精神医療に関する条文・審議(その96)

前回(id:kokekokko:20051110)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。

第145回衆議院 厚生委員会会議録第11号(平成11年5月21日)
○木村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。衛藤晟一君。
○衛藤(晟)委員 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律につきましては、昭和六十二年、平成五年、平成七年というように改正が行われてきました。そして、国及び地方公共団体において、精神医療や社会復帰、福祉に係る各種施策が推進されてきたところでございます。しかしながら、まだまだ多くの問題が残っています。
 平成五年に続きまして、平成七年にいろいろな改正がされました。今回、平成五年の精神保健法の改正の施行後五年に当たるところから、自民党においては、社会部会の精神保健問題検討小委員会を中心に、平成十年より精力的に有識者及び関係団体からの意見聴取等を含め、何とか抜本的な改正にこぎつけたいということで検討を進めてきたところでございます。
 その間も、平成七年、精神保健法精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に改めまして、精神障害者の社会復帰を図るべく、保健福祉施策の充実を図りながら、手帳制度の創設や社会復帰施設等の充実を進め、また、よりよい精神医療の確保を図るために、精神保健指定医制度の充実や医療保護入院の際の告知義務の徹底等を図ってきたところでございます。しかしながら、先ほどから申し上げましたように、まだまだ大きな抜本改正を行わなければいけないということで、今回の改正にこぎつけようということで努力をしてきたところでございます。
 今回の法改正におきましても、自傷他害防止監督義務の廃止、あるいは入院のための移送制度の新設、あるいは人権に配慮した適正な医療の確保、あるいは在宅のための地域支援センター、あるいは在宅介護事業の充実、あるいは短期入院事業の新設等を通じながら在宅福祉の充実を図ろうとしたものでございまして、そういう点の改正については、まさに十分に評価されるというか、ある意味では一つの時代を画するような改正になるんではなかろうかというぐあいに大きな期待をしているところでございます。
 しかしながら、私どもの検討の中におきましてもどうしても今回間に合わなかった問題がございまして、中長期的な検討項目について、三点整理をさせていただいたところでございます。
 一つは、犯罪精神障害者対策についてでございます。
 長い間、この問題は議論をされてきましたけれども、人権の問題等から結論を出すことができずに今に至っています。この問題につきましては、刑法体系との関係も含め、幅広い観点が必要でございますけれども、病院においては、こういう方に対する処理をほとんど民間病院にお願いをしながら、しかし、適切な医療が、一次的な医療はなされるんですが、その後のケア等がなされない等のいろいろな問題を抱えておりまして、今度は受け入れる病院側の方も、触法患者と普通の患者さんとをどういうぐあいに治療していいのかということで、ある意味では現場においては大変困っている状況にもなっているわけでございます。
 患者にとっても大変、そして病院側にとっても適正な医療が行われないという状況になっているところでございまして、このことの中から、やはり将来を含めて触法患者に対する医療をどうするかということをちゃんと定めながら、今後の精神病院における機能分化というものを、障害、病気の種別や程度やいろいろな状況に応じて適切な医療が受けられるような状態にぜひやり変えなきゃいけないというぐあいに考えているところでございまして、これについて我々は結論を出すことはできませんでした。
 もう一つは、保護者制度につきまして、自傷他害防止監督義務の条項につきましては削除ということはやりましたけれども、ほかにもいろいろな保護者制度というものが家族に過重な負担をもたらしています。しかし、一方で、我が国においては、精神障害者の治療についてはその家族が一定の役割を果たすべきだとの根強い意見もあります。そんな中で、保護者制度というものが、できるだけ家族に対する過重な負担――実は、御承知のとおり、精神障害者の保護者と言われる方々は大変高齢を迎えております。もともとが成人を過ぎてから発病される方が多いわけでございまして、その保護者ということになりますと、大変な高齢を迎えておりまして過重な負担に耐え得ない、またそれに耐えなければならないようなシステムにしていますから、患者自身もいろいろな決定ができないということから、いろいろな問題をもたらしていますので、この保護者制度についても、最終的な検討の上、結論を得ることが必要だというぐあいに私どもは思っております。
 さらに、長期入院者につきましては、いろいろございますが、既に日本の病院においては五年以上入院の方々がほぼ半数を占めているわけでございまして、しかも六十五歳を超える方々が三割を超すというような状況の中にございます。この長期入院患者の療養にふさわしい施設につきましても、診療報酬あるいは機能分担ということも同時に考えながら結論を得なきゃいけないというように思っています。
 我々は、今回の法改正においてはどうしても間に合わない、本来であれば何とかすべきだというように思っていたんですが、間に合わないという観点の中から、何とか三年を目途にめどをつけたいというぐあいに実は考えて、精神保健問題検討小委員会で早急に三点における中長期の結論を得るべく、努力を開始したところでもございます。
 さて、そのような状況の中におきまして、自民党においては、三年以内に何とか結論を得たいということで鋭意検討を進めておりますけれども、政府においても、これらの課題は重要なものと認識をされているのかどうか、またその結論が出次第、速やかに対処される意思があるのかどうか、大臣にまずお聞きをさせていただきたいと思います。
○宮下国務大臣 まず、今回の改正につきまして、その政策内容について、党側の政策責任者である委員の方からいろいろ御質問がございましたが、まずもって、その相当部分が取り入れられたということに感謝を申し上げたいと思います。
 その上で、今三つの点を指摘されました。
