがございます。障害者プランの中でもこういったものの見直しが規定をされているわけでありまして、現在、総理府を中心といたしまして、平成十二年中を目途といたしましてその見直し作業を行っているところでございます。
 欠格条項というのはいろんなところにございますが、政府全体で取り組む事項ということで、厚生省といたしましてもその見直しにつきましては最大限の努力をしていきたいと考えております。
○入澤肇君 最後に、非常にある意味では前向きな、また前進した考え方の改正でありますので、先ほど部長が答弁されましたけれども、この精神福祉関係予算の充実についてことしの夏の概算要求に向けて格段の努力をするということを大臣に一言御答弁いただいて、終わりたいと思います。
国務大臣宮下創平君) 今回の法律改正の趣旨も社会復帰ということを重点に置いておりますので、各種の社会復帰施設の充実とか、あるいは地域対策としてホームヘルプサービスショートステイ等を新たに法定化しているわけでございますので、当然裏づけになる予算措置等もあとう限り努力をしてまいりたいと思います。
○入澤肇君 終わります。
西川きよし君 よろしくお願い申し上げます。
 まず冒頭、大臣にお伺いしたいと思います。
 昭和五十九年の宇都宮病院の事件の後、六十二年の改正、精神病院に対する指導監督の創設、あるいは精神医療審査会の設置、また精神保健指定医制度の創設などなどいろいろと講じられたわけですけれども、その後におきましても私の地元大阪の大和川病院の事件等々、一部の精神病院におきまして人権侵害の事件が本当に多数発生しております。
 今回の改正案の目的の一つが、当然こうした事件の発生を未然に防ぐ策ということで講じられたことと思いますけれども、まず厚生大臣の基本的なお考えからお伺いしておきたいと思います。
国務大臣宮下創平君) 昭和六十二年の法改正というのは、改正の主要点が一つの大きな流れをつくったように思います。その場合、精神障害者の人権に配慮した医療の確保ということが極めて重要だという流れができておりまして、そう措置しておったわけでありますが、御指摘の病院事件初め、精神病院をめぐる人権侵害が生じていることはまことに遺憾なことでございます。
 したがいまして、今回はそういった反省を踏まえながら、それを予防するための措置として、御議論いただいておりますように、精神審査会の調査権限を拡充するなどして機能を強化して入院患者の処遇等の審査に万全を期していきたいというようなこと、それから精神保健指定医の役割も強化して精神障害者のために明確な責任を持ってもらうような体制をとること、それから保護入院等の要件を明確化すること、あるいは改善命令に従わない場合の入院医療を制限することができるなどの規定を創設し、従わない場合には罰則まで設けるというようなことで精神病院に対する指導監督を強化するなど、さまざまな人権侵害防止のための施策を講じておるところでございます。
 先ほど来御議論いただきましたように、精神障害者は自己判断ができかねるとかいろいろ特性がございますので、それだけに一般病院とまた違った配慮が必要でございます。私どもは、この法律を機会に、より一層人権侵害防止に努めてまいりたいと思っております。
西川きよし君 ありがとうございました。
 そういう意味におきましても、きょうは御本人そして御家族、身内、全く第三者的な立場でいろいろと御質問をさせていただきたいと思います。
 この大和川病院を含む安田系三病院ですけれども、まず大和川病院の問題につきまして今までの経緯を御説明いただきたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 大和川病院の問題につきましては、平成五年二月に病院内におきまして他の入院患者から暴行を受けたと思われる入院患者が八尾病院に転院後死亡した。この事件を契機といたしまして、大和川病院において入院患者の処遇に問題があるのではないかということが判明したわけであります。
 この件につきましては、その後、大阪府におきまして実施いたしました立入検査で、まず任意入院患者に対する違法な退院制限があった、入院患者に対する違法な隔離があった、常勤の指定医が不在のままで医療保護入院を実施していた、医療保護入院に際して指定医の診察義務違反があった、このように精神保健福祉法に違反する人権侵害が発生しておりました。さらに、看護婦を水増しいたしまして診療報酬の不正請求を行っていたことも確認されたわけであります。
 この問題に対応するために、大阪府は平成九年五月に、患者の人権の確保とか常勤の精神保健指定医の確保等について本法によります改善命令を行いまして、同年八月には保険医療機関の取り消し処分、十月には病院の開設許可取り消し処分、このように経緯した状況でございます。
西川きよし君 今回のこの大和川病院を含む安田系三病院の問題は、医療監視、病院指導のあり方、そして精神科救急医療体制の問題など、本当に多くのこういう課題が明らかにされたわけです。そうした中で、昨年の十一月に大阪府におきまして、安田系病院問題に対する大阪府の取り組みという報告書がまとめられております。
 この報告書の内容に沿って、厚生省の考え方についてきょうはお伺いしたいと思うんですけれども、その前に一点、ただいまの御説明にもございましたが、平成五年二月二十二日に大和川病院の入院患者の死亡事件が報道されたわけです。その年の六月、衆参における厚生委員会におきまして問題が取り上げられております。議事録も目を通させていただきましたが、その際、厚生省の御答弁では、大阪府が調査中でありますというお答えでございました。
 その後の大阪府が報告された調査の内容というのはどういった内容であったのか、そして厚生省としてはどういうふうな対応をおとりになったのか、御答弁をお願いします。
○説明員(今田寛睦君) 平成五年六月の御答弁でございますが、これに関しまして、大阪府におきましては、その翌月に立入検査を実施いたしました。入院患者二十八人分のカルテのチェック、それから入院患者の面接等を行っております。
 その結果といたしまして、入院時の医師の診察がなかった者がいる、電話の使用制限がなされている、面会制限がなされている、指定医の署名のない十二時間以上の隔離が行われている、それから告知の書式が不適切あるいは書面告知がなされていないと思われるケースが多くあった、このように入院患者の人権を擁護する観点から不適切な事項が確認されたということで、八月に厚生省に報告をされました。
