精神医療に関する条文・審議(その100)

前回(id:kokekokko:20051114)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。

第145回衆議院 厚生委員会会議録第11号(平成11年5月21日)
【前回のつづき】
○木村委員長 中川智子さん。
○中川(智)委員 社会民主党市民連合中川智子です。きょうも座っての質問をお許しいただきたいと思います。
 一九九二年の国際法律家委員会の対日勧告の中でも、特に精神医療審査会のことがたくさんの項目にわたって勧告されております。きょうはまず最初に、精神医療審査会のことについて伺いたいと思うんです。
 私も、この法案が提出される前に元患者の方々とお会いしまして、病院の中のことですとか、不服申し立てとかいろいろな制度があるけれどもそれに対してどのように対応されてきましたかと、かなり長い時間、いろいろお話をさせていただきました。
 やはり実態は、とても怖くて一言の反発さえできないんだということでした。入ったら素直に、ともかく素直に、日々、どんなことを言われても何をされても、それに対して受け入れなければよりひどくなる。私は病院に入ると掃除婦さんになるのよと若い女性が言いました。一生懸命お掃除を手伝う、そうしたら、とても助かるからちょっと優しくしてあげようかとか、ある人は、重いものを一生懸命持って、何でも一生懸命、病院に入ったらよく働くんだというふうなこともおっしゃいました。それと、やはりつらいのは、人間扱いされない言葉の暴力。
 さまざまな実態を伺いまして、この審査会の機能というのが一体どのようになっているのかということをまず伺いたいし、今までなぜこの審査会が、不服申し立ての件数も少ない、今回の法案に関してその後どのような形で審査会を活発化されようとしているのか、具体的にお話しいただきたいと思います。
○今田説明員 まず、審査会におきます退院あるいは処遇改善の請求の仕組みでございますけれども、これにつきましては、入院中の者あるいはその保護者でもいいわけですが、その方によりまして都道府県知事に対して申し立てていただく。ところが、それを申し立てるときにどういうアプローチができるかという場合に、保護者であればもちろん在宅でいらっしゃるから申し立てはできましょうが、入院されていらっしゃる方についてはどういうアクセスが可能なのか、こういうことになります。
 その場合には、病院から電話によって口頭で申し出ることも可能でありますし、その場合でも、精神病院の中に電話を設置し、電話にはそういうことを申し込むための電話番号を掲示するようにということで、できる限りこの制度が利用しやすいような仕組みとして医療機関にも義務づけておるわけであります。
 ところが、そうはいっても、その実績を見てみると、確かに都道府県においてかなり格差がある。多ければいいということにはならないのかもしれませんが、しかし、格差があるということは、入院されている方々がそれにアプローチするときに何か御指摘のような努力が医療機関の側に必ずしも十分でないものがあるのかもしれない。そういった意味からいたしまして、私どもとしても、この趣旨を十分に理解していただいて、そのための制度として例えば公衆電話も活用していただくということを各医療機関に周知徹底する必要があるということもございまして、そのような指導をさせていただいているところでございます。
 また、それを受け付ける側の審査会も、十五人という上限でしか回せないという状況から、これを地域の実情に応じて機動的に、もっと多くの方々が参加いただいて対処できるようにということは、今回の法改正にも盛り込ませていただいたことでございます。
○中川(智)委員 それに連動しての質問になりますけれども、例えば、不服申し立てをした患者さんが不利益を受けないような身分保障ですとか、また、審査会が定期的に病院に審査に入るシステム、この二つについてはいかがでしょう。今お答えできる範囲で結構です。
○今田説明員 不利益というところで、入院されていらっしゃる患者さんがそういうことをアプローチしたからといって異なった不利益的な処遇を受けるということは、もちろんあってはならないと思います。
 それから、定期的にということでありますが、まず、各医療機関には少なくとも年に一回は都道府県が指導に入るという仕組みになっておりますし、また、各病院から出てきております報告、措置入院あるいは医療保護入院にかかわります書類によって、疑義のある場合には審査会がそこに行って意見を聞くということもできます。今回は、それに対してなお報告徴収権、出頭をお願いするということも最終的には義務として課すというようなことで、極力審査会自身もそういったところに目を向けて適切な人権等の確保ができるように改正する内容にさせていただいたというふうに思っています。
○中川(智)委員 年一回という回数ですね。これが多ければいいというんじゃないけれども、やはり数多く入ることによってきっちりと、人権侵害があってはならない、そして患者の方の権利保障というのが担保されると思います。年一回という回数は余りにも少ないというふうに今思いました。
 一昨日の参考人の質疑のときに印象的だったのは、例えばオランダなどは、元患者の人たちが審査会のメンバーの中に入って、それは当然、雇用というふうな形はおかしいかもしれませんけれども、一つの仕事として自分自身の経験がその中で生かされる。私も患者の方たちとお会いしてつくづく思いましたし、今私も車いすを利用してつくづく思うんですけれども、実際に自分がその身になってみると、その受ける側の立場がよくわかる、いかに相手の立場に立てるか、気持ちがわかるかということが実感できました。
 ぜひとも、審査会のメンバーの中に、オランダのようなものを一つのモデルにしながら、元患者の方ですとか法律家、そのような方たちが入って、より審査会の機能が活性化できるようなシステムにしていただきたいという要望を兼ねて、大臣、いかがでしょうか。
○宮下国務大臣 審査会は今回かなり拡充いたしまして、人権侵害に備えるという体制になってきております。その構成単位は五人を単位といたしまして、今まで十五までということでございましたが、これは制限を撤廃しましたので、大きな都市等においてはかなりの数を適用できると思います。
 その五人の内訳はどうかというと、医者を三人、法律関係の方を一人、その他というようなことでありますので、おのずから単位としては限界があると思います。しかし、今オランダの例などを引かれましたように、委員も車いすで本当に障害者の気持ちがわかるというのはよくわかります。そういうことですから、そういう機会、患者なり回復された方々の経験に基づく意見を何らかの形で審査会で吸い上げるというようなことは必要かもしれません。ただ、それをメンバーの形でやれるかどうかは、私も今即答できませんし、それはちょっといかがかなと思います。
 でも、そういう意見を吸い上げる機能というものはいろいろな形でとり得ることでもございますから、よく現場の意見を取り入れながら医療審査会においても人権擁護の全うを期さなければいけない、こんな感じでございます。
○中川(智)委員 すべてのところにということは申しません。でも、実践的にそれをやっていく価値はあると思うし、それがやはりいろいろな偏見、また審査会の中身の充実にきっとつながると私は思っておりますので、お願いしたいと思います。
 次に、日本は人権教育というのがとてもおくれているというのはさまざまな場面で私は実感しております。人権人権と言われて久しい。また、二十一世紀を迎えて、人権の世紀とも言われますけれども、教育が基本だということを実感しております。
 参考人のお話の中にもございましたが、特に医療現場で働く方たち、先ほど桝屋議員の質問の中にも、県の職員が、きのうまで全然別のセクションにいた人がいきなり入ってきてその担当になるとなりましたら、まだまだ偏見が根強く残っている中で、特に医療現場、患者の方たち、家族の方たちと対応するときにすごく配慮が大事だと思うのですね。そのためには、人権をまず尊重して、そしてこの精神保健法の魂が生かされるためには、医療現場で働く方たちへの人権教育というのが今どうなっているか、それに対して十分だと思うかどうか、そこを厚生省のお考えを伺いたいと思います。
○今田説明員 まず、社会全般、社会の中であらゆる人が人権に配慮していなければならないということは当然のことでありますが、とりわけ精神障害者にかかわりを持たれる方々に対して、そういった人権の意識というのはなおさら重要なことだというふうに思います。
 例えば医師でありますが、お医者さんも、医師国家試験あるいは医師の臨床研修の目標の中で医の倫理というものについて盛り込まれておりますので、それに対応した医学教育あるいは卒後教育というものが当然なされております。また、看護婦におきましても、その養成の課程で人権の重要性を十分に理解させ、人権意識の普及、高揚を図れるような内容をということも規定されている。つまり、それぞれ養成課程の中できちっとした教育をするというのが一つ大きな課題ではないかと思います。
 それからさらに、今度は精神医療の現場に来たときはどうかということでありますが、医師でいえば指定医の問題になります。
 指定医については、やはり行動制限など人権擁護の意識というのが特に必要な役割を演じていただくということから、これを大臣が定める形をとっておりますし、そのために、大臣が定める程度の診断または治療に従事した経験を有しているかどうか、あるいは申請者が法を遵守し、人権に配慮した医療を確保できるかどうか、これらについて公衆衛生審議会においてレポート審査をさせていただいております。また、新しく指定を受けられる方には十八時間、五年ごとの際には七時間、厚生大臣の指定する者が行う研修の履修を義務づけております。
 医師についてはそのような形で人権についての教育的機会というものを確保しておるわけでありますが、また一方で、看護婦さんあるいは精神科ソーシャルワーカーの皆さん方につきましても、毎年都道府県が実施をいたしております精神病院の実地指導のときに、各病院に対して院内研修を実施するようにというようなことも指導しているところであります。
 いずれにいたしましても、いろいろな方がかかわられるわけであります。本当にすべての人に人権意識の向上に努めていただくということがどうしても必要なことだということで、今後また引き続いて努力していきたいと思います。
○中川(智)委員 教育が行き届いていないからあんなスキャンダルが起きるというふうには言い切れませんが、教育をしっかりと生かしていく、そして院内での教育の徹底ですとか現場におけるきめ細かな対応ということに対して、もっともっと行政指導なりなんなり、ぜひともお願いしたいと思います。
 次に、マスコミ報道、私もずっと気になっていたのですけれども、偏見を助長する、精神疾患を持つ人が地域の人たちの中でまだまだ疎外され、偏見を持って見られるというのは、一つには、事件が起きたときに、三日前に精神病院を退院してきたばかりだとか以前このような病歴があったということに目がくぎづけになるみたいなところがあると思います。だから怖いんだ。
 私は、表現の自由との関係がありますけれども、厚生省はこのようなマスコミ報道に対して何か意見を申されたことがあるのかどうか、そしてまた現在のマスコミ報道に対してこれでよしとされているのかどうか、もう一つ質問したいことがありますので、ぜひとも端的にお答えいただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○宮下国務大臣 マスコミの多くは精神障害者を正しく理解されていると思いますが、しかし、今委員御指摘のような事例もないわけではないと思います。そして、精神障害者に関する事件でございますから、その疾患と過去の既往歴とかいろいろそういうことが報道されますと、短絡的にいろいろなものと結びつけられて誤解を生むという傾向にあることは残念だと思います。
