精神医療に関する条文・審議(その107)

前回(id:kokekokko:20051121)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の成年後見制度制定・精神保健福祉法改正についてみてみます。

第145回衆議院 法務委員会会議録第20号(平成11年6月15日)
○杉浦委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、民法の一部を改正する法律案、任意後見契約に関する法律案、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び後見登記等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
 本日は、各案審査のため、まず午前の参考人として千葉大学法経学部教授新井誠君、日本弁護士連合会理事久保井一匡君、全国精神障害者家族会連合会専務理事荒井元傳君、障害者インターナショナル日本会議権利擁護センター所長金政玉君、以上四名の方々に御出席いただいております。
 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人各位におかれましては、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 新井誠参考人、久保井参考人、荒井元傳参考人、金参考人の順に、各十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 それでは、まず新井参考人にお願いいたします。
○新井参考人 千葉大学の新井と申します。よろしくお願いいたします。
 私は、今回の改正につきましては、四つの大きなポイントがあるのではないかと考えております。
 第一のポイントは、任意後見制度の導入であります。これは、今回の改正の最大の特徴ではないかというふうに考えております。
 近代の市民法における後見法というのは、従来は法定後見と言われるものが中心でした。法定後見というのは、本人が保護を必要とする状態になって、その後にしかるべき保護をするといういわば事後的救済の制度でありました。そして、その特徴はパターナリスティックな保護ということが念頭にありまして、かつ、身上保護というよりは財産保護が念頭にあったわけです。特に我が国におきましては、家産の維持ということが重要な問題であったわけであります。
 ところが、最近の世界の流れは、法定後見ではなくて、むしろ任意後見というのを重視しようというふうに変わってきております。
 この任意後見といいますのは、法定後見が事後的救済であったのに対して、こちらの方は事前的救済、能力がなくなってから保護されるのではなくて、能力のあるうちにみずから、自分でその保護の形態を決めておくという形に変わってきております。したがいまして、事前的救済ですので、そこでは自己決定というものがきちっと尊重されるということでありまして、しかも身上保護も重視されるということであります。
 お配りしました図を見ていただければ幸いです。契約のところで、本人が能力のあるときに本人と任意後見人が契約をするわけです。したがって、ここでは自己決定ということが生かされているわけです。網かけの部分は、自己決定のみならず、本人が能力がなくて任意後見人を必ずしも十分にコントロールできないことがあるわけですので、その任意後見人を監視するために任意後見監督人というのを裁判所が選任できるというふうになっております。つまり、自己決定の尊重、これがその左のところですけれども、それと本人の保護、これは網かけのところですけれども、その自己決定の尊重と本人の保護の二つがうまく調和のとれた、バランスのとれた制度ということになっているわけであります。
 しかも、任意後見の優先、これを補充性の原則というふうに言ったりすることもあるわけですけれども、任意後見の優先ということが明確にされています。
 この任意後見制度というのは、一九八六年施行のイギリスの持続的代理権授与法というのがモデルになっております。このイギリスの法律がモデルになっているわけでありますけれども、日本の今回の改正は、このイギリスの十年間の施行の経験から学ぶべきところは学びまして、さらにこれに改良を加えているわけであります。
 例えば、契約のときに登録する、登記をする。イギリスの制度ですと、実はこの登録というのは、契約のときではなくて裁判所に代理人が選任されるときになっているわけですけれども、日本ではその点も改良を加えている。イギリスの場合には意思能力を喪失したときにこの制度の利用が限定されているわけですけれども、今回の改正では、意思能力の喪失に限定せずに、少なくとも補助の類型に該当すれば利用できるという形で、利用の幅も広げている。そしてさらに、任意後見監督人の選任については本人の同意が必要である。つまり、ここでも自己決定を尊重している。任意後見という制度は本来自己決定尊重の制度ですけれども、さらにきめ細かく自己決定が保障されるような仕組みになっているということであります。
 したがいまして、私が理解するところでは、今回のこの任意後見制度の導入というのは、世界的に見ても極めてすぐれた立法であるということが言えるというふうに考えております。
 二番目の目玉、これが補助の新設ということであります。
 後見、保佐では対象とならないような軽度の精神上の障害により事理弁識能力が不十分であるような方々、こういう方々については今までは後見制度の対象にならなかったわけですけれども、そういう方も広く制度の対象でカバーしようということになっているわけであります。この図を見ますと、補助、保佐、後見というふうに三つ並列的に並んでおりますけれども、私の理解では、今回の改正の中ではこの補助こそがメーンで、比喩的に書いてみますと、この補助の部分が大きくなっているというふうに理解できるのではないかと考えております。
 この補助という制度は、画一的な保護ではなくて、代理権と同意権、取り消し権等を必要に応じて組み合わせることが可能です。もちろん、代理権のみに限定してそれを付与するということも可能でありまして、柔軟でかつきめ細かな点がポイントではないかというふうに考えております。しかも、本人の同意がなければ補助人はつかないわけでして、ここでも自己決定というものが尊重されております。
 補助のモデルというのはドイツの成年者世話法、これは一九九二年施行の法律ですけれども、そこで世話という新しい概念が導入されまして、そこでは、本人の能力を原則剥奪せずに本人をサポートするというような世話という概念が導入されたわけです。それを参考にしている制度ではないかというふうに思いますけれども、それにさらに工夫を加えているというわけであります。
 一つが、必要最小限度の保護、つまりそれは、代理権のみの付与も可能であるということ。そして二番目に、本人の同意というものを要件にしておりまして、ここでも自己決定の尊重というものを重視しているわけであります。そして欠格事由に該当しないようにしようということでありまして、このように見てきますと、補助という制度も高く評価することができるわけでありまして、ドイツの制度を参考にしたわけでありますけれども、それよりもすぐれた点もあるというふうに考えております。
 補助人の取り消し権というものも必要な保護手段として認容できるものであるというふうに考えます。もしそれを望まないということであれば本人が同意しなければよいわけでありまして、ここでも自己決定権は保障されているというふうに考えております。
 三番目が、成年後見制度の充実ということであります。
 最初に、身上配慮の重視ということがなされております。条文の文言でいいますと、「心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」という一般的な身上配慮義務が課されているわけでありますけれども、特に私は、この「生活の状況に配慮しなければならない。」という点に着目したいと思うわけであります。ここでは、後見的な介入、パターナリスティックな保護ではなくて、最近福祉の世界で言われております生活の支援、生活サポートというようなことも、生活の状況の配慮ということで実現できるのではないかというふうに考えております。この身上配慮義務というのは、法定後見のみならず、任意後見についても同様な規定があるという点も大変注目すべきでありまして、その意義は大変大きいものというふうに考えております。