 犯罪精神障害者の問題、保護者の問題、それから長期入院患者の療養にふさわしい施設の検討というようなことでございまして、これらの三点はいずれも重要な課題でございます。これは公衆衛生審議会からも指摘されておりますが、解決していかなければいけない。今申されたように、ここまで全体として検討して、総まとめで改正案を出すというまでには議論も尽くされておりませんし、問題は重要な課題でございますから、今後ひとつ精力的に慎重な検討をしなければなりませんが、この問題は厚生行政だけではなくて諸方面と関係する事項でございますので、幅広い関係者と議論を行いつつ、与党における御議論も踏まえながら、とにかく五年の見直しということにとらわれることなく、成案が得られれば検討してまいりたい、こう思っております。
○衛藤(晟)委員 ありがとうございました。できるだけ早急に、我々もできれば三年を目途にこれをぜひやり上げて、精神障害者対策をいわゆる今までの流れとは違った形でちゃんと仕上げていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
 さて、今回参考人意見聴取等で、私ども、やはり意味のあるというか、大変議論の深まったというぐあいに認識をしているところでございます。精神障害者福祉対策の推進に当たりましては、医療、社会復帰、それから地域対策等、それぞれ大変重要な事項でございますが、やはり世論の支持というか住民の理解というのが必要だなということを感じたところでもございます。
 最後になりますけれども、一つだけぜひ要望をしておきたいのですが、社会復帰施設もこれだけ、制度としては整ってきたという感じがいたします。そして小規模のものも、千五百カ所というから、大変広がってまいりました。しかしながら、なかなか法定の施設ができない。これは、ずっと調べてみますと、二十人定員の知的障害者の通所授産は、年間措置費が、補助金が約五千万ですね。身体障害者が約三千五百万、精神障害者が約二千四百万ですね。精神障害者のためのこのような授産施設を一生懸命やっても、なかなか経営的にやっていけない。
 今は家族やいろいろなボランティアの方々の大変多くの犠牲の中にやっとやっているということでございまして、これをある程度改善しないことにはやはり大きく広がっていくことはできないだろうということは、もう今回のいろいろな意見聴取の中でもはっきり出たことでございますので、この際、いよいよ再編成を迎えるわけでございますので、我々も努力させていただきたいと思いますが、政府、厚生省挙げて、ぜひこれについて十分な配慮を、改善をするように要望して、終わります。
○木村委員長 武山百合子さん。
○武山委員 おはようございます。自由党武山百合子でございます。早速質問に入りたいと思います。
 まず、社会復帰対策についてお聞きしたいと思います。
 社会復帰施設には、生活訓練施設、福祉ホーム、授産施設、それから福祉工場等々あるわけですけれども、それぞれ精神障害者の社会復帰を支援する施設として大変重要な役割を持っているわけですけれども、まだまだその絶対数が足りないと思うのですね。そういうのが現状だと思いますけれども、現時点での設置数、それから絶対数の不足の解消に向けた今後の計画についてお聞きしたいと思います。
○今田説明員 障害者プランによります精神障害者の社会復帰施設、今御指摘のように、障害者生活訓練施設、福祉ホーム、通所授産施設、入所授産施設、福祉工場とあるわけですが、これらの施設につきまして、平成九年度末現在で累計四百一カ所となっております。
 これに対しまして、プランにおきましてそれぞれ目標値を設定しているわけでございますが、その目標といたしております施設数につきましては、千五十九カ所を当面の目標と置いているところでございます。
○武山委員 今の数字を聞きますと、本当に少ないわけですね。これを二倍以上にするということですので、ぜひ今後ふやしていただきたいと思います。
 それから、社会復帰施設についてですけれども、絶対数の不足もさることながら、地域的に偏在しているということも大きな問題となっているわけです。この地域的な偏在の解消、特に施設空白市町村の解消に向けて、まずどのような取り組みをしていくのか、お聞きしたいと思います。
○宮下国務大臣 御指摘のように、精神障害者の社会復帰施設の地域偏在というのは、事実として私どもも認めざるを得ないと思っておりますが、精神保健福祉政策を推進する場合に、極めて重要なことでございます。
 そこで、整備が十分でないために、絶対量を整備するということがまず第一に必要でございます。その上で、都道府県ごとに施設整備に対する取り組みに差があるのも事実でございますから、そうしたことをならしていくということがぜひ必要だと思います。
 具体的には、障害者プランというのがございますから、その障害保健福祉圏域ごとにバランスのとれた社会復帰施設の整備が行い得るように引き続き都道府県を指導してまいりたいと思いますし、今回の改正におきましても、そうした精神障害者の福祉政策の利用に関する助言、調整、あっせん等は市町村を実施主体とするように改めておりますし、それから、市町村が行う助言、調整、あっせんについて広域的な調整を保健所において行うというように変えておりますので、これらの体制の整備を大いに活用していただきまして、今申されたような問題点の解消に努力していきたいと思います。
○武山委員 現在、三千三百市町村あるわけですけれども、先ほどの今田部長さんのお話ですと、千五十九カ所にふやしていきたいということです。そうしますと、三千三百ですから、単純計算で大体三つか四つの市町村に一つぐらいできる、そういうふうな判断でよろしいのでしょうか。
○今田説明員 これらの施設の整備につきましては、基本的には障害保健福祉圏域を一つの単位としておりますので、複数の町村がそれに含まれることになります。これにつきましてはおおよそ三百圏域ぐらいを想定しておりますので、今申し上げました千の施設を配置するとすれば、それぞれ三から四施設をその三百の障害保健福祉圏域の中で確保していこう、このような考え方でございます。
○武山委員 そうしますと、国民にわかりやすい数字でお答えいただきたいのですけれども、人口どのくらいに一つというような割合なんでしょうか。過疎とかいろいろありますので、それから首都圏は多いですね。国民にわかりやすい数字で、どのくらいに一カ所という割合なんでしょうか。
○今田説明員 福祉圏域の単位をおおむね人口三十万に置いてございます。それで三から四カ所ということになりますので、単純に割り算をすれば、人口が十万人弱に対して一カ所程度の整備をしていくということでプランを立てております。
○武山委員 そうしますと、単純に人口十万人に一カ所ぐらいをことし中に整備されるということですね。そう解釈してよろしいわけですね。
○今田説明員 現在が先ほど申し上げましたように四百一カ所でありますが、これを将来一千数十カ所にするということで、この最終目標年度を平成十四年に置いておりますので、十四年までにこれの実現に努めていきたいと考えております。
○武山委員 市町村の自治体任せではなかなか問題は解決していかないのじゃないかと思うのですけれども、厚生省は、もう自治体任せなんでしょうか。それとも厚生省として具体策を考えているのでしょうか。
