精神医療に関する条文・審議(その97)

前回(id:kokekokko:20051111)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。

第145回衆議院 厚生委員会会議録第11号(平成11年5月21日)
【前回のつづき】
○土肥委員 私の感想を言えば、福祉ホームもグループホームも同じようなものだというふうに思うのですね。あえて福祉ホームをつくって――通勤寮との関係もあるのでございますけれども、授産施設は別にいたしまして、授産施設も入所授産というのがございますから住宅関連といえば三者共通するわけですが、既にグループホームが民間の皆さんの大変な努力で進んでおりまして、そして、何カ所かお訪ねしましても、非常にいい世話人さんがいらっしゃって、熱心にやっていらっしゃいますね。しかも、安い給料でやっていらっしゃるわけです。
 私の考えだと、福祉ホームにお金を使うぐらいならグループホームを少しグレードアップする、福祉ホームは仕事をしているというのが前提になって、しかも短期ですから、ショートステイですからのんべんだらりとおられないのでしょうが、グループホームだとずっとおられるわけですから。もちろん、自己負担の関係やらいろいろございまして、制度が進んでしまいますとなかなか融合させることが難しくなりますけれども、精神障害者の住まいの問題、どこに住むかという、住まいの場所が安定していないと人間はどうしても不安定になりますね。親御さんも高年齢化が進んでおるわけでございますから。そういう意味では、住まいの部分にいろいろな種類があるというのは余りよくないというふうには考えます。
 まして、市町村がやるショートステイが今度入ってまいりますと、在宅でやっていて、もう今晩はちょっともたない、一人にはできないというような状態になれば、どこかにお預けしなければいけないわけですね。任意入院でもするのかということになれば、またややこしい入院手続をやらなければいけないので、福祉ホームなり、あるいは通勤寮もそうだと思うのですが、どこでもとは言いませんけれども、それぞれの施設にいろいろな方がいていいではないですか。そして、そういう住まいがある程度安定して提供されるようにすべきだと思うのでございます。特に、福祉ホームをグループホーム的な視点に戻しまして、そして患者さんの安定的な住居確保というふうにはならないものか。
 ついでに聞きますけれども、後でショートステイにも入りますが、通勤寮あるいは福祉ホームあるいはグループホームなどにショートステイの対象として入ることができるのかどうか、その辺についてもお尋ねいたします。
○今田説明員 社会復帰施設の中で、特に福祉ホームとグループホームは、先ほど申し上げましたように、ニーズの多様性にそれぞれ対応させて整備を図っているということから、今おっしゃられますように、住宅の確保という視点一本に絞った形での整理はできないのかという御指摘かと思いますが、現状におきましては、それぞれ対象を異にしているという意味は、そこに配置すべき人、あるいは施設に差があるという点もあわせて評価しているということがあって、結果としてそのような分類をさせていただいております。
 いずれにいたしましても、基本的には障害者の方々が地域で生活をする、その生活の場の確保という視点においては、委員御指摘のとおりだと思います。そういった視点をもってこういった多様なニーズに対応できる施設整備というものを考えていかなければならない、私どももそういう理解で進めていきたいと思います。
 それから、ショートステイをこういうグループホームでありますとかあるいは福祉ホームで受け入れるようにしたらどうかという御指摘であります。
 ショートステイというのは、結局、家族がその人の介護も含めていろいろなケアをしていく役割が一時的に途絶えてしまって、なおかつ、かといって精神症状でそうなっているわけでもない、しかしそういったケアがないといけない場合にその介護あるいはお世話していただく方がいなくなったときに受け入れるということになりますと、在宅でやっていただいていたような介護でありますとかあるいは食事の世話とか、いろいろなことをしていただける程度の一定の施設規模が必要なのではないかということから、現在の福祉ホームあるいはグループホームでそれに対応できるというだけの体制が必ずしも十分でないことから、そういったところをショートステイの受け入れ先として今は考えてはおりません。
 そういうことでございますが、いずれにいたしましても、非常に少ないという実情もございますので、今後、例えば授産施設ですね、こういったところはかなり体制が整っておりますので、授産施設にはぜひこのショートステイの機能は担っていただきたいというふうに考えております。
○土肥委員 いや、それはちょっと困るのですね。ショートステイというのは、受け入れ先があって初めてショートステイという制度が可能になるわけですから。入所型の授産施設にお願いする、これだって、入所型の場合はベッドもそう余裕があるわけではございませんし、そのために一ベッド、二ベッドあけておいてくれというわけにもいかないわけでございます。
 では、端的にお聞きしますけれども、ショートステイのステイ先はどこなのでしょうか。
○今田説明員 現在の受け入れ先としては精神障害者生活訓練施設を考えておりますが、これに加えまして、現在、先ほど申し上げました授産施設についてもこれを広げるべく検討いたしております。
○土肥委員 まだ具体的に実施要綱が決まっていないので、そのときにもう一遍改めて確認させていただきますけれども、老人の場合は特養なり、幾つでもあるわけでございまして、ショートステイ事業というのは日常的に頻繁に行われているわけでございます。特に、最近の特養などは、ショートステイ用に最低二十とか三十ベッドを用意するという時代でございますから。
 私は精神病院についても考えがございまして、十万人からに及ぶ社会復帰施設部分は、もう病院の建物の中で、病棟を分けてもあるいは壁で仕切ってでもいいですから、社会復帰に向けた病棟ですよ、そしてなるべく開放病棟にして、大体精神病院の中に同じ敷地に社会復帰施設なども持っていらっしゃいますから、そういうショートステイの利用施設としても精神病院が機能してもいいのではないか。何か、いつもいわゆる精神科救急というようなことで言わなくても――ただし、診療報酬をどうするのかというような話もまた出てくるかもしれませんけれども。多面的な受け入れ先がないとよくないし、あるいはボランタリーなごく普通の家庭で、一晩くらいならお預かりしますよというような家が出てくるくらいの社会になってほしいなというふうに考えております。