 さらに、今までの法律ですと、後見人は一人でなければならず、かつ自然人であったわけですけれども、今回は法人後見も可能でありまして、かつ複数の後見人も可能であるということでして、複数の後見人が自分の最も得意とする職務を分担して担当できるという意味でも、適切な担い手を確保するという意味でも、法人後見人、複数後見人というのは大変意味があるというふうに考えております。
 そして、後見監督人ですけれども、従来は後見監督人という制度のみであったわけですけれども、改正法においては、保佐監督人、補助監督人、そして任意後見監督人という形で、あらゆる類型に監督制度を充実するという意味からしても、成年後見制度が一層充実したものになったというふうに考えております。
 それから、成年後見登記ですけれども、これは従来、戸籍への記載ということが非常に心理的な抵抗があった。日本人には、戸籍を汚したくないという意識が非常に強くあったというふうに言われておりまして、戸籍への記載が制度利用への妨げになったということが言われてきたわけですけれども、その戸籍への記載というのをやめて、新しい成年後見登記制度を創設するというのも大変画期的なことではないかというふうに考えております。したがって、これによって、利用者が心理的抵抗を受けていたのを完全に排除することができるということになったわけであります。
 以上申し上げてきましたように、私の考え方を以下まとめて申し上げたいというふうに思います。
 成年後見の先進国であるイギリス法、ドイツ法というものの経験に学びながら、それを凌駕するような点もあるという点で、今回の改正法は国際的にも高く評価できるというふうに考えております。今回の改正は、民法が誕生して百年間の改正の中でも最も大きな改正の一つであるというふうに思われますが、今回の改正はその百年目の大きな改正に値する内容を持っているということで、私は、その内容を積極的に評価して、一日も早い改正法の成立というものを望むものであります。
 以上で終わります。(拍手)
○杉浦委員長 ありがとうございました。
 次に、久保井参考人にお願いいたします。
○久保井参考人 日本弁護士連合会の理事をしております久保井でございます。
 日本弁護士連合会におきましては、この成年後見制の研究をかねてから行ってまいりました。平成六年に検討を開始いたしまして、平成七年に欧米六カ国の調査をいたしました。そして、平成八年に中間意見書を発表し、平成十年、昨年でございますが、最終意見書を発表いたしました。その検討結果に基づきまして、私どもといたしましては、今回提案されている法律案については全面的に賛成をしたいと思います。
 その理由は、現行民法は一八九八年に制定され、昨年でちょうど百年を経過いたしましたが、この現行民法の規定しております禁治産宣告制度、準禁治産宣告制度はいずれも極めて硬直的で画一的であり、人の人格を否定しているといいますか十分に尊重していない結果となっております。つまり、取引社会から排除する、そういう能力の劣る人たちを排除するというところに目的がありまして、その結果、大変利用が少なかったのでございます。私は大阪で弁護士をして約四十年近くなりますけれども、その間、後見人に家庭裁判所から選任されたことはたった一度しかないのが実情でございます。
 そのような現行法について、世界的にいろいろな動きがございました。つまり、新しい成年後見制は自己決定権を尊重すべきである、あるいはいわゆるノーマライゼーションの思想に立って普通の人と同じように生活できるように支援すべきである、あるいは本人の持つ残存能力を最大限尊重すべきである、そういう考え方が一般化しておりましたけれども、このたびの改正案は、基本的にはこの世界的な潮流に沿った改正でございます。しかも、ドイツを初めとする法定後見中心の制度を持つ国と、英、米、カナダのように任意後見を中心に制度を組み立てる国の両者のよいところを取り入れた、極めて進んだ制度になっております。現時点では、世界の水準を行く最も進んだ制度になりつつあると思います。
 具体的に言いますと、禁治産、準禁治産の用語を改め、後見、保佐という制度にし、かつその内容についても弾力的かつ合理的なものとしたということが言えると思います。例えば後見類型においても、日常生活に必要な行為については取り消しの対象から外すとか、あるいは居住用不動産の売却等については、現行法では後見人が自由に行い得ることになっておりますけれども、家庭裁判所の許可がなければできないようにしたとか、その他現在の後見、保佐についても、その中身をアップ・ツー・デートなものとして見直したということが言えると思います。
 さらに、二類型に加えて、新たに軽度の障害、痴呆等を有する者に対して補助類型を用意しておられますが、この合計三類型にするとともに、いわゆる任意後見制度を採用し、本人があらかじめ自分の能力が健全な段階においてみずからの老後のために後見契約を用意できる道、つまり、いわば法定後見がレディーメードの服とすれば、任意後見は自分が自分の後見制度を設計できるオーダーメードの制度を用意したということが言えようと思います。この法定後見の三類型と任意後見制度の運用を的確に行うならば、本人の実情に即した運用が期待できると思います。
 さらに、後見人の職務範囲について、従来、後見人は財産管理が本来職務だというような考え方が一部に強かったと思いますが、改正法では、この職務範囲について、生活、療養看護についての事務、つまり身上監護について後見人の職務が全般的に及ぶことを明確にし、かつ、身上とかその他本人の意思の尊重等についてもこれを明確にした点は評価できると思います。
 さらに、戸籍への記入の制度をやめ、成年後見登記制度を新たに採用した、あるいは各種資格制限を見直したということ、そして補助類型については資格制限の対象から外したということ、遺言の方式について、聴覚・言語機能に障害のある者につき手話通訳とか筆談による遺言の道を開いたこと、いずれも、前記の自己決定権の尊重等の思想に基づくものとして高い評価をすべきものだと思います。
 さらに、配偶者法定後見制の廃止、複数後見人制の採用、法人後見制の採用等についても、いずれも賛成であります。
 以上のことを前提といたしますが、改正法の運用状況を見て、私どもとしてはさらに改善を期待したいところがございます。
 私どもの期待する改善点といたしまして、まず第一点は、利用者の範囲を、意思能力の面だけでなくて、重度の身体障害等により意思の伝達、意思表示が困難な者についても、その利用を希望する者には利用が可能な形でその門戸を開放すべきではないかと思います。
 それから、二番目といたしましては、後見人の類型が現行制度の二類型から三類型にされ、かつ任意後見制度を採用したことによって極めて大きな前進が期待できますが、さらに運用の状況を見て、ドイツ法等で採用しておりますように、個々人に即した後見人の権限を設定するという一類型にして、個々人ごとに後見人の権限は家庭裁判所が定める、そういう形の制度が望ましいということも将来的には検討すべきでないかと考えております。
 さらに、成年後見の開始につきまして、家庭裁判所の職権による開始の道を制度の上では設けるべきではないかと思っております。
 検察官あるいは市町村長の申し立て権によって十分カバーできればよいのでありますが、現行制度で検察官の申し立てはほとんど事実としてなされていない実情等を考えますと、やはり関係者の通告による、職権による開始の道を考えるべきではないかと思います。
