精神医療に関する条文・審議(その94)

前回(id:kokekokko:20051108)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。

第145回衆議院 厚生委員会会議録第10号(平成11年5月19日)
【前回のつづき】
○木村委員長 どうもありがとうございました。
 次に、荒井参考人にお願いいたします。
○荒井参考人 全国精神障害者家族会連合会の常務理事・事務局長の荒井でございます。
 まず、六十二年の法改正以来、何と法改正四回ということで、積極的に精神障害者の社会復帰、それから医療の改善のために国会で取り組んでいただいていることに非常に感謝を申し上げます。感激でございます。非常に困難があるから何回もやるというのも重々感じております。そういう意味では、これからもぜひ現実に合わせた形で改善していっていただきたいと思います。
 全家連は昭和四十二年に、ライシャワー事件で法務当局、警察当局が精神障害者を管理しようというような法改正から、当事者の声という形で生まれました。その後、現在全国で、精神病院や保健所、地域の作業所等に千四百の家族会があります。約十三万人の会員が活動しております。
 私が飛び込んだ十七年前、昭和五十八年に、ほとんどの人の名前は出せませんでした。顔も出せませんでした。それほど役員の方々もまだまだ偏見の壁にさらされていたということであります。それから、我々はただ要求するだけじゃなくて、実践をして社会を啓発していこうということで、作業所づくりとかさまざまなことで外に出ていくような形をとりました。そんな形で今の全家連運動があります。
 このたび、法改正について私どもはお配りしたレジュメのように意見を出させていただきました。ちょうど一年前にお配りした資料は一冊の本になっておりますけれども、我々が組織的に討論してまとめたものでございます。そのものを酌み取っていただきまして今回の法改正ができたということを非常に評価したいと思います。
 それで意見書の中の、治療に結びつきにくい精神障害者に対して受診する機会を保障してください、保護者制度を廃止するかその義務を緩和してくださいという問題でございます。
 資料の後ろの方に、これはちょっと恥ずかしいですね、恥ずかしいというのは、いつもいつも出して恥ずかしいということなんですけれども、十二年前に、新潟出身の本間長吾という私どもの元会長の訴えが載っております。じいさん、ばあさんが息子をよく面倒を見ているんだ、おれの死んだ後はどうしよう、これが一番心配ですと。
 彼は、この法案が終わってからすぐ、夏に亡くなってしまいました。
 その中で保護者制度を訴えております。高齢の親に、医療にかかる義務、自傷他害の防止義務、財産管理をする義務、医療に協力する義務、それは親として当然やりますよ、それを何で法律で強制するのですか、罰則を与えるのですかと訴えております。
 これは朝日の全国版で非常にインパクトがありましたけれども、我々としては運動としては発言をしませんでした。親としての責任を自己放棄する、そういうのは忍びないということで、十二年前は法改正の要求には入れられませんでした。
 次の資料は本人の訴えでございます。北海道で積極的に活動している横式さんの訴えで、保護義務者制度があるから、本人が自分で医療機関を決められるのに、全部の二百十七万人の精神障害者が何にもできないのですか、権利がありますよというような形で訴えております。
 そういう意味で、保護者制度に今回手をつけていただいたということは非常に評価できると思います。
 しかし、全廃ということではありません。これは先生方御存じのように、どこの国にもこういう基準がない、ほかの障害者のものにもないというようなことがありまして、全廃に向けてこれからも諸制度の整備ということを含めて御尽力いただきたいと思います。
 もう一つ、治療に対して我々が一番困っているのは、やはり入院のときに子供たちが拒否をするという壮絶なる現場がございます。そのときに、パトカーが来なければ搬送できない、パトカーが来るということはそれだけの事故を起こすわけですので、そういうやむにやまれぬ状態の中で入院させるときもあります。そういうことを含めて、当事者の在宅の医療にかかわる苦労について、ぜひ行政機関も含めて責任を持って搬送なり入院に結びつけてほしいというのが親の願いでございます。そのことに関して、今回積極的にされたということを評価したいと思います。
 たくさんありますけれども、時間の関係があるようですので……。
 市町村の役割強化と訪問介護事業を実現してください。
 我々は、身近な市町村からサービスを受けて、地域で当たり前の生活をしたいというのが願いです。今回の法改正の勇断は評価したいと思います。しかし、精神についてはまだまだ市町村は知識や技術がありません。その辺の指導と予算づけはよろしくお願いいたします。
 精神病院における人権侵害の防止策を講じてください。
 さまざまな事件を起こす、それがマスコミに出るということは非常に悲しい現実でございます。患者や家族もそういうところだったら入院させられない、入院しにくいということで、本当にどうしようもない状況になってから入院を考えます。そういう意味では、本当に明るい、オープンな、開放された精神病院の環境をつくっていただきたいと思います。
 長期入院患者の退院促進のための制度を図ってください。
 病院の中に新しい病棟変換という施設をつくってそこに移す、福祉施設と称した施設をつくって移す、これは反対でございます。我々もどんな重い障害者でも、地域で生活をし、地域で暮らしたいという願いはございます。そういう意味で、ヨーロッパ、アメリカのように民間団体を活用して、アパートや治療アパートを確保して、ケアも含めて民間活力でこういう問題をクリアする、先進諸国のものも含めてこういうものをぜひ考えていただきたい。
 適切な医療を受ける権利を明文化してください。
 これは書いてあるとおりでございます。精神病院管理者は何々することができるという表現ではなくて、資料にも書いてありますように、精神障害者はこういうことでこういう医療を受けることができる、治療を受けることができると、主語を精神障害者にしていただきたい。これは、先ほど話題になった、いわゆる伝染病予防法の中でも非常に話題になった主語の問題でございます。