 私どもが精神障害者の社会復帰なりなんなりをする場合も、そういうことが重大な阻害要因になることもございますので、そういうことがないようにこれは指導を行政としてやらざるを得ないと思いますけれども、そういうことが報道されないように府県等に徹底を期して、マスコミとの関係も、十分正確な報道をしていただくようにお願いすべきだ、こう思います。
○中川(智)委員 マスコミの力というのは大きいですし、やはりそのことによって完治して社会復帰をなし遂げてやっている人さえもその偏見が及ぶ、そのことをぜひとも考えていただきたいと思いますし、今後のマスコミのありように関しても関心を持っていただき、それに対してのきっちりとした対応をぜひとも御検討願いたいと思います。
 最後に、もう一点質問させていただきます。
 最近、本当に自殺がふえました。うつ病で、ちょっと元気になりかけたときの自殺がとても多いというふうに伺っております。そして、新しい疾病と申しましてはなんですけれども、これほど一人一人が疎外されてきて、地域共同体とかいろいろな人たちが互いに助け合って生きていくことから少し日本は遠のいてきたように思います。
 そんな中で、躁うつ病ですとか、いま一つは、私はごくごく身近に非常な悩みを聞いたのですが、拒食症、いわゆる摂食障害が若い方にとてもふえています。特に女性にふえているのですけれども、地域で専門医がいなくて、私は兵庫県なんですが、月に二回も三回も東京の病院まで通ってくる。ただでさえ財政的に大変な状況の中で、専門医がいないために治療に月に何度もお金を使ってやってくる。これだけでも大変なんですが、とてもふえているんですね。半年ほど予約を待つとか、とてもそんなのは待っていられないからということでほかの病院に行って悪化したりとか、いろいろなことがございます。
 このような躁うつ病ですとか拒食症など、特に増加しているものに対しての実態調査とか研究や専門医の育成に対しては厚生省はどのように取り組んでいらっしゃるか、取り組まれようとしているのか、そこをお伺いしたいと思います。
○今田説明員 患者調査によりますと、平成五年から八年の三年間に六十万人の方が外来で増加しているというデータがございます。これらの内訳を見てみますと、躁うつ病が平成五年が十八万人から四十三万人、それからその他神経症あるいは痴呆といったものも若干ふえてきております。確かに、御指摘のようにうつ病が増加しているということは事実のようであります。また、御指摘の摂食障害につきましては、平成九年度に、特定疾患研究班の方でやはりふえているというふうなことが述べられております。
 このようにストレスと非常にかかわりのあるような疾患が今日ふえているわけでありますが、こういったところが、ストレスとの関連等もありますし、あるいは社会全体のストレスということも影響しているのかもしれません。これらにつきまして幾つかの研究を行っているわけでありますが、それとともに、国立精神・神経センター等で、精神医療、精神保健の分野で重要性が高まっている精神疾患対策についての技術研修事業というものも取り組んでおりますので、こういったものを活用しながら、できるだけそういった方々がスムーズに受け入れられやすいような、あるいはそれに対して的確な治療ができるような、そういった点についても今後努力をしていきたいと思います。
○中川(智)委員 初期に治療すれば自殺までいくことはない方がとても多いのです。企業の中、そして学校ですとか地域の中で取り組んでいくような厚生省の取り組みをぜひともお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。
○木村委員長 笹木竜三君。
○笹木委員 笹木竜三です。質問を始めます。
 先ほどから他の何人かの委員によっても質問されていましたけれども、都道府県による移送制度の創設についてまず確認をしたいと思います。
 さっきのお話にあるように、緊急に入院を必要とする精神障害者について、先ほど御説明のありました家族の説得によってとか、あるいは保健所の方が同行するとか、警察の力をかりる場合あるいは医療機関の力をかりる場合、こういうケースもあるけれども民間の会社の力をかりる場合もあるという、数値も示してお答えがありましたけれども、民間の会社の力をかりざるを得ない、これはどういうケースだと総括をされていますか。
 例えば、現場の方に聞きますと、夜間で担当者と連絡がとれないようなケースも間々あるとか、あるいは先ほど説明の中でもお話がありましたけれども、精神科救急医療システムが必ずしも都道府県によっては余り利用されていない、そういうケースもあるようです。こういうことも含めまして、結局、民間の会社に移送を任せざるを得なくて、しかも時には高額な費用も自己負担になっている、こういうケースがどういう場合に起こっているのか、どう総括されていますか。
○今田説明員 まず、この移送の実施主体は都道府県でありますし、都道府県も既に措置患者の移送という形で一定の役割を担っていらっしゃるわけでありますので、そういったところに当然私どもは大いに期待をして移送をお願いしたいと思っております。
 それから、それが必ずしも十分に供給できないという場合にすぐに民間かということでありますが、私どもは、むしろ応急指定病院になっていただく病院が持っている例えばそういう救急車的なもの、あるいは移送にふさわしい自動車といったことも一つ重要な御協力いただける対象ではないかと思います。
 なお、民間につきましては、今後どういうルールにするかにもよりますけれども、一定の基準をクリアしたものでなければ安易に民間に委託するということであってはならないという考え方で、これからその細かな基準について定めていきたいと思っております。
○笹木委員 余り時間がないので質問に答えてほしいのですけれども、要は、民間に安易に任せざるを得なくて高額な費用も自己負担している、こういう場合はどういうときに起こっているか、どう総括されているかとお聞きしたかったわけです。
 もう一つあわせて聞きますと、先ほども言いました精神科救急医療システムが都道府県によっては必ずしも十分に活用されていない、予算もなかなかちゃんと使われていない。これはどうして起こっているのか。
○今田説明員 今の精神科救急体制が必ずしも十分でないという御指摘、御批判は真摯に耳を傾けて、充実したものにしなければならない、今後努力していかなければならないと私も思います。
 それから、前段の御質問の趣旨を私十分理解しておりませんので、もし差し支えなければお教えいただけないでしょうか。
○笹木委員 余り時間がないので……。要は、現場の話では、夜間で担当者と連絡がとれないとか、先ほどの現存の救急医療システム、これについても、都道府県によっては必ずしも理解がしっかりされていなくて活用されていない、こういった要因もかなりあると思います。それで民間に安易に任せるような形になっているケースが私はかなりあるように感じました。そんなことが、今度都道府県知事の責任によって移送することができるとなることでかなり減らすことができるのかどうかということを大臣に確認をしたいと思います。
○今田説明員 県の今回の制度の創設によって、そういったものは少なくなっていくものと思います。
○笹木委員 済みません。余り質疑にならなかったみたいですけれども、もう一点、薬物中毒についてお聞きしたいわけです。
 これは現場の医師の話なんですけれども、薬物中毒の患者と精神障害の患者の線引きがなくて、例えば麻薬取締法による対応の施設も精神病院となっている。入院場所も同一になっている。しかし、実際の現場のお医者さんが必ずしもしっかりと対応できているかといえば、しり込みして余り対応されてないケースが非常に多いんだという話を聞きます。どのぐらいの薬物中毒の患者数、そしてある程度ちゃんと対応ができているのかどうか、そういった現状把握について認識をお聞きしたいと思います。
○今田説明員 まず、薬物依存でございますけれども、これにつきましては、厚生省としては、国立精神・神経センター精神保健研究所におきまして、薬物中毒・依存症についての研究それから研修を行っております。それから、国立療養所下総病院の専門治療病棟において患者の受け入れを行っております。
 この一月に公衆衛生審議会から、国立病院・療養所の再編合理化の方針が出ておりますが、その中で、精神科救急への対応、薬物依存症や合併症を有する患者への対応に重点を置くべきとの御意見をいただいておりますので、今後、この国立病院も活用しながら一層の充実を図っていきたいと思っております。
 なお、薬物依存症を有する方々への対応として、精神保健福祉センターにおいても薬物中毒・依存症の専門相談、指導といったものの役割を担っていただきまして、それらのネットワークによって中毒者の社会復帰の推進にもあわせて努力をしていきたいと考えております。
○笹木委員 今、施設のことについても御説明があったわけですけれども、どのぐらいの数なんでしょうか。そういった薬物中毒の方に対する対応の施設、今どのぐらいの施設が数としてあるのか、教えてほしいと思います。
○今田説明員 施設としては、各精神病院が入院患者の一部として扱っていただいているものもありますので、そういった意味では厳密には数字が把握できないわけでありますが、少なくとも、患者の数で申し上げますと、六千人程度ではないかというふうに私どもは承知しております。
○笹木委員 実際にはもっと多いんだと思います。
 大臣、最後に、もう余り時間がないみたいですから、先ほどお話ししましたように、現場の精神科の医師ではなかなかしっかりと対応ができていない、ある程度専門的に対応する機関、施設をもっとふやすべきだという意見をよく聞きます。そういった方向でこれから対応されていくということについて、大臣の考えをお聞きしたいと思います。
○宮下国務大臣 この精神障害に対する対応としては、今部長の言われたように、国立病院で先駆的な医療もやりますから、そういった点を中心にしてやはり先導的な役割を果たしながら現場の医師の指導その他もやっていかなくちゃいけないし、また、今まで議論されたように、病院それ自体の監視、監督、検査、そういうことも徹底をしていく、あるいは、先ほど御議論がありましたように、担い手の医師、看護婦あるいは医療関係者の人権への配慮をやっていくとか、そういう総合的なことにもっと重点を置いて、この法の趣旨に従ってやっていくべきものだと考えております。
○笹木委員 薬物中毒患者専門の機関の整備について、ぜひ今後さらなる御検討をお願いしたいと思います。
 質問を終わります。
○木村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
○木村委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○木村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
○木村委員長 この際、本案に対し、長勢甚遠君外六名から、自由民主党民主党公明党改革クラブ自由党日本共産党社会民主党市民連合及び無所属の会の七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。山本孝史君。
○山本(孝)委員 私は、自由民主党民主党公明党改革クラブ自由党日本共産党社会民主党市民連合及び無所属の会を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
 