 厚生省といたしましては、この報告を受けまして、九月に大和川病院に対しまして医療保護・任意入院、入院者の隔離などに関しまして改善指導を行いますとともに、病院から文書による改善計画を提出させ、期限を定めて当該計画の進捗状況を調査するよう大阪府に通知したところでございます。
西川きよし君 この大阪府の報告書の中で、平成五年二月の大和川病院事件や大阪精神医療人権センターを初めとしまして、当事者の方や三病院の元従事者の方々の訴えなどを受けまして、同年九月の三病院統一医療監視を実施したわけです。さらに、三病院に医療監視を実施したものの、虚偽の報告の発見に至らず、結果として有効な手だてを打てずに、府民の医療に対する信頼を揺るがせる事態を招いたことを真摯に受けとめ深く反省をしたところであると、このように書かれているわけです。
 この三病院の統一医療監視は、厚生省、大阪府大阪市で行われておるわけですけれども、この際の医療監視の結果、そして内容に対して厚生省としてはどういうふうに判断をされたのか、お伺いします。
○政府委員(中西明典君) 医療監視、これは医療法に基づいて実施されるものでございますが、御指摘の九月二十日におきまして、大阪府大阪市が三病院に対して医療監視を実施いたしますとともに、厚生省と大阪府の合同で医療法人北錦会への立入検査を実施したところでございます。
 お尋ねの統一医療監視につきましては、医療従事者の体制を確認するという視点から立入検査を行ったものでございまして、その時点の結果といたしましては、安田病院については看護婦五十名必要数のところ不足が十名、それから大阪円生病院については必要数六十七名のところ看護婦の不足が三名、大和川病院については、看護婦の必要数八十一名のところが不足二十二名、薬剤師が必要数三名のところが不足一名ということであったと承知しておりまして、この際は医療従事者の充足改善を指導するにとどまっているということでございます。
 その後、大阪府大阪市は数次にわたり医療監視を行ってきたわけでございますが、その都度、少なくとも表面的には医療従事者の配置状況が改善されているという状況でありまして、先生御指摘のとおり、重大な人員不足があるという認識を持つに至らなかった、残念な結果となってしまったというのが事実でございます。
西川きよし君 この医療監視体制の問題ですけれども、報告書の一つ目といたしましては、書類チェックが中心であった。医療従事者の確認に係る従来の医療監視が書類チェック中心であります。ですから、今回のようにあらゆる書類を偽造するなどされた場合に、この偽造の報告を見抜けなかった。
 それから二つ目といたしましては、法制度上、医療従事者に対し直接報告を求めることができなかったということでございます。医療法においては、医療監視は病院の開設者または管理者に対して報告を求めることとなっております。健康保険法などのように従事者に対して直接報告を求め得る規定がないわけです。医療従事者に対する聞き取り調査ができなかった。その他関係機関等々との連携などの問題も書かれてあるわけですけれども、その中でも特にこの二点については、厚生省といたしましてはどういうふうにお考えでしょうか。
○政府委員(中西明典君) 安田病院事件につきましては、書類の改ざん、あるいは立入検査に際しまして極めて非協力的な対応がなされたというようなこともございまして、結果として迅速な対応がなし得なかったということは、これは極めて遺憾であるというふうに考えております。
 こういった事件の経緯を踏まえまして、平成九年六月、医療監視の実施方法につきまして見直しを行うこととし、一つは、従来一病院につき年一回の医療監視の実施を指導してきたところでございますが、今後、特に問題のある病院については繰り返し医療監視を実施する。それからまた、系列病院につきましては同時進行的に、同時に医療監視を実施していく。それから、問題のある病院につきましては、保険当局、福祉当局との連携を密接にいたしまして、一斉監視を行う。それからさらに、必要に応じて病院職員本人への面接による個別確認を行っていく。また、関係書類を提出しない等、非協力的な病院については、医療法に基づいて司法当局に対して告発を行うということも考える。そういった対応を今後行っていくということで、都道府県にも通知いたし、徹底を図ってきているところでございます。
西川きよし君 大阪府では、医療監視体制につきまして、今回のこの教訓を踏まえまして、医療法上適正を欠く疑いのある病院に対しては、事前に通知を行うことなく抜き打ちで医療監視を行うなど六項目の改正点を報告されているわけです。
 また、医療法制度の改正に向けた国への要望でございますけれども、ここで四項目読ませていただきます。
 (1) 医療従事者に対する報告の徴収権限について医療法に明記すること。
 (2) 標準数に対し大幅に人員が不足している場合における改善命令等の権限を医療法に明記すること。
 (3) 病院が保存している資料の複写権を明記するとともに、いわゆる抜き打ち検査においても必要書類が閲覧できるよう、医療監視に必要な書類の保存、常備等について法・施行令及び施行規則に詳細に規定すること。
 (4) 医療機関が医療監視に応じない場合、並びに報告の聴取についてその提出を怠った場合及び虚偽の報告を行った場合等の罰則の強化・充実。
こういうふうに書かれているわけですけれども、この四項目につきまして、厚生省としての御見解をお伺いしたいと思います。
○政府委員(小林秀資君) いわゆる安田病院事件につきましては、書類の改ざんや医療監視員による立入検査への非協力的な対応がなされたこともあって、迅速な対応が困難であったことは遺憾に考えているところでございます。
 また、大阪府からの報告書に対しましては、指摘された事項について厚生省としても真剣に受けとめているところでございます。
