精神医療に関する条文・審議(その102)

前回(id:kokekokko:20051116)のつづき。初回は2004/10/28。
平成11年法律第87号による改正をみてみます。地方分権の推進のため、国の権限で行っていた事業がいくつか地方自治体へと移管されました。これに伴い、精神保健福祉法も改正されています。ここでは、精神保健、精神障害者福祉に関する審議に絞ってアップしてみます。

地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律【第170条と附則第1条】
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正)
第百七十条 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
 
 目次中「第五十一条の十一の二・第五十一条の十二」を「第五十一条の十一の二―第五十一条の十四」に改める。
 
 第九条第一項中「地方精神保健福祉審議会」を「精神保健福祉に関する審議会その他の合議制の機関(以下「地方精神保健福祉審議会」という。)」に改める。
 
 第十九条の九に次の一項を加える。
 3 厚生大臣は、第一項に規定する都道府県知事の権限に属する事務について、指定病院に入院中の者の処遇を確保する緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事に対し同項の事務を行うことを指示することができる。
 
 第三十二条に次の一項を加える。
 8 前各項に定めるもののほか、第一項の医療に関し必要な事項は、政令で定める。
 
 第三十三条の四に次の一項を加える。
 4 厚生大臣は、前項に規定する都道府県知事の権限に属する事務について、第一項の指定を受けた精神病院に入院中の者の処遇を確保する緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事に対し前項の事務を行うことを指示することができる。
 
 第五十一条の十二第一項中「又は都道府県知事その他の都道府県の機関若しくは職員の権限に属するものとされている事務」を削り、「処理し、又は指定都市の長その他の機関若しくは職員が行う」を「処理する」に、「又は都道府県知事その他の都道府県の機関若しくは職員に関する」及び「又は指定都市の長その他の機関若しくは職員に関する」を「に関する」に、「又は指定都市の長その他の機関若しくは職員に適用」を「に適用」に改め、同条第二項中「処分」の下に「(地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務に係るものに限る。)」を加える。
 
 第八章中第五十一条の十二の次に次の二条を加える。
  (緊急時における厚生大臣の事務執行)
 第五十一条の十三 精神障害者社会復帰施設について、第五十条第二項において適用することとされる社会福祉事業法第六十五条及び第六十七条の規定により都道府県知事の権限に属するものとされている事務は、この施設を利用する者の利益を保護する緊急の必要があると厚生大臣が認める場合にあつては、厚生大臣又は都道府県知事が行うものとする。この場合においては、同法の規定中都道府県知事に関する規定(当該事務に係るものに限る。)は、厚生大臣に関する規定として厚生大臣に適用があるものとする。
 2 前項の場合において、厚生大臣又は都道府県知事が当該事務を行うときは、相互に密接な連携の下に行うものとする。
  (事務の区分)
 第五十一条の十四 この法律(第一章から第三章まで、第十九条の七、第十九条の八、第十九条の九第一項、同条第二項(第三十三条の五(第四十四条において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)、第二十九条の七、第三十条第一項及び第三十一条、第五章第四節、第三十三条の四第一項及び第三項(第四十四条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)、第六章第一節、第四十六条、第四十七条第一項(第四十四条において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第三項、第四十八条、第四十九条第一項並びに同章第三節を除く。)の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務(以下この条において「第一号法定受託事務」という。)とする。
 2 この法律(第三十二条第三項、第四十七条第一項(第四十四条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第三項、第四十八条並びに第四十九条第一項を除く。)の規定により保健所を設置する市又は特別区が処理することとされている事務(保健所長に係るものに限る。)は、第一号法定受託事務とする。
 3 第二十一条(第四十四条において準用する場合を含む。)の規定により市町村が処理することとされている事務は、第一号法定受託事務とする。
 
附則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十二年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
【1号以下略】

第145回衆議院 本会議会議録第29号(平成11年5月13日)
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。自治大臣野田毅君。
    〔国務大臣野田毅君登壇〕
国務大臣野田毅君) 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案の趣旨について御説明いたします。
 地方分権の推進は、二十一世紀を迎えるに当たって、新しい時代にふさわしい我が国の基本的な行政システムを構築しようとするものであります。
 これまでの行政システムは、全国的統一性、公平性を重視したものであり、我が国の近代化、第二次大戦後の復興や経済成長を達成するために一定の効果を発揮してきたものでありますが、今日においては、国民の意識や価値観も大きく変化し、生活の質の向上や、個性的で多様性に富んだ国民生活の実現に資するシステムの構築が、強く求められております。
 このためには、国は本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねること、並びに、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにすることを基本とする、国と地方の新しいシステムに転換する必要があります。
 このような趣旨は、既に平成五年六月に衆参両院において行われた地方分権の推進に関する決議において明らかにされております。これを受けて制定された地方分権推進法に基づいて地方分権推進委員会の勧告が行われ、昨年五月、政府として地方分権推進計画を作成し、国会に報告したところであります。
 この法律案は、地方分権推進計画を踏まえ、さらに地方分権を推進する観点から検討を進め、地方自治法を初めとする関係法律四百七十五件について、必要な改正を行おうとするものであります。
 第一に、国と地方公共団体との関係について、新しい関係を築くため、都道府県知事や市町村長を国の機関として国の事務を処理させる仕組みである機関委任事務制度を廃止することとしております。
 これに伴い、地方公共団体に対する国の包括的な指揮監督権等、機関委任事務に係る根幹的な制度を定める地方自治法の改正を行うとともに、個々の機関委任事務を定めている関係法律の改正を行い、地方公共団体が処理する事務を、自治事務法定受託事務とに区分することとしております。
 また、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度は、これに伴い廃止することとし、地方事務官が従事することとされている事務については、厚生事務官及び労働事務官が行うこととし、そのため、国の地方出先機関を再編することとしております。
 第二に、法定主義の原則、一般法主義の原則、公正、透明の原則に基づき、地方公共団体に対する国または都道府県の関与の見直し、整備を行うこととしております。
 このため、地方自治法において、関与に係る基本原則、新たな事務区分ごとの関与の基本類型、関与の手続及び関与に係る係争処理手続を定めるとともに、個々の法律における関与は基本類型に沿った必要最小限のものにするべく、所要の改正を行うこととしております。
 第三に、国の権限を都道府県に、また都道府県の権限を市町村に移譲するため、関係法律において所要の改正を行うこととしております。
 これに関連して、地方自治法等の改正により、二十万以上の人口規模を有する市を当該市からの申し出に基づき指定することにより、権限をまとめて移譲する特例市制度を創設することとしております。
 第四に、地方公共団体の自主組織権を尊重し、行政の総合化、効率化を進めるため、必置規制の廃止または緩和を行うこととしております。
 第五に、市町村合併の推進、地方議会の活性化、中核市の指定要件の緩和等、地方公共団体の行財政能力の一層の向上と行政体制の整備確立を進めることとしております。
 以上が、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案の趣旨であります。(拍手)