   精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。
 一 精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図る観点から、精神障害者やその家族その他の関係者の意見も尊重しつつ、他の障害者施策との均衡や雇用施策との連携に留意し、障害者プランの着実な推進を図るなど、精神保健福祉施策の充実に努めること。
 二 都道府県から市町村への在宅福祉サービスの提供主体の移管が円滑に行われ、市町村を中心とする在宅福祉サービスの充実が図られるよう、財政的な支援を行うとともに、専門的・技術的な支援を行うこと。また、市町村障害者計画の策定について市町村が主体的に取り組むことができるよう、積極的に支援すること。
 三 医療保護入院については、国連原則等の国際的な規定に照らし、その適切な運用に努めること。
 四 医療保護入院等のための移送の実施に当たっては、適正な運用が確保されるよう必要な措置を講ずるとともに、都道府県の責任において適切な入院治療が提供できるよう、二次医療圏を勘案してその体制を整備すること。
 五 精神病床に係る人員配置基準、医療計画その他の精神医療提供体制及び長期入院患者の療養の在り方について、その充実に向けて早急に検討を行うこと。
 六 チーム医療及び精神保健福祉サービスの一層の推進を図るため、人材の育成・確保に努めること。また、現在検討中の臨床心理技術者の国家資格制度の創設については、速やかに結論を得ること。
 七 精神病院における不祥事件の多発にかんがみ、人権を尊重しつつ適切な医療を確保できるよう、医療従事者の更なる啓発に努めるとともに、医療機関等の情報公開の推進と精神病院の指導監督の徹底を図ること。
 八 精神医療審査会がより適正な機能を発揮し、独立性と実効性を確保できるよう努めるとともに、合議体の構成についても検討すること。また、当事者の意見の反映が図られるように努めること。
 九 小規模作業所については、社会福祉事業法の見直しの中で、通所授産施設の要件緩和が検討されていることから、その検討結果を踏まえ、通所授産施設への移行を促進すること。また、多様な福祉サービスの充実に努めること。
 十 成年後見制度及び社会福祉事業法等の見直しの動向を踏まえ、家族・保護者の負担を軽減する観点から、保護者制度について早急に検討を加え、精神障害者の権利擁護制度の在り方について引き続き検討を進め、その充実を図ること。
 十一 重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇の在り方については、幅広い観点から検討を早急に進めること。
 十二 精神障害者に関する各種資格制限の緩和と撤廃について検討し、その結果に基づいて、速やかに必要な措置を講ずること。
 