 七番は小規模作業所の運営について、これの安定のために法内事業化してくださいということであります。
 時間の問題で残念ですけれども、ちょっと資料の四を見ていただきたいと思います。
 これが家族会を中心に歴史的に取り組んでいる作業所の実態でございます。一番上が国庫補助金です。百十万円。平成十一年は八百十カ所がいただいております。二番目の黒棒が、これが全国の精神障害者の作業所の数です。六十二年は二百十カ所だったのが、何と毎年百カ所から百十カ所ぐらいふえて、千四百四十七カ所になっております。国庫補助は八百十ですから、約半分でございます。
 そんな中で、右の表を見ていただきますと、平成十年の記録でございますけれども、国庫補助をいただいている七百四十八の作業所の中で、総予算が六十一億、一カ所が八百十万円、通っている人が一万三千九百九人でございます。
 何を言いたいかといいますと、精神障害者の地域ケアでアクティブな活動をしている、月曜日から金曜日までやっているわけですから最大の勢力です、これが法外施設として大体八百万ぐらいの補助金で二十人ぐらいの入所生をケアしているということに関して、ぜひ行政、政府の光を当てていただきたい。これは家族会が今みずから身銭を切ってやっている制度でございます。法として位置づける、できたものの運営費を予算措置をするということはぜひよろしくお願いしたいと思います。
 最後に、当事者団体の助成について。
 在宅・地域ケア時代に一番重要なのは、当事者、家族、本人、そしてそれを支える人たち、それを行政の一つのパワーとしてどう活用していくか、社会資源として活用していくかでございます。今回の法改正ではこれは全然取り上げられませんでしたけれども、二十一世紀に向けて、当事者を支援し、それが行政サービスのパワーとしても役割を持つということで、団体や障害者団体の支援をよろしくお願いしたいと思います。我々も実践と運動を頑張っておりますので、よろしく御対策のほどをお願いいたします。(拍手)
○木村委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
○木村委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。衛藤晟一君。
○衛藤(晟)委員 どうも皆様方ありがとうございました。
 私どもも、いろいろな御指摘をいただく中で、精神保健福祉法に関しては、六十二年、平成五年、七年、またことし十一年というぐあいに改正をしながら一生懸命努力をしてきたところでもございます。特に平成七年の四年前の改正に、どうしても福祉のサイドに光がちゃんと入らないことにはこれ以上進まないだろうということで、改正に皆さんと一緒に努力をさせていただきました。
 一番最初に結論を申し上げますが、今回全面改正をしたかったというのが正直なところなんです。しかし、幾つか御指摘をいただいたように相当残りました。どうしても間に合わなかったというのが実情でございます。そういう中で、ちょうど今西島先生が、官がちゃんとした役割を果たさなかったのではないのかという言葉を最後に一言言われて御意見の御開陳を終わりました。どういう気持ちなんでしょうか、まず、これを西島先生にお願いいたします。
    〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
○西島参考人 昭和五十九年に宇都宮病院の事件が起こりまして、さまざまな問題がそこで議論をされたわけでございます。そのときに、例えば社会復帰の問題等も含めまして、社会復帰施設をつくることができるということから、つくらなければならないというふうにしますと、もっと早く地域ケアの推進ができてきたのではないかというふうに思っております。
 それからもう一つの問題は、やはり国公立の病院が非常に対応困難な患者さんたちをきちんと見てこなかったというところがございます。そうしますと、見てくれる病院は行政にとりましてはある意味では非常に便利な病院であるということがありまして、となりますと、当然そこの病院に対しての行政監査とか指導というものがどうしても甘くなりがちである、そういうことが今回に来たのではないかというふうに私は考えております。
 これは当然、私も入っておりますが、日本精神病院協会も盛んに指導してきたわけでございますけれども、しかし日本精神病院協会は何の権限もございません。そういう意味で、官がやはりしっかりとしたものを持っていればこれは解決してきた問題ではないかと思います。
 特に、きょうはほとんど民間の病院の名前しか出ませんでしたが、国立犀潟病院、あれは非常に私どもでもあきれた対応をしていたわけでございますけれども、当然、それに対しましても新潟県が医療監査、それから実地指導等で入っていたはずでございますので、どうしてそれがきちんとできなかったのかな、官がしっかりしていれば私はこういうさまざまな問題は起きてこなかったのではないかというふうに思っております。
 以上でございます。
○衛藤(晟)委員 どうもありがとうございました。
 いろいろな御意見が精神病院長期入院だとかあるいは患者の人権の問題だとか保護者の問題だとかありますけれども、実はほとんど政治の問題なのでありまして、私どもはそれを官だとか民だとかに責任をなすりつけようなんという気は全く持っておりません。今、政治が果たすべき役割を果たそうと思っているわけでございます。
 今先生からお話がございましたように、例えばいわゆる触法患者をほとんど民間の病院に押しつけておる、先ほどの実態もございましたように、そのことがより閉鎖性を強くしているというような問題もあると思うんです。また、いわゆる病気の程度、種別によってちゃんとした対応ができなくなっているところがあると思うのですが、まず触法患者対策について、西島先生、それから伊藤先生はどういうお考えをお持ちか、お聞かせをいただきたいと思います。
○西島参考人 触法患者の問題に関しましては、これはとても医療だけではできない状況だろうというふうに思っております。ですから、先ほど申し上げましたように、警察庁、それから法務省も含めまして、幅広い検討をしていかなければこれはなかなか解決しない問題であろうというふうに思います。
 最初に申し上げましたように、宇都宮病院事件も、実は触法の患者さんたちがたくさん入っておられました。ですから、そういうことがまだまだ先送りにされながら来たことに問題があるのであって、私は、これを早急に御検討いただければというふうに思います。