第145回衆議院 行政改革に関する特別委員会会議録第2号(平成11年5月14日)
○野田(毅)国務大臣 ただいま議題となりました地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。
 まず、この法律案を提案する背景について御説明申し上げます。
 地方分権の推進は、二十一世紀を迎えるに当たって新しい時代にふさわしい我が国の基本的な行政システムを構築しようとするものであります。
 これまでの行政システムは、全国的統一性、公平性を重視したものであり、我が国の近代化、第二次大戦後の復興や経済成長を達成するために一定の効果を発揮してきたものでありますが、今日においては、国民の意識や価値観も大きく変化し、生活の質の向上や個性的で多様性に富んだ国民生活の実現に資するシステムの構築が強く求められています。
 このためには、国は本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねること並びに地方公共団体の自主性及び自立性が十分発揮されるようにすることを基本とする国と地方の新しいシステムに転換する必要があります。
 このような趣旨は、既に平成五年六月に衆参両院において行われた地方分権の推進に関する決議において明らかにされております。これを受けて制定された地方分権推進法に基づいて地方分権推進委員会の勧告が行われ、昨年五月、政府として地方分権推進計画を作成し、国会に報告したところであります。
 この法律案は、地方分権推進計画を踏まえ、さらに地方分権を推進する観点から検討を進め、地方自治法を初めとする関係法律四百七十五件について、必要な改正を行おうとするものであります。
 次に、この法律案を提案する理由について御説明いたします。
 各般の行政を展開する上で国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確にし、かつ、地方公共団体の自主性及び自立性を高めることにより、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図る等のため、機関委任事務制度の廃止及びこれに伴う地方公共団体の事務区分の再構成、国の関与等の縮減、権限移譲の推進、必置規制の整理合理化、地方公共団体の行政体制の整備確立等を行い、もって地方分権を推進する必要があります。
 これがこの法律案を提案する理由であります。
 次に、法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
 第一に、国と地方公共団体との関係について、新しい関係を築くため、都道府県知事や市町村長を国の機関として国の事務を処理させる仕組みである機関委任事務制度を廃止することとしております。これに伴い、地方公共団体に対する国の包括的な指揮監督権等、機関委任事務に係る根幹的な制度を定める地方自治法の改正を行うとともに、個々の機関委任事務を定めている関係法律の改正を行い、地方公共団体が処理する事務を自治事務法定受託事務とに区分することとしております。
 また、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度は、これに伴い、廃止することとし、地方事務官が従事することとされている事務については、厚生事務官及び労働事務官が行うこととし、そのため、国の地方出先機関を再編することとしております。
 第二に、法定主義の原則、一般法主義の原則、公正、透明の原則に基づき、地方公共団体に対する国または都道府県の関与の見直し、整備を行うこととしております。このため、地方自治法において、関与に係る基本原則、新たな事務区分ごとの関与の基本類型、関与の手続及び関与に係る係争処理手続を定めるとともに、個々の法律における関与は基本類型に沿った必要最小限のものにするべく所要の改正を行うこととしております。
 第三に、国の権限を都道府県に、また、都道府県の権限を市町村に移譲するため、関係法律において所要の改正を行うこととしております。これに関連して、地方自治法等の改正により、二十万以上の人口規模を有する市を当該市からの申し出に基づき指定することにより、権限をまとめて移譲する特例市制度を創設することとしております。
 第四に、地方公共団体の自主組織権を尊重し、行政の総合化、効率化を進めるため、必置規制の廃止または緩和を行うこととしております。
 第五に、市町村合併の推進、地方議会の活性化、中核市の指定要件の緩和等、地方公共団体の行財政能力の一層の向上と行政体制の整備確立を進めることとしております。
 この法律案は、以上のとおり、地方分権の推進を図るため、二十四府省庁・委員会、四百七十五法律にわたる改正を取りまとめたものであります。
 なお、これらの改正は、一部を除き平成十二年四月一日から施行することといたしております。
 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)

第145回衆議院 行政改革に関する特別委員会会議録第7号(平成11年5月28日)
○野村参考人 第二点は、いわゆる公費医療、あるいは不採算医療と言ってもいいわけでありますが、結核予防法とか、精神保健福祉法児童福祉法などによるいわゆる公費医療、あるいは不採算医療といいますか、そういうものを担当してきた国立病院というのは、やはり障害児を抱える親たちにとっては非常に大事な存在であったわけであります。
 端的に申しますと、重症心身障害児病棟というのは今日の国立病院・療養所の一つの特徴をなしていると思います。といいますのは、国立病院関係者は、この重症心身障害児病棟のことを略語で重心病棟と言って、重心病棟がどうなったというようなことを言うわけです。その場合に、その場にいたほかの医療関係者からは、重心て何のことだという質問が出たりいたします。つまり、国立病院だと重心という略語が通用するわけですが、国立でない普通の医療関係者だと、重心て一体何のことだ、こんな質問が出る。このことは、やはり国立病院が重症心身障害児医療において非常に大きな役割を果たしてきた。それに限らず、いわゆる公費医療、不採算医療で大きな役割を果たしてきたからではないか。こういう点が、独立行政法人化によって採算性あるいは企業会計が適用されることによって、どうなってしまうのか甚だ心配である、こういうことであります。
 【略】
○松本(善)委員 最初に野村参考人に伺いますが、お話の中で出ました不採算医療、まあ重度心身障害者の場合なんかはよくわかりますが、いわゆる不採算医療と言われるものにはどういうものがあるんでしょうか。列挙をしていただきたいと思います。
○野村参考人 不採算医療という言葉はどちらかというと開業医団体の方から出された面が歴史的にはあるわけで、社会保険診療報酬体系で縛られていてそういうところではやれない医療ということで、一般的に言えば、これは、例えば厚生省の外郭団体が出している「国民衛生の動向」なんかで「公費医療」というページをあけて、そこをずらっと見ますと、これが大体不採算医療に該当するのではないかと思います。もちろん、生活保護法の医療扶助も一応対象となりましょうし、あとは、結核予防法による命令入所、それから精神保健福祉法による措置入院とか、それから児童福祉法による育成医療、その他、身体障害者福祉法による更生医療等々でございます。
○松本(善)委員 独立行政法人になって財政上の保障がなくなるんじゃないかということは、閣僚までここの審議で心配をしていらっしゃるという状況でございますが、辺地でありますとか離島でありますとか、そういうところの国立病院や療養所が独立行政法人になったらどういうことになっていくんでしょうか。先ほど移譲という問題をお話しになりましたけれども、実情としてはどういうことになるのか、おわかりならお話しいただきたい。
○野村参考人 一番簡単に申しますと、やはり住民の所得、能力といいますか、そういうものの一定の分布の中だと民間医療機関も成り立ち得るわけでありますけれども、僻地、離島、長崎県は大変離島をたくさん抱えておりますし、また北海道の辺遠部分なんかも、これは、到底普通の、いわゆる民間の医療機関でもペイするような医療となると、ちょっと成り立ちそうもないと考えられます。
 やはり、人口の分布、人口の分布というのはまた同時に所得の分布にもなるわけで、特に公的な支えのない医療機関だったら、それは一定の人口分布掛ける所得分布の上でしか成り立ち得ないのではないかと考えております。
○松本(善)委員 それから、難病、まあ不採算医療とも言っていますが、一般的にいわゆる難病と言われるものがそういうものになるんでしょうけれども、国立もあれば公立もあれば、いわゆる民間の非営利医療法人もあろうかと思いますが、その中で国立病院や診療所の果たしている役割というものはどういうものでございましょうか。
○野村参考人 概して、難病それから先ほど挙げたものも、一番特徴的な点は、時間的に長期間かかるということであります。それで、長期間かかるということが現在の社会保険診療報酬と矛盾するわけでありまして、現在の社会保険診療報酬体系というのは、入院日数が長くなれば長くなるほど逓減的にだんだん減っていく、逓減的に診療報酬が安くなるというシステムになっておりまして、一月も二月も患者を抱えていると、その当該医療機関の方がバンザイしてしまう。ですから、今でしたらせいぜい二十日あたりが一つの目安で、なるべくそれを超さないぐらいのところで入院患者もお引き取りを願う、そのことによって医療機関も経営的に成り立つと。
 こういう状況でありますと、いわゆる難病、その他長期的療養を要する、そういう場合にはもうとてもやっていけないという状況が生まれつつあり、それはやはり国公立、公的医療機関がカバーしていかなければならないのではないかと考えます。