 そうすると、今のところ、福祉ホームは使わない、授産施設の入所型と、もう一つおっしゃったのは何でしたっけ、再度お願いします。
○今田説明員 生活訓練施設でございます。
○土肥委員 それはどこにあるのですか。
○今田説明員 全国で今まだ二百カ所が整備されているところであります。
○土肥委員 全国で二百カ所とか、とにかく精神の世界は百単位でございまして、ショートステイにはなかなか役に立たないというふうに思うわけでございます。
 やはりグループホームなんかも、病気の症状が変わったわけではないわけでありまして、そこではみんな生活しているわけで、畳の部屋があれば布団一枚敷き足して泊まってもらえばいいわけですしね、そんな難しく考える必要ないと思うのですね。その部分について費用負担などは若干決めればいいわけでございますし、福祉ホームや援護寮、授産施設、どこでも受け入れますよ、あるいは受け入れることが必要とされているということをはっきりさせて、ショートステイの事業が活発になることを願ってやみません。
 さて、今度、市町村で制度として、居宅介護等事業、つまりホームヘルプサービスと、短期入所事業、つまりショートステイ、これが入ってくるわけです。私はこれは英断だと思うんですね。大変勇気ある決断をしていただいたというふうに思います。また、そうでなければ患者さんの社会生活というのは維持できないというふうに思うわけであります。この二つの事業を展開する――御承知のように来年から介護保険が始まる。介護保険だけで腰が引けている市町村があるわけでございまして、聞くところによりますと、半年延期とか保険料は半年取らないとか。私、介護保険推進論者でありますから、腹が立って、煮えくり返っておりまして、たとえ千人、千五百人の村でもまずやってみなさいというのが私の基本的な主張でございます。その上、これは平成十四年からでございますから、介護保険の見直しをやる前に始まっちゃうわけですね。
 まず、市町村に対してどんな説明と説得をなさったのか、その辺の経過からお聞かせください。
○今田説明員 今回の法改正におきまして、ホームヘルプサービスを開始するということで市町村にどのような形で御理解いただいているかということでありますが、私ども、この原案につきましては、全国市長会全国町村会に対して御説明を申し上げて、各関係者の皆さん方に御理解をいただいた上で提出をさせていただいたということでございます。
○土肥委員 それで何も文句をおっしゃらなかったんですか。
○今田説明員 当時、介護の導入ということで大変な役割を今から演じていかなくちゃならないということを当然念頭に置かれた上で、なおかつこのショートステイホームヘルプサービスについて市町村で行うという意味においては、これはやってもいいのではないかという形で御理解をいただいたというふうに思っております。
○土肥委員 これまた介護保険の結果次第ですけれども、相当問題になってくると思いますね。ですから、私の予想としては、介護保険、そして精神保健福祉の世界でも、ホームヘルプサービスが、首長選挙に名乗り出る人がいなくなるんじゃないかと思うくらい首長の責任は大変大きく重くのしかかってくるわけでございます。逆に、地域の住民、障害者、老人あるいは精神障害者のみならず、地域を大事にしようという本当に意欲のある首長がその時点で生まれてくるというふうにも思うわけでございます。
 先ほどから何度も申しておりますように、ネーミングの問題にいたしましても、あるいは種別の問題にいたしましても、あるいは障害程度に応じたいろいろな、福祉ホームでありますとかそういう設備の分化といいますか、そういうやり方は実はホームヘルプサービスでは全く役に立たないんですね。役に立たないというよりは、いろんな人が自宅にいらっしゃるわけでございまして、多種多様な、生活上の問題から自分の心の病から含めてあらゆる問題を抱えていらっしゃる、そして辛うじて自宅の生活ができている、しかし、だれかに助けてもらわないと生きていけないという状況に至って初めてホームヘルプサービスが展開されるわけでございますね。そうなると、この仕事というのは、マンパワーあるいは福祉人材としてだれがやるか。
 これは介護保険でも問題になるんでございますが、老人の場合は、これは介護保険事業者にぶん投げちゃっているわけですから、あとはうまくやっているかどうかだけチェックすればいいわけです。それから、そこで働く人件費なども、新しいスタートとしてやるわけで、これから厚生省も単価をお決めになるわけでありまして、用意ドンで始まって、文句なしに働きに応じて収入があるという世界になっているわけですね。
 ところが、在宅精神障害者へのホームヘルプサービスというのは、一体どういうふうに料金設定なり自己負担なりしていくんだろうか、ショートステイの費用はどうするんだろうかということをすぐに考えてしまうわけでありますが、その辺の詰めた話は、ホームヘルプサービス事業の事業展開の骨子みたいなものはお決めになっていますか。
○今田説明員 まずヘルパー制度でありますけれども、現在、私どもも身体障害、知的障害に係りますホームヘルパーの制度を持っております。こういった人たちについては市町村でこれをやっていただいておりますので、あわせて、今後、十四年以降については精神障害者の方々もお願いをしたい。したがって、その人たちに係ります費用については別途十四年までに定めなければなりませんが、基本的には、従来の私どもが運営しているものを参考にしながら結果として決めていくことになるというふうに思います。
 同じように、ショートステイにつきましても既に他の制度で行っている部分もございますので、そういったものも勘案しながら利用料等について設定を考えていくという予定にいたしております。
○土肥委員 そうすると、今身障者がそうでありますけれども、専ら行政ヘルパーを充てるということでいいんですね。
