精神医療に関する条文・審議(その99)

前回(id:kokekokko:20051113)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。

第145回衆議院 厚生委員会会議録第11号(平成11年5月21日)
【前回のつづき】
○福島委員 こういうことを御質問いたしますのも、先ほど、情報の提供等々いろいろ横断的な課題があって、その中で精神科の医療というのも議論されると、まさにそれはそのとおりだと思いますけれども、そういった横断的なテーマの中での議論であれば、恐らく私は横並び的な改正にしか結びつかないのだろうというふうに想像するので、あえてお尋ねをしたわけでございます。
 これは非常に古い資料でございます。精神科医療に一体日本の医療費のどの程度が費やされているのかということで、いろいろなデータがあろうかと思いますけれども、これは古いのでちょっと恐縮ですが、昭和六十年で七・五%、それから平成二年で七%、平成五年で六・七%ということで、精神科医療に費やされている医療費のシェアというのはどうも、だんだん広がっているということではなくて、だんだん少なくなっておるというような印象を抱いております。ここのところを、厚生省はさまざまな数字をお持ちだと思いますので、お聞かせいただきたいんです。
 医療費に占める精神科医療のシェアというのはどういうふうに変化してきているのか。減っているのか、ふえているのか、現状維持なのか。そしてまた、入院、外来医療、それぞれございますね。それぞれでそれはどうなっているのか。そして、入院患者一人当たりの医療費というのは、精神科医療においては他科の医療と比べてどの程度の差があるのか。これは諸外国でも同じような趨勢なのか。この点についての情報をお教えいただきたいと思います。
○今田説明員 総医療費に占めます精神科医療費のシェアの推移でございますが、平成八年度の実績で、総医療費二十八兆五千二百十億円に対しまして精神科医療費一兆四千六百八十五億、シェアは五・一%であります。これが平成八年でありますが、昭和六十一年でありますと六・四%。六・四から五・一に減少しているという傾向がございます。
 さらに、それを入院と外来に分けて申し上げますと、入院につきましては、額は省略させていただきますが、パーセントだけで申し上げますと、平成八年度の実績では一〇・九%でありますけれども、昭和五十七年は一三・三%でありまして、減少傾向にございます。一方で、外来でありますけれども、外来につきましては、平成八年の時点で二・六%となっておりますけれども、昭和五十七年は一・六%でありますから、そういう意味では増加の傾向にあるという状況でございます。
 なお、外国につきましては、このような詳細なデータがございませんので、お答えは御容赦いただきたいと思います。
○福島委員 いずれにしましても、入院から外来のシフトは確かにある、しかし総体としては減ってきているという話だというふうに思います。
 ですから、中医協での議論は、最終の出口のところでは余りシェアを動かさないというような議論になるのか、シェアのことが必ず問題になるだろうと私は想像しているんですけれども、この点数をどう動かしたときにこれはどうなるのかという議論に必ずなる。ですから、精神科医療に対して医療資源の配分を厚くしようということであれば、ここのシェアの見直しをするんだということがまず入り口にないと、結果としては今までと何も変わらないという話になるのではないかというふうに私は思います。
 ですから、今後の議論の中で、それぞれの主張をまとめますとなかなか今申し上げたようなことが実現をしないかもしれませんけれども、ぜひとも反映をさせていっていただきたいというふうに私は思います。
 参考人の意見陳述の中でもございましたように、評価を高めなきゃいけない。ですから、日本にたくさんの精神病院がございます。いろいろな質の病院があろうかと思いますけれども、端的に言って、評価が低くて医療資源の配分が少ないからよい質の医療が提供されていない、そういう場合があるんだというふうに考えていいのか、この点についての厚生省のお考えをお聞きしたいと思います。
○羽毛田政府委員 診療報酬の面におきましても、私ども、精神科医療の重要性ということについては配慮をしながらやってきたつもりでございます。ただし、そこのところが十分であるかあるいは改善の余地があるかという点については、今後の中医協論議の中でも御議論をいただかなければならない事項だというふうに考えております。
 今先生の御指摘は、まず、精神科医療にどう全体の資源配分をするんだということを腹を決めてやるべきではないかということでございましたけれども、それは、それぞれの診療科あるいはそれぞれの医療分野についてそれぞれに重要でございますから、そういった論議もやはりやっていかなければならない。要は、単純に全体の配分は変えないでやるということではなくて、それぞれの重要性についてもやはり論議をしていただく中で答えを出していくということが大事じゃないかなというふうに考えております。
 それから、今までの体系の中の話といえば、今のようなことで、改善の余地があるか十分かは別にしまして、私どもはそういった重要性には十分配慮をしながら評価がされてきたというふうに思っておりますが、その中におきまして、現行の診療報酬体系の中で、例えば看護料というようなものにつきましては看護婦の人員配置状況に応じて点数をつけているということになりますと、やはり精神病院は一般病院と比較して看護人員の配置状況は低うございますから、こういった面についてはどうしても診療報酬の水準が一般病院よりは低いというふうになっておりますし、他方、技術といったようなところにつきましては、入院精神療法を初めといたしましていろいろな精神科における技術領域について、逐次、点数の設定あるいは引き上げ等も行ってきているということでございますので、そこは、高い低いは、そういう個別に至りましたところでは一概には言えないのかなというふうに考えております。