 さらに、任意後見につきまして、今回の改正案では、家庭裁判所がみずから監督せずに、任意後見を監督する監督人の選任を行い、間接的に任意後見の監督を行う建前になっておりますが、これにつきましても、改正法の運用の推移によっては、家庭裁判所みずからが任意後見人の監督をすべきだ。その場合、家庭裁判所のスタッフ、人的、物的な機能の拡大ということが課題になろうと思いますけれども、そういうことについても積極的な検討を必要とするのではないかと思います。
 さらに、マンパワーの育成に努めるということをお願いしたいと思います。
 成年後見制度が新しく誕生いたしましても、本人の周囲におる家族がその成年後見人に選任されるというのが常態であるとするならば、現在の我が国の実態と余り変わらないことになる。やはり社会福祉関係の専門家、あるいは我々弁護士、司法書士等もこの役割を進んで買って出るべきだと思っておりますが、国におかれましては、こういう成年後見人の供給源の充実に力を尽くしていただきたいと思います。
 そしてまた、この成年後見の費用の負担について、原則として本人負担ということは当然だと思いますが、無資力者については、やはり国庫の負担ということを考えていただく必要があるのではないかと思います。
 以上のような点についてさらなる改善を期待するものでありますが、基本的には、私どもとしては、今回の改正案は大変積極的に評価できると考えております。
 以上で終わります。(拍手)
○杉浦委員長 ありがとうございました。
 次に、荒井参考人にお願いいたします。
○荒井参考人 この委員会に障害者団体の者が招致され、意見陳述が許されたことを、本当に感謝を申し上げます。
 今回の、まさに百年ぶりの法改正ということで、平成七年から周到に、海外の調査まで始められまして、平成九年に行われたいわゆる小委員会についても、障害者団体の代表、知的障害、精神障害、それからぼけ老人を抱える会、そういう代表、それから、実際に後見のような事業をしている社会福祉協議会等の代表等が呼ばれまして、法律の専門家と同時に、使いやすい、当事者の立場に立った制度にというようなことで、さまざまな意見聴取の機会を与えられましたことを非常に評価をしたいと思います。
 判断能力の十分な成年者の保護と、本人の自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーションの実現等を理念として、欧米諸国の状況も具体的に調査検討されて、こうした利用者にとって使いやすい新しい制度に改革するための関係者の努力ということを、まず敬意を表したいと思います。
 たまたま、私は、精神障害の家族会の事務局というか、そういうことをしておりますので、精神障害の立場から申し上げることになるかと思いますけれども、基本的には、知的障害、痴呆性の老人の方々、そういうような方々の問題も共通しているというふうに思っております。そういう意味で、私どもの問題をまず申し上げたいと思います。
 お配りしました資料の参考資料というところに、「精神障害者の障害と財産管理」という事例集がございます。精神障害の場合、全国に二百十七万人、推定という形でいるとされております。入退院を繰り返している入院患者が三十四万人、通院患者が九十万人と言われております。そんな中で、十年以上入院して、財産の管理ができない、日常生活ができないというのはごくごく少ない状況であります。ほとんどが、日常生活については不自由なくできるというようなレベルの人たちでございます。
 そういう人でも思考がまとまらない時期がある。判断するとき総合的に判断する力が弱まる、断るのが苦手になるという障害があるということです。また、こだわりを持ちやすく、そのためにお金をつぎ込むというようなこともあります。対人関係が苦手で自閉的なので、情報が入ってきません。そういうようなこともあります。新しい財産知識とか、そういうものが入手が困難になるということがあります。入院の期間が長くなったり、家の人に世話をされている状況が続いているために、金銭管理の経験が不足している場合があります。自信の喪失、生きがい、目標の喪失によって、他人に影響されやすい。病状等が重く、入院しているために、実際に管理ができない、入院中にお金を預けられないとか、そういうこともありますので、そういう訓練ができていないということがあります。
 そんな中で、幾つかの事例を挙げてありますけれども、時間の関係で概要だけ申し上げます。
 同じ職場にいた上司が、金を貸してくれというようなことで、何回も何回も来て、断れなくて、一千万以上のお金をその人に渡してしまったということもあります。それから、こだわりでお金を使うということで、悪徳商法に近いわけですけれども、そういうものにひっかかってしまう。それから、学校、資格制度、そういうものにどんどん挑戦してみて、そしてこれも七百万、八百万という料金を払っているということもございます。そういう意味で、精神障害者の場合、判断能力がすべての面でないということではなくて、多くの人が判断能力が不十分であるというふうなことで、今までの禁治産、準禁治産という制度にはそぐわない、そういう障害を持っております。
 資料の中に、悪徳商法の資料とそれから概念図を挙げておきました。そういう意味では、今申し上げたような拒絶能力の低下、自覚された能力の低下からの劣等感、それから批判、疑うことの欠如、それから超自然因的な疾病観、たたりとかそういうようなもの、もう一つは、被害に気づいていない、いわゆるマインドコントロールも含めて、そういう被害なり間違った判断をしたことに気づいていないということも一つ大きな障害でございます。
 そんな中で、新しい制度として補助という類型が創設されたということは、精神障害の特性を見て、非常に評価したいと思います。スーパーとかそういうところで買い物はできるけれども、一年、二年の財政計画は立てられない、大きな契約はできない、こういうような人たちに、補助という類型は非常に用途が高くなってきているということであります。
 と同時に、障害者の意思、自己決定の尊重から、本人の同意を要件とすることとか、それから、申し立てで代理権、同意権、取り消し権の選択ができるというような形で、本人の自己決定権が担保されてこの制度が滑り出しているということでありますし、このことに関して私たちは期待したいと思います。
 それから、申し立て権については、福祉関係、行政機関の申し立て権をぜひ実現していただきたい。福祉事務所、保健所とか、身の回りの世話を日常的にしているところの申し立て権はぜひ必要であります。今、悪徳商法の例で申し上げましたけれども、補助人の取り消し権はぜひ認めるべきであると私たちは思っております。こだわりとか、自分がどんな契約をしているかわからないというようなことの中で、当然、本人の自己決定の担保に入れられているということを前提に取り消し権を認めて、本人の立場に立ってその行為をするというようなことはぜひ認めていただきたいと思います。
 そのほか、本人の心身の状況に関する認定方法で、補助類型においては原則として鑑定を要しないとすることは賛成であるということで、鑑定の費用、時間等がかかりますので、そういうことを含めて、診断書等で行われるということは評価しつつも、補助の類型については非常に難しい診断だってあると思いますので、施行については当事者や専門家の意見を十分聞いていただきたいと思います。
 それから、公示方法について、これは私ども一番最大の問題でありました。精神障害という偏見の多い病を抱える親たちにとって、いわゆる準禁治産禁治産という形で戸籍に表記されるということは、もうほとんど使えないと同じようなものでありました。そういう意味で、この登録制度が創設されるということに関しては、全面的に支持をいたしたいと思います。
 欠格条項を関係法令から撤廃すべきであるということも申し上げます。
 さまざまなことがありますけれども、最後に、任意後見制度については積極的に進めてほしいということであります。
 先ほど申し上げましたように、判断能力のある精神障害者が、自分が判断能力が落ちたときに、こういう問題を専門家なり他人に、第三者にお願いしたいというような形で、また回復したら、それを、その部分だけというようなことを含めて、非常に重要なことであると思います。私どもの相談のケースでも、今いわゆる契約行為でできるわけですけれども、きちっと法律で書いてあること、それから家裁とか、監督制度があるということで利用者が非常にふえていく。