第145回衆議院 行政改革に関する特別委員会会議録第10号(平成11年6月2日)
○石垣委員 ありがとうございました。
 次に、厚生省関係をお願いしたいと思うんです。
 児童扶養手当法、第二百六条関係でございますけれども、今回の改正案で、都道府県の知事から市長、福祉事務所を管理する町村長と権限が移ったわけであります。こういう中で、市町村において、権限を移譲されたことにおいて、事務の増大あるいはまた給付費の一部負担、それから事務執行に必要な体制整備、いろいろ問題が降りかかっている、そういうことで非常に懸念をしております。
 こういう点にはどういう配慮をされていますか。
○宮下国務大臣 御案内のように、母子家庭の児童等に対する児童扶養手当の支給に関する点でございますけれども、現在は、国が四分の三、費用の負担をいたしておりまして、都道府県が四分の一とされておりまして、それから、都道府県負担分や人件費等は地方交付税基準財政需要額に算入されておるという建前になっております。
 今般の分権一括法によりまして、児童扶養手当の受給資格の認定等に関する事務を都道府県から市及び福祉事務所を設置する町村、これは現実には四町村でございますが、これに移譲することといたしております。この場合の費用負担につきましては、市とか福祉事務所の設置町村は、児童扶養手当の受給資格の認定等に関する事務につきまして都道府県と全く同等の権限を持つ主体となるということでございますし、それから、認定事務の適正な執行を担保する観点からも、当該事務を行う主体がそれぞれ費用負担を行うことが適当である等を踏まえまして、国の負担は従来どおり四分の三、それから都道府県、市、福祉事務所設置町村が四分の一を負担することといたしております。なお、これは言うまでもなく、機関委任事務から法定受託事務にしているところでございます。
 そして、都道府県や市とか福祉事務所の設置町村が負担する費用負担分や人件費につきましては、権限移譲後においても地方交付税基準財政需要額に算定されることといたしておりますので、基本的には移譲される自治体にとって負担増とならないものと私どもは考えております。
 いずれにせよ、これは、都道府県から市への権限移譲が円滑に進むよう、平成十四年の八月一日から施行することといたしておりますが、この流れは、従来の児童行政というのは県中心であったものが、やはりそれを地方の市あるいは福祉事務所を有する町に移譲した方がよろしいという分権法の趣旨に沿った措置であるというように存じております。
○石垣委員 直接市町村に移行されることは非常に結構なことなんですけれども、一番心配するのは、今地方財政も非常に厳しい中ですから、経費の負担増について非常に懸念をしておるわけです。
 今、大臣から地方交付税の算定基準に含まれる、こういう話があったんですけれども、実際に要した金額というのは、全部、この中に超過負担があるのですよ。
 例えば大阪市に聞いてみますと、手当額の四分の一の負担を今度大阪市が持たなければいかぬ、それで支給対象者が約二万人、これに要する経費が二十四億かかると。これを今まで大阪府が全部見ておったわけですね。大阪府が今まで負担していたものを全部市町村へばらまくわけです。だから、大阪府は本当言うたらやれやれなんですね。ところが、今度はそれを受ける市町村はいろいろと財政の濃淡があります。ところが、やはり厳しい地方自治体があります。
 こういう中で、大臣は地方交付税の算定基準に含まれるとおっしゃっていますけれども、現実に今、大阪府においてもかなりの超過負担があるわけなんです。これがそのまま形として市町村へおりていくわけなんですね。現実に今、大阪府では七万九千五百六十六件を処理しているわけなんです。これに要する費用が六千百三十二万九千百二十三円、こういう状態で、これにかかわっている体制は、職員が嘱託職員、非常勤職員を入れて約二十名。こういう体制で府下全般の児童扶養手当の支給体制をしいているのですけれども、これが形を変えて全部各市町村におりていくわけなんです。
 したがって、先ほど申し上げたように、各市町村においていわゆる認定、審査事務、あるいはまた手当の支給事務、それから認定に関する調査事務、それから統計調査に関する取りまとめの事務、こういう事務量が、あるいはまた事務執行に必要な体制整備も大変です、いわゆる障害判定に係る判定医の設置とか、あるいはまた請求書等の保管場所の確保とか、電算システムの開発とか、各種請求用紙の準備とか、いろいろと大変な作業が下へおりていくわけなんです。
 そういう点についても、厚生省としては経費の負担増にならないように十分御配慮願いたいと思うのですが、いかがですか。
○宮下国務大臣 従来の方式から市及び町に移譲するわけでございますが、今委員の御指摘のように、この移譲によって過重な負担がかかるようではいけませんので、よく実態を調査させていただいて、どのような対策が可能であるかどうか。一般論としては先ほど申したとおりでございますから、もし個別の事情がおありでありますれば、調査させて適切な対処をとらせていただくつもりでございます。
○石垣委員 今申し上げたように、ひとつ厚生省としても十分綿密な調査をしていただいて、今回の事務移譲が実りのあるような形で、地元自治体として、ああ、よかった、こういう成果の上がるような御配慮をお願いしておきます。では、大臣、結構です。