 いずれにしても、今後の精神科医療の重要性あるいはこれの評価ということは中医協における議論の一つの視点として重要だというふうに考えておりますので、そのような姿勢でやってまいりたいと思います。
○福島委員 看護婦さんの数が相対的に少ないのでどうしても診療報酬上の配分が少なくなるんだというお話もございましたけれども、精神科特例を廃止すべきであるという意見も非常に強いわけでございます。しかし、現実の医療提供サイドはなかなかそれは難しいというような意見もあろうかというふうに思います。
 ここのところは、私がお尋ねしたいのは、一体何が障害になるんだろうか。マンパワーの問題なのか、それとも、現行の診療報酬体系の中では評価が低過ぎて特例を廃止するような形ではなかなかその経営が難しいということになるのか、ここのところはどちらなんだろうかという素朴な疑問を持つわけでございます。この点についての御見解をお教えいただきたいと思います。
○今田説明員 この精神科特例ができた昭和三十三年当時で申し上げますと、当時はスタッフの確保が困難だったということ、それから疾病が慢性的に経過するということからこのような特例が設けられたわけでありますが、現在においてこの特例は早急に見直すべきだという御意見が多々あることは十分承知をいたしております。
 それが解消できないとすれば何が理由なのかということでありますが、関係される皆様方の御意見の中では、マンパワー、特に精神科の医師の確保が困難だというような御意見もありますし、一方で、現在の診療報酬ではマンパワーの増大はできないという、そこは表裏の関係になるのではないかと思います。
 いずれにしても、この精神科特例というのは、もう十分に病床の整備が進んできたわけでありますから、昭和三十三年当時と状況はやはり違う。そういう中から、精神病床のあり方というものは、今後、その中に非常に急性期で手のかかる、つまりマンパワーをたくさん投資しなきゃならない方々と、それから非常に長期にわたって入院していらっしゃる方で、むしろ生活とか介護を重視するような方々、それが精神病院という一つの中にいらっしゃる、この施設体系をもう一度見直す必要があるのではないかということで、医療提供体制の見直しに合わせて公衆衛生審議会の方で施設体系を少し根本的に見直していこう、こういう措置を講ずることで適切な運営ができるような施設類型というものを考えていく必要があるというふうに思っております。
○福島委員 今後の方針というのがよくわかりました。いずれにしましても、精神科特例というものの廃止に向かっての障害に診療報酬の問題が絡んでくるということであれば、先ほども保険局長から御答弁ございましたけれども、今後の検討の中で、廃止して、どうしたら望まれる精神科医療が提供できるのかと到達点を考えて、そこから逆算をして診療報酬の問題の検討を進めていっていただきたい、そのように私は申し上げたいと思います。
 次に、同じくまた精神科医療の質の向上ということでございますが、先日の参考人の陳述の折にも外部評価が非常に重要であるという御指摘がございました。これはもっともっと進んでいかなきゃいかぬというふうに私は思います。それは一般の病院でも同様でございますけれども、数年前から日本医療機能評価機構が病院の評価ということを行っておりますけれども、この中で精神病院についての評価というのはどの程度進んでいるのか、実態をお聞かせいただきたいと思います。
○小林(秀)政府委員 第三者によります病院機能の客観的評価を推進していくことは、病院の提供する医療の質の向上を図っていく上で大変重要な施策だ、このように思っております。
 今先生がお話しされましたように、平成七年に設立されました財団法人日本医療機能評価機構というのがありまして、二年間試行期間があって、平成九年度から事業を実施いたしております。平成九年度百三十一病院、それから平成十年度百四十三病院の申し込みがありまして、現在、認定証発行病院数が合計二百一病院あります。これは全部の病院です。そのうち精神病院は八病院というデータになっておるところでございます。
○福島委員 まだ微々たる前進でしかないなということを実感いたします。
 評価を受けるためには一定のコストもかかる、また、評価してほしくないというところも多々あるのかもしれませんが、強制するわけにはなかなかいかないという考え方もあろうかと思います。
 ただ、評価も進めなきゃいかぬというのが一方にはございますから、今般の診療報酬の見直しの中で、第三者による医療機関、医療の質の評価及び評価結果の公表等の項目が検討項目として盛り込まれておりますけれども、大部分の病院が評価を受ける結果になるようなインセンティブを与えて、そしてこの評価を通じての医療の質の向上を精神科医療の領域においてもぜひとも促進をしていただきたいというふうに思うわけでございますが、この点についての厚生省のお考えをお聞きしたいと思います。
○羽毛田政府委員 患者の適切な医療機関選択を進める上で、今お話のございましたような第三者による医療機関の評価を促進していくということにつきましては、重要性は私どもも認識をいたしておりますし、また、これもお挙げいただきましたように、今般の診療報酬の検討項目の中に、そういった評価の問題をどのように診療報酬上で対応していくかということは、一つの検討項目として入ってございます。
 まだ具体的な議論にはそこのところは入っておりませんけれども、先生お挙げになりましたような視点を含めてこれから中医協で御議論いただくことになると思いますので、その議論を見守りまして私どもの方も適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