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○木村委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○木村委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、宮下厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。宮下厚生大臣
○宮下国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたします。

第145回衆議院 本会議会議録第33号(平成11年5月28日)
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第一、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。厚生委員長木村義雄君。
    〔木村義雄君登壇〕
木村義雄君 ただいま議題となりました精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案について、厚生委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、精神障害者の人権に配意した、より適正な精神医療を確保するとともに、精神障害者の社会復帰の一層の推進を図ろうとするものであります。
 その主な内容は、医療保護入院の対象者を明確にすること、緊急に入院が必要となる精神障害者の移送制度を整備すること等のほか、精神障害者の在宅福祉施策について、精神障害者居宅介護等事業を創設するなど、その拡充を図り、市町村を中心として推進する体制を整備しようとするものであります。
 本案は、去る四月二十八日参議院において修正議決の上、本院に送付され、同日本委員会に付託となり、五月七日提案理由の説明及び参議院における修正部分の趣旨説明を聴取し、十九日質疑に入るとともに、参考人から意見を聴取し、二十一日質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律(平成11年法律第65号)【全文】
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正)
第一条 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
 
第一条から第三条までの規定及び第四条(見出しを含む。)中「精神障害者等」を「精神障害者」に改める。
 
第五条中「中毒性精神病」を「精神作用物質による急性中毒又はその依存症」に改める。
 
十三条第一項を削り、同条第二項中「委員」を「精神医療審査会の委員」に改め、同項を同条第一項とし、同条第三項を同条第二項とする。
 
第十九条の二の見出しを「(指定の取消し等)」に改め、同条第二項中「取り消す」を「取り消し、又は期間を定めてその職務の停止を命ずる」に改め、同条に次の一項を加える。
 4 都道府県知事は、指定医について第二項に該当すると思料するときは、その旨を厚生大臣に通知することができる。
 