○今田説明員 都道府県に対しましては、先ほど申し上げました障害保健福祉圏域を一つの単位として計画を立てるようにということをお願いしております。
 当然その計画の中で、この障害者プランに沿った形でその整備をしていただく。そういう内容を盛り込むようにというような形で都道府県を指導し、そういう計画を都道府県につくっていただくという考え方で、そこはもちろん都道府県がつくられるということに期待をしているわけでございますが、このプランを確実なものとするという意味において、私どもも、積極的にそういった計画を立てるように指導はしていきたいと思っております。
○武山委員 そうしますと、もうちょっと突っ込んでお聞きしたいんですけれども、埼玉県は約六百九十万近く人口を抱えているわけですけれども、例えば埼玉県に視点を置きますと、十万人規模に一つずつぐらいの進みぐあいというのはどのくらい進んでおるんでしょうか。
○今田説明員 達成率ということで申し上げますと、埼玉県単独ではちょっとまだ手元に資料がございませんが、全国ベースで申し上げますと、例えば生活訓練施設につきましては大体五割程度が今達成されている、福祉ホームについては三割程度、通所授産につきましては四割程度、入所授産につきましては二割、それから福祉工場につきましてはまだ十数%という状況になっております。
○武山委員 五〇%に達しているところは一つなわけですから、ぜひ早急に指導して、今こういうシステムなものですから、自主的にやってくださいと言っても無理なわけですね。ですから、そこは、今こういう仕組みになっているわけですから、仕組みを利用して市町村、自治体をやはり促していただきたいと思います。
 その次、伺います。
 こうした法定の施設が不足しているというのが現状で、無認定の小規模作業所の問題が大変あるわけなんです。現在その数は五千近くになると言われておるんですけれども、この小規模作業所は法定の通所型授産施設とまず同じ性格を持つということのようですね。この補助額が大変少なく、運営が困難だということを実は聞いておるんですけれども、厚生省はこうした現状をどの程度認識しているか、お聞きしたいと思います。
○今田説明員 在宅の精神障害者が通所して作業を行っていただくいわゆる小規模作業所でございますが、これにつきましては、家族会などが地域に根差した自主的な取り組みということで展開をされていらっしゃるわけでありますが、共同作業所全国連絡会の調査によりますと、全国で大体千三百十八カ所あると言われております。委員御指摘の五千というのは、身体障害、知的障害を含めての小規模作業所の数でありますので、精神だけに特化して申し上げれば千三百十八カ所、こういうことになっております。
 当然一定の要件を課しておりますけれども、そのうちでその一定の要件が満たされますのは、平成十一年度予算で八百十カ所でございます。これに対して年間百十万円の国庫補助を行っております。
 なお、この国庫補助とあわせまして、地方自治体が行います単独助成事業のための財政措置ということで、これとは別に地方交付税措置が講じられておりまして、都道府県からも補助がなされておりますし、それから、本年度からは精神障害者小規模作業所について市町村分の地方交付税措置が新たに講じられたという状況でございます。
 できる限りの援助はこれまでもやってまいりましたけれども、今後もそういう観点から取り組んでいきたいというふうに考えております。
○武山委員 その少ない補助金をもらうために大変苦労して届け出をして審査を受けるということですけれども、なかなか審査にも残らないところが大変あるというようなことを聞いております。国民の税金でこういうものを補助しているわけですけれども、本当に厚生省が実態をわかって、本当にきちっと国民の税金がそこに行っているんだなという実態を国がわかっているということが一番大事だと思いますので、任せっきりにしないで、ぜひ土台まできちっと調査していただきたいと思います。
 それから、精神障害者の社会復帰対策を拡充していく上で、小規模作業所を含めて既存の施設を働く場、生活の場、トレーニング施設、利用施設にするなど、再編統合化という抜本的な取り組みが今後必要になってくると思いますけれども、この辺は厚生省はどう認識しておりますでしょうか。
○今田説明員 小規模作業所も含めまして、精神障害者の社会復帰を推進することが、今の長期入院の実態を解決し地域社会で自立をしていくという意味では大変重要な課題だと思いますし、そういった意味では、現在、幾つかの社会復帰のためのメニューを用意し、あるいはまた在宅のためのメニューを新設する等しておりますが、これからも社会復帰という分野、つまり地域でのケアというものを中心にした障害者の福祉対策というものを推進すべきだという考え方で対処していきたいと思っております。
○武山委員 このあり方について検討委員会で何か提言をされているようなんですね。まず高生産性タイプ、少生産性タイプ、それから生きがい活動タイプの三つの機能に分化されている。
 この提言は、現在どのように検討されているのか、御存じでしょうか。
○今田説明員 御指摘の提言につきましては平成四年ころの考え方として整理されているものと思いますが、いずれにしても、そういった考え方も含めまして、昨年、知的障害、身体障害、精神障害、三障害それぞれの所管している審議会がございますが、これらを合同して地域対策をどう進めるかという議論を進めてきております。
 その中で、例えば、社会復帰のためにいろいろな施設を整備するに当たっては、障害者間の壁を取り払って地域で一緒にやっていこうというような仕組み、あるいは市町村が一番身近なところなんだから市町村で一緒にやっていこうということで、今おっしゃっていただきました目的に沿いましてどういう体制を組むべきかということについての御議論をいただきました。
 これらの考え方につきまして、今回の法改正にも盛り込まれている部分もありますし、それから、現在検討している社会福祉基礎構造改革の中で、それぞれの障害者間全体の改革として今検討を進めているという状況でございます。
○武山委員 平成四年に提言されたということですけれども、もうことし十一年ですから七年近くなるわけですけれども、議論された結果がこれからの構造改革ですね。それから今回の法改正にうたわれているということですけれども、どのくらい入れられているんでしょうか。
○今田説明員 精神保健福祉法の中で申し上げますと、ホームヘルプ事業などのようないわゆる福祉施策が他の障害と比べて非常に劣っているという点を含めて、こういったものを法定化して社会福祉事業として取り組みを促進したいということが一つ大きな点ではないかと思います。そのほかに、市町村にそういった役割を演じていただくということ、これらが主なものかと思います。