○福島委員 次に、先ほど衛藤委員の方からも御指摘ございましたが、今回の法改正の中では触法精神障害者対策について盛り込むことができなかった。これは大変大きな課題でもあるし、次の見直しまでの間に何としても取り組まなきゃいけないというような御意見が表明をされました。
 精神障害者の方が地域で生活をしていく、それを進めようということが今回の法改正の一つの大きな柱であるというふうに私は考えております。そこで障害になるのはやはり偏見だというふうに思います。その偏見の由来するところというのは、触法精神障害者に関するさまざまな報道、ここのところがやはり一つのネックになっているのだろうというふうに私は思います。
 そういう意味で、これは厚生省だけにとどまる問題ではないというのはまことにそのとおりだというふうに思いますし、本日は法務省の方にもおいでいただいておりますので、両省といいますか政府全体として、これに向かってどのような取り組みをしていくのか、その検討を進める必要があるというふうに私は思っておりますけれども、御見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。
○渡邉説明員 お答えいたします。
 精神障害者による犯罪といいますか、触法精神障害者といいますか、最近特に増加しているわけではございませんが、殺人、放火といった重大犯罪が犯されたり、犯罪が反復される例もまれではなく、このような状況が憂慮すべき状況であるということには変わりがないという認識を持っております。
 精神障害者による犯罪への対策につきましては、精神障害者に対する医療、保護などの精神保健制度と極めて密接に関連するものでございますので、精神保健福祉法の運用状況を見守りながら、厚生省を初めとする関係省庁と連携しつつ検討を進める必要があるものと考えているところでございます。
○宮下国務大臣 今法務省の審議官の方からお答えになったとおりだと思いますが、この問題は四十年代にかなり突っ込んだ議論がされまして、保安処分の問題として成案を得ながらなかなか実現されないという経過をたどっております。しかしながら、触法精神障害者についてはやはり重要な課題でございますので、衛藤議員からもさっき質問がありましてお答え申し上げたように、今後の重要な視点でございますから、総合的な角度から、多少時間がかかるかもしれませんが、ひとつ検討してまいりたいと思っております。
○福島委員 時間がかかりましても、政府全体として取り組んでいただきたいと思います。
 次に、先ほども石毛委員の方から御指摘がございましたが、地域で精神障害者の方が生活するに当たっては、人的な支援というものが極めて大切であるというふうに思います。
 人的な支援にはさまざまなレベルがあると思います。一つは、先ほども御説明ございましたが、地域福祉権利擁護制度ですか、金銭管理とかさまざまな身近な相談を受けるというようなレベル、そしてまたその上に日常生活のサービスの支援、これはホームヘルパーさん、そして最後には成年後見制度に基づくところの後見、財産の管理というような法的に非常にデリケートな問題を扱う、この三つの層があって、それぞれが連携をとるということが非常に大切なんだろうというふうに私は思います。
 とりわけ、身近な部分で、地域福祉権利擁護制度ですけれども、これをどういうふうに実効性あるものとして整備していくのか、ここのところは本当に、それ以外のところがうまく動くためにも一番土台になるところだと思うのですけれども、今後の整備の見通しといいますか、厚生省の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○炭谷政府委員 まず、地域福祉権利擁護制度につきましては、先生御説明されましたように、精神障害者を初め、判断能力に欠ける人にとって非常に力強い援助になるものと思っております。
私どもといたしましては、今年度予算の中にこれに対する補助金を既に計上いたしております。このために、その実施の要領につきまして現在検討しておりますけれども、ことしの十月から発足させたい、この補助金をうまく活用しまして、全国の都道府県の社会福祉協議会が主体になって実施していただこうということによりまして、全国あまねくこの体制がとれるように私どもも努力をしてまいりたいというふうに思っております。
○福島委員 社会福祉協議会を活用されるというお話はお聞きをいたしておりますが、実際身近に来れば来るほどなかなか難しい問題になるかなという印象もございまして、人材の問題というようなこと、それから実際にどの程度機能しているのかということについては、地域差がかなりあるだろうというふうに思います。
 そういう意味で、これは徐々に整備していくしかないというふうに思いますけれども、そういった実際の現場の状況の変化というものを的確に把握していただいて、継続的な取り組みをぜひとも進めていただきたいというふうに要望させていただきたいと思います。
 最後に、グループホームのことについてお聞きをしたいと思います。
 地域で生活するに当たりまして大切なもう一つの柱は、住む場所の確保というところでございます。この点については、団体の方からも、住まいの場所というものを確保するための補助制度を充実してほしいというお話がございました。
 現在の障害者プランによりましては、平成十四年度に二万六十人分を確保するということが目標となっております。ただ、潜在的には、恐らく二万人という水準では到底足りない話なんだろうというふうに私は思います。高齢化ということもございますし、単身者の増加ということもございます。ですから、この平成十四年度、そこに向かって着実に目標を達成していただくということは当然必要でございますけれども、そこを超えて、潜在的な需要も含めて評価をしていただいて、さらなる上乗せの整備というものをぜひとも進めていっていただきたい、そのように思っておりまして、この点について最後に大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