第十九条の四第一項中「の判定、第三十四条の規定により精神障害者の疑いがあるかどうか及びその診断に相当の時日を要する」を「及び第二十二条の三の規定による入院が行われる状態にない」に改め、同条第二項中「のうち都道府県知事(第三号及び第四号に掲げる職務にあつては、厚生大臣又は都道府県知事)が指定したもの」を削り、第四号を第七号とし、第三号を第六号とし、第二号を第三号とし、同号の次に次の二号を加える。
  四 第三十四条第一項及び第三項の規定による移送を必要とするかどうかの判定
  五 第三十八条の三第三項及び第三十八条の五第四項の規定による診察
 
第十九条の四第二項第一号の次に次の一号を加える。
  二 第二十九条の二の二第四項(第三十四条第三項において準用する場合を含む。)に規定する行動の制限を必要とするかどうかの判定
 
第十九条の四第二項に次の一号を加える。
  八 第四十五条の二第四項の規定による診察
 
第十九条の四の次に次の一条を加える。
  (診療録の記載義務)
 第十九条の四の二 指定医は、前条第一項に規定する職務を行つたときは、遅滞なく、当該指定医の氏名その他厚生省令で定める事項を診療録に記載しなければならない。
 
第十九条の五中「、第三十三条の四第一項又は第三十四条」を「又は第三十三条の四第一項」に、「指定医を」を「指定医(第十九条の二第二項の規定によりその職務を停止されている者を除く。第五十三条第一項を除き、以下同じ。)を」に改める。
 
第二十条第一項各号列記以外の部分及び第二項中「後見人」の下に「又は保佐人」を加える。
 
第二十二条第一項中「精神障害者に」を「精神障害者(第二十二条の四第二項に規定する任意入院者及び病院又は診療所に入院しないで行われる精神障害の医療を継続して受けている者を除く。以下この項および第三項において同じ。)に」に、「るとともに、精神障害者が自身を傷つけ又は他人に害を及ぼさないように監督し、かつ、」を「、及び」に改める。
 
第二十二条の四第三項後段を削る。
 
第二十八条第二項中「後見人」の下に「又は保佐人」を加え、「当つている」を「当たつている」に改める。
 
第二十九条の二の次に次の一条を加える。
 第二十九条の二の二 都道府県知事は、第二十九条第一項又は前条第一項の規定による入院措置を採ろうとする精神障害者を、当該入院措置に係る病院に移送しなければならない。
 2 都道府県知事は、前項の規定により移送を行う場合においては、当該精神障害者に対し、当該移送を行う旨その他厚生省令で定める事項を書面で知らせなければならない。
 3 都道府県知事は、第一項の規定による移送を行うに当たつては、当該精神障害者を診察した指定医が必要と認めたときは、その者の医療又は保護に欠くことのできない限度において、厚生大臣が定める行動の制限を行うことができる。
 
第二十九条の三中「前条第一項」を「第二十九条の二第一項」に、「とらない」を「採らない」に、「前条第三項」を「第二十九条の二第三項」に、「とる」を「採る」に改める。
 
第三十三条第一項中「指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要があると認めた者につき」を「次に掲げる者について」に改め、同項に次の各号を加える。
  一 指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十二条の三の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの
  二 第三十四条第一項の規定により移送された者
 
第三十三条第二項中「前項」を「前項第一号」に、「場合において、その者」を「場合又は第三十四条第二項の規定により移送された場合において、前項第一号に規定する者又は同条第二項の規定により移送された者」に改める。
 
第三十三条の四第一項中「指定医の診察の結果、その者が精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障があると認めた」を「その者が、次に該当する者である」に改め、同項に次の各号を加える。
  一 指定医の診察の結果、精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であつて当該精神障害のために第二十二条の三の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの
  二 第三十四条第三項の規定により移送された者
 
第三十四条の前の見出しを削り、同条を次のように改める。
  (医療保護入院等のための移送)
 第三十四条 都道府県知事は、その指定する指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であつて当該精神障害のために第二十二条の三の規定による入院が行われる状態にないと判定されたものにつき、保護者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を第三十三条第一項の規定による入院をさせるため第三十三条の四第一項に規定する精神病院に移送することができる。
 2 都道府県知事は、前項に規定する者の保護者について第二十条第二項第四号の規定による家庭裁判所の選任を要し、かつ、当該選任がされていない場合において、その者の扶養義務者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を第三十三条第二項の規定による入院をさせるため第三十三条の四第一項に規定する精神病院に移送することができる。
 3 都道府県知事は、急速を要し、保護者(前項に規定する場合にあつては、その者の扶養義務者)の同意を得ることができない場合において、その指定する指定医の診察の結果、その者が精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であつて当該精神障害のために第二十二条の三の規定による入院が行われる状態にないと判定されたときは、本人の同意がなくてもその者を第三十三条の四第一項の規定による入院をさせるため同項に規定する精神病院に移送することができる。
 4 第二十九条の二の二第二項及び第三項の規定は、前三項の規定による移送を行う場合について準用する。
 
第三十四条の二を削る。
 
第三十六条第三項後段を削る。
 
第三十七条の次に次の一条を加える。
  (指定医の精神病院の管理者への報告等)
 第三十七条の二 指定医は、その勤務する精神病院に入院中の者の処遇が第三十六条の規定に違反していると思料するとき又は前条第一項の基準に適合していないと認めるときその他精神病院に入院中の者の処遇が著しく適当でないと認めるときは、当該精神病院の管理者にその旨を報告すること等により、当該管理者において当該精神病院に入院中の者の処遇の改善のために必要な措置が採られるよう努めなければならない。
 
第三十八条の三第三項中「、その者が入院している精神病院の管理者その他関係者の意見を聴く」を「に対して意見を求め、若しくはその者の同意を得て委員(指定医である者に限る。第三十八条の五第四項において同じ。)に診察させ、又はその者が入院している精神病院の管理者その他関係者に対して報告若しくは意見を求め、診療録その他の帳簿書類の提出を命じ、若しくは出頭を命じて審問する」に改める。
 
第三十八条の四中「(第三十四条の規定により入院した者にあつては、その後見人、配偶者又は親権を行う者その他その扶養義務者)」を削る。
 
第三十八条の五第四項中「関係者の意見を聴く」を「当該審査に係る入院中の者の同意を得て委員に診察させ、又はその者が入院している精神病院の管理者その他関係者に対して報告を求め、診療録その他の帳簿書類の提出を命じ、若しくは出頭を命じて審問する」に改める。
 