 と同時に、社会福祉基礎構造改革における議論の中では、そういったものに対して、例えば権利擁護の仕組みを導入するとか、あるいは福祉法人になる壁の高さといいますか、要件を緩和するということで、社会福祉事業に積極的に取り組めるような、そういう法人体系というものに振りかえていろいろなサービスを提供しやすくするといった点などが含まれているというふうに私どもは理解をしております。
○武山委員 今までと違って、選択肢がふえるということが一番の問題だと思うのですね。ぜひそのような方向でやっていただきたいと思います。
 それから、社会復帰対策で欠かせないのがボランティアによる協力だと思いますけれども、NPO法案も成立しましたし、こういうものを含めて、民間のボランティアの支援を得ることが大変重要だし、これから本当にそこにポイントが行くと思いますけれども、そのための仕組みをどのようにつくっていくか。
 私、何かちょっと実情を聞いておりますと、寄附のシステム、結局、みんなお金がなくて、お金だけがすべてじゃないですけれども、もちろん知恵を使ってこういうものはつくるものですけれども、国に頼るということは、それだけ国民の税金が使われるわけなんですね。最低限、公的施設というのは、平成十四年のめどにかけてつくっていくべきだと同時に、やはり自立する、自分たちが、また周りが、社会が、地域が対応して助ける組織、仕組み、それはつくっていかなければいけないと思うのです。
 それで、欧米などと比べまして一番欠けている部分というのは、寄附をしたための優遇措置がないという部分なんですね。優遇措置をやはり国としても考えていただかないと、寄附の精神、寄附の行為というのはなかなか膨らまないんですね。そうすると、国にばかり頼ることになると思うのです。どちらがいいかというと、やはり自助努力と同時に、できない部分を国が面倒を見るという方向性だと思うのです。二十一世紀は自立した社会、小さな政府というものを目指していくわけですから、その辺はどう考えておりますでしょうか。
○宮下国務大臣 これは寄附の課税上の問題だと存じますが、法人あるいは個人の所得課税の中でそういった寄附の扱いをどうするか、損金性を認めるかどうか、そういうことでございますが、この点は委員のおっしゃるように、民間の自発的な参加という意味で大変貴重なものでございますから、今後十分検討させていただきたいと思っています。
○武山委員 ぜひ検討していただきたいと思います。
 以上で終わりにいたします。どうもありがとうございました。
○木村委員長 土肥隆一君。
○土肥委員 民主党土肥隆一でございます。
 前回も御質問させていただきましたが、少し積み残したというか、お聞きしていない部分がございましたので、まず、そこから始めさせていただきたいと思います。
 今回の法改正で一番びっくりいたしましたのは、やはり第三十八条をめぐる改正でございます。今までの精神病院と行政の現場、この場合は都道府県になりますが、それから精神医療審査会あるいは指定医というような関係が、いわば法文によるとどうでもとれる、あるいはほとんど強制権というのがない、そういうつくりになっておりましたが、いきなり大変な強制権というか行政指導権といいましょうか、それはもう本当に驚くばかりでございまして、こんなことができるんだろうかというふうにかえって心配するくらいでございます。
 三十七条の二では、指定医の精神病院の管理者への報告、この点については質問をいたしました。私は、なお不十分だ、指定医と病院管理者の関係を明文化しないと生きてこないという指摘もいたしました。
 そして、三十八条の三の三項でございますけれども、医療審査会の機能が書いてありまして、これなどは、病院管理者が言うことを聞かないときは、「報告若しくは意見を求め、」まではいいのですが、「診療録その他の帳簿書類の提出を命じ、若しくは出頭を命じて審問をすることができる。」こう書いてあるんですね。旧のというか、今も生きているわけですが、それによると、「その者が入院している精神病院の管理者その他関係者の意見を聴くことができる。」こうなっているわけでございます。
 三十八条の四になりますと、今度は、退院等の請求でございまして、本人または保護者の非常な決意、その希望で、行政は、都道府県はきっちりと退院の措置を命じるということになっております。
 三十八条の五では、もう一度精神医療審査会が出てまいりまして、ここでも出頭を命じ審問する、こうなっているわけです。
 それから、三十八条の六以下では、都道府県知事は、あるいは厚生大臣もそうですが、命じるとか、あるいは、変更を命じ、処遇の改善のために必要な措置をとることを命ずる。三十八条の七の二項でも、「命ずることができる。」三項では、「制限することを命ずることができる。」こういう大変強い法文になっております。
 私も、前回の委員会で申しましたが、大和川病院などにかかわっておりまして、五年たって病院が閉鎖され、そして今日に及んでいるわけではございますけれども、まさに今昔の感がするという気がいたします。
 ちなみに、大和川病院の病院指導についての幾つかの特徴を申し上げますと、本当に精神病院としての基本的なことについて一々指導しなければいけないのですね。
 例えば、入院時に、任意入院であれば任意入院用のインフォームド・コンセントのための告知書があるわけです。あるいは医療入院、措置入院の場合もあるわけです。ところが、大和川病院では一枚物なんですね。一枚物で、こんな入院をあなたはするんですよ、というよりも、あなたはこの精神病院に入るんですよということが書いてある告知書があるわけでございますけれども、その告知文を訂正しなさいというわけです。そして、三カ月たちまして、また行政が、大阪府が行きまして確認をいたします。そうすると、まだできていない。改善計画では、印刷文を今刷り直しております、こう言うわけですね。それで、まだできていない。だからその改善命令で、任意入院の場合は書面告知の上で本人の同意書をとること、ちっとも変わらないわけですね。そのほか、電話のことだとか、あるいは個人の文書の通信でありますとか、挙げたら切りがないわけでありますが、赤ちゃんの手をとるように、こうもしなさい、ああもしなさいと言わなければ、二百五十名から入っている病院が、そういうことをしなければならないほどの精神病院になっていたということでございます。
 こういうものを見るにつけ、厚生省えらい変わりましたねということでございまして、この間、一体何があったのかということです。
 例えば退院の規定で、医療審査会がする役割で、入院中の者の同意を得て委員に診察させる、あるいは管理者、関係者に報告を求める、診療録あるいは帳簿類を提出させる、出頭を命じて審問する、こういうように具体的に書いてあるわけですが、余りのギャップに驚くとともに、病院関係者はこれを受け入れたのかどうか。