 具体的には、医療従事者に対する報告徴収権限の創設や資料の複写権、抜き打ち検査において必要な書類の保存、常備等に関する権限の強化につきましては、安田病院事件のようなケースに的確に対処するためには有効と認識をいたしております。しかし、これらは行政庁の権限強化ということにもなるわけでございまして、こういう方法しかないのかということもあって、実は権限強化というのはまた役人をふやして云々と、こういうことですから、そういう意味では慎重に対応すべきではないかという意見もありますので引き続き検討してまいりたい、このように思っております。
 それから、医療法で定められておりますところの医療従事者の数について、不足人員の改善命令に関しましては、適正かつ良質な医療を確保する観点から、現在、医療審議会において審議を進めている医療提供体制の改革の中の一つの課題として検討を進めているところでございます。そのことは、昨年の十二月二十五日に医療審議会に厚生省が医療法の改正についての議論のためのたたき台というのを出しておりまして、その中に明文化されております。
 そして、医療監視等に応じない場合の対応に関しましては、安田病院事件においては虚偽報告を主な処分理由として、医療機関の開設許可の取り消し処分及び医療法人の設立認可取り消し処分が行われたところでありますが、さらに罰則の強化により対応することが適切かは、なお検討を要するものがあったと考えておるところであります。
西川きよし君 本当に人権、虐待、死亡というところまで、こんな大きな事件になったわけですから、公務員の方がふえるようなことはまたそちらの方でよろしく御指導いただきたいと思うわけです。
 次に、精神病院の実地指導上の問題点についてお伺いしたいと思います。
 この点については、この報告書では、平成五年二月、大和川病院の患者さんの死亡事件が報道されて、それ以降、入院患者の処遇の改善、代理人である弁護士さんへの面会の拒否等に対しまして、その都度、病院実地指導を繰り返し実施したところであるが、結果として有効な指導ができなかったことを真摯に受けとめ、深く反省したところである、こういうふうに記されております。
 その上で、これまでの病院の実地指導の問題点、一つには精神保健福祉法に係る入院患者の処遇の基準、昭和六十三年四月八日の厚生省告示第二十八号から三十号を中心に繰り返し指導を行ってきたところであるが、改善指導のみにとどまり改善命令がなかったこと。また、病院に対して改善指導を繰り返している間、府民にその事実を公表してこなかったために、府民が病院情報を得ることができず不利益をこうむった。さらに、府庁職員のみによる原則年一回の実地指導だけでは、大阪府内六十の病院を対象ということで詳細な情報の収集体制となっていなかったこと。その他二項目を含めて五項目の問題が挙げられているわけです。
 こういう調査報告書を見せていただいても、今の御答弁等々も、少し人員もふやしていただけたらというふうに思うわけですけれども、これも含めて厚生省のお考えを御答弁いただきたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 大阪府が指摘いたしました五項目につきましてでございます。
 まず、患者の処遇について繰り返し行ったけれども、法律上罰則規定がなくて効果が疑われたということから改善命令も発しなかった、こういうことでございました。
 確かに、現行制度におきましては改善命令に罰則がないということから、いわば確信犯的な悪質な病院ということになりますと、仮に発動しても必ずしも実効性が上がらないということになりかねないわけであります。今回の改正案では、改善命令に従わない場合には、最終的な処分としては入院医療の制限命令を創設し、さらに罰則も創設するということで、実際上の効果を上げることができる仕組みへと変えることといたしております。
 それから二番目に、改善指導を繰り返しているときに公表しなかった、そのことでいろんな情報が手に入れられなかったということが指摘されております。改善命令そのものにつきましては現在でも公表するという取り扱いをしておりますが、今回の大和川事件を踏まえまして、重大な違反があった場合には速やかに改善命令を行って処分するということで都道府県を指導しているところでございます。
 また、本庁職員の苦情対応に限界がある、こういう御指摘がありました。確かに、本庁の職員の皆さん方は必ずしも専門性にたけていらっしゃるというわけでもないわけであります。一つには、今回の改正案で精神医療審査会の事務局を精神保健福祉センターに行わせることになっておりますが、そういうふうになれば、そこには専門性の高い職員がいるということで、こういった職務に携われるようになるんじゃないかということを期待いたしております。
 また、年一回の実地指導では限界があるということでありますが、平成十年三月の厚生省関係部局長通知におきまして、法律上適正を欠く等の疑いのある精神病院については、数度にわたる実地指導を行うよう指導したところでございます。
 また、所管課との連携、特に医療法所管課との連携等についても御指摘がございました。これにつきましても、医療監視を行う際、あわせて実地指導を行うように十分な連携を図るよう指導をしたところでございます。
 今回の大阪における御意見も踏まえながら、人権に配慮した観点から、この法の運用に引き続き努めていきたいと考えております。
西川きよし君 この問題については、大阪府が取り組んだ改正点として、例えば病院に対して改善指導を繰り返しても効果が見られない場合は速やかに改善命令を行い、その事実を公表する。また、入院患者さん等から苦情等があった場合、府庁職員のみならず地域の保健所の職員が現場に駆けつける体制を構築する、こういう改正を行い、実地指導体制の強化を図るとしております。
 さらに、国に対する要望、こちらも読み上げさせていただきます。
 (1) 精神医療審査会は、現在三つの会議体で運営しているが、この体制の強化のための委員定数の増、及び委員資格の見直しを図ること。
 (2) 精神病院管理者は、病院における精神医療の総括責任者であることから、精神保健指定医の資格取得の義務化を図ること。
 (3) 入院患者の人権の確保のため、処遇(特に、任意入院患者に対する。)基準について、具体的に明示すること。
 (4) 改善命令を担保する罰則規定を法制化すること。
こういうふうに書かれておるわけですけれども、今回の改正案でこうした点もかなり反映されているとは思うわけですけれども、この項目について厚生省のお考えをお聞かせください。