○今田説明員 基本的に、現在、身体障害、知的障害につきましても市町村が中心にやっていただいておりますが、これらについて実施主体は市町村でありますから市町村が実施主体となりますけれども、そのときに行政ヘルパーというのが市町村に雇用されているヘルパーかあるいは市町村の委託を受けるヘルパーかという意味においては、そういうバリエーションはあろうかと思いますが、実施主体者が市町村であるという点においては何ら変わりはないということでございます。
○土肥委員 これは、介護保険の議論の中で、老人の場合は全部、いわゆる介護保険事業者がみずから擁しているヘルパーを使って、行政も介護保険事業をするわけですけれども、主に民間事業にどんどんかわっていくだろうというふうに思うんですね。今やこの介護保険の世界で、行政ヘルパーが今いらっしゃるわけだけれども、これ以上ふやすとかいうような時代ではないだろうというふうに思うんです。
 私は持論として、障害者部分も老人介護と同じように在宅ヘルプサービスは統一してやった方がいいというふうに考えております。
 例えば身障者は取り扱いが難しいとか、あるいは精神障害者はなお難しいとかというような言い方を始めるとまた差別化が行われるわけでありまして、そうではなくて、ヘルパーの側に多様なヘルパーがいて、精神障害者をお世話するのに訓練も受け、認識もあるいはそういう理解も十分得ておれば、何も特定の人がやる必要はないわけであります。身障者でもそうであります。身障者のデイサービスもあるわけでございますから。余り極端なボディータッチというようなものもそんなにあるわけじゃないわけでございます。顔をふくとか背中をふいてあげるとか足を洗ってあげるぐらいのことはだれでもできるわけでございます。
 そういう意味では、今後のことになりますけれども、介護保険というようなシステムに身障者を入れた場合にどうなるかということは、過大な問題になりますのできょうは余り突っ込んだ話はいたしませんけれども、精神障害者の場合は数が多いということですね。相当な数がある。そうすると、行政ヘルパー、それが民間に委託している場合であっても、相当ふやさなければいけないという状況になるだろうと思うのですね。そのときに、行政が、市町村が、限りなく抱えていける事業だろうかということを思うわけです。
 そういうことから考えますと、一つ、例えばケアマネジメントというような表現が精神の世界には出てまいりますね、私もこれはおやおやと思っているわけですが、私の考えでは、将来介護保険との共同事業にするようなことも含めてということかなというふうに思っております。
 在宅のホームへルプ事業というのは、これは必須的人材というのはケアマネジャーなんですね、あるいはコーディネーターと言ってもいいと思いますが。これなしに、一々、この場合は保健所から在宅の精神障害者のところへ行って、生活を見て、そしてこんなヘルプ事業ができるねとかなんとかいってやっていたら保健所ももたない、あるいは精神保健相談員ももたない。やはりきっちりとした、社会支援をよく理解して、そして在宅の患者さんの置かれている立場をよく理解している適切な人材を送るというようなことをしないと、ローテーションでヘルパーをよこしていたんじゃ、これは大変なことになります。
 そういう意味では、今後どうするかということでございますけれども、すぐに必要になるのがケアマネジャーです。この辺はどういうふうにお考えですか。
○今田説明員 精神障害者につきましては、やはり社会性でありますとか、対人関係をとるのが余り上手でないとかいうようなこともありまして、本人のニーズに応じた支援がしにくい。そういうことでは、いろいろなメニューをつくっても、それをうまく利用するということについて御援助申し上げなければならない分野があるのだと思います。
 そういうこともありまして、医療的ケアから地域的ケアへ、あるいは地域ケアの中でも地域に根差した分散化をしていく、あるいはリハビリテーション、授産など、そういった幅広い多様性のある内容について、どういうサービスをその人にとって最もふさわしく提供するかということについて、それをとらまえていただける人あるいはとらまえる仕組み、そういったものに着目いたしまして、このケアマネジメントの視点に立った考え方がどうしても重要になってくるだろう、このように思っております。
 このことから、精神障害者のニーズへのそういった対応、それからそれに対する適切なサービスというものについて今試行的事業を行っております。都道府県単位ではございますけれども、こういった中で、ケアマネジメントに係ります方法でありますとか、あるいはどういう人がどういうふうにかかわり合いをすればいいのかといったことも含めて検討をさせていただいておりますので、この検討結果に沿いまして必要な対応をとらなければならないと考えております。
○土肥委員 これは、これから先、私どももじっくりと見守りながら、精神障害者が待ちに待っていた住まいの場もどうやら見えてきたな、あるいは、ケアマネジャーのような人がいて、身辺のいろいろな問題についてヘルパーさんをよこしてくれたり、こういう問題について解決してくれるんだなというようなことになれば、随分安定した生活ができるなというふうに思います。しかし、それは緒についたばかりでございますからもう一つ先が見えませんけれども、誠心誠意頑張っていただきたい、我々も協力したいというふうに思う次第でございます。
 最後に、大臣にお尋ねいたします。
 精神病患者さんの病気に着目したあるいは病院に依存してきた患者さんの扱いから、これからやっと地域へと、そして社会的なサービスのネットワークというのができ始めたというふうな感がいたしまして、今回の法改正も五年後また見直すということになろうかと思いますが、ピッチを上げてやっていただきたいと思うと同時に、先ほど申し上げましたように、在宅サービスになりますとケアマネジャーが必置でございます。そして、そのケアマネジャーの一つの資質として、精神の世界であればPSW、精神医療のケースワーカーがどうしても必要なのですね。
 私が今このPSWの世界で若干疑問を抱いているのは、試験も始まっておりまして、四千人ぐらいの人が資格を取ったといいますが、ほぼ病院勤務の人たちへの資格付与ではなかったのか。病院勤務は、病院という経営主体の中におりますから割に恵まれたといいますか、あるいは診療報酬もつくわけですから、精神保健福祉士の仕事に対する診療報酬もつくというような意味では非常に安定しているわけです。