第145回衆議院 行政改革に関する特別委員会会議録第14号(平成11年6月10日)
虎島委員 私は、自由民主党民主党公明党改革クラブ自由党及び社会民主党市民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。
 政府原案におきましては、都道府県知事や市町村長を国の機関として国の事務を処理させる仕組みである機関委任事務制度を廃止することとし、地方公共団体が処理する事務を自治事務法定受託事務に区分することといたしております。
 しかし、この新たな区分による機関委任事務の振り分けによって、国の関与の余地が大きい法定受託事務が半数近くを占めることとなっており、地方公共団体の自主性、自立性を高めるべく国と地方公共団体の間を上下の関係から対等の関係へと転換を図るという地方分権の趣旨にかんがみますと、法定受託事務は極力限定すべきであると思料されます。
 さらに、政府原案においては、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度を廃止することとし、社会保険関係の地方事務官が従事することとされている事務については厚生事務官が行うこととしておりますが、地域の医療、保健、福祉等の施策と密接にかかわる社会保険関係の業務については、住民の利便性の確保、事務処理の効率化等の観点から、地域における総合的な行政主体である地方公共団体の果たすべき役割は極めて大きいものがあると言えます。このため、社会保険関係の地方事務官が従事する業務については、その事務区分及び職員の身分等について見直しを行うことが必要であると考えられます。
 また、地方公共団体の自己決定、自己責任による行財政運営は地方分権の推進に不可欠であることから、地方公共団体の税財源の充実確保については、その実現が切に望まれるものであります。このため、今後、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保の方途について検討を行うことは極めて重要であります。
 こうしたことを踏まえ、本修正案では、以下の修正を行うことといたしております。
【略】
 以上が本修正案の趣旨及び内容であります。何とぞ御賛同賜りますようにお願い申し上げます。
 以上であります。
○高鳥委員長 次に、春名直章君。
○春名委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案の提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
【略】
 以上が修正案の概要でありますが、何とぞ慎重審議の上、御賛同あらんことをお願い申し上げまして、説明といたします。
○高鳥委員長 これにて両修正案についての趣旨の説明は終わりました。
○高鳥委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に付します。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。三沢淳君。
○三沢委員 私は、自由民主党自由党を代表して、ただいま議題となっております地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案につきまして、自由民主党自由党民主党公明党改革クラブ社会民主党市民連合の五会派共同提出の修正案及び修正部分を除く原案に賛成し、共産党提出の修正案に対しては反対の立場から討論をいたします。
 我が国における中央集権的な行政システムは、明治維新以降の近代化、第二次世界大戦後の復興や高度経済成長を支えた根幹であり、日本の発展に寄与してまいりました。しかし、今日においては制度疲労を起こし、さまざまな障害が生じて、逆に我が国の活力を低下させる要因となっております。
 今後、我が国において、健全な民主主義を発展させ、豊かな国民生活の実現を図るためには、国と地方公共団体の役割を明確にし、国と地方公共団体が対等となる関係になるような新たな行政システムを構築する必要があります。
 この観点からも、今回の一括法律案は、中央集権型行政システムを地方分権型システムに変革しようとするものであり、内容的にも二十一世紀を見据えた改革であると評価できます。
 【略】
 なお、今後は、本法律案を速やかに成立させ、地方分権を実行の段階に移すとともに、政府においては、国と地方公共団体を通じた税財源の再配分や、一層の市町村合併等を進めるなど、さらなる地方分権推進の取り組みを続けられることを願って、私の賛成討論を終わります。(拍手)
○高鳥委員長 次に、藤田幸久君。
○藤田(幸)委員 私は、民主党を代表して、本日与野党五会派共同で提出された地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案及び修正部分を除く同法案に賛成する立場で討論を行います。
【略】
 なお、共産党提出の修正案につきましては、その問題意識については共感できる部分もあるとはいえ、提案趣旨において、法案を地方分権とは名ばかりの新たな地方統制法と評価している点については基本的に立場を異にするため、反対することといたしました。
 最後に、この場をおかりして、この法案審議のために、お忙しい中を御協力いただき、貴重な御意見を寄せていただきました参考人公聴会意見陳述人の皆様に民主党からも心からお礼申し上げ、私の討論を終わります。(拍手)
○高鳥委員長 次に、佐藤茂樹君。
○佐藤(茂)委員 私は、公明党改革クラブを代表して、ただいま議題となりました自由民主党民主党公明党改革クラブ自由党社会民主党市民連合五会派共同提出の修正案並びに修正部分を除く内閣提出の地方分権推進一括法案について賛成、共産党提出の修正案に対しては反対の立場から討論を行います。
 私たち公明党改革クラブは、我が国における長年にわたる中央集権政治を打破し、真の民主主義を確立するために一貫して地方分権の推進を訴えてまいりました。それは、地方自治体が中央政府に従属する関係ではなく、地方自治体がある種の地方政府として、国と対等、協力の関係で結ばれなければならないという考え方であります。
 その実現のためには、地方のことは地方に任せ、地方で決めていくという自己決定と自己責任の原則を尊重し、地方行政への国の関与をできるだけ排除することに加えて、権限の移譲とともに税財源の移譲も伴わなければならないものであります。
 この観点から今回の四百七十五本に上る地方分権推進一括法案を見たときに、残念ながら、地方分権の推進が十分なされたと胸を張って言えるものではないのであります。しかし、不十分であっても、それをすべて否定し去ることは私たちのとる道ではありません。
 私たちは、今回の地方分権推進一括法案を、第一次分権推進改革と位置づけて、地方分権への道筋の大きな第一歩が開かれたと評価するものであります。
 さらに、本委員会の審議において、私たち公明党改革クラブ地方分権推進に関する基本的考えを示しつつ、我が会派の委員がそれぞれ政府側にただしてまいりました。その論議の結果として、幾つかの重要な改善点が見られました。
 【略】
 なお、共産党の提出の修正案については、見解を異にするため反対いたします。
 最後に、今回の改革は、冒頭に申し上げましたように、長い地方分権改革の道のりの第一歩であります。今後とも、地方分権の推進へ向けて、政府を初め関係各位のさらなる努力に期待を込めまして、五会派提出の修正案及び修正部分を除く内閣提出、地方分権推進一括法案についての公明党改革クラブを代表しての賛成討論といたします。(拍手)
○高鳥委員長 次に、平賀高成君。
○平賀委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の地方分権一括法案に反対、我が党提出の修正案に賛成討論を行います。
 まず、四百七十五本にも及ぶ法律改正を一括して提出し、わずかな審議で打ち切り、採決しようとしていることに対して、断固として抗議をするものです。拙速を避け、十分な審議を行うことこそ、国会に課せられた使命であります。【略】
 日本共産党は、以上の問題点をただし、真に地方自治拡充に資するとの立場から修正案を提案していることを申し添えておくものです。
 なお、自由民主党民主党公明党改革クラブ自由党社会民主党の五党提案の修正案については、政府案の重大な問題点を是正するものではなく、賛成できないことを申し上げて、討論を終わります。(拍手)
○高鳥委員長 次に、畠山健治郎君。
○畠山委員 私は、社会民主党市民連合を代表して、ただいま議題となりました内閣提出、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案につきまして、賛成の討論を行います。
 【略】
 なお、日本共産党提出の修正案については、見解を異にする内容が含まれておりますので反対するとともに、五会派共同提出の修正案につきましては賛成することを申し添え、討論を終わります。(拍手)
○高鳥委員長 これにて討論は終局いたしました。
○高鳥委員長 これより採決に入ります。
 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。
 まず、松本善明君外一名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○高鳥委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、虎島和夫君外七名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○高鳥委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○高鳥委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
○高鳥委員長 この際、ただいま修正議決いたしました地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案に関し、山口俊一君外四名から、自由民主党民主党公明党改革クラブ自由党及び社会民主党市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。畠山健治郎君。
○畠山委員 私は、自由民主党民主党公明党改革クラブ自由党及び社会民主党市民連合を代表して、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
 
   地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議(案)
【略】
 
 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程を通じて各委員御承知のことと思いますので、説明は省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願いを申し上げます。
○高鳥委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 山口俊一君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○高鳥委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、野田自治大臣から発言を求められておりますので、これを許します。野田自治大臣
○野田(毅)国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重し、善処してまいりたいと存じます。