○説明員(今田寛睦君) 要望事項を大阪府からいただいたわけでありますけれども、その第一の、精神医療審査会の体制強化のために定員数の増等について見直しをしてほしいという御指摘がございました。
 今回の改正によりまして委員数の上限規定を撤廃することになりますので、地方の実情に応じた委員数にすることができるという点では患者さんの人権の確保に有効に機能し得るのではないかと思っております。
 それから二番目に、精神病院の管理者が総括的主任者なんだから、精神保健指定医の資格を全員が取るべきだ、こういう御指摘もございました。ただ、総合病院なんかの場合には管理者が必ずしも精神科医ではないという場合もありますし、一律に対応することは困難だと思います。
 ただ、今回の改正におきまして、精神病院の中で指定医の処遇確保のための努力義務を規定することになりました。これによりまして、管理者と精神保健指定医が協力して病院内での処遇の確保を図る、こういった対応が可能になるのではないかと思います。
 三点目の、改善命令をしても担保する罰則規定がないので法制化してほしいという点につきましては、先ほども御説明申し上げましたけれども、改善命令に従わなかった場合には入院医療制限命令を創設する、あるいは罰則という担保をつけるというふうな対応をとることといたしております。
西川きよし君 今回のこの反省点の中でも、改善命令は罰則規定がなく効果が疑われたので発しなかったと。
 今回、三十八条の七第三項の運用については具体的にどういったケースが想像されるのか、もう一度改めてここでお伺いしておきたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 新しく創設いたします法三十八条の七第三項に基づきます入院医療の制限命令でございますけれども、これは同条第一項及び第二項に規定いたします改善命令それから退院命令がございます。これらに従わないような悪質な精神病院について、精神障害者に対する入院医療の制限を命ずることができる、こういう内容でございます。
 このような命令の対象となります具体的なケースということになりますと、まず改善計画を作成させるわけでありますが、改善計画を作成しない、それから作成した改善計画を履行しない、それから繰り返し改善命令をしても何らそれに従わない病院といったところを想定いたしております。
西川きよし君 次に、もう時間がございませんので御答弁いただけないかもわかりませんけれども、この精神科救急医療体制、大和川病院の調査で判明した点ですけれども、これは平成三年十二月より開始したということでございますけれども、五〇%近くの入院患者が他府県を含む警察、消防、福祉機関からの依頼によって入院した。一部ではあるが薬物の使用などによる特別な配慮、そして民間二十八病院の当番制で一日六床確保、府内全体で年間約千四百人ぐらいの方が来られる、平成八年度でありますけれども、そういう取り扱いをしていた。当番病院の中には、満床であるから、指定医でないからというような事由で断るというようなことが多々あるそうです。
 そして、こういうことも指摘されております。「大和川病院問題に関する日本精神病院協会提言」ですけれども、
 病院の医療や看護の質が一般水準よりたとえ低くあっても、行政の無理を聞いてくれる病院ということで、行政も安易にその実態を見逃したのではなかろうか、これが大和川病院のような事件が発生する背景となったと考えられる。また、行政も、公立病院が断り、民間病院も受け入れ困難な救急患者及び多様なニーズを持って入院を求めて来る患者などをいつでも引き受けてくれる民間病院を利用して来たともいえる。
  さらに民間病院は、近年の開放医療を進める一方、精神科救急医療にも取り組んでいるものの、患者の受け入れには看護体制、隔離室数などの制約もあり、その結果、一部の病院に救急患者等が集中し、いびつな構造を作ってしまうこととなった。
というようなことも言われております。
 これについて、もう一分しかありませんが、大臣、最後に一言いただいて終わりたいと思います。
国務大臣宮下創平君) 今、大和川病院事件についてるる詳細な項目にわたりまして御質問をいただきました。整理されておりまして、私も大変参考にさせていただきました。
 今後、こうした経験を踏まえて、今指摘されたような救急医療体制の問題を含めまして、また病院の管理体制のあり方を含めて本当に実効性のある、この精神保健福祉法の精神にのっとった病院管理を行っていくように最大限努力をしてまいります。
堂本暁子君 先ほど、千葉委員が弁護士として十年前に精神衛生法の改正にかかわったとおっしゃいましたけれども、私もジャーナリストとしてかかわりまして、そして朝日委員は当時精神科医でいらっしゃいまして、今は小林健康政策局長ですけれども当時は小林精神保健課長ですよね。宇都宮病院の後の時期に、それぞれドクターであったり法律家でいらしたり、それから私はジャーナリストでしたし、課長は行政の方の立場で何とか日本の精神医療がよくなるようにという思いで、それぞれ違う立場で法改正にかかわったことを本当にきのうのことのように今思い出しておりました。当時、小林課長も本当に大変な御努力と苦労をなさったのも目の当たりに見ておりましたし、私もジュネーブ人権委員会まで出かけたり、日夜、朝日先生と会っていろいろ相談をしたりしたものです。
 その当時、十年たってどうなるかということをどう考えていたかなと私は今改めて思っていたんですが、精神病院の中で、二十年、三十年とおられた方たちに出会って大変驚きまして、多分十年たったら半分ぐらいは地域に住んでいるようなことになるんじゃないかと思ったりもしたような気がいたします。とにかく、日本の精神病院の病床がどんどんがらがらにならなきゃいけないんじゃないかというのが実感で、当時ニューヨークへ参りましたときに、ニューヨークの州立病院はもう既にゴーストタウンみたいになって、ほとんどの方が地域での復帰をしていましたし、ドクターたちも町の中の診療所に移っておられた。イタリーとかフランスでも社会復帰の地域がどんどんできていたのを思い出します。そして、日本も今それがスタートなのだとあの当時思いました。