 こういう四項目にわたって審査会の役割が書いてある三十八条の五の四項ですけれども、それは今までやっていなかったのか、していなかったことを新たにやろうとしているのか、その辺の厚生省の担当者の御認識、そして特に、「出頭を命じて審問する」というような言葉をなぜ使わなきゃいけなかったのか、御答弁いただきたいと思います。
○今田説明員 今回のいわゆる人権というものに着目をした規制の強化に相当する部分、御指摘のように幾つかあるわけであります。その一つとして、精神医療審査会に出頭を命じて審問する権限をなぜ付与するような考えになったのかということでありますが、基本的には、従来も報告を求めることはできたわけでございます。当然、これからの運営に関しても、医療機関の協力を得て、そういった書類の提出でありますとか状況の報告を受けるということそのものは厳然とそういうやり方をしていかなくてはならないと思います。
 ただ、そういうことをしてくださいと申し上げても、どうしても協力をしてくれないケースというのが実はあり得るということが現実に起こったわけであります。そういう意味では、通常の、普通の御協力で、医療機関との信頼関係も十分保ちながらそういったことを運用すべきだと思いますけれども、そういった特別な事例に対してちゃんとした権能を審査会も有しているのだということを明記することによって、すべての医療機関において必要な対応がとれるようにという願いを込めることを目的としてこういう規定を盛り込ませていただいたと考えております。
○土肥委員 例えば、入院中の患者さんの同意を得て、審査会の委員が出かけていって診察するということは今まであったのですか。
○今田説明員 協力を得て診察するということは、今までもございました。
○土肥委員 大和川病院のケースであったのでしょうか。
○今田説明員 大和川病院でもそういう規定が適用されております。
○土肥委員 私が知っている限りでは、医療審査会の先生が大和川病院に出かけていって、二十名ほど退院希望者があったのに、診察をしたことはございませんで、そんなことがあの病院でできるなら、もっとどんどんやればよかった。そうしたら、何もあの病院をつぶさなくてもいい。もちろん経営者はかわってもらいますけれども、もっと良心的な精神病院をやってみようというお医者さんがあったら、あれは残してもよかったのではないか。私が指定医ならば、もっといい病院を、安く仕入れましてやってもいいなと思うくらい、精神病院一つ建てるのは大変なのですよね。しかし、今回一気に三つ病院をつぶしてしまうわけでございまして、その意気込みの反映が今度法文に載ったのかなという感想を持つわけでございます。
 第一、診療録などというものはろくすっぽつけていないのがこの病院でございました。提出したら、改ざんして、指定医の勤務時間ではないのに任意入院や医療入院が起こっているというようなこともございまして、そういうことは大阪府も厚生省も熟知していらっしゃるところだと思います。
 「出頭を命じて審問する」、この審問という言葉はどういう意味合いの言葉なのでしょうか、お聞きいたします。
○今田説明員 御意見をお聞きするということでありますけれども、審査会という場面に出てきていただき、少なくとも正確な事実をお述べいただきたいという意味で審問というふうに使われる法律的な用語と思いますけれども、そういう表現をさせていただいております。
○土肥委員 何か裁判所に参考人とかあるいは証人の証言を求めて呼び立てているような気がしてならないわけでございまして、医療関係者にはこういう話はなさったと思うのですが、医療関係者はこれでいいというふうに理解しているのでしょうか。
○今田説明員 審問という表現につきましては、法的には、一方で五十五条に罰則がついております。したがいまして、そういう意味では非常に正しくこれを運用していただきたいという形で規定されているわけでありますが、そういったことも含めて、この事項については、医療関係者あるいは精神病院の関係の方々が御参加いただいております審議会からもこのような改正をするということでの御意見をいただいているというふうに私どもは理解をしております。
○土肥委員 私はこれで結構だと思うのです。だけれども、今度は病院側はガードに入りますから、今度はえらい厳しゅうなったなということで、なるべくしっぽをつかまれないようにやらなきゃいけないとか、法律というのはそういうものかもしれません。したがって、定期の医療監査でありますとか、あるいは審査委員の定期的な訪問だとか、行政も当然でございますけれども、都道府県の担当部局もそうでございます、また、指定医の教育と言うとちょっとおこがましい話ですけれども、もっと指定医の地位を高めて、責任が今度大きくかぶさってきたわけでありますし、公的な仕事もしなきゃならないという役割もあるのでございますから、やはり内実を変えていかないと、外だけで縛り上げても無理だというふうに感じる次第でございます。
 これは憲法上も問題ではないか。つまり、病院は経営をする自由がございます。これは例の健康保険法の改正のときも総量規制をやるわけでございまして、開業の自由というのはあるわけでございますが、そこと医療行政とのやりとりがあるわけでございまして、これは憲法上の問題はないというふうに理解していいのでしょうか。
○今田説明員 営業の自由ということで、今回それにかかわりますところは、改善計画を命令しても一向に処遇を改善しないような病院ということになるわけであります。当然そこに至るまでには通常のあるいは丁寧な指導が必要だと思いますが、なおかつ、それにおいても入院中の障害者が適切な処遇が確保されていない、緊急に事態の改善を図る必要がある、いわば最終手段として創設されたものでございます。このように、明らかに入院患者の人権が侵害されている場合には、その適正な処遇を確保するために、緊急性がある場合に営業の自由が一定程度制限されるということについては合理的な理由があるというふうに考えております。
○土肥委員 以上をもちまして、残された部分の質問を終わります。
 きょうは、社会復帰施設関係あるいは地域福祉と申しましょうか、そういう面についてお尋ねしたいと思います。
 まず、今回の法案の改正によりまして、市町村というのが登場してまいります。それから、在宅介護等の事業、ホームヘルプサービスが入ってまいります。ショートステイも入ってまいります。それをお世話するような形で、地域生活支援センターも入ってまいります。精神保健福祉というこの法律の名前にふさわしい時代がやっと来たなというふうに思うわけです。
    〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