第三十八条の六第二項中「若しくは第三十四条」を削る。
 
第三十八条の七第一項中「対し、」の下に「措置を講ずべき事項及び期限を示して、処遇を確保するための改善計画の提出を求め、若しくは提出された改善計画の変更を命じ、又は」を加え、同条第二項中「、第三十三条の四第一項若しくは第三十四条」を「若しくは第三十三条の四第一項」に改め、同条に次の一項を加える。
 3 厚生大臣又は都道府県知事は、精神病院の管理者が前二項の規定による命令に従わないときは、当該精神病院の管理者に対し、期間を定めて第二十二条の四第一項、第三十三条第一項及び第二項並びに第三十三条の四第一項の規定による精神障害者の入院に係る医療の提供の全部又は一部を制限することを命ずることができる。
 
第四十四条を次のように改める。
 第四十四条 削除
 
第四十五条の二に次の三項を加える。
 3 都道府県知事は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者について、前条第二項の政令で定める状態がなくなつたと認めるときは、その者に対し精神障害者保健福祉手帳の返還を命ずることができる。
 4 都道府県知事は、前項の規定により、精神障害者保健福祉手帳の返還を命じようとするときは、あらかじめその指定する指定医をして診察させなければならない。
 5 前条第三項の規定は、第三項の認定について準用する。
 
第四十七条第三項中「いう。」の下に「第五十条の二第六項において同じ。」を加える。
 
第四十八条第二項中「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学において社会福祉に関する科目を修めて卒業した者であつて、精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識及び経験を有するもの」を「精神保健福祉士」に改める。
 
第四十九条第一項中「その精神障害」を「当該精神障害者の希望、精神障害」に改め、「、当該精神障害者精神障害者社会復帰施設又は精神障害者地域生活援助事業等の利用について」を削り、「並びにあつせん及び調整を行うとともに、必要に応じて、精神障害者社会復帰施設の設置者又は精神障害者地域生活援助事業等を行う者に対し、当該精神障害者の利用の要請を行うものとする」を「必要な助言を行うものとする。この場合において、保健所長は、当該事務を精神障害者地域生活支援センターに委託することができる」に改め、同条第二項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
 2 保健所長は、前項の助言を受けた精神障害者から求めがあつた場合には、必要に応じて、精神障害者社会復帰施設の利用又は精神障害者地域生活援助事業等の利用についてあつせん又は調整を行うとともに、必要に応じて、精神障害者社会復帰施設の設置者又は精神障害者地域生活援助事業等を行う者に対し、当該精神障害者の利用の要請を行うものとする。
 
第五十条の見出し中「設置」を「設置等」に改め、同条第二項中「社会福祉事業法の定めるところにより」を「厚生省令の定めるところにより、あらかじめ、厚生省令で定める事項を都道府県知事に届け出て」に改め、同条に次の二項を加える。
 3 前項の規定による届出をした者は、その届け出た事項に変更を生じたときは、変更の日から一月以内に、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。
 4 市町村、社会福祉法人その他の者は、精神障害者社会復帰施設を廃止し、又は休止しようとするときは、あらかじめ、厚生省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。
 
第五十条の二第一項に次の一号を加える。
  五 精神障害者地域生活支援センター
 
第五十条の二に次の一項を加える。
 6 精神障害者地域生活支援センターは、地域の精神保健及び精神障害者の福祉に関する各般の問題につき、精神障害者からの相談に応じ、必要な指導及び助言を行うとともに、第四十九条第一項の規定による助言を行い、併せて保健所、福祉事務所、精神障害者社会復帰施設等との連絡調整その他厚生省令で定める援助を総合的に行うことを目的とする施設とする。
 
第五十条の二の次に次の四条を加える。
  (秘密保持義務)
 第五十条の二の二 精神障害者地域生活支援センターの職員は、その職務を遂行するに当たつては、個人の身上に関する秘密を守らなければならない。
  (施設の基準)
 第五十条の二の三 厚生大臣は、精神障害者社会復帰施設の設備及び運営について、基準を定めなければならない。
 2 精神障害者社会復帰施設の設置者は、前項の基準を遵守しなければならない。
  (報告の徴収等)
 第五十条の二の四 都道府県知事は、前条第一項の基準を維持するため、精神障害者社会復帰施設の長に対して、必要と認める事項の報告を求め、又は当該職員に、関係者に対して質問させ、若しくはその施設に立ち入り、設備、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
 2 第二十七条第五項及び第六項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。この場合において、同条第五項中「前項」とあるのは「第五十条の二の四第一項」と、「その者の居住する場所」とあるのは「精神障害者社会復帰施設」と、「指定医及び当該職員」とあるのは「当該職員」と、同条第六項中「第四項」とあるのは「第五十条の二の四第一項」と読み替えるものとする。
  (事業の停止等)
 第五十条の二の五 都道府県知事は、精神障害者社会復帰施設の設置者がこの法律若しくはこれに基づく命令若しくはこれらに基づいてする処分に違反したとき、又は当該施設が第五十条の二の三第一項の基準に適合しなくなつたときは、その設置者に対して、その施設の設備若しくは運営の改善又はその事業の停止若しくは廃止を命ずることができる。
 2 都道府県知事は、前項の規定により、精神障害者社会復帰施設につき、その事業の廃止を命じようとするときは、あらかじめ、地方精神保健福祉審議会の意見を聴かなければならない。
 
第五十一条の十三第一項を次のように改める。
  精神障害者社会復帰施設について、第五十条の二の四及び第五十条の二の五の規定により都道府県知事の権限に属するものとされている事務は、この施設を利用する者の利益を保護する緊急の必要があると厚生大臣が認める場合にあつては、厚生大臣又は都道府県知事が行うものとする。この場合においては、この法律の規定中都道府県知事に関する規定(当該事務に係るものに限る。)は、厚生大臣に関する規定として厚生大臣に適用があるものとする。
 
第五十一条の十四を次のように改める。
  (事務の区分)
 第五十一条の十四 この法律(第一章から第三章まで、第十九条の二第四項、第十九条の七、第十九条の八、第十九条の九第一項、同条第二項(第三十三条の五において準用する場合を含む。)、第二十九条の七、第三十条第一項及び第三十一条、第五章第四節、第三十三条の四第一項及び第三項並びに第六章を除く。)の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務(次項及び第三項において「第一号法定受託事務」という。)とする。
 2 この法律(第三十二条第三項及び第六章第二節を除く。)の規定により保健所を設置する市又は特別区が処理することとされている事務(保健所長に係るものに限る。)は、第一号法定受託事務とする。
 3 第二十一条の規定により市町村が処理することとされている事務は、第一号法定受託事務とする。
 