第145回衆議院 本会議会議録第37号(平成11年6月11日)
高鳥修君 ただいま議題となりました法律案につきまして、行政改革に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、各般の行政を展開する上で国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確にし、かつ、地方公共団体の自主性及び自立性を高めることにより、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図るため、地方自治法を初め四百七十五件にわたる関係法律を改正し、機関委任事務制度の廃止及びこれに伴う地方公共団体の事務区分の再構成、国の関与等の縮減、権限移譲の推進、必置規制の整理合理化、地方公共団体の行政体制の整備確立等を行い、もって地方分権を推進しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、国と地方公共団体との関係について、新しい関係を築くため、都道府県知事や市町村長を国の機関として国の事務を処理させる仕組みである機関委任事務制度を廃止することとし、これに伴い、地方公共団体が処理する事務を自治事務法定受託事務とに区分すること、
 第二に、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度を廃止することとし、地方事務官が従事することとされている事務については、厚生事務官及び労働事務官が行うこととすること、
 第三に、法定主義の原則、一般法主義の原則、公正、透明の原則に基づき、地方公共団体に対する国または都道府県の関与の見直し、整備を行うこととし、このため、関与に係る基本原則、新たな事務区分ごとの関与の基本類型、関与の手続及び関与に係る係争処理手続を定める等、所要の改正を行うこと、
 第四に、国の権限を都道府県に、また、都道府県の権限を市町村に移譲するため、関係法律において所要の改正を行うこととし、これに関連して、二十万以上の人口規模を有する市を当該市からの申し出に基づき指定することにより、権限をまとめて移譲する特例市制度を創設すること、
 第五に、地方公共団体の自主組織権を尊重し、行政の総合化、効率化を進めるため、必置規制の廃止または緩和を行うこと、
 第六に、市町村合併の推進、地方議会の活性化、中核市の指定要件の緩和等、地方公共団体の行財政能力の一層の向上と行政体制の整備確立を進めること、
 第七に、この法律は、一部を除き、平成十二年四月一日から施行すること
としております。
 本案は、去る三月二十九日本院に提出され、五月十三日の本会議において趣旨説明を聴取した後、質疑を行い、同日本委員会に付託されました。
 本委員会におきましては、五月十八日野田自治大臣から提案理由の説明を聴取し、同月二十五日から六月十日まで政府等に対する質疑を行ってまいりました。この間、五月二十八日には参考人からの意見聴取、六月七日には公聴会の開催、翌八日にはいわゆる地方公聴会を開催するなど、慎重に審査を重ね、昨十日質疑を終了いたしましたところ、本案に対し、自由民主党民主党公明党改革クラブ自由党及び社会民主党市民連合の五会派より、第一号法定受託事務の事務区分についての適宜適切な見直し、地方税財源の充実確保の方途についての検討、社会保険関係の地方事務官であった者の職員団体加入についての経過措置等を内容とする修正案が提出され、討論、採決の結果、本案は修正案のとおり賛成多数をもって修正議決すべきものと決した次第であります。
 また、本案に対して日本共産党より修正案が提出されましたが、賛成少数をもって否決されました。
 なお、本案に対し附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(伊藤宗一郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。春名直章君。
    〔春名直章君登壇〕
○春名直章君 私は、日本共産党を代表して、政府提出の地方分権一括法案と、自由民主党民主党自由党公明党改革クラブ社会民主党市民連合の五党提案の修正案に対し、反対の討論を行います。(拍手)
 本法律案は、日本の全法律の約三分の一にも及ぶ膨大なものであります。公聴会参考人質疑の中でも、拙速を避け、慎重な上にも慎重な審議を求める声が多数寄せられたのであります。にもかかわらず、ごくわずかな審議で問題点の解明も不十分なまま採決しようとしていることに、厳しく抗議するものであります。国会審議の形骸化であり、地方自治体、国民の期待を裏切るものと言わなければなりません。
 日本国憲法地方自治がうたわれて五十年余、国民の要望にこたえた地方分権とは、この憲法地方自治の精神にのっとって、真に地方自治権を拡充すること、住民自治に基づいて、地方自治体が住民の利益を守る仕事に全力で取り組めるようにすることであります。そして、そのために、国による官僚統制を根本的になくし、権限と財源の地方への移譲を進めることが喫緊の課題だったのであります。機関委任事務の廃止に踏み出す今を絶好の機会として、国の関与、統制の仕組みをこの際根本からなくしていくことが問われていたのであります。
 ところが、提出された地方分権一括法案は、地方への権限と財源移譲には見るべきものがなく、機関委任事務廃止後も、広く強力な国の関与、統制が残され、むしろ拡大しているのであります。その上、アメリカの戦争に日本国民を動員する、そのための法改悪、地方議員定数削減、上からの市町村合併推進など、地方自治体が望んでもいない自治体リストラ路線の推進など、地方自治拡充とは相入れない重大な改悪も盛り込まれているのであります。日本共産党が、この法案を地方統制法と呼んでいる根拠はここにあります。(拍手)
【略】
 五党提案の修正案は、以上申し述べた政府案の重大な問題点に何らメスを入れるものとなっておらず、賛成できません。
 日本共産党は、憲法に明記された地方自治の本旨を真に実現するために、国民、地方自治体の皆さんと力を合わせ、今後も全力を尽くす決意を述べ、反対討論を終わります。(拍手)
○議長(伊藤宗一郎君) 鰐淵俊之君。
    〔鰐淵俊之君登壇〕
○鰐淵俊之君 私は、自由民主党自由党を代表いたしまして、ただいま議題となっております地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案につきまして、賛成の立場から討論をいたします。(拍手)
 我が国は、中央集権的な行政体制をとることにより、明治維新以降の近代化、第二次世界大戦後の復興や高度経済成長をなし遂げ、日本の発展に寄与してまいりました。しかし、今日においては、もはや制度疲労を起こし、さまざまな弊害が生じて、逆に我が国の活力を低下させる一因となっております。
 今後、我が国において健全な民主主義を発展させ、豊かな国民生活の実現を図るためには、国と地方公共団体の役割を明確にし、国と地方公共団体が対等となる関係になるような、新たな行政体制を構築する必要がありますが、この観点からも、今回の一括法律案は、中央集権型の行政体制を地方分権型の行政体制に変革しようとするものであり、内容的にも、二十一世紀を見据えた改革であると評価できます。
 【略】
○議長(伊藤宗一郎君) これにて討論は終局いたしました。
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。(拍手)

第145回参議院 本会議会議録第29号(平成11年6月14日)
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
 日程第一 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案(趣旨説明)
 本案について提出者の趣旨説明を求めます。野田自治大臣
   〔国務大臣野田毅君登壇、拍手〕
国務大臣野田毅君) 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案の趣旨について御説明いたします。
 地方分権の推進は、二十一世紀を迎えるに当たって、新しい時代にふさわしい我が国の基本的な行政システムを構築しようとするものであります。
 これまでの行政システムは、全国的統一性、公平性を重視したものであり、我が国の近代化、第二次大戦後の復興や経済成長を達成するために一定の効果を発揮してきたものでありますが、今日においては、国民の意識や価値観も大きく変化し、生活の質の向上や個性的で多様性に富んだ国民生活の実現に資するシステムの構築が強く求められています。
 このためには、国は本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねること並びに地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにすることを基本とする国と地方の新しいシステムに転換する必要があります。
 このような趣旨は、既に平成五年六月に衆参両院において行われた地方分権の推進に関する決議において明らかにされております。これを受けて制定された地方分権推進法に基づいて地方分権推進委員会の勧告が行われ、昨年五月、政府として地方分権推進計画を作成し、国会に報告したところであります。
 この法律案は、地方分権推進計画を踏まえ、さらに地方分権を推進する観点から検討を進め、地方自治法を初めとする関係法律四百七十五件について必要な改正を行おうとするものであります。
 第一に、国と地方公共団体との関係について、新しい関係を築くため、都道府県知事や市町村長を国の機関として国の事務を処理させる仕組みである機関委任事務制度を廃止することとしております。これに伴い、地方公共団体に対する国の包括的な指揮監督権等、機関委任事務に係る根幹的な制度を定める地方自治法の改正を行うとともに、個々の機関委任事務を定めている関係法律の改正を行い、地方公共団体が処理する事務を自治事務法定受託事務とに区分することとしております。
 また、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度はこれに伴い廃止することとし、地方事務官が従事することとされている事務については厚生事務官及び労働事務官が行うこととし、そのため、国の地方出先機関を再編することとしております。
 第二に、法定主義の原則、一般法主義の原則、公正、透明の原則に基づき地方公共団体に対する国または都道府県の関与の見直し、整備を行うこととしております。このため、地方自治法において、関与に係る基本原則、新たな事務区分ごとの関与の基本類型、関与の手続及び関与に係る係争処理手続を定めるとともに、個々の法律における関与は基本類型に沿った必要最小限のものにするべく所要の改正を行うこととしております。
 第三に、国の権限を都道府県に、また都道府県の権限を市町村に移譲するため、関係法律において所要の改正を行うこととしております。これに関連して、地方自治法等の改正により、二十万以上の人口規模を有する市を当該市からの申し出に基づき指定することにより、権限をまとめて移譲する特例市制度を創設することとしております。
 第四に、地方公共団体の自主組織権を尊重し、行政の総合化、効率化を進めるため、必置規制の廃止または緩和を行うこととしております。
 第五に、市町村合併の推進、地方議会の活性化、中核市の指定要件の緩和等、地方公共団体の行財政能力の一層の向上と行政体制の整備確立を進めることとしております。
 以上が地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案の趣旨であります。