 それからちょうど十年たちまして、きょう、やはり今、今田部長は病床が多いから減らないのかというふうにおっしゃったんですが、もしかしたら現実は本当にそうなのかと私も改めて思いまして、当時の数字として三十二万人の入院患者がいらした。先ほども閉鎖棟、開放病棟は一体どうなっているかというような御質問も出ていましたけれども、それが今はもう三十三万人と、半減するどころか逆にふえている。
 確かに、痴呆老人の病床もあるわけですからその事情がわからないではないですけれども、十年前に、朝日先生はどう思っていらっしゃるか、千葉先生はどう思っていらっしゃるか、それから課長はどう思っているか私はわかりませんけれども、少なくとも月に一度も二度も出会っては議論をし、そして話をしていたそれぞれが、十年たっても相変わらず三十万床の入院患者があると当時想像したのかということなんですね。何か内容的には、人権擁護の面では進んだような気もいたしますけれども、大変足踏みをしてしまっているのはこの病院の中の人数じゃないかと思います。
 それで、外国では、病院を開放するというケネディ大統領の声明があって、アメリカは二万人ぐらいの大きい州立病院がどんどんあいていったわけです。そういったドラスチックな変化をしたアメリカに比べると、十年しこしことした厚生省の御努力も存じてはおりますけれども、やはりドラスチックな変わり方はしていないんじゃないかというような気持ちでおります。
 質問に入らせていただきますけれども、そういった観点から、私は社会へ復帰することの手だてが足りないんじゃないかというふうに思いますので、きょうはそこに焦点を当てて、そして現場で今、当時出会った保健婦さんだとかケースワーカーさんだとかお医者さんだとか、いろんな方にも聞いてみましたけれども、十年前と同じような問題を相変わらず抱えているんだなというふうに思ったりもいたしました。
 例えば、今回の改正で、精神障害者の社会復帰の促進と、それから自立の促進のための精神障害者住宅支援事業というものも法改正の中に入れておられます。その中でスタッフのトレーニング、これは私はとても大事だと思いますけれども、精神を病む、あるいは疲れている方たちに関してどのように接するべきかということの知識、あるいは特別視しない、偏見を持たないというようなことでスタッフの養成がなされているのか、まずその点から伺いたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 精神障害者に対しまして社会復帰施策あるいは地域福祉施策を進めるということに際しましては、それに携わる専門性のある人材の育成確保というものは不可欠であろうかと思います。
 精神障害に関します専門的知識を持って、精神障害者の社会復帰に向けて相談に応じるという位置づけで精神保健福祉士がございます。国家資格化を行いまして、先般合格発表をさせていただいたところでもございます。この精神保健福祉士の養成ということが、まさに精神障害者の社会復帰に携わります方々全体の質の向上につながるのではないか、このように思っております。例えば、いわゆる精神科ソーシャルワーカーの方でありますとか、あるいは保健婦の方々、あるいは社会復帰施設の指導員の方々に、この資格を持っている方々が非常にいい影響を与えていただけるのではないか、このように思っております。
 また、市町村におきまして、ホームヘルプ事業など、在宅福祉について市町村にお願いする事業がございます。これは、これまで必ずしも市町村で十分に対応できるそういうノウハウをお持ちでないわけでありますが、それを十四年から実施しようとしておりますけれども、今年度から訪問介護試行的事業というものを行いまして、つまりホームヘルプを先取りした形で試行していくということによりまして、精神障害者を訪問するホームヘルパーに対して講習をしていこうと。この場合にも当然保健所等のお力をおかりすることになるわけでございます。
 また、法定化することにいたしました市町村による在宅福祉サービスの施行までの間に、これらにかかわります職員に対しまして研修を行うことといたしております。
 このように本当に地域に密着した社会復帰の対策を進めるということは、また逆に言えば、地域に密着した人たちにしっかりとそのノウハウを身につけていただくということにつながるのだと思います。そういう意味で、今後、この十四年の市町村への取り組みに間に合うように精いっぱいの努力をしていきたいと考えております。
堂本暁子君 先日、介護保険についても質問させていただきましたけれども、市町村におりるということで、相当財政的に市町村が心配していると申しますか、今まで国でやっていたことが市町村で果たしてできるのかというようなこともございます。そのことが一つ。
 それからもう一つは、例えば精神障害者のケアマネジャーの制度をつくったらどうかというようなことはいかがでしょうか。
 また、もう一つぜひお願いし、それからお答えいただきたいと思いますことは、実際そういう精神障害の方と一緒に働くということは大変に時間が、四六時中と言ってもいいと思います、夜中に電話がかかってきたりもするわけですから。そういった働く方の身分や待遇の保障がどれだけできているのか。よほど保障がないと、専門的な知識を持ったり、それからトレーニングされたスタッフがなかなか集まらない。
 現場の声はもう本当にへとへとで、むしろサポートが欲しいのは働く側ですというふうな声が現場から出て、これはいつものことなんですが、相変わらずそういう声が強いです。本当に献身的に、ある程度自分の職業の領域を超えてお世話している保健婦さんやサポートの方や看護婦さんが多いと思いますので、その辺を厚くサポートしていただきたいということが三つ目の質問です。
 その次に伺いたいのは、退院した方たちが行く共同作業所とか福祉工場といった社会福祉施設への予算を十分にとっていただきたいということです。そして、特に福祉工場のハードルをできるだけ低くしていただいて、地域にたくさんできるようなことができないか、そしてそのコーディネートを地域生活支援センターできちんと実施することができないかというような、以上の点について御答弁いただきたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) まず初めに、精神障害者のケアマネジメント制度は検討できないのか、こういう御指摘でございます。精神障害者につきましては、対人関係がなかなかとりにくいというようなこともあって、本人のニーズに応じた支援がある意味では得にくい面もある、あるいはさまざまなサービスを有効に活用することに限界があるというような御意見もあるわけであります。