 今度は地域、在宅の世界にこのPSWの人たちが入ってくるとなると、これは全然格差があるわけですね。何しろ小規模作業所の国の補助金は百十万ですから、そんなもので役立つわけでないし、ですから、どうしてもそういうケアマネジャーなどという人は、これはPSWにやっていただきたい。民間にもどんどんPSWの人材がおりてきまして、そしてその人たちは、病院勤務じゃなくて、みずから意欲を持って精神障害者の在宅サービス、ショートステイに取り組んでもらえるような人材がどうしても必要だと思うのですね。
 だから、今後よほど行政あるいは政治の場でそういう人材確保のドライブをかけないと成功しない仕事になるというふうに思うわけでありますが、今後の精神障害者の在宅福祉、地域福祉、そしてPSWの役割はどうあるべきかについて大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○宮下国務大臣 委員の今の御意見をいろいろ拝聴いたしておりますと、やはり地域社会に溶け込んだ、地域社会とバリアフリーの、特に心のバリアフリーの社会の中で、障害者、精神障害者のあり方も模索すべきだというふうにお伺いいたしました。私もそれは本当にそうだと思うのです。
 ただ、現状の段階では、やはり支援施設その他、グループ別の、定型化した施設を類型化してやるという手法に基づかざるを得ないという側面もあると思うのですね。それでこういう仕切りになったりしておりますが。では、グループホームと生活支援施設である宿泊提供施設とは一体どこが違うのかというような議論を考えますと、機能的に見ると非常に共通したものが多いわけですから、そういった点もこれから配慮しながら、現実の側面からこういう制度をスポットを当てて見ていかなきゃいかぬなという感想を持たせていただきました。
 同時に、ケアマネジャーの問題等も、確かに施設に配置するということは優先して考えられるだろうと思うのですけれども、そういう考え方に立ちますと、民間に自由に相談相手になれるようなシステムで、専門家がいるということが極めて重要であると私も思います。したがって、当面この支援センター、いろいろつくりますから、そういう中の職員の研修、質を高めたり、あとそういう資格者も現場のかかわり合いに非常に魅力を感ずるようなバックアップをしていかなきゃいかぬなと思います。
 そんなことで、人材確保というのはやはり基本ですし、その人材は、単に職業意識としてサラリーをもらうためにやるということでなしに、本来的に人間尊重といいますか、そういう視点に立ってやれる人たちを大いに養成していく、そして社会のあり方と一体化させていくということが必要なように感じます。
○土肥委員 終わります。ありがとうございました。
○木村委員長 【略】
 質疑を続行いたします。石毛えい子さん。
○石毛委員 民主党石毛えい子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず最初に、大臣に御認識を承りたいと存じますが、この法律案全体の評価についてでございます。
 参議院では修正可決をされまして、参考人の皆様の御意見では一歩前進という評価もいただいているわけでございますけれども、参考人の方の御意見あるいは質疑等でもまだ人権の確保が、それからきょう社会復帰という表現が、土肥委員の御発言の中でこれはいかがなものかというような御意見もございました、地域生活の促進というような点からも課題を残しているのではないかと。そういうようなことも含めまして、参議院では五年後に向けた検討規定が修正可決されているという状況でございます。
 その意味では、この法案は、あるべき目標からしますと、まだ中間的な段階にあるのかという思いがいたしますけれども、大臣の御認識はいかがでございましょうか。また、この五年間の間に解決していくべきどのような課題があるというふうに御見解をお持ちでいらっしゃいますでしょうか、お尋ねをいたします。
    〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
○宮下国務大臣 ただいま御審議をいただいております法律案は、平成五年の法律附則によりまして見直し規定が規定されました。それに基づいて、精神障害者の人権に配慮した医療の一層の確保や緊急時の医療の確保、あるいは在宅精神障害者の福祉施策の拡充等、かねてから指摘されている問題の解決を図ろうとして対応したものでございます。
 この改正内容につきましては、おおむね公衆衛生審議会の意見具申に沿ったものでございますが、精神医療に関する情報公開の推進方策とか、また、重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇のあり方等々、あるいは長期入院者の問題等々、幅広い検討が必要であるという旨の附帯意見をいただいております。
 そうしたことを踏まえまして、今回はあとう限り人権に配慮した諸点の改正案を御審議をお願いしているわけでございますが、今後、そういった犯罪を犯した精神障害者の扱いの問題でありますとか、あるいは保護入院の問題でありますとか、あるいはまた長期入院の対応の仕方の問題等々、さまざまな課題がまだ残されていることも否定できない事実でございまして、こうした問題を含めまして、五年以内にということになっておりますので、結論が得られれば、あるいは五年を待たずしてやるということは自民党の方の提案等でもございますし、私としても、まとまればそういった方向で対応していきたいと思っております。
○石毛委員 私は、例えば一九九一年十二月に精神病者の保護及び精神保健ケアの改善に関して国連原則が決議されておりまして、その中では、例えば病気をお持ちの方の治療はその人の地域でするというようなことに照らしましても、それから障害者の機会均等化に関する標準規則で当事者の方の意見を聞くとか、最近では、WHOの精神保健ケアに関する法基本十原則の中で、自己決定あるいは自己決定の援助というようなことを記しているとか、さまざまな国際的な情勢から見まして、まだ解決すべき本質的な課題が残されているというふうに認識しております。