第145回参議院 行財政改革・税制等に関する特別委員会会議録第3号(平成11年6月15日)
国務大臣野田毅君) ただいま議題となりました地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。
 まず、この法律案を提案する背景について御説明申し上げます。
 地方分権の推進は、二十一世紀を迎えるに当たって新しい時代にふさわしい我が国の基本的な行政システムを構築しようとするものであります。
 これまでの行政システムは、全国的統一性、公平性を重視したものであり、我が国の近代化、第二次大戦後の復興や経済成長を達成するために一定の効果を発揮してきたものでありますが、今日においては、国民の意識や価値観も大きく変化し、生活の質の向上や個性的で多様性に富んだ国民生活の実現に資するシステムの構築が強く求められています。
 このためには、国は本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねること並びに地方公共団体の自主性及び自立性が十分発揮されるようにすることを基本とする国と地方の新しいシステムに転換する必要があります。
 このような趣旨は、既に平成五年六月に衆参両院において行われた地方分権の推進に関する決議において明らかにされております。これを受けて制定された地方分権推進法に基づいて地方分権推進委員会の勧告が行われ、昨年五月、政府として地方分権推進計画を作成し、国会に報告したところであります。
 この法律案は、地方分権推進計画を踏まえ、さらに地方分権を推進する観点から検討を進め、地方自治法を初めとする関係法律四百七十五件について必要な改正を行おうとするものであります。
 次に、この法律案を提案する理由について御説明いたします。
 各般の行政を展開する上で国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確にし、かつ地方公共団体の自主性及び自立性を高めることにより、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図る等のため、機関委任事務制度の廃止及びこれに伴う地方公共団体の事務区分の再構成、国の関与等の縮減、権限移譲の推進、必置規制の整理合理化、地方公共団体の行政体制の整備確立等を行い、もって地方分権を推進する必要があります。
 これがこの法律案を提案する理由であります。
 次に、法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
 第一に、国と地方公共団体との関係について、新しい関係を築くため、都道府県知事や市町村長を国の機関として国の事務を処理させる仕組みである機関委任事務制度を廃止することとしております。これに伴い、地方公共団体に対する国の包括的な指揮監督権等、機関委任事務に係る根幹的な制度を定める地方自治法の改正を行うとともに、個々の機関委任事務を定めている関係法律の改正を行い、地方公共団体が処理する事務を自治事務法定受託事務とに区分することとしております。
 また、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度は、これに伴い、廃止することとし、地方事務官が従事することとされている事務については、厚生事務官及び労働事務官が行うこととし、そのため、国の地方出先機関を再編することとしております。
 第二に、法定主義の原則、一般法主義の原則、公正、透明の原則に基づき、地方公共団体に対する国または都道府県の関与の見直し、整備を行うこととしております。このため、地方自治法において、関与に係る基本原則、新たな事務区分ごとの関与の基本類型、関与の手続及び関与に係る係争処理手続を定めるとともに、個々の法律における関与は基本類型に沿った必要最小限のものにするべく所要の改正を行うこととしております。
 第三に、国の権限を都道府県に、また都道府県の権限を市町村に移譲するため、関係法律において所要の改正を行うこととしております。これに関連して、地方自治法等の改正により、二十万以上の人口規模を有する市を当該市からの申し出に基づき指定することにより、権限をまとめて移譲する特例市制度を創設することとしております。
 第四に、地方公共団体の自主組織権を尊重し、行政の総合化、効率化を進めるため、必置規制の廃止または緩和を行うこととしております。
 第五に、市町村合併の推進、地方議会の活性化、中核市の指定要件の緩和等、地方公共団体の行財政能力の一層の向上と行政体制の整備確立を進めることとしております。
 この法律案は、以上のとおり、地方分権の推進を図るため、二十四府省庁・委員会、四百七十五法律にわたる改正を取りまとめたものであります。
 なお、これらの改正は、一部を除き平成十二年四月一日から施行することといたしております。
 以上がこの法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○委員長(吉川芳男君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員虎島和夫君から説明を聴取いたします。虎島和夫君。
衆議院議員虎島和夫君) ただいま議題となりました地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案につきまして、衆議院における修正の理由及びその内容を御説明申し上げます。
 政府原案においては、都道府県知事や市町村長を国の機関として国の事務を処理させる仕組みである機関委任事務制度を廃止することとし、地方公共団体が処理する事務を自治事務法定受託事務に区分することといたしております。
 しかし、この新たな区分による機関委任事務の振り分けによって、国の関与の余地が大きい法定受託事務が半数近くを占めることとなっており、地方公共団体の自主性、自立性を高めるべく国と地方公共団体の間を上下の関係から対等の関係へと転換を図るという地方分権の趣旨にかんがみれば、法定受託事務は極力限定すべきであると思料されます。
 さらに、政府原案においては、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度を廃止することとし、社会保険関係の地方事務官が従事することとされている事務については厚生事務官が行うこととしておりますが、地域の医療、保健、福祉等の施策と密接にかかわる社会保険関係の業務については、住民の利便性の確保、事務処理の効率化等の観点から、地域における総合的な行政主体である地方公共団体の果たすべき役割は大なるものと言えます。このため、社会保険関係の地方事務官が従事する業務については、その事務区分及び職員の身分等について見直しを行うことが必要であると考えられます。
 また、地方公共団体の自己決定、自己責任による行財政運営は地方分権の推進に不可欠であることから、地方公共団体の税財源の充実確保については、その実現が切に望まれるものであります。このため、今後、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保の方途について検討を行うことは極めて重要であります。
 こうしたことを踏まえ、今回修正を行ったものであります。
【略】

第145回参議院 行財政改革・税制等に関する特別委員会会議録第6号(平成11年6月29日)
○藤井俊男君 次に、福祉行政における地方分権のメリットについて伺います。
 今回の地方分権一括法には福祉の分野に関する法律が数多く含まれております。厚生省所管の法律は四百七十五本中実に九十一本にも上る膨大なものになっております。地方分権の実を上げるためには、住民の身近な分野で目に見える変化があることが望ましいと思います。今回の改正によって福祉の分野が住民サービスの向上の観点からどのように変化されるのか、厚生大臣に伺いたいと思います。
国務大臣宮下創平君) 福祉の分野につきまして法律の改正本数が多いというのはそのとおりでございます。大変福祉行政が多岐にわたっておるということでそのような結果になっておると存じますが、今回の地方分権一括法によりまして福祉の分野でもやはり機関委任事務自治事務化するということが一つございます。それからもう一つは、実体法の関係がございますが、法定基準の廃止等で必置規制を緩和するという二つの点が大きな柱になっております。
 まず、具体的に機関委任事務がどう変化してきているかという点を具体例で説明せよということでございますが、従来、機関委任事務としては生活保護関係、これは今度は法定受託事務になりますから、あるいは児童扶養手当もそうでございますが、これは法定受託事務として位置づけられます。
 ところが、保育所とか特別養護老人ホームの関係につきましては、その設置認可事務は自治事務となります。したがって、保育所児童福祉施設の設置認可でありますとか、児童居宅生活支援事業の開始の届け出の事務とか受理の事務とかいうのは自治事務になります。それから、高齢化の関係では、今申しましたように特別養護老人ホームの設置認可が、これは老人福祉法の規制のもとにありますが、これが自治事務になります。それから老人居宅生活支援事業の開始の届け出の事務、これも自治事務となります。こうして、地方公共団体の自主的な判断に基づく事務の実施が一応可能になるということでございます。
 一方、必置規制の緩和等につきましては、具体例を申しますと、例えば福祉事務所の設置が今まで団体委任事務でございましたが、これも完全な自治事務になります。それから、福祉事務所の設置の配置基準の廃止も、これも例えば十万人以上に一カ所というような基準がございましたが、これは条例によって定めることが可能になりますから、弾力的に設置が可能になる自治事務でございます。それから、福祉事務所の現業所員も、今までは例えば生活保護で八十五人までは一人とかいうような基準がございましたが、それを弾力化いたしまして、配置が自由にある程度地方の実情に応じてできる。それから、地方社会福祉審議会の名称等も名称規制を弾力化して自由にできる。それから、身体障害者福祉司というのも法律上の名称規制の弾力化を図るということができるようになる。
 このように、具体的事例を多少申し上げましたが、要は、地方公共団体の自主的な判断に基づく事業の実施がかなり大幅に可能になるということを通じまして、住民の立場に立った行政サービスの弾力的、効率的な適用ができるというように考えておりまして、私どもは大きな前進であるというように考えております。