 一方で、医療的なケアから地域的ケアへというような流れの中で、地域ケアを分散化してやろう、あるいはリハビリテーション機能を多様化してやろうというような流れの中で、地域において複合的なニーズを抱えた精神障害者に対して在宅福祉サービスを中心としたケアマネジメントを行う体制というものは、やっぱり必要性が高まってきているのではないかというふうに思います。
 これらのことから、精神障害者のニーズを十分に把握しながら適切なサービスの利用につなげるということで、精神障害者ケアマネジメントに取り組むということで、今試行的事業に入っておるところでございます。これらを踏まえまして、御指摘の精神障害者に対するケアマネジメントの理想的な、あるいは実効あるあり方というものについて少し検討してみたい、このように考えております。
 それから、順序が逆になるかもしれませんが、社会復帰施設の整備を促進するということで、福祉ホームあるいは福祉工場で本当によく働いていらっしゃる方々の処遇を改善するという御指摘でございます。
 障害者の福祉ホームでありますとか福祉工場、本当に量も十分でありませんけれども、そういう意味でもなお一層大事な社会復帰のための施策というふうに思っております。これは、障害者プランを踏まえまして計画的な整備を進めているところでありますけれども、これらの整備については、従来から整備費あるいは運営費等で国庫補助制度を設けております。
 これらの運営費に対する補助でございますが、職員の人件費につきましては、国家公務員の勧告等を基礎に改定いたしておりまして、職員の処遇の改善には極力努めてきているところでもございます。これらの施設の運営が適正に行われるようにこれからも努力をしていきたいと思っております。
 それから、社会福祉法人になれない小規模な民間事業者がいろいろ努力をしていただいている。こんなところに助成というか手を差し伸べられないのか、こういう御指摘かと思います。
 NPOでありますとかボランティア団体、あるいは家族会なんかを中心として、地域に本当に根差した地域福祉の充実に貢献していらっしゃる、このように思うわけであります。
 特に、小規模作業所につきましては、精神障害者の自立と社会参加という面から見てもかなり大きな役割を担っていらっしゃるのではないかとも思います。こういうことから、家族会等を中心にいたしまして地域に根差したそういう自主的取り組みをされている作業所に対して、運営費助成をこれまでも実施してきているところでございます。
 この助成事業は昭和六十二年から実施しておりますけれども、補助先の計画的な拡大でありますとか、あるいは助成費の拡充を図ってまいりましたし、また地方交付税につきまして、都道府県分について交付税措置が講じられておりますし、平成十一年からは新たに市町村分についても交付税措置がされるというふうな予定となっております。
堂本暁子君 それで、いろいろな施策はあるんですが、諸外国と比べて一番日本での欠点というのはやはり縦割りだと思います。厚生省の中でもいろいろ縦割りになっている。ましてや、それがまた別の省庁の中だとさらに縦割りになっている。なかなかそこに、人間の方は一人きりなんですが、AさんならAさんという一人の人であるにもかかわらず、ばらばら事件が起こってしまって統一した一つの流れにならない。
 アメリカなんかのケースで見ますと本当に一貫性がある。例えば就労のノーマライゼーションというようなことでも、医療から福祉、教育訓練、雇用といった一つの流れがあるわけです。日本は、医療と社会復帰、地域というようにみんなばらばらになっている。どうしてもここのところを、一貫性のあるものをぜひ実行していただいて、モデルをつくっていただいて、そしてそのモデルをまた全国に広げるというようなことをやっていただけたらいいんじゃないかというふうに思っています。
 きょうは労働省にもおいでいただきましたけれども、その辺のところで省の壁を越えて、やはり精神障害者の社会参加、特に雇用の促進ということが必要だと思います。結局、退院できないのは、地域で住むだけではなくて、働く場がないということのためかと思います。
 それで、労働省が管轄していらっしゃる雇用支援センターとそれから地域生活支援センター、この機能を、統合とか相互乗り入れとかして連携的な体制をつくることがとても大事だろうというふうに思っています。ことしの四月からテスト的に全国十カ所でやっていらっしゃるそうですけれども、これをぜひ推進していただきたいということで、厚生省、労働省両方に御答弁いただきたいと思います。
○政府委員(渡邊信君) 労働省におきましても障害者の雇用対策につきましては古くから取り組んでいるわけでありますが、知的障害者それから精神障害者については、大変まだまだ対策がおくれている分野だというふうに思っております。特に知的障害の方につきましては、法律改正によりまして、雇用率の算定基礎にも知的障害者を加えるということで、昨年から雇用率も一・六から一・八%へというふうに上げてまいりましたけれども、精神障害者についてはまだまだこれからというのが実情でございます。
 特に精神障害者の方につきましては、雇用を進める上でも、生活面での援助ということとあわせてやりませんとなかなかこれは進まないというような状況にあるかと思います。今、委員御指摘のように、平成十一年度からは厚生省、労働省共同いたしまして、生活支援あるいは就業支援を両方一体になって全国十カ所ぐらいで試みにこれを始めてみようというようなことで取り組んでおりますので、ぜひこれをうまく成功させまして、本格的な施行ということに向けて進んでいきたいというふうに思っております。
○説明員(今田寛睦君) 先ほど労働省の方から御説明があったとおりでございますが、そういった視点から、この障害者の就業・生活支援センターの設置につきまして、厚生省としても大いにこれを活用できるように協力して推進を図っていきたいと考えております。