第五十二条中「五十万円」を「百万円」に改め、「(第四十四条において準用する場合を含む。)」を削り、同条に次の一号を加える。
  四 第三十八条の七第三項の規定による命令に違反した者
 
第五十三条第一項中「(第四十四条において準用する場合を含む。)」を削り、「三十万円」を「五十万円」に改める。
 
第五十三条の二中「三十万円」を「五十万円」に改める。
 
第五十四条を次のように改める。
 第五十四条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
  一 虚偽の事実を記載して第二十三条第一項の申請をした者
  二 第五十条の二の五第一項の規定による停止又は廃止の命令に違反した者
  三 第五十一条の十三第一項の規定により厚生大臣が行う第五十条の二の五第一項に規定する停止又は廃止の命令に違反した者
 
第五十五条中「十万円」を「二十万円」に改め、同条第一号中「(これらの規定を第四十四条において準用する場合を含む。)」を削り、「第二十七条第四項(第四十四条において準用する場合を含む。)」を「同条第四項」に改め、同条第二号中「(第四十四条において準用する場合を含む。)」を削り、「第二十九条の二第四項」を「同条第四項」に改め、同条第五号を同条第七号とし、同条第四号中「(第四十四条において準用する場合を含む。)」を削り、同号を同条第六号とし、同条第三号中「(第四十四条において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)」を削り、同号を同条第五号とし、同条第二号の次に次の二号を加える。
  三 第三十八条の三第三項の規定による報告若しくは提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、同項の規定による診察を妨げ、又は同項の規定による出頭をせず、若しくは同項の規定による審問に対して、正当な理由がなく答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者
  四 第三十八条の五第四項の規定による報告若しくは提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、同項の規定による診察を妨げ、又は同項の規定による出頭をせず、若しくは同項の規定による審問に対して、正当な理由がなく答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者
 
第五十六条中「第五十二条」の下に「、第五十四条第二号」を加える。
 
第五十七条第四号を削り、同条第三号中「(第四十四条において準用する場合を含む。)」を削り、同号を同条第四号とし、同条第二号中「(第四十四条において準用する場合を含む。)」を削り、同号を同条第三号とし、同条第一号中「第二十二条の四第三項後段又は第四項(これらの規定を第四十四条において準用する場合を含む。)」を「第二十二条の四第四項」に改め、同号を同条第二号とし、同条に第一号として次の一号を加える。
  一 第十九条の四の二の規定に違反した者
 
第五十七条第五号中「(第四十四条において準用する場合を含む。)」を削り、「第三十八条の二第二項」を「同条第二項」に、「第三十八条の二第一項の」を「同条第一項の」に改める。
 
第二条 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を次のように改正する。
 
第二条及び第四条中「地域生活援助事業」を「居宅生活支援事業」に改める。
 
第六条第一項中「、精神保健福祉センターを設置することができる」を「の機関(以下「精神保健福祉センター」という。)を置くものとする」に改め、同条第二項を次のように改める。
 2 精神保健福祉センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
  一 精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識の普及を図り、及び調査研究を行うこと。
  二 精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談及び指導のうち複雑又は困難なものを行うこと。
  三 精神医療審査会の事務を行うこと。
  四 第三十二条第三項及び第四十五条第一項の申請に対する決定に関する事務のうち専門的な知識及び技術を必要とするものを行うこと。
 
第八条(見出しを含む。)中「政令」を「条例」に改める。
 
第九条第三項を削る。
 
第三十二条第三項中「保健所長」を「市町村長」に改め、同条中第五項を削り、第六項を第五項とし、第七項を第六項とし、第八項を第七項とする。
 
第四十五条中第四項を削り、第五項を第四項とし、同条第六項中「及び第四項」を削り、同項を同条第五項とし、同条第七項を同条第六項とする。
 
第四十九条第一項中「保健所長」を「市町村」に、「又は精神障害者地域生活援助事業」を「又は精神障害者居宅生活支援事業」に、「精神障害者地域生活援助事業等」を「精神障害者居宅生活支援事業等」に改め、同条第二項中「保健所長」を「市町村」に、「精神障害者地域生活援助事業等」を「精神障害者居宅生活支援事業等」に改め、同条第三項中「精神障害者地域生活援助事業等」を「精神障害者居宅生活支援事業等」に、「前項」を「第二項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
 3 都道府県は、前項の規定により市町村が行うあつせん、調整及び要請に関し、その設置する保健所による技術的事項についての協力その他市町村に対する必要な援助及び市町村相互間の連絡調整を行う。
 
第五十条の三を次のように改める。
  (精神障害者居宅生活支援事業の実施)
 第五十条の三 国及び都道府県以外の者は、精神障害者の社会復帰の促進及び自立の促進を図るため、厚生省令の定めるところにより、あらかじめ、厚生省令で定める事項を都道府県知事に届け出て、精神障害者居宅生活支援事業を行うことができる。
 2 前項の規定による届出をした者は、その届け出た事項に変更を生じたときは、変更の日から一月以内に、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。
 3 国及び都道府県以外の者は、精神障害者居宅生活支援事業を廃止し、又は休止しようとするときは、あらかじめ、厚生省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。
 