 さまざまな問題が私どもの世界に起こって、任意後見契約というようなことが起こっておりますけれども、財産を預けるということに関して、精神障害者も家族も非常に懐疑的になります。そういう意味では、民法にきちっと記載されていること、それから監督があるということは非常に重要な制度で、この制度についてはこれからぜひ期待したいと思います。
 もう一つ。家族にとってみれば、親亡き後ということが大きな心配です。私どもの行事でこのテーマにしますと、もう満杯になってしまいます。任意後見をいろいろ組み合わせることによって、親亡き後の財産管理、そして身上監護というかケアの保障ができるということで、なかなか組み合わせが難しいんですけれども、これが期待できるということであります。実行上はぜひその辺のことも御配慮いただきたいと思います。
 法改正のことで、さまざまな要望の一つとして、家庭裁判所成年後見登録センター関連の部署に人、予算、設備等の充実をぜひ図っていただきたい。この制度を生かすというか、それは裁判所の裁量権とか審判のきめの細かさということですか、そういうものであるということを確信しております。そういう意味で、人それから予算、家裁の機能をぜひ充実してほしいと思います。
 後見、保佐、補助人等の訓練や研修制度、それをぜひ充実してほしい。公的後見という形では今回は余り論議されませんでしたけれども、個人の後見よりも、法人や団体とか、そういう法人等の後見が非常に重要でございます。
 時間の関係で省略しますけれども、この資料に、ささやかですけれども、私どものところで「さぽーと」という後見制度をやっております。そういう意味で、その予算とか支えとか、そういうことをぜひ補っていただきたいというふうに思います。
 それから、我々にとってみれば非常に難しい制度でございます。用語でございます。そういう意味では、使いやすい制度に御配慮いただいたわけですから、利用者にわかりやすい解説書やビデオとか、使いやすいようにぜひ啓発をしていただきたいというようなことをお願い申し上げます。
 我々にとって期待をしている制度ということで、この法律が一日も早く国会で成立して、実践、実務に移られんことを強く望んでおります。
 ありがとうございました。(拍手)
○杉浦委員長 ありがとうございました。
 次に、金参考人にお願いいたします。
○金参考人 ただいま御紹介いただきましたDPI(障害者インターナショナル)日本会議権利擁護センターの金と申します。
 きょうは、こういう貴重な発言の機会をいただき、感謝しております。まず、私たちDPI日本会議及び権利擁護センターの簡単な紹介をさせていただきます。
 私たちは、障害を持つ当事者団体として、一九八一年、国際障害者年の年に、国際的な障害者の連帯の組織として結成をされました。従来、歴史的にと言ってもいいと思うのですが、障害者の処遇については、いわゆる障害分野、医療分野、福祉分野の専門家、そういう援助者の一方的な意見によって処遇が決められてきたという現実がやはりあると思います。そういった結果として、収容型の施設があちこちで各国においてはつくられていった。結果として、地域社会で障害者が住みにくい、生きていけない、そういった状況がつくられていったということが、深い現実に対する思いとして当事者の側からはあると思います。そういった経過の中で、自分たちの人権は自分たちの手で実現していこうという声を上げて、障害当事者団体として活動しております。
 私たちの団体としては、DPIは、障害種別を超えて、すべての障害者を網羅した唯一の国際組織として活動しております。当法務委員の八代委員も現在、DPIアジア太平洋ブロック名誉議長を務めていただいております。私たちの団体には精神障害を持つ当事者団体も加盟しておりますし、知的障害を持つ当事者団体とも課題を通じて一緒に取り組みをしているところであります。
 今私たちは、この成年後見制度の改正がされることによって、障害当事者を取り巻く状況の中で実際にどういうことが起こっていくだろうかということをさまざまな視点から議論をしてきました。その中で、今度の成年後見制度の中では、補助制度の新設を伴う大幅な改正がされておりまして、その理念においては、本人の自己決定の尊重と本人の保護の調和を図るということになっております。本人の自己決定の尊重と本人の保護の調和を図るというのは、私たちから見ると、本当にそういうことが今の現状においてできるのであろうかという率直な疑問を持っております。やはり一歩でも二歩でも、自己決定の尊重から自己決定の実現に向けて、この成年後見制度の改正の中でどういうふうにそういう方向に近づいていくのだろうかということ、そういう問題認識の上に立って若干の意見を述べさせていただきたいと思っております。
 よく事例として出てくることなのですが、例えば、障害を持つ当事者が施設から出て家を借りるとします。不動産店舗を見つけて家を借りる相談に行きますと、あなたじゃちょっと不安だから、保証人なり代理人を連れてきてくれ、そういうふうに不動産店舗なり家主から対応されるということがよくあります。そういったことが、本人の自己決定ということからいいますと、本当にいいことなのだろうかということがあると思うのですね。私たちはやはり、今の取引の相手側が本人との間で直接話をし、契約を結ぶ、そういったことができていくための条件整備というものが少しでもこの成年後見制度の改正の中で図られていくことを第一に望んでおるところであります。
 そういった視点から、このたびの改正の中身について、具体的に幾つか意見を述べさせていただきたいと思っております。
 まず、補助類型、補助制度の新設ということに関してです。この点については、福祉関係諸団体の方からは非常に高く評価するという声が多いということは私たちも承知しております。しかし、補助類型の新設によって、では具体的にどういうことが起こるであろうかということであります。
 先ほども、家を借りるときのことを少し言いましたけれども、実際に補助類型、補助制度の対象者には、これまでいわゆる現行の禁治産制度の中で対象にされなかった軽度の知的障害、精神障害の方たちが対象にされます。その分だけ網が非常に広くかけられていきます。そういった、広く対象者がふえていく中で、実際の取引、契約の場面において、取引の相手側が、あなたは補助人をつけているのですか、つけていないのですかということ、そういったやりとりが起こってくることがあり得るのではないかというふうに私たちは思っています。
 そのときに、今度の後見登記の改正案にも盛られていますけれども、成年後見人をつけているかどうかという記録の証明書を出せることになっておりますが、そういった、例えば補助人をつけているのであれば補助人をつけているという証明書を持ってきてください、取引の相手側がそういうことを言ってくることが考えられると思います。
 本人としては、自分は補助人をつけていない、補助人をつけるつもりもない、やはり自分自身である特定の契約をしたいということでやっているのですが、それが認められない。補助人がいないという証明書を出せることになっていると思うのですが、そういったものを出した場合に、相手側が、それだったら補助人をつけて、その上で契約の話をしましょう、そうしないと契約には応じられませんということが実際問題として起こり得るのではないかという不安を持っています。
 そういったときに、これが、では補助人をつければいいのかということにすぐになるのかどうなのか。補助人などの成年後見人をつけるかつけないかは本人自身が決めることだと思うのですね。相手の意向に沿ってやむを得ず、仕方なく補助人をつけざるを得ない、そういった事態が発生するということがあった場合に、私たちは、これは明らかに取引の契約拒否、相手側の契約拒否という人権侵害事件にもつながるおそれがあると思います。そういった意味では、補助制度の新設に伴う運用に関しては、非常に慎重な検討を求めたいと私たちは考えております。