堂本暁子君 労働省にさらにお願いしたいんですけれども、雇用のあっせんというところまではなさる。しかし、その後のフォローアップですね、やはり職業を続けていくということがとても大事だと思うんです。そういうフォローアップが、例えば、とかく外国の話になって恐縮なんですが、ニューヨークの場合でも、最初は二時間、それから半日というような仕事について、そのときに、半分ボランティアですけれども、ニューヨーク市からある程度のお金もアルバイトにしては出ているんですが、必ず一人のメンバーの方をずっとフォローして、自立してフルタイムで働けるまで、二年であったり三年であったり、もっと短い場合もあるんですが、フォローしている。
 日本でもやっぱり、単にあっせんだけではなくて、それから後ずっと無事に仕事を続けられるような、そういうフォローアップが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(渡邊信君) まだまだ数が少ないのでございますけれども、障害者雇用支援センターを全国で現在二十二カ所設置しておりまして、ここにおきましてはボランティアの方も登録いたしまして、精神障害者の方、知的障害者の方がうまく就職できまして、そのアフターケアといいますか、職場に定着というふうなことでこのボランティアの方の力もかりながら、例えば通勤を一緒に行くとか、あるいはお昼休みには電話をかけて様子を聞いてみるとか、そういったことの取り組みはしておりますが、まだまだ大変取り組みも少ない、数も少ないということでございますから、こういったことはさらに充実して、本当に精神障害者の方も職場にきちんと定着できるというふうなサポートをしていくことが必要じゃないかというふうに考えております。
堂本暁子君 ぜひともよろしくそこをお願いしたいと思うんです。特に、長いこと入院した後ですと、あっせんだけではとても仕事がなかなか続かないというケースも多いと思いますので、実際にちゃんと職業の場で、また時には休まなきゃならないようなときも出てきますけれども、それでもまた復帰できるというようなところまで丁寧なフォローをぜひ、これは両省でしょうけれども、労働、厚生両省でやっていただきたいというお願いをしておきます。
 あと、復帰後のトレーニング、それからケアを行う、こういったところについてもぜひ、先ほどNPO、NGOのお話がありましたけれども、民間の参与と申しますか、それも積極的に活用していただきたいというふうに思っています。
 次に、一番困るのが住宅の問題なんです。住宅の問題について伺いたいと思いますけれども、グループホームが全国で六百カ所あるというふうに聞いています。しかし、グループホームというのは働いていないと入っていてはいけない。ところが、精神障害の方は、働き続けたり、それからぐあいが悪くなったりということがありますので、やはりそこの住宅をどういうふうにするかということが非常に問題ではないかということを思います。
 ですから、働いている方が入っていて、できるだけそこに安定感が持てるような住宅を確保できるようなことが大事かと思いますけれども、これは厚生省に伺います。
○説明員(今田寛睦君) グループホームにつきましては、その目的が、一定程度の自活能力があって、就労している者に対しての日常生活上の援助を行う事業、このように位置づけているわけでございます。したがいまして、そういう位置づけで見ますと、このグループホームにおける就労要件を外したらどうかということにつきましては、やはりグループホームの運営全体の支障も考えられることから、適切ではないのではないかと思っております。
堂本暁子君 今おっしゃったのは、働いていないとグループホームには入れないということですか。
○説明員(今田寛睦君) 就労している者に対する日常生活上の援助を行うという性格で位置づけているということでございます。
堂本暁子君 普通の人でも、別に障害者とか病気とかでなくても例えば一年ぐらい仕事を休まなきゃならないようなときがあって、そういうときに、さあ引っ越しなさいと言われても、精神障害の方は本当に困ると思います。家族にも受け入れてもらえないということもいっぱいあるし、経済的にも大変貧しい方が多いし、そういった場合に、はい、あなたは仕事に行かなくなったからどこかへ引っ越しなさいと言われても、権利金も、それから事によったら障害者であるがゆえに借りるお部屋とかアパートすらもないというように、路頭に迷うと思うんです。
 そういった意味では、それが条件のグループホームということで、日本の法律というのは非常に厳密に運用なさるんですが、人間の方は、特に精神の問題を抱えている方は、そんな厳密に運用されたら大変に困ってしまう局面が、仕事の場面でもそれから住居の場面でも出てきます。その辺を今後工夫していただきたいと思います。
 次の質問です。今度は援護寮の問題ですが、とかくこういった援護寮も、ほとんどが医療機関に併設されています。でも、自立するためには、やはりドクターからの自立というのもあるんです。病院からの解放はイコール、ドクターからの解放。国立の医療センターで、武蔵野でアパートに住んでいた方が、いつでもおふろに入りに来なさい、御飯を食べに来なさいと病院の方で開放していましたけれども、いらっしゃらないわけです。どうして行かないんだと言ったら、病院の門の中に入るのが嫌だと言って、缶詰の缶ばかりいっぱい積んであったのを今でも覚えています。
 医療機関に併設されているということは、ある意味でいえば完全にそこから解放されていないという場合があって、そのことを気にしない方もあるかもしれません、むしろ病院に近い方がいいと思う方もあるかもしれませんが、やはり病院でのつらい思い出を持っている方もあるわけです。そういった人はできれば病院の外で自立したい。そういった場合に、市町村あるいは民間で援護寮がつくれるようなハードルの低さというのも必要なんじゃないか。あるいは予算も必要である。