○伊藤参考人 最初に、官と公の問題で、処遇の困難な方が官に余り入っていないんじゃないかという問題についてお話しさせていただきたいと思います。
 私どもも、平成八年度に、国立も含めまして国公立病院の実態調査を行いました。そのときに、措置入院の患者さんをどのぐらいの割合で引き受けているかということを調べましたところ、先ほど西島参考人がおっしゃいましたように、確かに、現在入院している患者さんで措置入院の患者さんの率は官の方が余り高くありませんでした。ところが、新たに発生した患者さんについてどのぐらい受けているかということを調査しましたところ、病床の数の割合が国公立の病院は非常に少ない、全体で九・六%しか国公立の病院はありませんので、それを病床占有率といいましょうかそれで換算しましてどのぐらい引き受けるか見ますと、一病床当たり平均して三・四倍、民間より多く受けている。ということで、これはまだ少ないとは思いますが、少しずつふえているという実態があります。
 それからもう一つ問題なのは、病床の地域偏在であります。このような処遇の難しい方は都会に多く発生いたします。ところが、都会には公的な病院の病床が少ないということが判明いたしました。
 私のところは十勝という人口三十六万のところですが、道立病院と国立病院があるということもありますが、民間病院の方には、もう十年ぐらいになると思いますが、ほとんど措置入院の方はお願いしておりません。全部私どもが引き受けております。ですから、例えばそういう方が多い地域に関しては、やはり国公立の病院にある程度病床がなければ新規の方はなかなか受けられないという状況があります。そして、実際に公立病院の中でも、都会にある公立病院の夜間救急とかあるいは措置の患者さんとかは、特に東京都は、何%だったでしょうか、かなりの部分を都立病院が引き受けてきている、そういう体制を組んでいるということもあります。
 次に、触法患者さんの問題ですが、まず医学的に私たち医療を提供する側から見ますと、我々としては、この触法という概念が我々のカテゴリーの中には入れられない領域ということがあります。
 私どもは、医療をいかによく提供するか、そして早くよくして退院させてあげるということが私どもの役目であります。
 例えば覚せい剤の方が私どもの病院にも入院してきます。幻覚や妄想があって、非常に急性な錯乱状態にあるときは、当然私どもの病院に入院させます。しかし、その時期が過ぎまして落ちつきますと、比較的早く落ちつくわけですが、私どもとしては、精神症状が消失あるいは軽減した段階では、それ以上入院をさせておくのは医療としては手だてがないといいましょうか、逆に人権侵害になります。
 したがって、よくなった段階では、もう既に警察の方で本人の証拠が整っていれば、退院と同時にそのまま警察に戻っていただいて、司法の裁きを受けていただく。それから、もしそういうことで、覚せい剤はやっているのだけれども、警察の方で司法的な処遇ができないようなケースについては、本人に自首を勧めるということをしております。そういう形でやらざるを得ない。また、これ以上のことは、私ども医療者としては法的にはやり過ぎというふうに私は考えております。
 実際、病気が重くて、殺人を犯すようなことで入院してきた患者さんには、よほど病気がよくならない限りなかなか退院させる勇気がないということは私ども実際にありますし、退院させても、地域でできるだけ支えていくというふうな工夫はしております。
 以上です。
○衛藤(晟)委員 そのとおりだと思っております。
 我々、今回結論を出せなかったというのは非常に残念でございまして、先ほどからお話がございましたように、これは早急に結論を出してやらなければいけない。ただ、こういうことを申すのはなんでございますが、ちょうど我々も党を挙げて成年後見制度の導入とかいろいろな大きな法務関係の改正に入っているものですからどうしてもおくれてしまったということは、逆に言えば申しわけなく思っておるところでございますが、これは早急に結論を出さなければいかぬなと思っております。
 さて、二点目は長期入院の問題についてお伺いさせていただきたいと思います。
 西島先生は、最近は長期入院は社会的にも少なくなったよと言いますが、これは世界との比較をやってみますと、やはり問題があるというように私ども思っています。それで、長期入院患者を処遇するためのいろいろな生活施設などの新しい施設体系が必要というぐあいに考えています。病院側の立場、あるいは社会復帰施設を運営する立場から、西島先生、そして新保先生に御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
○西島参考人 先ほどの資料でも御説明をいたしましたように、長期入院になる患者さんの数そのものは、最近の十年間ではかなり変わってきているということでございます。
 ただ、全体的な患者さんの数を見ますと、五年以上、十年以上の患者さんたちが三〇%近くおられることは事実でございますが、この方々がかなり高齢化されているという部分もございます。ですから、単なる作業所で作業をしてもらって云々というだけでは問題は解決しないだろうというふうに私は思っておりますので、この高齢化された方々をどうするのかというのも一つあるかというふうに思っています。
 そしてもう一つは、実は資料でもお示しをしましたが、中等度以上の症状をお持ちの方々をどこでどうやっていくのかということもやはり考えなければいけない問題だと思います。日本精神病院協会は、病院の中に施設ケア的なものをつくろうというふうに考えておられるようでございますが、それも一つの方法かというふうに思いますけれども、病院の中だけでは、地域ケアという観点から見ますと少し問題も残しているかなというふうに思っているわけでございます。
 以上でございます。
○新保参考人 社会復帰促進についてでございますが、先ほど西島先生の方からいわゆる残留率という数字が示されました。私どもは、どちらかというと退院率の方を見ているわけでございまして、退院率でいきますと、確かに西島先生がおっしゃるように、一年以内はおよそ八〇%という数値でございますので符合いたします。ただ、五年以上、十年以上という数値になりますと、実は退院率が五年ぐらいでおよそ一五%、十年以上になりますとそれよりも減るというのが現実でございます。