 そういったこととの兼ね合いなのですが、今度の成年後見制度の改正によって、補助人などの成年後見人を本当に本人が望んでいるのかどうなのか、そういったことが後見の開始決定にかかわる手続において非常に慎重に検討される必要が私たちはあると思います。
 成年後見人の開始決定に至る手続の場面で、本人の事情聴取、本人が本当に成年後見人をつけることを望んでいるのかどうなのかということを家庭裁判所の窓口の段階で、入り口の段階で、一回ならず、三度目の正直という言葉もありますけれども、少なくとも三回以上は、本人が本当に成年後見人を必要としているのかどうなのかということを確かめる事情聴取というものがぜひ必要なのではないかというふうに私たちは思っております。
 そういったことの中で、本人が本当に成年後見人が必要であれば、成年後見人の開始決定が行われて、必要な事項において後見がなされていくということが望ましいのではないかというふうに思っております。そういった意味でいえば、補助制度の運用いかんが今度の成年後見制度の改正の評価において非常な意味を持っていると思いますので、その点については慎重に御審議を願いたいと思っております。
 それとあと、同じく入り口の問題としての成年後見開始請求においてのことですが、やはり自己決定の尊重が言われているからには、保佐と後見においても、本人の同意を得ていく、丁寧な事情聴取の中で、本当に保佐人、後見人をつけることが必要なのかということを、保佐と後見のところでも、本人の同意が入り口の段階で必要であると思っております。
 次に、費用とか報酬については、このたびの改正案においては、基本的に自己負担になっております。障害者にとっては、働いて財産を蓄積していくということが非常に困難な状態に置かれておりますので、一定程度の低い所得の、財産のない障害者にとっては、公費負担でこの制度が活用できるようなことを考えていただきたいというふうに思っております。
 次に、法人後見については、さまざまな議論があるかと思いますが、少なくとも、本人が所属している施設、病院などを経営している法人においては成年後見人になることはできないという明確な規定がぜひとも必要であると思います。実際上、施設において、年金などをなし崩し的に施設側が管理をしている、それが本人の了解も何もなく、いつの間にか施設運営に係る寄附の方に回されている、そういったこともよく報道の中にも出てきますけれども、実際にそういうことが起こっております。利益相反という観点からも、そこは明確に線引きをされるべきであろうと思います。
 このたびの改正案では、身上配慮の義務ということが言われています。そういった意味では、単に財産管理にとどまらず、身上配慮、本人の意思決定を本当に尊重していくための成年後見人のかかわり方というものが非常に大きな意味を持っております。そういった意味では、家庭裁判所の段階においても、家庭裁判所の裁判官、調査官、そして成年後見人になる人たちの質的な問題として、本人の自己決定の意味、意思決定の意味というものをさまざまな事例に応じて本当に理解できるような人権教育の研修というものが、ぜひともこの制度の運用の前提には必要なのではないかと思っております。その点は、昨年秋の国連の国際人権規約委員会の日本政府への勧告においても、司法関係者に対する人権教育の必要性ということがうたわれておりますので、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。
 最後に、任意後見についてはぜひとも積極的に活用していただきたい。まずは、本人の任意性、自己決定というものが少しでも確実に担保される制度になっていただきたいと思っています。本来は、任意後見を中心にして、それを補う形で法定後見というものが本人の必要性に応じて適用されるということが望ましいと思っておりますので、ぜひそういった方向で制度運用がされるように望みたいと思っております。
 一番最後ですが、欠格条項との関連について、少しだけ述べておきたいと思います。
 欠格条項については、このたびの関係整備法においては、従来百五十八種あった欠格条項が百十六種に減らされていくということが新聞でも言われております。ただ、その中で、従来どおり残る欠格条項の中で、参政権、選挙権の問題があります。従来は、禁治産者宣告をされた禁治産者に対しては選挙権がなかったわけなのです。
 私たちは、このたびの見直しにおいて、この選挙権は当然見直されるものと思っていましたが、このたびの改正案の中では、後見の対象者には選挙権が与えられない、欠格条項になるというふうに聞いております。やはり、選挙権というものは基本的人権の非常に大きなかなめのところにあります。この選挙権を被後見人が行使したからといって、何か相手に対するトラブルだとか被害だとか、そういったことが起こることは全くあり得ません。私たちは、少なくとも、このたびの見直しにおいては選挙権の行使ができるように、ぜひ改善を求めたいと思います。
 若干時間を過ぎてしまいました。大変申しわけありません。どうもありがとうございました。(拍手)
○杉浦委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
○杉浦委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村建夫君。
○河村(建)委員 自由民主党河村建夫でございます。
 参考人の皆さんには、貴重な時間をいただきまして、ありがとうございました。この民法改正につきましては、それぞれの立場で評価をしていただいておるところでございますし、また、それに対して貴重な御意見、御提言をいただきました。ありがとうございました。
 限られた時間でございますが、各参考人の皆さんに、私の方から若干の質問をさせていただきたいと思います。
 まず、発言をいただきました順番にと考えておるのでありますが、千葉大学の新井参考人にお聞きいたします。
 先生は、世界の各制度を比較をしながら、今回のこの改正はそれらを凌駕するものであるという高い評価をいただいたのであります。個々について説明をいただいたのでありますが、日本が、イギリスあるいはドイツの制度を総合的に配慮して今回の改正に踏み切っている、こうおっしゃっておるわけでございますが、特に新設の補助、これが非常に大きな意義があるということでございます。また、あわせて任意後見の制度、この両者の新設について、改めて、どういう点を特に評価されるか、お伺いをしたいと思います。
○新井参考人 世界の後見の流れは、できるだけ自己決定を尊重しよう、後見の世界でも自己決定を尊重しよう、保護をする場合でも、その保護というのは限りなく限定したものにしようというのが二つの基本的な考え方じゃないかというふうに思っております。一つの特徴的な行き方はイギリスの行き方、もう一つの行き方がドイツの行き方ではないかと思います。
 日本の今回の改正は、まずイギリスの方からは、任意後見という形で学んだわけです。これは、とにかく自己決定を尊重しよう。それは残存能力じゃなくて、意思がきちっとあるときに、自分の意思で、万一自分に能力がなくなったときの保護のあり方はこうしてほしいということを決めておこうという形の制度ですけれども、それを学んだというわけです。しかも、この日本の制度の場合は、イギリスよりも本人の保護というところがきっちりしているという意味で、私は、イギリスよりもすぐれているんじゃないかというふうに評価しております。
 ドイツは、世話という形で、これは法定後見で、保護の制度なんですけれども、できるだけ自己決定を尊重しようという形の制度をつくりました。これを参考にしたのが日本の補助ということではないかと思っています。ですからこれは、保護の制度ではあるのですけれども、限りなく自己決定を尊重したという行き方をしているというふうに思います。