 介護保険の場合の高齢者に対しては対応できるけれども、それ以外の障害者についてはなかなかできないというような状況に今あります。グループホームの方がそういった限定的である以上は多様な選択ができるような施策が必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 先ほどの就労の要件でございますが、この就労というのは、福祉的就労ということもそれで列記をしておりますので、例えば、仕事はやめたけれども福祉工場へ行くとかあるいは授産施設に通うといった場合には、当然それも就労の一形態という理解で、運用上の弾力化を図っていないわけではございません。
 それから、いろんな福祉サービスを行ってくれる施設が病院のそばにあるということで、ある面で地域性を失ってしまうんじゃないかという御意見があるのも十分私ども承知をいたしております。身体障害でありますとか知的障害も同じようにそういう考え方があるわけです。ただ、精神障害の場合は、治療を継続するというまた別の負担といえばいいんでしょうか、そういう面もあって、医療機関との連携をどうとるかという問題も一方で視野に置きながら物を考えていかなきゃならないと思います。
 基本的には、やはりそれぞれの病院から離れた地域、地域に一番近いところでそういった福祉サービスが整備できるような、そういう意味も含めて今回、市町村にそういう在宅福祉の主体を置いたという意図もございますので、その辺を踏まえて、今後も地域福祉の充実には努力をしていきたいと思います。
堂本暁子君 今度、精神障害者の対人サービスを、今おっしゃったように市町村が担うことになるわけですけれども、地域でのプランの実践とか、それからそういったものを保健所が責任を持ってやるようにしてほしいという声も地域から上がっていますが、これについてはいかがでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 精神障害の皆さん方にどういう接し方をしたらいいかとか、あるいはどういう窓口で対応すればいいかという意味では、本当に今まで必ずしも十分な経験を踏んでいらっしゃらない市町村の方々あるいはホームヘルパーの方々がいらっしゃる。そういった方々に対する後押しといいますかノウハウの提供、こういったことについては、やはり保健所が一番そのノウハウを持っていると思います。したがって、保健所が地域の精神障害者の社会復帰のために、あるいは地域福祉のためにこれまで以上に活躍していただかなければならないという意味においては、先生御指摘のとおりだと思います。
 一方で、地域生活支援センターというものを医療圏の中に二つ程度整備しようということで障害者プランで計画を立てておりますけれども、そこもまた同じように、保健所あるいは精神保健福祉センターあるいは市町村と一緒になっていろんな相談を受けていこうという仕組みをつくることといたしております。
 したがって、保健所とどのような連携をとるかという具体的な点につきましては、まだ成案があるわけではございませんが、何はともあれ、保健所のお力をかりるということがなければこれから地域で精神障害者を支えるということにはならないんだ、そういう考え方でこれからも都道府県の方にも御指導申し上げたいというふうに思います。
堂本暁子君 時間になりましたので終わらせていただきますが、最後に大臣に、病院の中も大事なんですが、十年たってみまして、頭で申し上げたように、むしろ病院の外、地域でもって本当に精神障害の方が豊かに自分らしく生きられない限り、私は幸福にならないと思います。
 呉秀三さんという精神科医が、昔、初めて精神科を日本の大学につくったときに、この病を得たる不幸のほかにこの国に生まれたるの不幸と言ったその言葉は、私は今も変わっていないと思うんです。日本のバロメーターというのは、精神障害という言葉も私は余り好きじゃございませんが、そういったいろんな悩みや病や疲れを持った方たちがいかに幸福にそれぞれの地域で生きられるかということが、この国が本当の意味で世界のすぐれた国と評価されるか否かと。それは仕事の面でも同じだというふうに思っております。
 最後に大臣のその点についての御所見を伺って、終わらせていただきます。
国務大臣宮下創平君) 委員からいろいろこの施策のあり方について御指摘がありました。
 特に、縦割りはやめて総合化したらどうかとかいう御指摘もございましたが、私も大体そんな感じを持っております。つまり、施策がそれぞれ単発的でありますとなかなか効果は発揮できませんので、一例を申しますと、精神障害、それから身体障害あるいは知的障害、こういうものを総合化して対応するということも必要です。
 また、受け皿の方でも、官だけが主導してやるということではないはずなので、これは御指摘のとおりでありまして、私ども、民間の力、ボランティアの力等もかりて全国民的な基盤を広げていくことが重要だと考えております。それは例えば、社会福祉法人も今厳格な要件のもとでしかできませんが、もっと簡易な方式で、これは介護とも関係いたしますけれども、受け皿を容易につくれるようにして、しかも、厳格な福祉法人には助成が行くけれどもそれ以下は行かないという区別があるわけですから、そういう助成措置を前提とする限り、もう少し簡易な方法で、ボランタリーの人たちも参加してそういう活動を総合的にできるような多様化した受け皿が必要だと思います。
 今御議論をいただいておりますように、社会復帰施設として、あるいは地域対策として、いろいろの法定化された施設を私ども今度の改革でも追加をいたしておりますけれども、この運用については、今申しましたような多様な受け皿としてこれを利用していきませんと、箇所数を限定して、そしてその箇所数の配分というようなことでありますと、私もいささか驚いているんですが、例えば生活訓練施設だったら三百カ所とか、授産施設だったら四百カ所とか、福祉ホームだと三百カ所、福祉工場に至っては五十九カ所ですか、というようなことでありますと、これは全国的に配置を見た場合に極めて微々たる存在になります。
 ですから、こういう入れ物がつくられた以上、もうちょっと受け皿を多様化してそれを活用できるような基盤をつくり、国も、税金を使う話でありますから有効に使わなければなりませんけれども、層を厚くしていくということが委員の指摘されたような問題の解決につながる、こう私は思っております。
堂本暁子君 どうもありがとうございました。
○委員長(尾辻秀久君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。