第145回参議院 行財政改革・税制等に関する特別委員会会議録第11号(平成11年7月8日)
○富樫練三君 私は、日本共産党を代表して、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案に対する修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。
 日本共産党の修正案の提案理由及び内容の概要を説明いたします。
 国民の求める地方分権とは、憲法の精神に基づき地方自治権を拡充し、地方自治体が住民の利益を守る仕事に全力で取り組めるようにすることであります。そのためには、国による統制をなくし、権限と財源を思い切って地方に移譲することです。この立場から、最低次の諸点についての修正が必要であります。
【略】
 以上、修正案の概要を申し上げ、委員の皆様方の御賛同をお願い申し上げて、提案理由の説明といたします。(拍手)
○委員長(吉川芳男君) これより十八案のうち、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案の原案並びに修正案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○八田ひろ子君 私は、日本共産党を代表して、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案に反対、日本共産党提案の修正案に賛成する討論を行います。
 国民の求める地方分権とは、憲法地方自治の本旨の精神にのっとって、真に地方自治権を拡充すること、住民自治と団体自治に基づいて地方自治体が住民の利益を守る仕事に全力で取り組めるようにすることです。そのために、権限と財源を地方へ移譲し、住民こそ主人公の地方自治の姿を実現することであります。
 ところが、提案されている地方分権一括法案は、地方自治の拡充ではなく、むしろ住民と自治体への国による統制強化の内容となっており、四百七十五本もの法律を改定するにふさわしい審議時間が確保されなかったこととあわせて、国民の願いに反するものであります。
【略】
 以上をもって私の討論を終わります。(拍手)
星野朋市君 私は、自由民主党自由党を代表しまして、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案につきまして、賛成の立場から討論をいたします。
 戦後、我が国は、中央集権型の行政システムをとり、高度経済成長をなし遂げてまいりました。しかしながら、今日、中央集権型行政の制度疲労少子高齢化社会への対応等を背景に、我が国の社会経済システムを全面的に見直し、閉塞状況を打開していくことが大きな課題となっております。
 特に、地方分権改革については、平成五年、衆参両院が地方分権推進に関する決議を採択して以来、地方分権推進法の制定、地方分権推進委員会が五次にわたる勧告を出す等、政府・与党はこの問題に対して鋭意取り組んでまいりましたが、まさに本法案は地方分権の一つの到達点であろうと存じます。
【略】
 以上、本法案に賛成の理由を述べてまいりましたが、共産党提案の修正案には反対いたします。
 今回の地方分権を初め、一連の改革を通じて、我々は中央依存の体質から脱却し、地方から日本再生のうねりを巻き起こし、二十一世紀への展望を切り開いていくことが求められております。
 しかし、地方分権による真の地方自治の実現なしには真に成熟した民主主義社会の形成も困難であると言っても過言ではありません。総理のリーダーシップを発揮し、新たな世紀を前に我が国のあり方を変える一連の改革が一日も早く実を結ぶことを願って、私の賛成討論を終わります。(拍手)
○藤井俊男君 民主党・新緑風会の藤井俊男でございます。
 私は、民主党・新緑風会を代表して、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案に賛成し、共産党提出の修正案に反対する立場で討論を行います。
【略】
 以上申し上げました審議経過等を踏まえ、民主党・新緑風会としては、衆議院修正を経た政府案に賛成することといたしました。
 なお、共産党提出の修正案につきましては、その問題意識については一部共感できる部分もあるとはいえ、法案を、地方分権どころか新たな地方統制法であると評価する立場からの提案であり、基本的立場を異にするため、反対することといたしました。
 最後に、この場をおかりしまして、この法案審議のためにお忙しい中を御協力いただき、貴重な御意見を寄せていただきました参考人公聴会意見陳述人の皆様に、民主党・新緑風会からも心から御礼申し上げ、私の討論を終わります。(拍手)
○魚住裕一郎君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案に賛成、共産党提出の修正案に対して反対の立場から討論を行います。
 私ども公明党は、明治維新以来の中央集権的体制を抜本的に改革し、日本の閉塞状況打破のため、「地域から日本を変えます」とのスローガンのもと、地方分権の本格的推進を主張してまいりました。その実現には、平成五年国会決議で確認されたとおり、国と地方の役割の見直し、国から地方への権限移譲、地方財源の充実強化等の改革を果たすことにより、初めて可能となるものであります。
 本法律案は、地方分権を真に実現するものとしては残念ながら種々の点で不十分であると言わざるを得ませんが、今後の地方分権の確立に向けた歴史的第一歩という観点において評価するものであります。
【略】
 なお、共産党提出の修正案につきましては、独自の見解に基づくものであり、反対いたします。
 今後とも、改革の手を緩めず、真の地方分権の実現を目指し、さらなる努力をしていく決意を申し述べ、私の賛成討論といたします。(拍手)
○日下部禧代子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、ただいま議題となりました内閣提出地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案につきまして、賛成の立場から討論を行います。
 【略】
 なお、日本共産党提出の修正案については、見解を異にする内容が含まれており、反対することを申し添え、討論を終わります。(拍手)
菅川健二君 私は、参議院の会を代表して、ただいま議題となりました地方分権推進一括法案について、地方分権が新たな展開を推し進める出発点となることを祈念して同法案に賛成、共産党提案の修正案に反対の立場から討論を行います。
【略】
 政府におかれましては、今後、これらの諸課題に真剣に取り組み、さらなる地方分権推進の取り組みが続けられますことを期待し、私の原案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
○委員長(吉川芳男君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 それでは、これより地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案について採決に入ります。
 まず、富樫君提出の修正案を採決いたします。
 本修正案に賛成の方の起立を願います。
   〔賛成者起立〕
○委員長(吉川芳男君) 少数と認めます。よって、富樫君提出の修正案は否決されました。
 次に、原案全部の採決を行います。
 本案に賛成の方の起立を願います。
   〔賛成者起立〕
○委員長(吉川芳男君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。(拍手)
 朝日俊弘君から発言を求められておりますので、これを許します。朝日俊弘君。
○朝日俊弘君 私は、ただいま可決されました地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案に対し、自由民主党民主党・新緑風会公明党社会民主党・護憲連合、自由党参議院の会及び二院クラブ自由連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
 
 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議(案)
 【略】
 
以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(吉川芳男君) ただいま朝日君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の起立を願います。
   〔賛成者起立〕
○委員長(吉川芳男君) 多数と認めます。よって、朝日君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、野田自治大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。野田自治大臣
国務大臣野田毅君) ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重し、善処してまいりたいと存じます。