 ですから、世界の主要な先進国、つまりイギリスとドイツのそれぞれのいいところを、任意後見と補助という形で取り入れた立法だというふうに考えておりまして、今の世界の成年後見の立法としては大変すぐれているというふうに思われるわけです。ですから、もしこれが成立しますと、逆に諸外国は、日本の法律制度を参考にして、あるいは日本の実務がどう動いていくかを参考にして立法していく。今まで日本は外国からのみ学んできたわけですけれども、この成年後見は、逆に日本の知恵、アイデアというものを海外に普及できるんじゃないかというふうに考えております。
○河村(建)委員 ありがとうございました。
 そこで、全家連の専務さんからも、福祉の立場からもお話がございましたが、荒井参考人は、先ほどのお話の中では、この補助と任意後見の制度が、心身の状態、生活の状況に配慮したいわゆる身上状況といいますか、そういうことにも及んでいくんだ、こういう御指摘でありました。いわゆる生活サポートという形になるであろうということでありますが、参考人は、具体的に、福祉の現場においてどう利用されていくというふうにお考えでしょうか。
○荒井参考人 補助及び任意後見ということで、任意後見の契約行為というか、私どもが「さぽーと」でやっていることに関して、精神障害の中で、自分はこの問題とこの問題については能力が落ちたり、今でも心配だというような形で、弁護士だとかグループに委託をして、今、そういう意味では実験的なことをやっております。
 そんな中で、スーパーでは買い物ができるが、一カ月、一年あるいはそれ以上の中長期的な生活設計なんかがなかなかできない、大きな財産の、遺産とか、生命保険を受け取るとか、そういうことがなかなかできないというような形で、専門職に委託をするというような制度をとっております。日常相談業務、それから保管業務、通帳を預かっておくとか、印鑑、実印を預かっておくとか、そういうこともしております。それから、マネジメント、相談してあげるというようなことですね。あとは、権利擁護というか、医療機関とかいろいろな問題があったら相談に乗るというようなことで、今、こういう任意に基づく援助をしております。
 そういう意味では、精神障害の人たちが日常生活をすることにおいて、それよりも能力が落ちた状況の中で裁判所に申請するというときには、本人の承諾があるのか、だれが必要なのか、そういうことを含めて、いわゆる後見人の選任に関して、診断書なり、それから家庭裁判所のケースワーク機能というか、そういうものも十分図りつつこの制度が使えれば、非常に有効であると思います。
 それから、圧倒的に年金生活等の障害者が多いですから、その財産からその費用を出すということについては非常に困難でありますし、私先ほど申し上げたように、やはり公的機関等の援助や支援がそういう後見人にも必要かなというふうに思います。
○河村(建)委員 全家連の荒井専務さんにお立ちをいただきましたから、あわせて、先ほど最後にお話をいただきました金参考人の方から、自己決定を非常に大事にしたいのだということで、補助の制度は、認定が非常に微妙な問題が出てきて、かえってそれが広がって、この補助制度があれば、せっかく自分でやりたいと思ったことができなくなるのではないかという御懸念も今御指摘があったわけでありますが、そういう観点から、補助制度を利用していく場合の自己決定をどういうふうに尊重するかということについては、全家連の荒井専務さんはどのようにお考えでございましょうか、今の御懸念に対しても、含めて……。
○荒井参考人 そこが、精神の場合、自分の障害がなかなか認められないというレベルもありますので、非常に大変な場合もあります。しかし、自分にとってこれが自信がないというようなことで、助けてほしいという心情は基本にあるわけで、それをどう引き出していくかというのは非常に重要なことだと思います。
 それで、この問題について、ちょっと話が飛躍するのですけれども、戦後すぐ、生活保護にケースワーク論争というのがありました。生活保護を与えると怠け者ができるのではないかというようなことで大論争になりました。
 そういうことの中で、やはり指導、ケースワークですね、これは非常に重要だということで、自己決定の際に、我々、周りの人たちがきちっとしたケースワーク機能というか、そういうものをすることによって、自分が障害を認められなかったり、自分がしていることがわからなかったり、援助が何だかわからないというような人たちについてきちっとした対応をするということがかなめであって、この補助類型等について、自己決定権を本人のみとするということになると、この制度が実効的に進行するかどうかという疑念も出てくるかと思います。そういう意味では、さまざまな自己決定の担保の制度を保障しつつも、この制度をぜひ進めていただきたいというふうに思います。
○河村(建)委員 ありがとうございました。この制度が使いやすく利用されやすくということが非常に大きな念願にあるわけでございまして、全家連のお立場、障害者団体を取りまとめておられる立場からいっても、今後、その役割というのは非常に高まってくるであろうというふうに思います。時間があればその辺についてもお聞きしたいのでありますが、時間の関係で次へ行きたいと思います。
 久保井参考人にお聞きをしたいと思うのでありますが、弁護士の立場からお話をいただいたのでありますが、この利用しやすいかどうかという問題で、これまでの弁護士の体験からいっても一度しか選任の御経験がない、こういうことでございまして、これから、この制度がいよいよ導入されることによって、改正によってかなり利用しやすくなっていくだろうというふうに思っておるわけでありますが、具体的にはどういうふうに予見をされておりますでしょうか。
○久保井参考人 久保井でございます。
 今度の改正法の目玉であります補助類型及び任意後見につきましては、恐らく、この法律ができますと非常に活用されるのではないか。
 特に補助類型につきましては、判断能力が著しく不十分ではなくて、軽度の痴呆といいますか、そういう方が現代社会では非常に多うございまして、高齢化社会を迎えまして、その人たちは現時点ではどのような処理がなされているかといいますと、同居している親族とか知人が事実上の世話をする形で処理されている。正式な後見人の選任とか保佐人の選任という形をとらないで、家族の人を中心とする周りの人たちが処理をしているというのが実情だと思います。そのために、後日になりまして、本人が十分わかっていたかどうか、そういうことが大変争いになります。
 弁護士が日常扱います問題で大変多うございますのは、不動産の売却とか、不動産を担保に入れた借り入れとか、そういうことが後日になって判断能力がないから無効だというような争いが多々発生しておりますけれども、そういう問題につきまして、きちっとした補助人をつけることによって、法律行為が透明化するといいますか、そういうことが促進されるだろうと思います。
 私どもが常々経験いたしますのは、不動産を本格的に売却するということ以前にも、例えば、隣地との境界の立ち会いについて同意を求められるとか、あるいはまた、道路用地とか公園用地に自宅の一部を提供してほしいというような形で要請された場合に、それだけのために禁治産宣告とか準禁治産宣告をするということは大変過酷だということで、実際にはそうすべきであっても、事実上、本人の名前において家族が同意の判を押しているというようなことはよくあることなのです。
 また、大勢の遺産分割の当事者の中の一人に判断能力が少し不十分な方がおられましても、その遺産分割成立のためだけに現行の後見とか保佐の制度を使うというのは大変困難。ちゅうちょするわけですね、非常に不利益といいますか、戸籍に記入されるとかいろいろなことがありまして。そこで、判断能力に問題があっても、周囲の人が事実上の同意をして進めるというようなことがよく行われるわけですが、そういうあいまいな領域を今度の補助類型の制定によってきちっとできるといいますか、本人の利益を守りながら、かつ、本人の意思を尊重しながらやれる。
 つまり、今度のやつは、特定の法律行為について代理権を与えるとか取り消し権を与えるとかあるいはまた同意権を与えるという形で、一般的ではなくて特定の行為についてだけ、例えば、隣地の立ち会いの判を押すとか、遺産分割協議に判を押すとかいう、特定の行為についてだけ補助人の選任ということができるようになっております。そういうことから見ても非常に利用がしやすい。