 したがって、今回の法改正を多としながら、これをなるべく早く一般福祉事業並みに肩を並べるようにさせて、そして、あらゆる精神障害者の皆さんが、在宅であろうと施設であろうと、どこにいようとも自分の居場所がある、自分の生活する場所があって、その生活をいろいろな障害の程度に応じて支えてくれる、そして、地域の住民の理解も徐々に育ってきて、精神障害が特別な病気ではない、障害ではないというふうに自覚できるような柔軟性に富んだソフトな社会をつくらなきゃならない、こういうふうに思うわけであります。
 それで、一つ一つお尋ねいたします。
 まず、私は、社会復帰施設、この社会復帰というのは、この前精神薄弱者という名前を変えましたけれども、それと同じように、これはやはり早くやめた方がいいと思うんですね。
 社会に自分は復帰しなきゃいけないんだと。ところが、復帰したその社会は何とストレスの多い、そしてリストラを絶えずかけられ、派遣労働が始まり、そんな社会に精神病を持ったまま、寛解したとはいえ、まだそういうハンディキャップのある中で復帰しなさいなんというのは、恐るべきところにもう一度ほうり込む、これは、また医療施設に戻っていらっしゃいという法律かもしれない、そういう違和感を非常に私は感じるわけでございます。
 福祉行政というのは、やはりジャンルごとというか種別でやりますから、その種別の特徴をあらわすために精神薄弱者更生施設なんというのをつけて、何の恥ずかしげもなく看板を立てて、ここは精神薄弱者が更生するためにある施設ですよ、更生ってよくわからないんですけれども、こういうふうに名乗ってはばからないわけでありまして、私は、もう看板主義というのはやめるべきだと思いますね。何とかホームでいいと思うんです、何とかの家でいいと思うんですよ。アジサイの家でもいいですしバラの家でもいいわけでございまして、そういう社会復帰施設というのはやめた方がいいんじゃないかなというふうに思うわけです。
 それから、更生というのもやめた方がいいですね。
 生活を更生させる。勘違いする人がいまして、知的障害者の能力をはるかに超えたことを一生懸命毎日毎日訓練している作業所がございまして、それは電気掃除機の使い方でした。だったら、ほうきでいいじゃないですか。ほうきとちり取りがあれば掃除はできるわけでありまして、それを、何かごみを散らかして、それを吸い取るということをやらせているわけです。私はもう気が遠くなるような思いがいたしましたけれども、やはりこれは更生させようとしているかのようでございます。
 授産施設もどうかと思いますね。
 このネーミングの問題は、社会的な福祉サービスや福祉資源がいろいろ充実してまいりますと、だんだんそういう特別な種別を考えなくてもできるだろう、そういう社会が来るだろうというふうに思っております。
 大臣、御答弁ございましたら、突然でございますけれどもネーミングの問題。この前の精神薄弱者のときも御答弁いただきました。
○宮下国務大臣 知的障害者とか、いろいろ呼称を改める法律案を先般お願いいたしましたが、今委員のおっしゃられるのは、更生というような言葉もどうかなという御疑問のようです。
 私どもの今までの感じで率直に申しますと、やはり障害者も一個の人間として尊重さるべきであるし社会的な位置づけが必要である、それは、障害によってある程度ハンディキャップを負った人たちをなるべくノーマルな形に近づけるという努力の一種の表明じゃないかなと。そういうことによって自立と社会参加を来すのがこの法律の趣旨でもあるし、更生施設とかいろいろ名前はありますけれども、そういった背後にある意味というものも一方にあるのではないかと思うんですね。
 委員のおっしゃることは、これは価値観といいますか、ネーミングに対するイメージが、ちょっと私どもが考えていたよりもさらに厳しいという感じを受けましたけれども、率直なところ、更生施設という看板をおろせという話でございますが、そう違和感はないように私は思うんです。かえってヒマワリだの何とかというような、通常のあらゆる施設につけられるようなネーミングだと、どういう施設かなという疑問もわきますし、その点はこれから検討はさせていただきますが、率直な……(土肥委員「社会復帰はどうですか」と呼ぶ)
 社会復帰ですか。これも一応、障害を受けたために社会から疎外されるという現象があったと思うんですね。それは大きく言えば人権侵害でもあるし、やはりそれを社会が温かく仲間の一人として包容するという意味で社会復帰というように私どもは考えておりましたし、今もそうではないかなと思いますので、社会復帰という言葉が精神障害者あるいは障害者の方々にとって差別的な用語かどうかなという点は疑問に思います。
    〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
○土肥委員 結構です。やはりこれは価値観とか人生観によって違うわけでございます。
 しかし、住民基本台帳法の改正じゃありませんが、ナンバリングをするわけですが、やはり何か名前をつけるということは、それがひとり歩きし、それがまた人格に変わる、変えられるというところもあるわけでございまして、福祉の世界にいつもあるスティグマというのはそういうことですね。
 ですから、これは避けられない話なんですが、私は、あれ、何の施設だろうというぐらい知的障害も身体障害者も社会の中に自然に住んでいて、よく考えたら、ああ、あそこは身体障害者の施設だったのねぐらいの、社会の中に自然に溶け込むような福祉政策というのが理想だと思っておりますので、あえてこだわりを申し上げた次第でございます。
 さて、五十条の二項で、旧法では「社会福祉事業法の定めるところにより、」というのを、「厚生省令の定めるところにより、あらかじめ、厚生省令で定める事項を都道府県知事に届け出て、」云々、こうなりました。
 従来、私ども、社会福祉というようなことを考えるときには社会福祉事業法に基づいて福祉を展開していく、そしていろいろな、施設整備の単価にいたしましても、規模にいたしましても、人員配置にいたしましても、大体それに見合った制度でやってきたというふうに思うんですが、あえて社会福祉事業法から厚生省令で定めるところでやると、もう一度厚生省が引き取ったというような感じになるんですが、これを変更した理由をお示しいただきたいと思います。
○今田説明員 精神障害者の社会復帰施設を設置、運営する事業は、これまで社会福祉事業法上は、事業の開始に当たって、その事業者は事業を開始した後一カ月以内に届け出を行えばよい、このようになっております。今もそうでありますが。
 今回、あえて精神障害者の社会復帰施設については事前の届けということで規定をしたわけでありますが、これは、その施設が、精神障害者に対しての判断能力の問題、人権上の問題、幾つかのものに対して細心の配慮が必要であるというような観点から、これらの精神障害者を対象とする事業については特にそのような事前届け出制という形をとらせていただいたものであります。