 ということは、長期入院患者というか社会的入院患者というか、こういった人たちの現実は大方変化がないということでございます。病床がおよそ十年前から一万床減りました。三十五万から三十四万に減ったわけです。そして、それはわずかに一万人しか数が減っていないということでございまして、しかもその一万人の中には、先ほど西島先生もおっしゃられましたように、三カ月以内あるいは六カ月以内、一年以内で入退院を繰り返している人たちがふえてきてまいりましたので、そういった方々の数がかなりおられるということです。現実的には、長期在院の患者さんたちの数は減っていないというのが実態だというふうに思っております。
 したがいまして、この人たちを受け入れる体制をきちんと進めていかなければいけない。そのためには、中重度の問題ももちろん重要ではございますが、要は、まずは社会的入院と目される患者さんたちの受け皿をどうするのか。
 すなわち、先ほども申し上げましたように、退院の目安もない患者さんたちがいるのが現実でございます。そして、この人たちを社会的に入院させておくということは、御本人の生活権を阻害するだけではなくて、いわば財政上も極めてマイナスが大きいというふうに思っております。仮に、入院費用がおよそ三十万だとして、その方が生活保護を受給して地域で暮らすようになって外来医療を受けるようになったとしたって、恐らくその半分にも満たない金額で済むのです。こういったこともあわせ考えますと、在宅で精神障害者を支える施策の推進は不可欠だというふうに思っております。
 なお、施設形態については、最も不足しているのはいわば受け皿としての住む場でございます。この国日本は、精神障害者にかかわらず、健常者である一般市民についても住宅政策がおくれているというふうに言われております。そのしわ寄せがまさに克明にあらわれているのが精神障害者に対する居住施策だというふうに思いますので、ぜひともその点を中心に広範な施策が推進するようお願いいたします。
○衛藤(晟)委員 どうもありがとうございました。
 しかし、今、現実にそういう住む場、あるいはいろいろな中間施設、あるいは社会復帰施設を入れて、これだけ頑張っているつもりなのですが、なかなかふえないというところに問題があるというふうに思っているのですね。
 さてそこで、我々も今までのいろいろなお話の中で皆様方から御指摘いただきました、地元住民の反対などいろいろありますけれども、行政として、政治としてやらなきゃいけないことで足りないものは何だと思っていますか、新保先生と荒井先生にお聞かせいただきたいと思います。
○新保参考人 私は、冒頭陳述で申し上げましたように、市民との負の格差があるという、まさに法体系そのものが、市民に対して精神障害者はいわば私たちと違うということを意識づけているというふうに思っています。
 私も、実は、社会復帰施設を設置するときに物すごい反対運動を受けました。私を罵倒して、私がとちれば言葉じりをとらえて、私を痛めつけることによって施設づくりをさせないようにしようということで、周りは身勝手で勝手なことを言っていて、私をビデオで撮っているのですね。そして、私の不本意なというか怒りの上での発言だけを取り上げてさらに攻めるというような、まさにこれは精神障害者の人たちに対する罵倒を私にそのまま向けているのと同じでございます。
 こういった誤解や差別、偏見の言葉というのは、まさに精神障害者の方々に対しての法制度がこれまで不備だったからだと思います。すなわち、隔離収容政策が主であったためにというか、そうせざるを得ない社会状況もあったということはよく理解できますが、そういった社会状況の中で精神障害者の方々の実態を見えなくしていることが一番大きなことです。
 精神障害者の方々を理解していただくためには、精神障害者と市民の方々が接触できる場があることが一番大きなものです。その意味では、社会復帰施設、作業所も含めてですが、そういったものが地域の中にたくさんできることによって精神障害者の方々に対する市民の見る目が変わります。当然理解度も深まります。
 こういったことを勘案しますと、当面は、精神障害者の方々が医療の枠の中だけではなくて、まさに地域でも生きられるのだという施策を推進していくことが極めて重要だというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○荒井参考人 六十二年の法改正のときに、精神障害者の社会復帰施設という条文が初めてできました。目的のところに、精神障害者の福祉という項目が入りました。
 そのころ、作業所が二百十カ所ありました。この病気は大変な難しい病気だから、素人なんぞ、ボランティアなんぞどうだというようなお怒りもありました。そんな中で、非常に精神障害者に共感を持って懸命に支える人がいれば、地域で再発も防ぎ、生活できるんだということが二百の実践が示されておりました。行政関係者の人たちは懸命で、先生方にも診ていただいて、医療施設ではない、医者が施設長ではない施設でも、精神障害者は地域で支えられるんだということで勇断していただいたと思います。
 六十二年から十三年間に、知的障害の施設ですと作業所の予算を三年もらったら次は授産施設だ、こういう運動が今質問されている衛藤先生の大分とかいろいろなところにあるのですね。そういう運動で七百、八百と今法内施設がふえてくるのです。これが、十三年たって百五十ぐらいの授産施設しか今ありません。これは何かということは大きな問題だと思います。
 私たちは、六十二年に、社会復帰、福祉ということで、本当に福祉法ということで、この法律に福祉を入れていただいたので、大いに全国を飛び回って福祉施設をつくろうというような運動をしました。しかし、家族会の作業所が授産施設になったのは多分十カ所、今は大分みんな元気になってきましたから十五、六カ所あるかもしれませんけれども、それが現実であります。
 そのときに一番大きな問題は、今前の方が偏見ということをおっしゃいましたけれども、本当に偏見も大きな壁でございます。しかし、千五百の作業所が地域にできているということは、これは偏見で施設ができないということは私はあり得ないと確信しております、それではないというふうに思っています。