○宮下国務大臣 グループホームは、御議論いただいておりますように、地域でお互いに数人で相助け合って一つの生活の拠点を築いていくという形式でございますが、こうしたことは、障害者の方々の連帯感と支え合う場として非常に貴重な施設だと思います。
 そんな意味で、これからの障害者プランの中でも、その需要予測、なかなか困難だと思いますけれども、潜在的には非常に多いと思いますし、条件整備をしながらその拡充を図るべく新しいプランを作成する場合にも十分な配慮をしていきたいと思っております。
○福島委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○木村委員長 瀬古由起子さん。
○瀬古委員 日本共産党瀬古由起子でございます。
 私は、きょう愛知県から二冊の冊子を持ってまいりました。一つは、愛知県の南区にあります障害者の関係団体の連絡会、ここがつくった「南区障害者・家族の実態調査と障害者プラン」、こういう内容のものでございます。これは「だれもが住みよいまちづくり」という冊子で、大変苦労してつくられております。それからもう一つは、西三河地方にあります精神医療プロジェクトがつくりました、「「これから」――障害者プランに向けて」という冊子で、精神障害者の実態調査でございます。今、この二冊の冊子を持ってまいりました。
 この中で、これは二十八歳の精神障害者の男性のお母さんがこういうことを書いています。「息子に「幸せになろうね」と心で問いかけてきました。」この息子さんとお母さん、今まで本当にいろいろな苦労の中で将来の希望をつなぎながら、そして当たり前の、だれもが住みよい町づくり、そういう町で住み続けたいという思いで書かれていると思うのです。この本には、障害者や家族の皆さんの本当に切実な声がいっぱい詰まっているわけですね。私は、この親子を初め、多くの精神障害者や家族の方々、多くの障害者の方々が、本当にこれから一日も早く幸せな日が来ることを願って、きょう質問したいと思います。
 まず最初に、精神障害者の福祉の問題なんですけれども、在宅の精神障害者に対するホームヘルプ派遣事業の問題です。
 これは、先ほども指摘をされておりましたけれども、精神障害者の実情に見合った生活障害も援助できるサービスが大変大事だ、こういうことです。先ほども指摘されましたように、介護保険制度が導入されますと、精神障害者ホームヘルプサービスが一体どうなるかという問題は、大変関係者が心配をしているところなんですね。介護保険制度というのは身体介護が中心になってきますので、特に生活障害がある人に対する援助というのは、精神障害者の場合にはその比重が大きくなってきますから、認定によっては大変軽い障害だというように認定される場合もあります。
 そういう意味では、とりわけ精神障害者の生活障害に対する援助のあり方、ホームヘルプサービスのあり方というのは、特別な一定の配慮というのが介護保険制度実施の上でも大変重要だと思うのですけれども、まずお伺いしたいと思います。
○今田説明員 平成十四年からホームヘルプサービス事業を実施するということになっているわけでありますが、御指摘のように、通常の身体介護と異なりまして、精神障害者の場合のホームヘルプサービスのサービス内容というものは、例えば、規則正しく食事をつくるとか身辺あるいは身体の清潔を保持していくといった部分のみならず、また、援助を通じて本人の回復を促す、リハビリという表現がいいかどうかわかりませんが、そういった機能もやはり期待されているんだろうと思います。そういった意味では、他の、従来のホームヘルパーの皆さん方と全く同じということにはならないと思います。
 そこで、そういった方々の確保が必要になるわけでありますが、それにおきましては、介護保険もさようでありますが、身体障害あるいは知的障害等にかかわりますヘルパーさんの養成、あるいは既に働いていらっしゃる方々に対して、そういったものに対する必要な知識あるいは技術といったものを研修等を通して養成する必要がある、このように考えております。
○瀬古委員 そうしますと、特別な財政的な措置も必要になってくると考えていいですか。
○今田説明員 そういった御指導をしていただくための事業として、現在試行事業を行っているわけでありますが、その試行事業においても、そのような養成に対しての費用も計上しております。全体的に今後どうしていくかはこれからの課題ということでありますが、まずはこの試行を見て、どういうふうなやり方をしたらいいかということを検討したいと考えております。
○瀬古委員 精神障害者の在宅介護については、保健婦さんの役割、保健所の役割というのが大変私は重要だと思うのですね。ところが、地方は保健所の統廃合が今どんどん進められています。大都市部でも、例えば札幌、千葉、神戸、広島、北九州では、そんな大きな地域で一カ所だけというところもあるわけです。これから市町村に福祉の援助が実施されることになるわけですけれども、どうしてこれで保健所が指導できるんだろうか。市町村や精神障害者の援助をするためにも、地域によっては、一カ所だけではちょっとまずいんじゃないか、もう一回見直す必要があるんじゃないかということだとか、さらに、保健婦さんを充実させるという方向で保健所の機能を強化する、こういうことも自治体の判断で出てくるんじゃないかと思うのですけれども、その点いかがでしょうか。
○伊藤(雅)政府委員 保健所の問題につきましてお答えをさせていただきます。