 後見とか保佐ですと一般的に対象の行為が定められるわけですけれども、補助類型はそれがないから、例えば自宅の売却あるいは自宅の一部の売却ということが動機になって補助人の選任をいたしまして、その行為が終われば、今度は同意権なり代理権は目的を達成して消滅する、そうすれば補助審判も取り消される、したがって成年後見の対象者でなくなるということになるわけです。
 現行制度では、一たん後見が開始される、禁治産宣告とか準禁治産宣告がなされますと、当面の必要性がなくなっても永久にそれが続くということがあるために、戸籍にいつまでも載ってしまうということで、使いにくかったわけですけれども、今度の場合は、特定の法律行為について補助人を選んで、その特定の法律行為が完了すれば補助が取り消されるということにもなりますから、非常に活用がしやすいのではないか、そういうふうに思います。また、介護保険とか社会福祉サービス、社会保障サービスの交渉とか給付の申請、そういう行為について補助人が非常に活躍していただけるのではないかというふうに思います。
 それから、もう一つの目玉であります任意後見につきまして、現行民法の委任とか代理によってもできるではないかという議論がありますけれども、やはり自分が代理人を監督できなくなる。自分がしっかりしている間は代理人の不正行為は自分が監督できますが、自分がぼけた場合、意思能力を失った場合には自分が監督できなくなるわけです。それを監督する者、任意後見監督人というものを今回の法案では家庭裁判所が選ぶということで、本人としてみれば、自分がぼけた後、あるいは判断能力を失った後でも、ちゃんと代理人の権限濫用を防いでもらえるといいますか、そういう手当てがしてもらえるということになりますと、現行制度よりもはるかに利用しやすくなる。現行制度でも任意後見は可能かもしれませんけれども、非常にすっきりしてくるといいますか、安心して頼めるという点が大きなメリットになろうかと思います。
 以上です。
○河村(建)委員 ありがとうございました。
 私の持ち時間が参ったのでありますが、最後に、久保井参考人日弁連の前副会長でいらっしゃいますし、日弁連の重要な立場にもいらっしゃるわけであります。今後、この制度改正によって、今お話しのように弁護士の方々が後見人、監督人になるケースは非常に多いと思いますね。それに対応する日弁連側の方策というのはお持ちなのでありましょうか。
○久保井参考人 現在、日本弁護士連合会として統一的な方策までは立っておりませんけれども、例えば大阪弁護士会とか第二東京弁護士会とか、幾つかの弁護士会におきましては、改正法以前から既に任意後見契約を前提とした制度を発足させておりまして、大阪弁護士会ですと約三百名の弁護士が支援弁護士名簿、つまり高齢者、障害者のための財産管理とか身上監護についての支援をしてもよいという、そういう支援弁護士名簿に登録をしてくれておりまして、その研修とか、あるいは現行法下における財産管理、身上監護のお世話とか、そういうものを既に開始しておりまして、改正法がもしできましたら、さらにこれを充実強化していきたい。このような動きは大阪とか第二東京弁護士会から始まって、現在では全国の弁護士会に燎原の火のごとく広がりつつありますので、御安心いただきたいと思います。
○河村(建)委員 ありがとうございました。
 時間の都合で、金参考人まで質問ができませんでしたことをお許しをいただきたいと思います。
 終わります。
○杉浦委員長 次に、日野市朗君。
○日野委員 民主党の日野市朗でございます。
 この法律の改正案ができまして、今審議を行っているわけでありますが、私も、できるだけ早くこれを通して、そして新しい時代の流れにふさわしい補助の制度、これを実現していきたい、こういうふうに思っているのでございます。
 ただ、私、こうやって考えてみまして、現在の世の中のありよう、それからその流れというものを考えてみて、これらは、法律ができることを私も強く希望いたしますけれども、それよりも先に世の中の動きの方がどんどん流れていくのではないかというような心配が実はあるのでございます。
 もちろん、高齢社会にもう入っているわけでございますね。そして、核家族化はどんどん進んでいくというような状況でありまして、私なんかは田舎の方ですが、私の住んでいるところなんかは本当にこのごろは子供の声が聞かれなくなってしまった。どこに行っても空き家が目立つ。そしてまた、人が住んでいても、高齢者たちが肩を寄せ合うようにして住んでいるというのが実は私どもの田舎の方の実情でございます。
 こういう中で、できるだけこの人たちを助けていく手段、方法が、これは福祉の面からも、それからこういった民法の、能力を補っていくという立場からも必要になってくるのであろう、そして、それに万遺漏なきを期したいものだ、私はこんなふうに思っております。
 それで、先ほどの質問の続きから始めたいと思いますが、今弁護士さんたちの間で、補助、保佐、後見、こういった仕事に取り組んでいこうという方がずっと組織されてきている、私、非常に結構だと思います。しかし一方、私も一人の弁護士として、もし自分がそれをやるとしたら、これは大変な犠牲を伴うな、自分の弁護士の仕事、それにさらにこういう仕事をもつけ加えていくということになると、これは大変御苦労なことだなというふうに思わざるを得ないのです。
 それで、先ほど、マンパワーの育成ということが非常に大事だということを久保井先生御指摘になりました。それで、そういう犠牲的な行為でいろいろ補いをつけていくということも非常に結構なことだが、これは限界がありはしないかということを私は強く感じます。将来のビジョンとしてどんなふうにお考えになっておられるのでしょう。先ほどは、福祉の専門家の養成ということもおっしゃいました。そして、従来と変わらないことになってしまうというおそれも指摘されました。これからこれをきちんとした制度として伸ばしていく、そのためには、久保井先生、どんなことが必要であるというふうにお考えになりますか。
    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
○久保井参考人 日野先生が御指摘のとおり、大変な犠牲を関係者が払っていかなければならないだろうと思います。
 基本的には、やはりマンパワーを育成していくということでございますが、社会福祉関係の専門家、ケースワーカーを国家の力で育成し、アメリカ等ではパブリックガーディアン、公的後見人というものが非常に発達しておるようでございますし、ドイツでも世話人協会に所属する専門的な世話人がたくさんいらっしゃるようです。我が国でもし新しい法律をつくっても、そういう人材の育成を怠るならば、結局現在行われているような、本人の周囲におる家族とか知人がそのまま後見人の座に座らざるを得ない。家族の犠牲なり負担が解消されないで、現状がただ認知されるだけに終わるという、そういうことは十分考えられますので、そういういろいろな意味でのマンパワーの育成は不可欠だろうと思います。
 また、弁護士の業務から見てどこまでお引き受けできるかということにつきましても、確かに大変でございます。現にドイツ等でも弁護士の引き受けているケースは不動産管理等が中心のようでありまして、もっと日常的に、密着したお世話をするということになりますと、弁護士が毎日本人の家で密着した形でお世話をするというのは困難でありまして、現実的な形態としては、本人の周囲におる知人が後見人をなさっておるところに後見監督人として後見人の会計事務その他日常のお世話の状態をチェックしていくというような、弁護士自身が後見人になることは難しくとも、後見監督人であれば、監査の仕事が中心になりますので、現実的にかなりお引き受けしていけるんではないかというようなことを今検討しております。
 いずれにいたしましても、弁護士とかそういう職業だけじゃなくて、社会福祉関係の専門的な方々を大幅に育成して、アメリカのパブリックガーディアンの制度のような形に発展させていくということがどうしても必要だろうと思っております。