 一つは、運営費の問題です。これは私が要望書につけた一番最後の資料を見ていただきたいのですけれども、五というところに書いてございます。知的障害者の法内施設が八百八カ所あります。精神障害者の通所施設が百二十七カ所。そのほか、手帳を持っている知的障害者は大体四十万人と言われています。精神障害者はその倍とも言われております。その中で、この施設の差の一番大きな原因の一つは、運営費が非常に低いということです。つくっても、その後も運営の地獄の苦しみに遭うというようなことが一つあるかと思います。
 もう一つは、土地及びマンパワーの問題です。非常に偏見もありますけれども、やはり公的な土地、援助が必要です。そのときに、市町村の権限の問題があります。やはり市町村が責任を持って社会復帰施設、福祉施設をつくり、民間に委託をし運営をするという、市町村の権限委託、移譲の問題が大きな問題だと思っております。
 そういう意味でも、今回の法改正はまだ全部が移っておりませんけれども、市町村の責務も強化されたということで、もう一つ運営費の問題もお考えいただければ、今精神保健関係者は燃えておりますので、どんどんふえていくかと思います。
○衛藤(晟)委員 どうもありがとうございました。
 質問をもっと準備していたのですが、どうしても時間が足りませんので、終わらせていただきたいと思います。
 私どもも、自民党を代表して私は今質問させていただいたのですが、実は、前回の改正のときに今度全部やりたいということだったのですが、特に大きな長期の問題、触法の問題、また保護者義務の問題等について多くの課題を残しておると思います。しかし、非常に大きな法改正の一歩であったと思っておりますので、今後ともどうぞ皆様方の御協力をよろしくお願い申し上げます。
 終わります。ありがとうございました。
    〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
○木村委員長 金田誠一君。
○金田(誠)委員 民主党金田誠一でございます。
 きょうは、参考人の先生方には、大変御多忙のところ、また遠いところからおいでをいただきまして、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがたく思っているところでございます。
 早速質問に入らせていただきますけれども、先ほど冒頭の陳述の中で、小林先生、諸外国の例ということで、後ほど時間があれば紹介をということでお話があったと思います。
 患者の権利という観点から、欧米ではどういう状態なのか、日本と比較してどうなのか、その辺のところを少しく御説明いただければと思います。
○小林参考人 少し説明させていただきます。
 まず、アメリカ合衆国とか西ヨーロッパにおきましては、精神病院がどういうものなのかというとらえ方がやはりしっかりしていると思います。精神病院というのは人権侵害の温床なのだという発想があります。ですから、監視をしていかなければいけない、そういうことで監視チームもつくったり、そして患者さんたちの申し立てを受けているわけです。申し立てを受けるには、やはり精神病院の状況というのは国際的に同じです、患者さんたちの人質状況は変わりません、ですから、それらをサポートする体制として患者の権利擁護者というものが制度として導入されています。
 アメリカ合衆国でも、もちろんアメリカ合衆国は州によっていろいろな差があるそうです。私たちの仲間はカリフォルニアに留学しまして、それを詳細に検討してきました。私はイギリスに行ってそういうことも調査をしてきましたけれども、大体は、アメリカの場合は連邦政府が各州に患者の権利擁護の予算を置きまして非営利団体をつくりまして、長は弁護士さんということで、やはり法律的な介入が主になっております。
 弁護士さんがいつも行くというわけではなくて、パラリーガルという人たちを養成しまして、定期的に精神病院を訪問して患者さんの意見を聞く、苦情を聞いたりして、その中で弁護士の援助が必要であれば、そういうところに結びつけるということです。
 それで、私たちがいつもモデルにしたいと思っていますのは、オランダの例です。
 オランダは、いろいろ経過があるんですけれども、まず、国が公立病院にそういう患者権利擁護者を配備しました。それはどういう団体かというと、いわゆる非営利団体で、日本の社会福祉団体みたいなものだと思いますけれども、その中のスタッフの半分以上は病気の経験がある人ということが大変重要です。入院の経験があるということは、患者さんの訴えや苦しい状態が我々病気を経験していない人よりもよくわかるということで、ペーシェントアドボケートや、精神病院に入るオンブズマンにとって、病気を経験した人の資質というものは大変重要な資源となっております。
 それで、オランダの場合ですけれども、公立の病院でやって、最初はやはり医療者たちの抵抗はかなり根強いものがあったそうですが、徐々に進展してきまして、今では、法律で保険点数にそういうものを上乗せして、全部の病院に患者さんの擁護団体というものが入って、患者さんたちが入って、患者さんの意見を聞いたりしていくわけです。そこでもちろん人権侵害が暴かれることもあるということで、幾らかは透明になっているということです。
 先ほど申し忘れたんですけれども、実は、日本の審査会に戻りますけれども、福岡の弁護士会の人たちが一九九三年から精神保健当番弁護士制というものを行っております。これはあくまでもリクエストがあればなんですけれども、我々のようなアドボケートが行くということではなくて、弁護士さんみずからが患者さんのところに行って話を聞いて、そして代理人になったり、単にお話を聞くというような活動をしております。
 外国の場合は、そのように公的な資金で非営利団体が、しかも、半数以上が病気の経験を持った人によって運営されているということが大変重要な点だと思います。
 いろいろ制度の違い、法律の違いがあって、すぐそれを日本に適用するということは難しいかもしれませんけれども、こういうものがなければ精神医療審査会に幾ら機能を持たせたとしても絵にかいたもちです。ですから、ぜひその導入に向けての方向性を持った議論を今後お願いしたいと思っております。
○金田(誠)委員 ありがとうございます。
 特に、病気の経験がある方がこの人権擁護のチームに入っている、非常に興味深い事実を紹介をしていただきました。
 まず、私のこの問題に対する問題意識でございます。