 それで、私の認識と大臣が今御答弁くださいました課題では重なる部分も、例えば保護者制度の検討というようなところではあるかと思いますし、あるいはずれているところもあるように今承りましたけれども、私の方の考え方を述べさせていただきまして、ぜひともどうぞよろしく御検討くださいと御要望を申し上げさせていただきたいと思います。
 それでは、この法案の具体的な中身で、法律と実態の乖離というような問題につきまして、精神障害者の方の人権確保という角度で少し具体的な点を質問させていただきたいと思います。
 例えばでございますけれども、措置入院医療保護入院、あるいはこの間の質疑で任意入院の患者さんも随分閉鎖病棟におられるというような御指摘もございましたけれども、その閉鎖病棟で通信の自由の確保というような観点からいえば、公衆電話がどのように設置されているかというのは大変重要な問題であるということは申し上げるまでもないと思います。
 そこで、一九九五年の総務庁行政監察報告では、このときの勧告としまして厚生省に改善勧告がなされました内容をちょっと触れてみますと、調査対象二十八病院のうち電話未設置病院が四病院、看護婦詰所に設置が七病院、それから行政機関の電話番号を掲示していない病院が八となっている。これに対して厚生省は、九六年六月と翌九七年十二月に改善措置状況を回答し、十七病院で改善、それから残り二病院は近く改善というように報告をされておられます。
 ところが、さらに翌年の九八年、これは、国立精神・神経センター及び国立精神療養所の立入調査の結果としまして、ここでも電話未設置病棟があるというような指摘がなされております。そのほかにもいろいろな立入調査の結果の問題点が指摘されております。
 私は、このような経緯をたどり返してみますと、例えば午前中の議論でもございましたけれども、精神医療審査会の機能を強化してこのような権利をもっと遵守していける仕組みをつくったというふうにお考えになっていらっしゃると思いますけれども、まず、こういう事例が今なお後を絶たないというようなことについてどのように認識していらっしゃるでしょうか。
 あるいは、九八年のこの報告以降、精神保健福祉センターなど都道府県はこういう実態を調査されているのでしょうか。そのあたりをお尋ねしたいと思います。
○今田説明員 まず、平成七年の行政監察結果に基づく勧告におきまして、「人権に配慮した措置の徹底等」という項の中で、電話の整備等について指導するよう指摘を受けたところでございます。それを受けまして、全国の厚生関係部局長会議などの各種会議におきまして指示申し上げますとともに、事務指導監査それから通知の発出等を通じましてこの趣旨を徹底するようにということで措置をしたところでございます。
 しかしながら、平成十年に厚生省が実施しました国立の精神病院の立入調査の結果では、三病院において公衆電話が設置されていないというようなことが明らかになったところであります。
 全国の精神病院の模範ともなるべき国立の医療機関におきましてこういったことがあるということはまことに遺憾でありまして、この事実を厚生省としては本当に真摯に反省して、改善に努めることとしたところでございます。
 もちろん、この調査結果を踏まえまして、都道府県などとも協力して精神障害者の人権に配慮した精神医療の確保に取り組んでいく所存でありますが、なお、精神病院に対しましては、原則として年に一回はすべての精神病院に都道府県の立ち入りをすることとなっております。厚生省も、この年一回の都道府県等によります立ち入りの指導状況を確認するというようなことなどを通しまして、精神病院における処遇の実態の把握及び改善指導について徹底することとしている次第でございます。
○石毛委員 ただいま、年一回都道府県の立ち入りを実施し、その結果について指導をされるという御回答をいただいたと思います。そういうような実施状況あるいは今回の法改正で、先ほどの精神医療審査会の機能強化というようなところで、これから精神病院は、たまたまのこととして、ケアレスのこととして何かがあるということは、これはあるのかもしれませんけれども、今回の法改正あるいは今おっしゃられました行政の取り組みによりまして、今後人権侵害は基本的には起こらない、起こさないというように御確認いただけるんでしょうか。今回の法改正はそういうところまでラインを引き上げたというふうに認識させていただいてよろしいんでしょうか。
○宮下国務大臣 今回の改正の主眼点は人権の配慮あるいは確保ということでございまして、今病院に対する立入検査のお話がございましたが、今お話しのように年一回立入検査を行いますが、同時に入院患者の診察とか人権の保護に関する聞き取り調査も実施するように指導をいたしております。
 そういった意味で審査会の充実でありますとかいろいろ各種の施策を行っておりますが、私どもとしてはこれによって人権擁護の施策が相当前進したものというように受けとめておりますが、なお、こうした病院の性格上あるいは患者の性格上、どうしてもそういうことの可能性なしとしないと私も思います。したがって、よく都道府県等を通じあるいはいろいろな所要の関係者に注意を喚起して、この改正の趣旨を徹底していかないといけないと思いますので、人権擁護ということは一つの大きな柱になっておりますので、その角度から指導してまいりたい、こう思っております。
○石毛委員 今の大臣の御答弁は、その御決意という意味では大変重いものとして受けとめさせていただきたいとも思いますけれども、ただ、国立精神・神経センター及び精神療養所の立入調査の結果で私は大変驚くんですけれども、患者の処遇についての調査結果が、身体的拘束ということに関しまして、調査実施患者さんの人数八十八人のうち、すべて適正に実施されているものが五十一人、五八・〇%。ほぼ半分の方が、九八年の時点、昨年の時点でなおこういう状況にあるということは、行政指導を強めますというようなレベルではとても解決つかないのではないかという思いが私は強くいたします。
 そこでもう一歩先に進めてお尋ねしたいと思いますけれども、私は、精神病院、精神医療機関に、例えば精神科のドクター、従事者、そして患者さんという、そうした二者の関係だけではなくて第三者の関係がここに介在できるようにすべきではないか、第三者のチェックが可能な仕組みにすべきではないかというふうに考えております。