○日野委員 今私が感じている問題点を一つ摘出してみたわけでありますが、この点について新井先生、お考えがありましたらお聞かせいただけますか。
○新井参考人 私の全く個人的な考え方でありますけれども、今先生の方で、これは多くの犠牲が伴うということをおっしゃった意味は、私、大変よく理解しているつもりであります。しかし、そういう犠牲論ということですと、この制度の受け皿というのは育たないと思うんですね。犠牲じゃなくて、それが正当な仕事であり正当なソーシャルワークであるという形の認識を持つことが大切だと思うんです。そのための受け皿づくりということが、私、この法律の施行と同時に必要なことだというふうに考えております。
 では、そういう受け皿づくりの動きがあるのかということで、私の見るところ、少しではありますけれどもあると思うんです。例えば、久保井先生のおっしゃった弁護士会での動き。それから、司法書士会の方でも、今、特別の法人をつくって、その中で研修制度を設けてやっていこうというような動きもあります。それから、社会福祉士会でも同じように、「ぱーとなー」というような制度をつくってやっていこう。それから、社会福祉協議会ですか、これでも、厚生省と連携して地域福祉権利擁護事業というのをやっていこうという動きがありまして、私としては、親族に頼る、あるいは専門職でも犠牲の上に成り立ってこの制度が動いていくということじゃなくて、いろいろな受け皿が出てきて、そこがいわば適切な報酬を得ながらこういう分野を担当していくということがどうしても必要だろうというふうに考えております。
 ですから、ぜひ先生方におかれましては、そういう受け皿づくりのバックアップ、支援ということをよろしくお願いしたいと思うんです。
 理想的にはドイツのような世話人協会。世話人協会というのは、将来的には二百万人ぐらいの世話人リクルートし、協力し、プールしようという構想があるわけですけれども、ぜひ私もそういうふうにしていきたいと考えておりまして、今回の法律がその契機になればというふうに考えております。
○日野委員 今度は荒井先生に伺いましょう。
 財団法人として家族会を運営しておられるわけですね。財団法人としていろいろな障害者の皆さんの面倒を見てこられる中で、お金がどのようにかかっていくのかという問題も出てくるでありましょうし、それから、そのお仕事そのものの大変さということもございます。
 それで、私は、今、久保井先生、新井先生からお話がありましたように、犠牲を払ってこういった面倒を見ていくということは、これは非常に美しいことです。しかし、なかなか、美しいということだけでは賄い切れる問題ではないことがいっぱいあるわけでございまして、荒井先生のお考え方から、補助、保佐、後見、こういった仕事、ある程度ビジネス性を持たなければならないのではないかというふうにも思うのでございますね。そうでなければこれは持っていけないのではないかというふうにも思うんですが、そんな私の考えについてどうごらんになりますか。
    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
○荒井参考人 法改正の議論の中で、この制度は土台である、家はそれぞれの厚生行政なり自治体行政なり民間のさまざまな努力によって建てるという例えがありまして、非常におもしろいなというふうに思いました。
 いわゆる民法法人でも、民法公益法人の規定はありますけれども、公益法人そのものはいろいろな自治体の中の認可と自主努力と補助金で運営しているわけです。そういう意味では、厚生行政が、先ほどの参考人がおっしゃられた地域福祉権利擁護制度とかそういうものに関して予算化をして、社会福祉協議会、行く行くは、都道府県社協ですから三千、本当に生活の身近でやるということになるんでしょうけれども、そういうものは画期的なことであると思います。
 先生がおっしゃった、家族としてはいわゆる援護とか保護とかそういうものについては当然できるだけのことをする、個人の努力を超えたものについては公の責任であるということでさまざまな福祉やそういう制度ができているんだと思います。そういう意味で、権利擁護の財産管理とか後見人制度について、ビジネスというよりも、当然それに関する福祉的な、公益的な事業としてぜひ取り組んでいただきたい、制度化してほしいということが我々の要望であります。
 例えば、今、信託制度で親が子供に財産を組み合わせて渡すことができます。ビジネスの信託業務では、お金を一年に一回とか月に一回とか支払うことはできますけれども、財産管理に問題のあるケースについてきちっとした渡し方はしてくれません。そこまでが今のビジネスの世界であるということであるとすれば、これから二十一世紀に向けたビジネスと福祉が調和した新しい制度の創設、いわゆる福祉の理念をビジネスに生かすという、チェック機構も含めて必要かと思います。
 そういう意味では、今の段階では、全家連の場合は、家族の相談、援助活動とか作業所、小さなワークショップですけれども、そういうものを実践したりして、直接障害者の援助なり家族同士の連携とかそういうものをまさに自助努力でやっております。そういう意味では、当然、国の補助なり自治体の補助があるべきである。そういう意味でビジネスと考えるべきだと思っています。
○日野委員 もう時間がほとんどなくなってしまったんですが、金先生、ひとつお願いします。
 結果として、補助人がないということになると、消費活動の場面から障害者の方々が排除されるというような趣旨のことを先ほどおっしゃいました。このような例は頻発している例なのかどうか。世の中もかなり福祉的な観点に立っていろいろな取引なんかも行われていると思いますが、現実にそういうことは非常に多いのかどうかについてだけちょっと伺いたいと思います。
○金参考人 消費場面においてということなのですが、先ほど一つの例としてお出ししましたけれども、家を借りるときに、取引の相手側が、本人とのやりとりをしていながら、本人の言い方、言葉の調子などで不安を感じて、あなたは少し知的障害または精神障害を持っているんではないですかということがわかったときに、どういうことが起こり得るかということだろうと思います。
 それは、私たちの中でもいろいろな情報などをつかんでいきながら、いわゆる賃貸契約、そういった契約事項についてはそういう事例が非常に多くあることは事実としてあると思います。きちんと統計などをとったわけではありませんので、まだそこは正確な数字は今持つことはできませんけれども、実態としては数多くあると思います。
 そのときに、私たちとしては、先ほども少し言いましたけれども、本人がこの成年後見制度による後見人をつけて相手側との取引をしたいと思えばそれでいいと思うのです。ただ、本人自身が、自分でまずはやってみたい、できるところまでは自分で契約にかかわる話をしてみたい、そういった思いを持つことは当然ですし、それがむしろ保障されていかなければいけないというふうに私たちは一方で思っています。
 そのためには、相手側に、ではあなたはちょっと不安だから、補助人をつけてまた改めてやってきてよというふうに言われれば、はい、わかりましたということになるのかどうなのか。
 私たちもいろいろな相談を個別に受けていますけれども、本人から仮に、契約を拒否されたということで相談に来た場合に、私たちとしては、やはりこれは人権侵害の疑いがあるのではないかというふうに判断することになると思いますし、そういった場合に、例えば法務局に人権侵犯の申し立てをすることもあるかと思います。そのときに、法務局の判断として、では認定として、こういう成年後見制度があるのだから、補助人を使うことによってそれは契約がなされるというふうに判断されてしまうと、人権侵害に当たるのかどうなのかということも今後の問題としては出てくると思いますので、それが自己決定、自律を阻害することにつながる危険性を、私たちは結果としてそういうふうになることのおそれを感じておる次第です。
○日野委員 どうもありがとうございました。時間が何分短くて恐縮でした。ありがとうございます。
【次回へつづく】