 実は、去年は感染症予防法というのがこの場で大きなテーマになりました。伝染病予防法を全面改正して感染症予防法ということに改めたわけでございますけれども、そのときの感染症予防法の問題は、かつては社会防衛といいますか、隔離、収容、こういうことを基本にといいますか、そういう側面が非常に色濃い法律であったわけです。それを、人権の尊重あるいは良質かつ適切な医療、福祉の提供というところに軸足を移していくという、大きな世界的な流れの中での改正ということが試みられたわけでございますけれども、私などから見ますと、非常に不十分な形に今のところは終わっているなというのが感染症予防法に対する感想であったわけです。
 それと同じように、今回の精神保健福祉法の改正も、一歩前進ではあるけれども、まだまだ不十分であるという感をぬぐい切れないわけでございます。隔離、収容、社会防衛というところから少しずつ離れて踏み出してはいるんですが、良質かつ適切な医療あるいは福祉の提供、人権の尊重、擁護という観点はまだまだ十分とは言えない、日暮れて道なお遠いという思いもするわけでございます。
 そうしたときに、改善の方向を切り開く観点としては、この精神保健、精神医療の分野に公開とか参加とか当事者の自己決定という観点をもっと導入する必要があるのではないか、こんな思いをかねがね持っておりましたものですから、ただいまの小林先生のお話では、スタッフの半分が入院の経験のある方がチームを組んで人権擁護に当たっているという御紹介は極めて感慨深いものがあるわけでございます。
 そういう観点から、諸先生、五名の方にそれぞれ端的にお答えいただきたいなと思うことがあるわけでございます。
 それは、我が国の公衆衛生審議会、その中の精神保健福祉部会でございます、この名簿をいただいているわけなんですけれども、これを見た限りでは、精神保健福祉部会の中にその当事者の方あるいは家族の方が入っておられないということがかなり象徴的な事象になっているのではないかなというふうに思うわけでございます。
 仄聞いたしますと、東京都あるいは大阪府では近年になって当事者が審議会に入るようになったということも伺っておるわけでございますけれども、残念ながら国の審議会の精神保健福祉部会には入っておらない。身体障害者とか知的障害の場合はそれぞれ当事者なり家族なりが入っているけれども、精神障害の場合はいまだ実現していないというふうに思っておるわけでございます。
 その点について、私などは当然可能な限り入ってしかるべきと思うわけでございますが、西島先生、伊藤先生、小林先生、新保先生、荒井先生、それぞれ一言ずつお考えをお聞かせいただければありがたいと思います。
○西島参考人 お答えさせていただきます。
 まず、公衆衛生審議会の精神保健福祉部会には家族会の方は入っていらっしゃるというふうに私は認識をいたしております。(金田(誠)委員「お医者さんですから、御自身でそういう子供さんがいらっしゃるということではないようでございます」と呼ぶ)そうでございますか、大変申しわけございませんでした。
 確かに、そういう御家族の方の意見、患者さんの意見を聞くのは非常に重要かというふうに私は思いますが、これまでの歴史の中で、精神神経学会というのがございまして、この学会の中に理事会から患者さんたちが入ってくるような体制があったわけでございますけれども、全く議事が進まないというような歴史的な経過もありまして、そのあたりが一歩踏み込めないところなのかなという気がしないでもございません。でも、長期的に考えますと、患者さんたちのこれからをどうするのかという問題でございますので、当然私は必要な問題かと思います。
 もう一つは、これは私は臨床の立場で申し上げますけれども、病識の問題もございます。それともう一つ、先ほど申し上げましたように、必ずしも精神分裂病の患者さんだけの問題ではないということでございますので、これを幅広く検討した中で、この審議会の中でそういう患者さんたちの意見をいただくかどうかというのを考えなければいけない問題だろうというふうに思います。
○伊藤参考人 私は、公衆衛生審議会の委員に当事者の方が入っていただくのは望ましいことだと思っております。
 実際、私ども、いろいろな活動をするときに、患者さん自身からいろいろな意見を聞いたり、あるいは地域の講演会で講演をしていただいたりして、ある意味では、我々専門家の狭い見方よりももっと啓発されるようなお話をしていただくことが何度かあります。そういうことです。
○小林参考人 当然ながら、家族、当事者は入れるべきだと思います。
 実は、私は、この精神保健福祉部会の傍聴を、いろいろなごたごたの後、やっと傍聴を認めていただくことになりました。そして思いました、サービスを利用する当事者がだれもいないところで、その関係者だけでプランを練っている、よくしようということがとても不思議だなと思いながら傍聴をしていた事実があります。
 ですから、病識とか何かの問題ではなくて、今はそういうところに出る患者さんの団体もたくさんあって、それなりにそういう能力を備えている人がたくさんおりますので、患者さんも家族も、当事者をぜひ参加させていただきたいと思っております。
○新保参考人 適切な医療を供給する、そして適切な医療を受給するという関係は対等な関係であることが当然ですし、したがいまして、インフォームド・コンセントが重要であるというふうに言われておるわけでございます。この意味におきまして、家族、当事者がそういった審議の機関に入って意見を述べることは重要だというふうに思います。
 殊に、精神障害者につきましては、金田先生おっしゃられましたように、社会的防衛の要素が強い法律がようやくそこから脱皮しようとしている時期でございますので、なおさら人権尊重等を配慮する上で、そのような御配慮を願えればというふうに考えております。
○荒井参考人 そのとおりでありますということなんですけれども。
 ほかの専門委員会、研究会にも、大体半数以上、二十人のときは十一人というような形で必ず医師の委員が多くあります。
 私も、先ほど申し上げた六十二年の法改正の中で、医療施設でなくても、地域でさまざまな精神障害者ノーマライゼーションを支えられるということで、精神障害者の対策が十年前に変わったのに、その意見をある意味では平等に吸い上げる必要が非常にあるような感じがいたします。