 先日のこの委員会での参考人質疑で小林参考人もおっしゃられていたと思いますけれども、せっかく精神医療審査会があってそこに患者さんの権利の擁護に関して申し出をしていくことができても、退院請求する患者さんの人数が、本当に、三十万余入院されているのに千件に満たないというような状況、あるいは処遇改善請求も五十件ぐらい。ですから、請求そのものがなければ審査会の機能を強化しても働きようがないわけだと私は思います。
 例えば行政の方の指導監督の結果から、また審査会が機能するというルートもあるのかもしれませんけれども、小林参考人がおっしゃられていましたように、何より大事なのは患者さんが御自分の悩みや困っていることを、これはおかしいんじゃないか、これは人権侵害ではないかというように感じ、受けとめていらっしゃることを少しでも発言しやすい療養環境をつくっていく、アメニティーを高めていくということで、私は第三者によるチェックシステムをつくっていくということが今問われている大変重要な課題ではないかと思います。
 東京にも大阪にもあるいは各地にも患者さん当事者の方によるアドボカシーのNPO的な活動組織もございますし、あるいは関係者の方たちの活動もございますから、第三者の方がチェック機能を果たす方法でアドボカシー機能を充実していくことが、今十分に可能なインフラはできつつあるんだというふうに認識しておりますけれども、この辺はいかがでございましょうか。
○宮下国務大臣 一般論としては、第三者機関が最近の情報公開その他いろいろな重要な問題について関心を示しながら、いろいろな意見を述べられる機会が多くなっているのは御指摘のとおりだと存じます。
 しかしながら、この問題は精神障害者を対象にしておりますから、判断能力も必ずしも十分でないとか自分の意思を正確に伝えられない、そのために病院においても本人の意思に反したような処遇が行われるという可能性があるわけでございますので、私どもとしては、今回の改正で指定医の取り消しの問題を初め、精神医療審査会におきましても、これは内部的な行政組織かもしれませんが、その機能強化を図ったところでございます。
 他方、一般論として今申しましたような傾向にはあり、その意見はだんだん反映されてくるような情勢になってきていると思いますけれども、NPO等の外部団体によるチェックというのは、やはり入院患者のプライバシーその他医療関係者との問題もあり、これが制度化されていいかどうかということは慎重な配慮を要するんじゃないか、第三者による意見の吸い上げは当然審査会等でも行っていかなければいかぬと思いますが。
 そんな意味で、プライバシーとの関係で、こうした問題に対応するには慎重な配慮が必要だ、私どもとしては今回御提案申し上げております審査会の拡充強化によって対応していきたい。そのほか、法の隅々に人権配慮の規定をちりばめているわけでありますけれども、これがそれぞれ実効性のある政策を展開すべきものだというように考えております。
○石毛委員 プライバシーの保護をどうするかということについてはもう少し議論をさせていただきたいという気持ちもありますけれども、私がいただいています質問時間は六十分ですので、私の方から考え方を述べさせていただいて、次の質問に移りたいと思います。
 最近の精神保健ケアに関する法基本十原則、WHOの精神保健・依存症予防部門が出しているこの文書を拝見しますと、自己決定の過程を援助される権利としまして、その指針としまして幾つか挙げられているんですけれども、法律家やソーシャルワーカーももちろん挙げられていますけれども、四番目に「オンブズマンや患者自治会のような、精神科患者に援助を提供する仕組みを構築する。」というようなことも現にWHOの指針の中に挙げられている。
 ですから、プライバシーの保護というのは、システムとしてどういう担保の仕方をするかということによって、大臣のお考えと私が今申し上げているそこの考え方の間の線の引き方というのは当然違ってくることだと思いますし、私は、WHOの基本原則の中でもこういうことが指摘されておりますということを申し上げさせていただきたいと思います。
 それから、安田系病院、特に精神病院大和川の問題にしましても、大阪の精神医療人権センターが本当にたゆまぬ継続したアドボカシーの活動をされていらしたからこそ、大阪府大阪市もその緊張関係の中で行政としての役割を果たされた、そういうダイナミズムがあるんだと思います。
 そういう意味で、医療者あるいは医療経営者の方と患者さんという二者の関係だけではなくて、やはり総体的に判断でき、そして患者さんの人権あるいは治療に関して一緒にアドボケートできるような仕組みということに、この五年間の検討経過の中ではぜひとも実現する方向でお受けとめいただきたいということを要望申し上げまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 保護者制度でございますけれども、これも随分委員の皆様から御見解等々が述べられております。今回、自傷他害防止の監督義務というのが保護者の方からなくなりましたということで一歩前進と評価されているところでございますけれども、まだ財産上の利益の保護や医師への協力義務というようなことはこの法文の中に規定されてございます。
 それから、引き取り義務というようなことに関しましても、今、民法の扶養義務者の義務というのは経済的扶養義務であって、介護等々の実体的引き取り義務というか扶養義務というのはないというふうに認識されるようになっている、現時点では保護者ないしは保護者の一部であります扶養義務者の役割についての認識がそこまで来ていると思います。
 それから、今国会では来週か再来週ぐらいから審議が始まるのかと思いますけれども、民法一部改正で新しい成年後見制度がスタートしようとしております。こういう時期に、なぜこの精神保健福祉法の中でなお引き取り義務や財産利益保護が残されたのでしょうか、そのことについてお尋ねしたいと思います。
○今田説明員 今、私どもの所管しておりますこの精神保健福祉法におきましては、精神障害者がその疾病の特性によりまして病識を欠いて医療を受ける機会を逸することがあり得るということに対して、精神障害者の人権に配慮しながら適切な医療及び保護の機会を提供する役割を果たす者として、身近なところに、その保護者の役割というものに期待をして制度化をされている、そのように認識しております。