 保健所につきましては、平成六年の地域保健法の改正に基づきまして現在統廃合を進めているわけでございますが、県立の保健所につきましては、市町村に母子保健事業なり栄養改善事業を移譲することによりまして市町村の体制を強化しながら、あわせて県の保健所の広域化を図っていく、そういう対応をさせていただいているわけでございます。
 また、指定都市につきましては、保健所を人口十万単位で置くか、それとも保健所を指定都市の中で一カ所に機能を集約しまして、そして手足としての保健センターを随所に配置していくか、こういう問題につきましては、指定都市におきましてさまざまな対応があるのは承知しているわけでございますが、現在、審議会におきまして、特に指定都市におきます保健所と市町村保健センターの配置のあり方につきまして御検討いただいているところでございます。したがいまして、指定都市におきましては、保健所を一カ所ということだけではなくて、その手足としての市町村保健センターの体制とあわせてぜひ見ていただきたいということでございます。
 全体といたしましては、平成九年の地域保健法の全面施行以来、市町村への権限移譲に伴いまして保健所の職員数は若干減っておりまして、保健婦数につきましても若干減しておりますが、市町村の保健婦数につきましてはかなり増員されているというのが実態でございます。
○瀬古委員 地域保健法が施行されましても、それぞれ独自の判断で、特に、例えば今出てきておりますように精神障害者の社会復帰を一層進めるという立場から、縮小する予定が、やはり判断で、もう少しふやそうじゃないかとか、ある意味では統廃合する予定を一時中断するということも当然あり得るというふうに思うのですけれども、それは自治体の判断でよろしいでしょうか。
○伊藤(雅)政府委員 現在の保健所の統合につきましては、平成六年の法改正によりまして都道府県が計画を策定して、現在実施中でございます。
 その時点におきましては、今回の精神保健福祉法の改正というものを当然前提としていないわけでございまして、今後、この精神保健福祉法の施行までの間に、御指摘の点については検討させていただきたいと思います。
○瀬古委員 自治省に来ていただいていますのでお聞きしたいと思うのですが、福祉的な分野の仕事が市町村に移るということによりまして、今市町村はどうなっているかといいますと、介護保険で手がいっぱいという状態もあるわけですね。そうしますと、今自治体の、市町村の財政事情なども見まして、また人材確保という点で見ましても、保健婦も十分確保できないというところがございます。
 そういう場合に、私は、精神障害者の場合でも、やはり身近なところで一定のフォローアップができるというのは大変大事だと思うのですけれども、そういう人手の確保といいますか、保健婦さんなどのスタッフの確保については、財政的な支援も含めて一定の国の援助が必要だと思うのですけれども、自治省の立場からいかがでしょうか。
○二橋政府委員 近年、福祉関係の権限が県から市町村におりるというケースが多うございます。これは全体に地方分権を進める上で私ども望ましいことと考えておりまして、それに応じまして、それぞれ人員なりそういうものにつきまして、地方財政計画全般を通じて財政措置をいたしておるところでございます。
 今先生、保健婦の問題をお取り上げになりましたけれども、保健婦につきましても、平成四年、それから平成九年から施行されておりますこの地域保健法の改正等に伴いまして計画的な増員を図ってきておりまして、十一年度の地方財政計画のベースで申し上げますと、保健婦全体として、県、市町村合わせて千五百十二人という増員を図って、その結果、十一年度ベースで三万一千人余りという数字の保健婦地方財政計画における措置をして、それをそれぞれ市町村ごとに、交付税を算定するに当たってそういう要素を織り込んで計算をいたしておるという形で財政措置をいたしておるところでございます。
○瀬古委員 地方自治体は障害者プランでもなかなか進んでいないという状態もございまして、さらに、その中で精神障害者の計画をどうするかということなどもほとんどないような自治体もたくさんあるわけですね。そういう点でも、ぜひ、財政的な措置も含めながら、大いにそれを応援するという立場でこの措置を大きく広げていただきたいというふうに思います。
 次に、小規模作業所の問題、先ほどからも何度も出ていますけれども、それだけに大変切実な問題があるということを私自身からもお訴えしたいと思うのです。
 今、小規模作業所というのは、全国でも五千カ所、一気に広がってきているわけですね。今まで何度もその改善を求めて、もう二十数年になると言っておられましたけれども、関係者の皆さんは二千万人以上もの署名をこの国会に届けたと言われるわけです。それで、今や、法定施設である通所授産施設だとか通所の更生施設、その施設を量的にも小規模作業所が上回るという事態になっております。
 今、仕事もやって、私も幾つかの作業所を回りましたけれども、本当に重度の障害者のいるところでは、作業といっても作業にならない、それこそタペストリーに絵の具を体じゅうで塗るというのが作業で、そういう仕事にも商品にもならないという中でも、子供たちが、障害者が生き生きと活動しているという場もありますし、一生懸命仕事をして何とか商品にしたいということで頑張ってみえて、それでも一カ月千円とか二千円なんです。せめて一年に一回でもいいからどこか旅行に行きたいななんて言われるのですけれども、本当に何とかしなければなというふうに思っています。
 そういう意味では、この小規模作業所を現行の社会福祉事業法などにも位置づける。今後は、社会福祉事業法の改定問題、私たちも改正とはなかなか言いにくいのですけれども、これは大いに論議しなきゃならぬというふうに思っています。しかし、当面の事態を解決するという点では、切実な要望として出されております、やはり法的に位置づけて通所の授産施設などと同水準の補助金の交付をやってもらいたい、こういう願いは二十一世紀まで持ち越してはいけないというふうに思うわけですね。