 私自身も当事者であります。精神病院に三回も入院しております、薬物やアルコールでありますけれども。そういう意味でも、説得力のある資料をもってきちっと発言をする、そして訴える、これは場所がなければ、チャンスを与えられなければなりません。そういう意味では、病気の症状とか大騒ぎして騒ぐとかということじゃなくて、ぜひチャンスを与えていただきたいと思います。
○金田(誠)委員 どうもありがとうございます。
 次に、西島先生と伊藤先生、お二方にお伺いしたいと思います。
 それは、民間と国公立の役割分担についてでございます。それに関連して、精神科特例の問題にも触れていただければなというふうに思うわけでございます。
 実は、精神医療のみならず一般医療についても、私どもの党内でも、国公立と民間の役割分担はどうあるべきかということではいろいろ意見が分かれてございまして、現在、統一的にこうあるべきだというところまで至っていないというのが現状でございます。
 私なりに思いますのは、これは全くの私見でございますけれども、経営主体が国公立であるとか民間であるとかということは、治療を受ける患者にとってはほとんど関係のないことではないかというのが原点として私なりにあるわけでございます。
 民間であろうが国公立であろうが、そこで良質かつ適切な治療を受けることが患者にとっては一番必要なことであるという観点からしますと、西島先生の資料では国公立ではかなり予算的な措置がされている、経営主体、設置主体の違いによって予算的な措置にそう違いがあっていいものなんだろうか。患者という立場からいいますと、どこの病院に行っても、国公立が全国に満遍なくあるわけではないわけでございますから、どこに住んでいても良質かつ適切な医療を受けられるとすれば、経営主体にかかわりなく一定のレベルを保障するために一定の予算措置をするとか、あるいはもししないのであれば、診療報酬の上で、一定の要件を満たしたところには一定の診療報酬の措置をするとか、そういうことが本来あるべき姿ではないか。それが保障されれば、国公立の役割がこうだとか民間がこうだという関係ではなくて、民間、国公立の壁を超えて、初期的な医療をする、あるいは慢性的な医療をするところと非常に高度な救急の医療をするところ、こういう区分けの仕方が本来目指すべき方向なのかなという気が実は個人的にはいたすわけでございます。
 その辺につきまして、お二方のそれぞれの御所見を賜りたいと思いますし、あわせて、西島先生の方からは精神科特例について余り言及がなかったようにお聞きをしたものですから、医師会としてのお立場なども御説明いただければありがたいと思います。
○西島参考人 基本的には、先生のおっしゃることに私賛成でございます、がという、この「が」をつけさせていただきたいのでございます。
 現状で考えますと、特に触法の患者さん、それから対応が困難な患者さんたちをどういうふうに今処遇をしているのかといいますと、例えば保護室を使ったり狭い空間の中で対応しているのが現状でございます。やはりこういう方々のQOLも十分に考えなければいけない。そうしますと、広い空間の中で、そして十分なマンパワーを置いて患者さんたちを診ていくということが、たとえこういう問題を起こした患者さんであってもQOLの向上につながるという意味で、私は公立がこういう問題をやるのがいいのではないかと思っておるわけでございます。
 特に、もし公立がこういう役割をきちんとなさるのであれば、私は、たとえ赤字が出ても、それは政策的に納得できるものではないかというふうに思うわけでございます。ただ、そういう役割を果たさない中で、これだけの赤字を抱えてやっている。特に、先ほどの資料でいきますと、一般会計から六億から七億のお金を繰り入れているわけでございますね。そういう実態を考えたときに、役割を果たしていないのではないかということを私ども申し上げているだけのことでございます。
 それから、精神科特例の問題でございますが、現状を考えますと、なかなか難しい問題がございます。しかし、私は、医師がある程度の数がいて、そして看護婦がそれなりの数がいて、そうすれば当然医療の質は上がるというふうに考えております。考えておりますけれども、全国の現状を見ますと、果たしてそれでやれるのか。今の精神科医の数、それから看護婦の数等々を考えていきますと、まずやれるものは、診療報酬の中でさまざまな施設基準をやりまして、その中に、例えば看護婦をたくさん投入していればそれなりの診療報酬で見るという形の中で一つずつ階段を上がっていくのが現実的かなというふうに思っております。
 でも、将来的には先生がおっしゃったように、精神科特例は私は外すべきだと思いますが、現実的に考えますと、看護に関してはほとんどこの特例はきいておりません。と申しますのは、結構、新看護体系の中でかなりのマンパワーをそれぞれの病院が投入しているというのが現状でございます。
 以上でございます。
○伊藤参考人 まず、国公立の役割分担の話ですが、一般病床の場合は、国公立の占める病床の割合は、全病床に対して二六・六%が国公立であります。一方、精神科に関していえば、九・六%しか公的な病院が病床を占めておりません。私は、少なくとも非自発的な入院、強制入院の場合には非常に公共的な配慮が必要でありますので、この九・六%という数字を見ますと、役割を果たすためにはもう少し公的な病院があってもいいのではないか。
 それからもう一つは、公的な病院の偏在であります。実は、北海道の場合も、道立の単科精神病院というのは私どもの十勝と網走にあります。この網走の道立病院を考えた場合には、これは地域医療を担うために建てられたものであります。民間病院は網走では設立しないわけです、経営的にも成り立たない。
 ですから、公的な病院の役割というのは、当然、重い患者さん、重症な患者さんを診るということと同時に、過疎地域の医療を守るということもあるわけです。したがって、単に重症な患者さんをたくさん入れているかどうかということばかりでなく、過疎地域の医療を守るということでも非常に赤字を出しながらやっているという事実があります。この辺もぜひ考慮していただければというふうに思っております。
 それからもう一つ、医療法の改正でございます。