 一方で、成年後見制度につきましては、判断能力が不十分な者の財産上の保護を図るための制度でございまして、精神保健福祉法上の保護者の役割と必ずしも同じレベルの役割ではないというふうに思われます。そういう意味で、現在の後見制度の見直しは保護者制度の廃止につながるものではないという考え方から残させていただきました。
 ただ、本人の保護を図る上で成年後見人が最も責任を有する、こういうことになっておりますことから、保護者になることができる者の範囲について、後見人のほかに、新たに成年後見制度における保佐人につきましても保護者になれるというような形で成年後見制度との連携を図ることとしたところでございます。
○石毛委員 その成年後見制度と保護者の仕分けにつきましては、後ほどもう一度、地域福祉権利擁護制度との関連でお尋ねしたいと思います。
 事実のこととしてお教えいただきたいと思いますけれども、公衆衛生審議会の専門委員会の資料を拝見しておりますと、「措置入院から直接地域に退院する者や仮退院を行う者についても、地域で生活出来るようになるまでの支援は必要なのではないか。」という文章の続きに、「しかしながら、引き取り義務の表現を実態に見合ったものとすることについて検討するべきではないか。」という、これはどういうことなのでございましょうか、あるいはどんな検討がなされたのでしょうか。
○今田説明員 御指摘のように、精神保健福祉法に関する専門委員会の「保護者の義務について」という検討メモがございます。この中で、御指摘のように、引き取り義務の表現を実態に見合ったものにするということについて検討すべきではないかとの意見はございました。
 その後、保護者の引き取り義務につきましては、その義務の対象となっている措置入院患者の措置が解除されたときに、その後も引き続いて医療等を確保する必要がある場合が多いということで、そのような場合にやはり保護者による支援を確実に担保する必要があるということから、御指摘の委員会の報告書、それから、その後の公衆衛生審議会の意見書においても、引き取り義務について当面は必要であるという結論に至ったというふうに理解をいたしております。
○石毛委員 当面は必要であるというのが結論というふうに承りました。
 次の質問ですけれども、法律二十一条に、保護者がいないときなどは市町村長が保護者になるという規定がございます。この制度も、公衆衛生審議会の専門委員会では、現在の制度では市町村長の保護者としての役割が果たせていないのではないかという議論がいろいろなされた後に、現在の制度にかえ、市町村による成年後見人の申し立て制度を設けて、従来市町村長が行ってきた役割を成年後見人が担うようにするという検討がなされたという指摘が先ほど来の報告書にございます。その結果として、九九年一月には、審議会の意見書は、市町村による成年後見人の申し立て制度を設けることというふうに提起されたということです。今回、予定されております民法改正に伴う整備法としまして、精神保健福祉法五十一条の十一の二に市町村長による審判の請求が新設されました。これが経緯でございます。
 しかし、この新設された規定はできる規定というふうになっておりますので、実際には市町村長が成年後見人の申し立てをするということが余りなされないのではないか。なされないとしたら、現在、市町村長が保護者になられていても、その問題点、矛盾点がなかなか解決していないとかいろいろ指摘されておりますけれども、そういう事実は解決せずに依然として残ってしまうことになるのではないか。
 これも法規定と実態が遊離するという一面かというふうに思いますけれども、このあたりについてどのように認識をなさっていらっしゃるのでしょうかということをお尋ねしたいと思います。
    〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
○今田説明員 五十一条の十一の二の規定は、今御指摘いただきましたように、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案により追加される条文でありますけれども、この規定の趣旨につきましては、身寄りのない精神障害者の保護の必要性について迅速かつ的確な情報を入手することができ、かつ、本人の利益保護のために申し立て権を適切に行使することが期待できる関係機関ということで、福祉関係の第一線にあります行政機関たる市町村長に申し立て権を付与する、こういう仕組みになっているわけであります。
 問題は、これができる規定になっているということでありますが、もちろん身寄りがないという場合の保護者は市町村長がこれを担っていただく、しかし、市町村長が担っていただくについて、必ずしも市町村長が十分な保護者としての役割を演じているかどうか、この点は確かに問題があるケースが存するということは言えようかと思います。
 市町村長がもしそうであれば、それよりももっといい保護者としての役割は、この民法の改正によって申し立て権を行使して、新たな後見者として家庭裁判所が選任される方が、本当にそのケースにとっていいんだというような御判断をしていただけるという選択肢が今度広がるということになります。
 したがって、もちろん判断は家庭裁判所でありますし、申し立てをするかしないかは市町村の判断ではありますけれども、今の保護者制度というものとこの制度という選択肢の広がりの中で、最もそのケースにふさわしい保護者というものが得られ、その人たちの活動がその患者さんにとって有利に働くという点においては大変前向きな民法の改正でもありますし、五十一条の十一の二の運用はそのような形で利用していただけるようにこれから御指導していかなければならないものと考えております。
○石毛委員 次の質問ですけれども、厚生省社会・援護局が今年度から導入しようとしております地域福祉権利擁護制度とこの保護者制度がどのような関係になっているかということをお教えいただきたいと思います。
 精神保健福祉法では、例えば家族や親族以外の者で保護者になれる方は、後見人、または先ほど御指摘がございました、新しく制度が成立したら保佐人ということになります。一方、社会・援護局の方で計画されております地域福祉権利擁護制度の方では、専門員とか生活支援員という新しい機能が生まれてくるわけですけれども、この方たちは精神保健福祉法の保護者になれるというわけではありませんから、それぞれ違っているわけです。