○土肥委員 細心の注意が必要だろうということでございますが、私は、むしろ、広く社会福祉事業法の定めるところに従って一般の福祉事業と同じような手続、同じような考えでなさった方が将来はいいのではないかと思っております。なぜなら、精神障害だけ特別な配慮をする、事前の届け出をするというふうな言い方をしますと、やはり特別な施設なんだなということをみずから表現しているようなものでございますから。
 現時点でまだ精神障害者の分野の福祉施設というのは充実しておりませんから、厚生省が心配して、少しずつやろう、少しずつ進めていこうということだろうと思いますが、そうすると、その他の社会復帰施設、四つございますけれども、これはすべて同じ法文で読んでいくんですね。生活訓練施設も授産施設も福祉ホームも福祉工場も、そして、今度地域生活支援センターができますが、これは全部、「社会福祉事業法の定めるところにより、」というのは取り払うわけですね。ちょっと確認をいたします。
○今田説明員 さようでございます。
○土肥委員 さようですか、わかりました。
 しかし、民間の社会福祉法人が、意欲のあるところに従って精神障害者の福祉対策に入っていけるという時代になりましたから、やりたい人が大いに熱心にやる。しかし、一番問題は、施設、つまり箱物をつくろうとすれば猛烈な反対を受けるというのは、もうこれは御承知のとおりでございまして、これがこの種の施設整備の難しいところ、最大の課題でございます。
 神戸市でも、初めて民間の福祉法人がやる授産施設を一つ完成させました。土地を探すのに十一カ所探し回ったのですね。やっと地域の人が受け入れてくれたわけでございます。私は、精神薄弱者、今で言う知的障害者の施設を十年前につくりましたときには、地元を説得するのに二年間かかりました。二年間かかっても同意書はとれませんでした。県ももうあきらめよう、厚生省もあきらめよう、こういうときでしたが、今は、名前は申し上げませんが某知事さんですが、厚生省におられまして、私、彼と面と向かって話したのです、これは明らかに差別なんですと。そして、その施設はちょうど駅前にあるのです、こういう願ってもない土地に建てないというのはどういうことですかと。行政は、施設を整備するときには、地面をきれいにならして、権利関係も調べて、全くこれは更地、白地で何でも使えますというふうに、草もきれいに刈って、ひもを張って、この土地にどうぞ施設をつくってくださいといってつくるんですか、私はこう言いまして、相当な決意で厚生省に乗り込んできたことを思い出します。
 地元の行政では、もう何回となく人権侵害を私は受けました。施設整備ができないということは、地元の同意書がとれないというのはおまえが悪いんだ、こう言うのですね。これは知的障害者ですよ、それでも難しい。まして精神病院をつくろうなどというのは大変な問題が起きてくるわけです。
 ですから、私は、今後、箱物というのは余りやらない方がいいんじゃないかと。あるいは、先ほど申し上げました大和川病院の建物が残っていますから、早速だれかやらないかといって公募をなさるとか、やはりいい医療機関が欲しいですし。それから、地域に根づかせるためには、余り箱物で、何々センターでございますとか何々復帰施設でございますとか言わないで、自然にああ何も問題ないのねということがわかるような、実体験をしないとわかってくれないわけですから、そういうアプローチを今後大いにやるべきだというふうに思うのであります。
 私が議員になる前でしたけれども、つくった施設は、今、御近所の方、その地域の方は盆踊り大会というとみんなおいでになるんですが、何の問題もないわけです。もちろん、夜間に無断で出てどこへ行っちゃったかわからないというようなことが、後で見つかったわけですけれども、若干そういうことがありましたけれども。幾ら口で説得しても、いや、うちの娘が犯されるとか、あるいは自分たちの住んでいる土地が下がるなどという途方もないことを言うわけでございまして、そういう苦労を施設設置者にかけますと、もう本当に疲れるわけですね。そして、例の施設整備のための四分の一の負担だとかいろいろかかってくるわけで、土地の代金もかかってくるわけでありまして、二重三重の苦労を与える。
 これから精神保健の世界では、私の言い方からすれば、ゲリラ的政策、これが一番いいと思っているんです。私も精神障害者の小規模授産施設をやったことがありますが、先生のところにこのごろいろいろな人がおいでになりますねぐらいから始まるのですね。ああ、そうですかというぐあいで、一、二年たちますと、ああ、あの人たちは心の病を持っていらしたんですかというようなことで、だれも反対運動を起こさないし、それでいけるわけでございます。ですから、なるべく社会福祉事業一般と横並びにやった方がうまくいくんじゃないかというふうに思う次第でございます。
 さて、今度新しく社会復帰施設対策の中に地域生活支援センターというのをおつくりになるわけです。これは、身近な地域で相談や助言や連絡調整をするというわけでございますが、このセンターはどのくらいの規模で整備なさり、どういう仕事をしてもらうセンターなんでしょうか、お答えいただきたいと思います。
○今田説明員 地域生活支援センターにつきましては、そこで行います事業といたしましては、地域での生活の支援を目的といたしまして、できるだけ身近なところで福祉サービスを行う機関ということで、日常生活に関する問題について必要な指導あるいは助言、相談などを行う施設というふうに位置づけております。あわせて、保健所、福祉事務所、それから精神障害者社会復帰施設、こういったところとの連絡調整を行う施設ということで、そういった形で機能させます。
 御指摘の整備の目標につきましては、一つの福祉圏に二カ所程度、全国でいくと六百ぐらいになりますが、そういった形で整備を進めていきたいと考えております。
○土肥委員 これは若干論理矛盾がございまして、地域で、身近なところで、そして日常生活に触れるような形で、しかも諸施設との連絡調整もやりますとなれば、老人保健の方で考えれば在宅介護支援センターのようなものを想像すると、これは、設置数からいって、あるいは機能からいっても、六百カ所なんてものじゃ全く何の役にも立たない。ちょっと言い過ぎです。何の役にも立たないとは言いません。
 そこにセンターがあれば、その地域の患者さんには役に立ちますが、そこからまた一時間も二時間も三時間もというようなところでは役に立たないというふうに考えるのですが、これは将来構想としてどんなふうに考えていらっしゃるのでしょうか。
○今田説明員 一つは、この生活支援センターが、福祉圏域に二カ所の設置ということを今申し上げましたが、これはまだ施設の整備そのものが一市町村で完結して整備されているという状況にないこと、そういった意味ではある程度広域的な調整が必要だという視点も入れてこのようにセットをさせていただきました。