 そういう意味では、今までこれを要望してきて、大臣が二十五人かかわったそうなんですが、なかなかいいお答えがいただけなかった。ぜひ今回は何としても、大臣、期待にこたえていただきたいという切なる願いが出ております。
 そういう意味で、大臣の御所見と、そして、この問題はどうするか、財政的なことも含めてどういう援助をしていくかという問題では、やはり長い間苦労された当事者の皆さんの意見をよく聞いてこの法定化にしても決めてもらいたいというふうに思うのです。そして同時に、本当に苦労して頑張っている障害者の働く作業所も、ぜひこの機会に大臣自身が直接見ていただき、現場も調査していただいて、本当に実態に合ったものにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。大臣、お願いします。
○宮下国務大臣 小規模作業所につきましては、しばしばここでも議論されておりまして、一定の要件を満たさないとだめだということで、今助成金として百十万円定額、それから交付税措置という辺にとどまっておりますが、これからの社会の中でこうした小規模作業所の果たす役割というのは、それは生産活動としてはそんなに評価できないかもしれません。しかし、NPOの人たちあるいは家族を中心にして、そういう障害者を抱き込んで連帯の意識のもとに支え合おうという、これはやはり社会の構成の基本をなすべき一つの大きな要素であるように思います。そんなことで、きめ細かくやるということが特に重要だと私自身も認識しておりますので、これを助成策もあわせて拡充していきたいなという気持ちを抱いております。
 ただ、小規模作業所というのは、精神障害者だけでやっているとか知的障害者だけでやっているという問題じゃなくて、私も現場を幾つか見ております。これは、そういう障害者の方々が相助け合って、知的障害者の人も精神障害者の人も、そしてまた父兄も一緒になって活動している。活動領域も非常に多様です。今申されたように、障害の程度も違いますから当然だと思いますし、それが、よしんば能力的に同じ程度であったとしても多様性に富んでいるものであると思いますから、今委員のおっしゃられるとおり、地域の実情というものはよく踏まえながら、そういう多様性に富んだ、そしてまた連帯的な機能を持っておる作業所でありますから、それらの特性に応じた体制をぜひ前向きに検討していきたいということでございます。
○瀬古委員 当事者の意見を十分に聞いてほしいということは……。
○宮下国務大臣 ですから、今申しましたように、当事者の意見も聞きますし、私自身も幾つか見ておりますので、十分そういった現場の声を吸い上げて、集約できるものならしていきたい。
○瀬古委員 次に、精神障害者の人権に配慮した精神医療の問題について伺いたいと思います。
 厚生省は、昨年、国立療養所の新潟犀潟病院で患者が身体拘束中に死亡した事件を契機に、全国の国立精神病院・療養所に対して立入調査を行いました。その結果、精神保健法に違反して保護室などへの隔離二九・三%、身体拘束四二・〇%に上ります。これらの法違反は調査をしたすべての国立精神病院・療養所に及ぶなど、深刻な人権侵害が行われている実態が明らかになりました。
 精神保健福祉法に基づく人権に配慮した精神医療の実施に当たり、都道府県に範を示さなければならない国立で法違反が行われている。直ちにこれは改善されたんでしょうか。どのように改善されたのかお伺いいたします。
○今田説明員 精神病床を持っております国立病院それから療養所につきましては、昨年の十月十四日から十二月十八日にかけまして、私ども障害保健福祉部と役所の外にいらっしゃる精神保健指定医合同で調査を行いました。その結果、御指摘のように違法な隔離、拘束などの事例があったという点がございまして、その改善について指導を行ったところであります。これに加えまして、本年五月に、入院患者の人権に配慮した適正な処遇等の確保を図るべく、再度再発防止のための指導を行ったところでございます。
 今回の調査結果を踏まえまして、都道府県などとも協力をして引き続き指導を行っていく方針でございます。
○瀬古委員 命にもかかわるような法違反があるわけで、そういう点では至急に改善を要するものもございます。
 そして、同時にこの場合に指摘されているのは、医師だとか看護婦のスタッフの人員が足りないという問題、それから施設設備が大変ひどい、古いままになっているという問題もあります。これはある意味では本格的に改善するという方向を出さなければ、それこそ命にもかかわるという問題もあるので、ぜひ緊急に手を打つべきだというふうに思うんですけれども、大臣、その点いかがでしょうか。
○宮下国務大臣 国立療養所の犀潟病院の問題につきましてはいろいろの要因がございます。直接的な要因は、やはり医師の指示を受けて看護婦さんが拘束を加えるとか、そういう包括的な委任をしていたと言われておりますが、そこら辺が独自の判断で行われた可能性もあるし、指定医の方との接点がどうなっていたかとかいろいろな課題があるように思います。
 したがって、今委員の方は設備基準とかそういうことを申されましたが、それも重要な点ではございますが、直接的にはやはり運営上の諸課題が介在していたようにも思われますので、結果としては、指定医の取り消し等を行いまして犀潟病院の場合は処理したわけでございます。