 他方で、例えば地域福祉権利擁護制度の生活支援員の方がどんなことをなさるのかというようなことを、厚生省が出されております説明資料などを拝見しておりますと、日常生活に伴う契約に生ずる金銭の管理というようなことが生活支援員の役割として書かれているわけですね。
 そうしますと、先ほど御指摘くださいました医療の必要性というところでは、まだここのあたりは生活支援員や専門員がどういう役割を果たすのかというのは最終的には結論が出ていないかと思いますけれども、財産管理の方では実態として重なっている部分があるんだと思います。障害基礎年金も累積すれば非常に高額になるわけですから、財産の定義もいろいろあるのかもしれませんけれども、そういうふうに申し上げてもよろしい局面もあるかと思いますと、保護者と生活支援員が重なる仕事をすることになるのではないか、このあたりはどんなふうに仕分けをするんでしょうか。これからルールを定めていくんでしょうか。
○炭谷政府委員 まず、地域福祉権利擁護制度でございますけれども、この趣旨というのは、先生十分御存じのようでございますけれども、結局、自立した生活を援助するために新たに今年度から導入しようとしているものでございます。
 そのために、現在の生活支援員の役割でございますけれども、自立するために必要な福祉の面のサービスという、まず領域の制約があるわけでございます。福祉のサービスを利用するに当たっての情報の提供とか、また、どのサービスがいいかという選択の援助をする、そういう福祉の面の制約が一つございます。
 それと、今先生御指摘されました財産管理の問題ですね。これは、確かにそういう面がありますけれども、私どもの地域福祉権利擁護制度の場合は、日常生活に必要な割合少額の金銭管理というふうな制約で考えております。これはやはり民法上の成年後見制度との調整というようなところから出てきておりますので、精神保健法上の保護者とはややその領域が異なるわけでございます。
○石毛委員 イメージが、法律の制度にイメージという表現は適さないのかもしれませんけれども、今ずっとお話を伺っていまして、イメージが何か私の中では少し整理をされてきたような思いがするんです。
 成年後見制度は、大別すれば財産管理に関するもので、後見、保佐、補助ができていくわけです。それで、地域福祉権利擁護制度の中での専門員、生活支援員は、ここで金銭に関して扱う領域というのは少額の金額だと。少額というのはどういう金額かよくわかりませんけれども、私は、ちょっと先ほど申し上げましたけれども、年金も累積すれば大きくなるわけですし、そういうこともありますから少額というのはどれぐらいかなという思いもあります。
 それから、あと、専門員がこれからケアプランをつくっていくということになるんだと思いますけれども、そのときに、例えば医療の受療に関してどういう役割を果たしていくかというようなこともこれからの検討課題であると思いますけれども、その辺がまだグレーゾーンというか確定していない部分かと思いますからあえて触れません。
 今の御回答ではっきりしましたのは、結局、精神保健福祉法の保護者制度が残って、財産管理の問題も、医療の必要性といいますか、保護者として医療を推奨していくというその責任も精神保健福祉法の中に残っていて、その部分に関して地域の権利擁護システムの方にあるいは成年後見制度の方にシフトすることではありませんというのがはっきりしたわけですね。そういうふうに確認させていただいてよろしいわけですね。
○今田説明員 権利擁護システムという意味から見れば、おおよそ御指摘のとおりだと思いますが、民法の方でいいますと、民法で後見人あるいは保佐人というのができた場合に、その後見人、保佐人がまさに保護者になっていただける第一順位、第二順位ということでありますから、決して民法の方にも縁がないということではないというふうに私は理解しております。
○石毛委員 わかりました。おっしゃるとおり、ちょっと私の発言が不十分だったと思います。保護者になれる資格要件として後見人、保佐人があるというところで重なるというところは、おっしゃるとおりだと思います。
 ただ、私が指摘させていただきたいのは、先ほどの、例えば精神病院の評価システムとして第三者が入れる仕組みをつくれるようにすべきではないかということとある意味では同質の発言になるかと思いますけれども、せっかく地域に地域権利擁護システムというようなものができてくれば、例えば措置入院をだれがどう判断するかというのは、これはまたこれとして議論しなきゃならない問題ですから、それは別にしましても、例えば入院されていらっしゃる精神障害の、精神の病気をお持ちの患者さんのところに地域の権利擁護者が訪ねていって、それで、何か問題がありますかというような、そういう機能は当然果たしてもいいのではないか。そういうふうに考えていかないと、せっかく今大きくシステムが動こうとしているときに、この時代、もとの制度の上に何かを足していくというのでは足りないのではないか。せっかく新しい制度が生まれようとしているときに、そちらにシフトして、精神医療、精神病院というのがもっと相対的な関係の中に位置づくようにしてもよろしいのではないかというのが私の見解なんでございます。
 大臣、こういう時期でございます、今国会は社会福祉事業法の改正は間に合うかどうかというふうに言われているようでございますけれども、いずれにしろ、今、措置から契約へとか、権利擁護とか大変大きく動いている時期ですから、この精神保健福祉法案の中での保護者制度も、もう一歩も二歩も進んで、もっと抜本的な改革が今回提案されてもよかったと思います。でも、今回そういう法案にはなっておりませんから、これからの地域福祉権利擁護制度との絡み合いで、ただいま私が申し上げましたことなどに関しまして、大臣、どのような御感想、御認識をお持ちでしょうか、承りたいと思います。
○宮下国務大臣 十分検討に値する御見解だと思います。
 この保護制度については両論ございまして、廃止した方がいいという意見もかなり強いわけでありますから、そうなれば、それに補完すべきいろいろのメカニズムが必要になるわけで、今御提言のような考え方も一つの有力な考え方だと存じますので、それらを踏まえて今後保護制度のあり方については検討してまいります。
【次回へつづく】