第145回参議院 本会議会議録第34号(平成11年7月8日)
吉川芳男君 ただいま議題となりました地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案及び内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法律案につきまして、委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、地方分権一括法案は、国と地方公共団体の分担すべき役割を明確にし、かつ地方公共団体の自主性、自立性を高めるため、機関委任事務制度の廃止及びこれに伴う地方公共団体の事務区分の再構成、国の関与の縮減、権限移譲の推進、必置規制の整理合理化、地方公共団体の行政体制の整備確立等を行い、地方分権の推進を図ろうとするものであります。
 なお、本法律案につきましては、衆議院におきまして、第一号法定受託事務の新設を抑制し、適宜適切な見直しを行うこと、地方社会保険事務局等の職員の処遇等について七年間の経過措置を講ずること、地方税財源の充実確保の方途について経済情勢の推移等を勘案しつつ検討し、結果に基づいて必要な措置を講ずること等の修正が行われております。
 【略】
 委員会におきましては、中央省庁等改革関連十七法律案の趣旨説明を、また、地方分権一括法案の趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明をそれぞれ聴取した後、十八法律案を一括して議題とし、小渕内閣総理大臣を初め全閣僚に対する総括質疑、関係大臣に対する一般質疑を行ったほか、参考人からの意見聴取、公聴会並びに神奈川県及び大阪府での地方公聴会を行いました。
 委員会における質疑は、自治事務に対する国の関与のあり方、法定受託事務の定義とその抑制の必要性、地方税財源の充実強化、地方行政体制の整備、再編後の省庁体制のあり方、国家公務員数二五%削減の根拠とその達成方法、独立行政法人化の意義等、多岐にわたり熱心に行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
【略】
 質疑を終局し、まず地方分権一括法案について、日本共産党を代表して富樫理事より自治事務に対する是正の要求の規定を削除する等を内容とする修正案が提出され、趣旨説明を聴取した後、原案及び修正案を一括して討論に入りましたところ、日本共産党を代表して八田委員より原案に反対、修正案に賛成、自由民主党及び自由党を代表して星野委員より原案に賛成、修正案に反対、民主党・新緑風会を代表して藤井委員より原案に賛成、修正案に反対、公明党を代表して魚住委員より原案に賛成、修正案に反対、社会民主党・護憲連合を代表して日下部理事より原案に賛成、修正案に反対、参議院の会を代表して菅川委員より原案に賛成、修正案に反対する旨の意見がそれぞれ述べられました。
 次いで、採決の結果、修正案は否決され、地方分権一括法案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、附帯決議を行いました。
 【略】
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(斎藤十朗君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。【略】
○議長(斎藤十朗君) 石渡清元君。
   〔石渡清元君登壇、拍手〕
○石渡清元君 私は、自由民主党自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました中央省庁等改革関連法案及び地方分権推進一括法案につきまして、賛成の立場から討論をいたします。
 【略】
 次に、地方分権一括法については、平成五年の衆参両院における地方分権推進決議採択以来、加速され、深められてきた地方分権の流れの一つの大きな到達点でもあろうかと存じます。
 本法案は、国と地方の新たな役割論に立脚しつつ、国と地方との関係を現行の上下・主従の関係から、対等・協力の関係へと変化させることを基本としております。特に永年の懸案であった機関委任事務の廃止は、各方面から高く評価されていることは御案内のとおりであり、また、権限移譲の促進や法定主義の原則、公正、透明の原則等に基づく国の関与や必置規制の見直しが行われております。
 また、地方分権には、その受け皿となる地方公共団体の体制整備が肝要でありますが、この点でも、合併特例債の創設を初め、措置がなされており、市町村合併がより推進されることを期待いたします。
 以上、両法案につきまして、賛成の理由を簡単に申し述べてまいりました。
 しかしながら、二十一世紀の新たな展望を切り開いていく日本再生の大事業はまだ緒についたばかりであります。
 両法案を新たなスタートとし、さらに引き続き行政組織の簡素化、効率化を推進するとともに、さらなる地方への権限移譲を推進するなど、中央省庁改革、地方分権に我々は不断の取り組みを進めていかなければなりません。
 総理のリーダーシップのもと、今後とも一連の改革に政府がより一層積極的に取り組んでいかれることを期待いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
○議長(斎藤十朗君) 吉川春子君。
   〔吉川春子君登壇、拍手〕
○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、中央省庁再編関連十七法案及び地方分権推進の関係法律の整備に関する法律案四百七十五本について、反対討論を行います。
 これらの一括法の審議を本日終えるということは、法案の数の多さと国民への影響の重要性に照らして、審議時間が余りにも短く、到底認めることはできません。また、五百本近い法案を一つの特別委員会に付託し、同時に審議に付すなどということは先例のない異常な事態です。
 法案提出後まだ三月しかたっていません。この法案の審議時間は衆議院が八十一時間、参議院が六十五時間弱です。当然、国民に十分周知されていない、またする時間的余裕もありません。来年から導入が予定されて、今地方公共団体で大問題になっている介護保険を初め、重要なテーマを十分審議せずにたくさん残したままです。国会の審議がこれでいいのでしょうか。これでは国民不在ではありませんか。この不十分な審議に対して、まず強く抗議をいたします。
 【略】
 二十一世紀のあるべき国家・社会像を中軸に据えた改革と言うのであれば、憲法の民主的、平和的原則に沿って国民の基本的人権生存権の保障のための中央省庁の改革と地方分権を目指すべきであることを強く主張して、私の反対討論を終わります。(拍手)
○議長(斎藤十朗君) これにて討論は終局いたしました。
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
 まず、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律案の採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
○議長(斎藤十朗君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
○議長(斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十五  
  賛成             二百十  
  反対             二十五  
 よって、本案は可決されました。(拍手)

地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年7月16日法律第87号)【第170条と附則第1条】
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正)
第百七十条 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
 
 目次中「第五十一条の十一の二・第五十一条の十二」を「第五十一条の十一の二―第五十一条の十四」に改める。
 
 第九条第一項中「地方精神保健福祉審議会」を「精神保健福祉に関する審議会その他の合議制の機関(以下「地方精神保健福祉審議会」という。)」に改める。
 
 第十九条の九に次の一項を加える。
 3 厚生大臣は、第一項に規定する都道府県知事の権限に属する事務について、指定病院に入院中の者の処遇を確保する緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事に対し同項の事務を行うことを指示することができる。
 
 第三十二条に次の一項を加える。
 8 前各項に定めるもののほか、第一項の医療に関し必要な事項は、政令で定める。
 
 第三十三条の四に次の一項を加える。
 4 厚生大臣は、前項に規定する都道府県知事の権限に属する事務について、第一項の指定を受けた精神病院に入院中の者の処遇を確保する緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事に対し前項の事務を行うことを指示することができる。
 
 第五十一条の十二第一項中「又は都道府県知事その他の都道府県の機関若しくは職員の権限に属するものとされている事務」を削り、「処理し、又は指定都市の長その他の機関若しくは職員が行う」を「処理する」に、「又は都道府県知事その他の都道府県の機関若しくは職員に関する」及び「又は指定都市の長その他の機関若しくは職員に関する」を「に関する」に、「又は指定都市の長その他の機関若しくは職員に適用」を「に適用」に改め、同条第二項中「処分」の下に「(地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務に係るものに限る。)」を加える。
 
 第八章中第五十一条の十二の次に次の二条を加える。
  (緊急時における厚生大臣の事務執行)
 第五十一条の十三 精神障害者社会復帰施設について、第五十条第二項において適用することとされる社会福祉事業法第六十五条及び第六十七条の規定により都道府県知事の権限に属するものとされている事務は、この施設を利用する者の利益を保護する緊急の必要があると厚生大臣が認める場合にあつては、厚生大臣又は都道府県知事が行うものとする。この場合においては、同法の規定中都道府県知事に関する規定(当該事務に係るものに限る。)は、厚生大臣に関する規定として厚生大臣に適用があるものとする。
 2 前項の場合において、厚生大臣又は都道府県知事が当該事務を行うときは、相互に密接な連携の下に行うものとする。
  (事務の区分)
 第五十一条の十四 この法律(第一章から第三章まで、第十九条の七、第十九条の八、第十九条の九第一項、同条第二項(第三十三条の五(第四十四条において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)、第二十九条の七、第三十条第一項及び第三十一条、第五章第四節、第三十三条の四第一項及び第三項(第四十四条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)、第六章第一節、第四十六条、第四十七条第一項(第四十四条において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第三項、第四十八条、第四十九条第一項並びに同章第三節を除く。)の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務(以下この条において「第一号法定受託事務」という。)とする。
 2 この法律(第三十二条第三項、第四十七条第一項(第四十四条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第三項、第四十八条並びに第四十九条第一項を除く。)の規定により保健所を設置する市又は特別区が処理することとされている事務(保健所長に係るものに限る。)は、第一号法定受託事務とする。
 3 第二十一条(第四十四条において準用する場合を含む。)の規定により市町村が処理することとされている事務は、第一号法定受託事務とする。
 
附則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十二年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
【1号以下略】