 私どもは医療法の改正をすべきだと。なぜならば、診療報酬制度の中で、確かに、いい医療をしたものについては、人員配置の多いところについては高い診療報酬を与えるということも大切でありますけれども、これはあくまでも経営によって誘導されることであります。したがって、経営が成り立てば、安い基準の病院運営をしても看護基準を下げても構わないわけです。
 しかし、一般医療であれば、患者さんが高い医療水準の病院を選ぶという誘導といいましょうか、インセンティブが働くわけです。ところが、先ほどもお話ししましたように、自分の意思に反して入院させられるということを考えますと、医療法の中で最低基準をきちっと定める、非自発的入院の患者さんのためには医療法の中で定めるということがまず基本になければならないわけです。その上で、診療報酬制度でいい医療へと導くということです。ですから、一般医療の場合とは少し考え方は変えてもよろしいのではないかというふうに私は思っております。
 それからもう一つ、将来の方向としての国公立病院と民間病院ということですが、先ほど言いましたように病床の数が非常に少ないわけですから、当然民間病院にも質の高い医療を保障するために診療報酬でそれを導くということはぜひやっていただくべきだと思います。特に、先ほど言いましたように、まだ措置入院の患者さんを民間病院の方に入院をお願いしているということがありますので、医療の質を高めるためにも、民間病院も含めて診療報酬制度上で保障していただきたい、そういうふうに思っております。
○金田(誠)委員 ありがとうございます。
 時間がほとんどなくなってまいりましたが、荒井先生、一点だけお聞かせいただきたいと思います。
 全家連の意見書を前にいただきまして、何度か読み返しました。その中で、保護者規定を廃止し入院制度の抜本的見直しということで、これが第一番目の意見ということになっておったわけでございます。今回、確かに保護者制度の見直しは一歩前進ということだと思うわけでございますが、全家連の主張どおりにはなかなかならなかったわけでございます。なぜそうなのか、どの辺に障害があったのか、どの辺の理解が得られなかったのかというあたりを、差し支えない範囲で結構でございますけれども、全家連としての御認識をお聞かせいただければなと思うわけです。
○荒井参考人 私どもの運動では、平成五年に初めて入院制度等の代替制度を完備して保護者制度撤廃という要望をしました。そのときは、先生方も御存じのように保護義務という義務がついておりましたので、義務を撤廃して保護者制度ということに変えたというような形の中で、全家連及び各地の家族会を社会復帰促進センターということで指定して、さまざまな研究調査や相談事業、啓発事業を支援しようという形で、もちろん法ができてから指定をいたしました。
 そんな中で、医療にかかわる緊急入院なり入院の手続の問題とか、その辺が大きな課題で、そのことに関しての制度というかそういうものが整っていないというようなことで、早急に検討していただくという形で、今回は将来なくす方向で改正という感触を得たので推進ということにしたということになります。
○金田(誠)委員 最後の質問になろうかと思いますが、移送制度の関係につきまして、西島先生、伊藤先生、それぞれ御所見を伺いたいと思うわけでございます。
 現在、応急入院指定病院は平成九年度で全国五十八施設ということでございまして、それを三百五十五の二次医療圏すべてに移送に足る受け皿としての施設を設けなければならない、果たしてそれが可能なのかどうなのか。その場合、どういう留意点が必要なのか、その辺のところをお聞かせをいただければと思います。
○西島参考人 移送制度につきましては、先ほど家族会の方もおっしゃいましたけれども、私もそういう意味で一歩前進かなというふうに思うのですが、ここにはさまざまな問題が含んでいるというふうに思っております。
 特に、ある意味では非常に重度な患者さんたちを対象にしているだろうというふうに思いますし、実際に今精神科救急システムというのが各都道府県で行われているわけでございますが、これはすべての患者さんに対応するようにかなり整備が進んでいるところでございます。ですから、移送制度と同時に、やはり精神科救急システムを今後も整備していく必要性があるのではないかなというふうには思っております。
 それから、応急入院指定病院の件でございますが、そもそも応急入院というのができました経緯は先生御存じだと思いますけれども、たしか外国人の方々が非常に精神障害で法の中で対応できない部分があって応急入院制度というのができたように記憶をいたしておりますが、それが非常に厳しい条件でございました。例えばCTスキャンを受けなければいけないとか、非常に厳しい条件の中で、なかなかいろいろな病院が応急入院の指定を受けられないという現状だったと思います。
 ですから、そういう意味で、ある程度のマンパワーがあれば、つまり夜中でも対応できるようなマンパワーがあれば、それで指定を受けられるというふうにかなりの規制緩和が必要ではないかなというふうに私は思っております。そうしますと、かなりの数の指定病院ができるのではないかというふうに思います。
 以上でございます。
○伊藤参考人 移送制度については、最初のお話のときに幾つかの問題点を挙げましたけれども、やはり患者さんの人権が損なわれないような安易な移送が行われないということが大切で、そのための規定をするということ。
 それからもう一つは、受け入れ先の病院をどのようにして決めていくのかということが大切だと思います。実は、特に二次医療圏ごとに、もう少し大きな医療圏ごとにこれを決めるとしましても、ある地域では病院そのものが存在しないということもあります。
 それからもう一つは、医師の充足ができない地域もあります。例えば北海道あたりですと、過疎の地域になりますと病院はあっても医師確保ができないということなどがありまして、実際には患者さんに適切な医療を保障できるかどうかということで私も非常に心配しております。ですから、ある程度レベルの高い病院をいかにして選ぶか、あるいは低い場合でもそれを上げるような努力を一緒にしていくということが最低の条件だと思います。
 それからもう一つは、地域で日常的に地域の精神保健活動が行われていて、救急のように強制的に病院に運ばれる状況がないようにふだんからいろいろな方が支援活動をしている、このことが大事だろうと思います。
○金田(誠)委員 どうもありがとうございました。
 時間が参りましたので、終わらせていただきます。
【次回へつづく】