○瀬古委員 犀潟だけではなくて、全国の精神科の国立病院・療養所で法違反が行われているというのは、本当にあってはならないことだと思うんですね。これは、この結果からいいますと、たまたまここだけの例ということでは言えない。これは参議院でも論議されまして、国立の場合は、例えば夜勤の回数なども大変精神科の場合は多い。そういう点でも人がやはり足りないんじゃないかという問題は根本的に指摘をされているわけですね。そういう点でもぜひ改善を急ぐべきだというように思います。
 同時に、私は国立だけの問題なのかということで、皆さんのお手元に、平成十年度において都道府県、指定市が実施した精神病院実地指導の状況総括表というのをお配りさせていただきました。これを見てみますと、深刻なのは国立だけではない。指導は都道府県によってやり方というのは少し違ってきていますけれども、「指摘事項有り」というのが実地指導病院の八割以上にもなっております。そのうち「文書指摘」、この「文書指摘」というのは法違反を含めたかなり重要な内容も入っているわけですけれども、これが五割以上の病院に及んでおります。「改善命令」というのが右から二つ目の段のところに出ています、これは三件だけなんですね。実はこの三件というのは、犀潟、多度それから札幌平松という死亡事故が起こったところだけが改善命令が出ている。
 言いかえますと、実地指導でこれだけ指摘されても患者に犠牲が出なければ改善命令が出ないというような事態ではないかと思うんです。その点では、この犀潟の事件というのはやはり起こるべくして起きているというか、実際には精神科全体のいろいろ指導改善が必要な状況が全体的にある。これは単にここが悪い、この病院が特別というのは確かにありますけれども、全体的に引き上げるということをやらなければ解決できないということを示しているというように思います。
 一昨日の参考人質疑の中でも、参考人から、精神科特例だとか適正な診療報酬問題についての指摘がされています。特に治療の困難な患者さんが今民間に押しつけられているという状況があるわけですね。そうすると、今、低い診療報酬や精神科特例の中で経営が大変になりますから、経営を成り立たすために無理な処遇を行っても、実際には国や県が余り指導できないという問題もあるわけですね。やむを得ないなというか、これだけ人手がいないんだからということになってしまう。
 私も精神科の病院に勤めていましたけれども、実際には精神科の医療というのは一人一人に対してすごく人手も要りますし、時間もゆったりした中で治療するということがとても大事なんですね。ですから、先日委員会で児玉議員が三重の多度病院を取り上げましたけれども、ともかく一部屋に八人も九人も詰め込むとか布団を重ね合わせて敷き詰めてなんというのは精神科の治療としてはふさわしくないというように私は思います。ある意味では一般の病気よりも人がもっと要るということはあり得るわけですね。
 私は、欧米諸国などで、精神科だけ特別に看護婦や医師は少なくてもいいですという制度を持っている国というのが一体あるんだろうかと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
○今田説明員 諸外国で医療機関に職員の配置基準を定めていない国もございますから一概に申し上げられませんが、私どもとして、そういう病床種別による差を設けているということについては承知をしておりません。
○瀬古委員 そうなんです。こんな特例なんというのを設けている国は日本だけなんですね。そういう点ではやはり一刻も早く改善すべきだというように思います。
 精神障害者の権利擁護については、国際的にも、一九九一年に採択された国連原則、一九九六年のWHOの基本原則がございます。その基準からしても、日本の場合はかなり改善が求められております。また日本は、一九九二年に国際法律家委員会から勧告も受けているという状態なんですね。そういう点でも私はぜひ大臣にお聞きしたいと思うんです。
 今までの歴史があります、社会防衛的な精神科治療の歴史、そういう歴史の中で続いてきたという問題があります。しかし、今、社会防衛的な発想から、いよいよ国際的な基準がクリアできるような、国際基準といったって最低基準ですからね、おくれている精神科治療、人権問題でいえばこれをもっと引き上げる、そういう努力をすべきだと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
○宮下国務大臣 我が国の精神医療の歴史は、二十五年に制定されて以来社会防衛的な色彩が強かったのは委員の御指摘のとおりだと私も思います。そして、六十二年の改正によってかなり大幅な、抜本的な方向転換がなされてきていると思います。その流れは人権擁護ということではあると思います。しかしながら、なかなかそれが一気に進まないという点がございますので、いろいろ検討、改正が重ねられて、また今回、より一層それを促進しようという立場で改正を御審議願っているわけでございます。
 一九九一年の国連原則とか九六年のWHOの基本十原則、こういった精神は当然なことだと私どもも思います。そういった点を参酌しながら、今回の改正点も、一々申し上げませんけれども、人権に配慮した施策として、精神医療審査会、あるいは指定医の問題、保護入院の問題、あるいは改善命令等々いろいろやっているのも、そういった流れの中でのさらに促進ということでございまして、人権に配慮する、あるいは障害者の人権確保の制度をきちっと整えていくというのは、今後ともさらに引き続き検討を続けていかなければならない課題であろうかと思っています。
 なお、その運用についても、担当される医師も、精神科特例があるからやむを得ないんじゃないかということでなしに、それはそれとして私ども検討してまいりますけれども、ひとつそういう使命感でやっていただきたいと思います。
○瀬古委員 全国自治体病院協議会は、提言の中で次のように述べております。病院を選択する機会が十分与えられない精神障害者の医療では、医療の質と受療の便宜性を医療法上で保証することがとりわけ重要です、そのために医療水準が一定以上に保たれるような医療法の改正がどうしても必要なんだというふうに述べておられるわけですね。