 もう一つの、市町村が身近なことは本来やるべきではないかということでありますが、これにつきましては、例えばホームヘルプサービスでありますとかショートステイ、そういうサービスを今度市町村に十四年からやっていただく、当然、それらに係ります相談というものはまさに市町村にしていただかなければならない。ということからいたしますと、将来は、市町村が行いますそういう福祉的なサービスに関する相談、指導と、まだ施設が若干すき間がある、そういった広域的な機能とをうまくマッチさせて、できるだけ身近なところで解決できるようにするということを今考えております。
○土肥委員 今の段階ではそうかもしれません。広域的なところから始めるということでございますが、私はむしろ、御提言したいのでございますけれども、この地域生活支援センターというのは市町村の業務の中に、事務の中に入れていただきたい。数は少なくても仕方がありません。しかしながら、これは当然、居宅介護事業、ホームヘルプサービスショートステイ、あるいは今もございますグループホームなどと直接関係が出てくるわけであります。電話とかインターネットだとかの時代ですけれども、生活支援センターに出かけていって、これはどうしましょうとか、こういう方はどんな処遇がいいかとか、あるいは施設等の調整などもする意味では社会復帰施設対策というものではないのじゃないか、そこに入れてはいけないのではないかというふうに思うのです。
 これは箱物になるわけですから大変なお金がかかるわけですね。ですから、地域に密着したというところからいえば、そんな鉄筋コンクリートのビルを六百カ所建てる必要があるのかなというふうに思いますね。各都市には福祉会館だとかいろいろなものがございます、このセンターの構想の中には、そこに皆さんに来ていただいてちょっと一日生活してもらうとかというふうな機能も備えたいという考えのようですので、箱物が必要かなとも思うのですけれども、私は、むしろ精神保健福祉というのは箱物から早く脱出して、お一人お一人に手を差し伸べていって、どこかで自分は行政的なサポートがあるという、もちろん精神保健相談員などがいらっしゃいますけれども、そうではなくて、あらゆる社会資源が患者さんのもとに届けられる、そういうものにすべきだというふうに考えます。したがって、いろいろな種類のものがセンターとしてあり得る、あってもいい。余り規格品をおつくりにならないように申し上げておきたいというふうに思います。
 しかし、このセンターは必置義務ではございませんね。これがまたブレーキになるわけでございまして、たとえ広域であってもやはりこういうものが必要ですから、ホームヘルプサービスショートステイグループホームなどに役立つようなものとして、いずれのときか必置義務にして市町村にお願いするということにしなきゃならないというふうに思いますが、必置義務ではないというところはどういう意味合いでしょうか。
○今田説明員 もちろん、いろいろな施設、あるいはそういった機能を持つ部署が市町村に必要だという意味においては当然これを推進していかなければならないわけでありますが、これを必置という一つの法的な規定をすることそのものが、今進んでおります地方分権の流れの中で必ずしも適切な方法ではないのじゃないか。しかし、理念としてこれを進めなければならない、役割としてはどうしても担っていただきたいという気持ちはございますが、必置という表現で行うことについては、そういった流れの中で必ずしも適当ではないのではないかというふうに考えた次第でございます。
○土肥委員 それはわかります。
 ですから、この生活支援センターは、社会復帰施設という予算のとりやすいところで、そしてかなりの補助金が出るところでやって、将来は市町村に返すというか市町村管理にする。あるいは、そういう箱物のセンターのサブセンターみたいなものを市町村にたくさんつくってもらう、お金がかからないわけですから。これで居宅介護サービスを、ホームヘルプ事業をやりなさいといったら、途端に、そういうものがないと、一々保健所に行ってあるいは保健センターに行ってやっていたら、恐らく保健センターはパンクするのじゃないかと思いますね。保健福祉センターはプロフェッショナルな技術指導などをやるところでしょう。そうではなくて、日常業務、日常的な生活に即した部分というのは、いきなり市町村にほうり投げて、やはりなかなか大変だろうというふうに思うわけです。ですから、サブセンターを市町村におつくりになるように提案したいというふうに思うわけでございます。
 さて、特にこれから市町村に大きな仕事をしていただいて、かつ、従来ありますグループホーム、地域生活援助事業も市町村でやっていただくということになろうかと思いますが、今このグループホームというのはどの程度整備されて、そしてどのような利用状況なのか。
 例えばグループホームであれば家を確保しなきゃいけないのですが、そのハード面といいますか、そういう面での補助だとか、あるいはグループホームは大体平均何人ぐらいの人が利用しているのか。そこにはどういう種類の職員の方が張りついていらっしゃるのか。障害者プランの目標値は九百二十カ所、五千六十人となっておりますが、私は、このグループホームというのは非常に大事な、そして今後最も期待される施設ではないかと思っておりますので、その点の御説明をいただきたい。
 そしてついでに、福祉ホームというのが従来から復帰施設であるわけでございますけれども、この福祉ホームというのは、これも百六十六カ所から三百カ所にふやすということでございますが、これとの兼ね合いについて、福祉ホームの実態についてもお述べいただきたい、このように思います。
○今田説明員 まず最初の障害者のグループホームの現状を御紹介申し上げます。
 グループホームは、一カ月当たりの平均利用人数は大体五・五人程度でございます。ここにおきます体制というのは、そこに世話人がお一人いていただく、表現がいいかどうかわかりませんが、いわば下宿のような形で運営していただくという観点から世話人を一人置いていただくということになっております。それにつきまして、現在六百六十二カ所ございますけれども、障害者プランにおきましてはこれを九百二十カ所に持っていきたい、このように考えております。
 それから福祉ホームでございますが、福祉ホームにつきましては、一定程度自活能力のある方に対しまして、特に住宅の確保が困難な対象に対してこれを提供するということで、これもまた適切な表現かどうかはありますが、いわゆる寮のような形で、そこでそれぞれが就労しあるいは自活的生活をしていただくという、いわば住居提供という観点での運用が期待をされているということでございます。
【次回へつづく】