第五十条の三の次に次の三条を加える。
  (精神障害者居宅生活支援事業の種類)
 第五十条の三の二 精神障害者居宅生活支援事業の種類は、次のとおりとする。
  一 精神障害者居宅介護等事業
  二 精神障害者短期入所事業
  三 精神障害者地域生活援助事業
 2 精神障害者居宅介護等事業は、精神障害者の社会復帰の促進を図るため、精神障害のために日常生活を営むのに支障のある精神障害者につき、その者の居宅において食事、身体の清潔の保持等の介助その他の日常生活を営むのに必要な便宜であつて厚生省令で定めるもの(次項において「介護等」という。)を供与する事業とする。
 3 精神障害者短期入所事業は、精神障害者であつて、その介護等を行う者の疾病その他の理由により、居宅において介護等を受けることが一時的に困難となつたものにつき、精神障害者生活訓練施設その他の厚生省令で定める施設に短期間入所させ、介護等を行う事業とする。
 4 精神障害者地域生活援助事業は、地域において共同生活を営むのに支障のない精神障害者につき、これらの者が共同生活を営むべき住居において食事の提供、相談その他の日常生活上の援助を行う事業とする。
  (報告の徴収等)
 第五十条の三の三 都道府県知事は、精神障害者の福祉のために必要があると認めるときは、精神障害者居宅生活支援事業を行う者に対して、必要と認める事項の報告を求め、又は当該職員に、関係者に対して質問させ、若しくはその事務所若しくは施設に立ち入り、設備、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
 2 第二十七条第五項及び第六項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。この場合において、同条第五項中「前項」とあるのは「第五十条の三の三第一項」と、「その者の居住する場所」とあるのは「その事務所又は施設」と、「指定医及び当該職員」とあるのは「当該職員」と、同条第六項中「第四項」とあるのは「第五十条の三の三第一項」と読み替えるものとする。
  (事業の停止等)
 第五十条の三の四 都道府県知事は、精神障害者居宅生活支援事業を行う者が、この法律若しくはこれに基づく命令若しくはこれらに基づいてする処分に違反したとき、又はその事業に関し不当に営利を図り、若しくはその事業に係る精神障害者の処遇につき不当な行為をしたときは、当該事業を行う者に対して、その事業の制限又は停止を命ずることができる。
 2 都道府県知事は、前項の規定により、精神障害者居宅生活支援事業の制限又は停止を命ずる場合には、あらかじめ、地方精神保健福祉審議会の意見を聴かなければならない。
 
第五十一条の見出し中「又は都道府県」を「及び地方公共団体」に改め、同条第二項第二号中「精神障害者地域生活援助事業及び」を削り、同項第三号中「前項」を「前二項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第一項中「又は精神障害者地域生活援助事業を行う者に対し、次に掲げる」を「に対し、当該施設の設置及び運営に要する」に改め、各号を削り、同項を同条第三項とし、同条に第一項及び第二項として次の二項を加える。
   市町村は、精神障害者居宅生活支援事業を行う者に対し、当該事業に要する費用の一部を補助することができる。
 2 都道府県は、市町村に対し、次に掲げる費用の一部を補助することができる。
  一 市町村が行う精神障害者居宅生活支援事業に要する費用
  二 前項の規定による補助に要した費用
 
第五十一条の四中「精神障害者地域生活援助事業」を「精神障害者居宅生活支援事業」に改める。
 
第五十一条の十四第二項中「第三十二条第三項及び」を削る。
 
第五十四条第三号を同条第四号とし、同条第二号の次に次の一号を加える。
  三 第五十条の三の四第一項の規定による制限又は停止の命令に違反した者
 
第五十六条中「第五十四条第二号」の下に「若しくは第三号」を加える。
 
社会福祉事業法の一部改正)
第三条 社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。
  第二条第三項第三号の三中「精神障害者地域生活援助事業」を「精神障害者居宅生活支援事業」に改める。
 
(医療法の一部改正)
第四条 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)の一部を次のように改正する。
  第四十二条第一項中第四号を削り、第五号を第四号とし、第六号を第五号とし、第七号を第六号とし、同項第八号中「もの」の下に「又は同項第三号の三に掲げる事業」を加え、同号を同項第七号とする。
 
 附則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から、施行する。ただし、第二条から第四条までの規定及び附則第四条の規定は、平成十四年四月一日から施行する。
 
(第一条の規定による改正に伴う経過措置)
第二条 この法律の施行の際現に第一条の規定による改正後の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下この条及び次条において「新法」という。)第五十条の二に規定する精神障害者社会復帰施設(同条第六項に規定する精神障害者地域生活支援センターを除く。)を設置している市町村、社会福祉法人その他の者であって、社会福祉事業法第六十四条第一項の規定による届出をしている者は、新法第五十条第二項の規定による届出をしたものとみなす。
2 この法律の施行の際現に新法第五十条の二第六項に規定する精神障害者地域生活支援センターを設置している市町村、社会福祉法人その他の者について、新法第五十条第二項の規定を適用する場合においては、同項中「あらかじめ」とあるのは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律(平成十一年法律第六十五号)の施行の日から起算して三月以内に」とする。
 
第三条 この法律の施行の際現に第一条の規定による改正前の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下この条において「旧法」という。)第四十四条において準用する旧法第十九条の四、第二十条から第四十三条まで及び第四十七条第一項の規定の適用を受けている者は、それぞれ新法第十九条の四、第二十条から第四十三条まで及び第四十七条第一項の規定の適用を受けているものとみなす。
 
(第二条の規定による改正に伴う経過措置)
第四条 この法律の施行の際現に第二条の規定による改正後の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下この条において「新法」という。)第五十条の三の二第三項に規定する精神障害者地域生活援助事業を行っている国及び都道府県以外の者であって、社会福祉事業法第六十四条第一項の規定による届出をしている者は、新法第五十条の三第一項の規定による届出をしたものとみなす。
2 この法律の施行の際現に新法第五十条の三の二に規定する精神障害者居宅生活支援事業(同条第三項に規定する精神障害者地域生活援助事業を除く。)を行っている国及び都道府県以外の者について新法第五十条の三第一項の規定を適用する場合においては、同項中「あらかじめ」とあるのは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律(平成十一年法律第六十五号)附則第一条ただし書に規定する規定の施行の日から起算して三月以内に」とする。
 
(罰則に関する経過措置)
第五条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
 
(検討)
第六条 政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下この条において「新法」という。)の施行の状況並びに精神保健及び精神障害者の福祉を取り巻く環境の変化を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
 
精神衛生法等の一部を改正する法律の一部改正)
第七条 精神衛生法等の一部を改正する法律(昭和六十二年法律第九十八号)の一部を次のように改正する。
  附則第九条から第十六条までを削る。
 
精神保健法等の一部を改正する法律の一部改正)
第八条 精神保健法等の一部を改正する法律(平成五年法律第七十四号)の一部を次のように改正する。
  附則第二条を次のように改める。
 第二条 削除
 
 附則第三条中「新法」を「第一条の規定による改正後の精神保健法」に改める。
 
(厚生省設置法の一部改正)
第九条 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
  第六条第十二号中「又はその指定を取り消し」を「その指定を取り消し、又はその職務の停止を命じ」に改める。