 厚生省は、医療の質そして受療の便宜性、この二つの点で法改正というのは検討されようとしていますか。今現在検討されていることがあるでしょうか。その点お伺いいたします。
○小林(秀)政府委員 先生おただしの医療法の見直しにつきましては、昨年の九月以来医療審議会を開いておりまして、その中で医療の提供体制についての見直しの議論をいたしております。その中では、入院医療で、今の一般病床についていいますと、急性期病床と慢性期病床に分けることはどうかとか、カルテ等の診療情報の開示の問題ですとか、それからあとは医療機関の広告の制限の問題ですとか、いろいろな問題について議論をいたしております。
 現在の段階は、私ども、昨年の十二月二十五日に厚生省の方が議論のためのたたき台というのを出しまして、より一層議論を深めておりまして、相当議論が進んだところでその議論のまとめをしようということで、審議会の中に小委員会を設けてまとめに入っているという状況にございます。
 厚生省としては、今後この医療審議会の意見の取りまとめをお願いいたしまして、その意見を踏まえて関係者の意見等を聞きながら改革の具体化に取り組んでまいりたい、このように思っています。
 精神医療の特例のことに関しましては、私どもの局の医療審議会ではなくて、公衆衛生審議会の方で議論がされていますので、その点については障害保健部長から答えていただければと思っています。
○今田説明員 特例のできた経緯につきましては、これまでもるる御意見が出ておりましたが、それを踏まえまして、現在の状況の中で、精神病床が担っている役割、非常にマンパワーの必要な医療的ケアの高い患者さんも、ケアだとかあるいは福祉の分野でかかわる度合いの高い方々も、三十六万床の精神病床の中に一本で入っているということがございますので、そういった施設の役割というものを見直しながら病床における適切な人員の配置のあり方等について検討をしていきたいということで、今公衆衛生審議会の方でも御議論を始めていただいております。
○瀬古委員 質という問題でいえば、やはり何といっても、人手をどうふやすかというものを、幾つか分けて、一つのところへ厚くする、薄くするというんじゃなくて、全体的に引き上げるということをやらなければ、今の人権が損なわれているような精神科の医療というものの水準が上がらないということははっきりしていますよ。その点もぜひ検討するべきだというふうに私は思います。
 それからもう一点ですけれども、受療の便宜性という面では、一般病院の中に精神科を設ける、精神科の病床の配置というのは大変大事だというふうに思います。これは例えば、患者さんの中で感染症が集団的に発生した場合、総合病院の中に精神科がある場合に、そこに病棟を確保するということは大変大事ですし、患者さん自身も通院しやすいという問題がございます。
 そういう点でも、一般病院に精神科の病棟をきちんと確保していくということが大変大事ですし、それから全国の地域で、精神科の病床が一つもないという例えば二次医療圏なんかもございます。偏在しているわけです。例えば地域的に生活圏の近くに精神科が入院も含めてある、こういう仕組みにしていくということが、ある意味では、先ほど病院の協議会の方から指摘があった受療の便宜性という点でも大事だと思うんですね。その点ではいかがでしょうか。
○今田説明員 まず、先ほど一般病院として精神病床もあわせて持っている病床については九万八千床ということを申し上げましたけれども、さらに、合併症等で必要なものについては総合病院等で対応する必要があろうかと思います。現在、精神科における合併症の治療についての検討を行っておりますので、こういったものも踏まえながら今後のあるべき方向というものを検討していきたいと考えております。
 さらに、今精神病床の整備圏域というのが、全県一区といいますか、県単位でこれがつくられているということから、結果において地域的に格差が非常に大きくなっているという実態がございます。これにつきましては、精神病床そのものが不足している圏域であれば、そういった不足している地域に新たに精神病床が建てられるということは期待できるわけでありますが、逆に、全体として過剰な場合が非常に多うございます。こういった場合には、もうこれ以上建てられないということを医療計画上規定している形になるわけであります。しかし、例えば、離島でありますとか、あるいは隣接する医療圏に精神病床がないといったような場合には、都道府県の医療審議会の意見を聞いた上で、精神病床の整備についてこれを妨げることはしないというような規定もございます。
 いずれにいたしましても、医療提供体制をどのように進めていくか、あるいはその中でどのような病床が必要なのかといった視点もございますので、今後、関係の審議会等の御意見を踏まえながら、この整備計画のあり方についても検討していきたいと思います。
○瀬古委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、最後に、お配りしました資料の下の段を見ていただきますと、昭和五十四年度からどんどん精神保健費が減ってきているわけですね。これはあってはならないと思います。確かに、措置入院者が減ってきているからそうだと言われるんですけれども、しかし、それに伴う分はきちっと患者さんのために、精神障害者のために使うべきであって、昭和五十四年度の二倍、三倍、四倍あっても構わないのに、減らすということは大変問題だと思います。
 そういう点では、今後大いに精神科、精神障害者の治療や福祉のために一層充実をしていただく努力を期待いたしまして、私の質問といたします。どうもありがとうございました。
【次回へつづく】