精神医療に関する条文・審議(その110)

前回(id:kokekokko:20051124)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の成年後見制度制定・精神保健福祉法改正についてみてみます。

第145回衆議院 法務委員会会議録第20号(平成11年6月15日)
【前回のつづき】
○杉浦委員長 次に、漆原良夫君。
○漆原委員 公明党改革クラブの漆原でございます。
 まず、私の方からは野沢参考人にお聞きしたいと思います。
 資料をいただきまして、私も初めて目を通すわけでございますが、日本の手話通訳制度の概要という資料をいただきまして、今一生懸命読ませてもらっておりました。公正証書遺言に手話通訳を導入する、こういう制度、大変結構なことだと思います。
 そこで、お尋ねしたいのですが、この七ページに「東京都手話通訳派遣協会「対象別派遣分類表」」という一覧表がございまして、一から八まで、「生命と健康を守る」とかあるいは「人権の保持」とかいろいろなものがあります。この中で、「人権の保持」というところで、警察署、検察、裁判所、法務、その他というところにも派遣をされているということなんでございましょうが、これは東京都に何名くらいがおられるのか、また、全都道府県にこういうふうな分類表に従ったような組織化がされているのかどうか、この辺をお聞かせいただきたいと思います。
○野沢参考人(手話通訳) 野沢でございます。
 知っている範囲でお答えをさせていただきたいと思います。
 先ほど申し上げましたとおり、手話通訳の制度といいますのは、国の公認した手話通訳士と都道府県が独自に試験を行って合格者である通訳者、その二つございます。
 手話通訳士、国の制度の場合には九百六十四名、都道府県の場合には、十分法的な手話通訳もできるという者の数ははっきりはつかんでおりませんが、大体同じぐらいの数がいると思われます。日常的な通訳活動をやっている人は四千人ほどおります。
 そういう中で、この東京都の手話通訳派遣協会のような分類表をつくりまして、きちっと対応しております。特に、警察、病院ですとかそういうところにはそれぞれの県の手話通訳試験に合格した人のリストをすべて配付してございます。夜間でも日曜日でも、聞こえない人が、必要な場合には、そういうところに電話をすればすぐに通訳が来てくれる、そういう体制にほぼなっております。そういうお答えでよろしいでしょうか。
○漆原委員 追加でお尋ね申し上げますが、この東京都の派遣分類表のような組織体制が各都道府県にできておるのでしょうか、いかがでしょう。
○野沢参考人(手話通訳) 公証人協会のような都道府県の派遣協会五十の載っておりますリスト、先ほど公証人の方からお話があったように、全国のリストがございます。ただ、東京都の派遣協会と全く同じかというとまだまだという段階でございます。東京の場合には手話通訳者の数も非常に多いのですが、数の少ないところもございます。十分な対応がまだまだというところもございますが、基本的には東京都と同じような基準をつくりまして、そのリストは病院、警察等に配ってありますので、それは間違いはございません。
○漆原委員 非常に難しい法律用語がたびたび出てくると思いますが、特に法律にかかわる人たちに対する研修だとか教育だとか、この辺は今後どのようにされていくのか、そして、新しく導入をされる公正証書遺言における手話通訳士に対する研修、教育、どのようにしていくのでしょうか。
    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
○野沢参考人(手話通訳) 私ども、今後、法律関係の、刑事の場面だけではなくて、公正証書遺言もありますし、民事の関係もあります。非常にこれから多くなってくると考えています。私ども聴覚障害者も努力をする必要があると感じております。
 先ほど佐藤参考人ともちょっとお話をしたのですが、我々、聴覚障害者協会、全国各地に組織を持っております。今後、そういったところで公証人の方をお招きして、公証役場の機能ですとか遺言に必要な言葉ですとか、そういった法律に関する言葉を学習するというようなことをやっていこうという予定でございます。
 また、全日本ろうあ連盟の手話研究所でも、今回、公正証書遺言改正に関するこの問題を踏まえて――今手を動かしました。あのようにやりますと遺言、それから遺書、遺留分という手話をつくるという努力もしております。聞こえない人たち、に、手話通訳と一緒に勉強していく、法律関係の言葉をつくる、深めるという学習努力を始めているところであります。まだまだ足りない面もありますけれども、お互いに頑張っていこうという決意でやっております。
 この間開かれました鳥取での全国ろうあ者大会でも、そういう努力をするということをスローガンにも掲げて確認をしております。
○漆原委員 ぜひ研修教育を積んでいただいて、公正証書遺言を確実のものにしていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。
 続きまして佐藤参考人にお尋ね申し上げますが、先ほど久貴参考人の方から、公正証書遺言について、これは大正の大審院判例ですけれども、遺贈物件の詳細について覚書で済ませた、口述を省略した、こういう御報告があったんですが、確かに、遺言をするときは物件の目録なんかいっぱいありまして、正確に覚えていないという方もいっぱいおります。
 それで、そういう場合に、本人もしくはだれかがあらかじめこの覚書を、目録をばあっとつくっていって、これでいいですねというふうな感じの、口述に変えるようなそういう便法は今とっているんでしょうか、それとも、きちっとその目録は公証人が見ながら、御本人に見せないで、大体のところでもいいから全部言いなさいというふうに言わせるような格好なのか、その辺の実務の実態について教えてもらいたいと思います。
○佐藤参考人 恐らく、多少程度の問題も入ってくるんだろうとは思いますけれども、非常に不動産等が多岐にわたりまして、しかも所在もばらばらであるというような場合に、全部を本当に正しい意味での口頭で賄うということは不可能でございます。最初の段階で、まず御本人の方からどういう財産があるかということをむしろ書面に書いていただきまして、それに伴う不動産登記簿等を全部出していただきまして、それによって、権利関係あるいは物件の表示の仕方その他に誤りがないかをまずは公証人の方で十分確認をいたしまして、それに基づいて遺言証書の原案がつくられます。
 それで、最終的な作成の段階では、例えばマンションのような場合に、逐一頭から終わりまでその室番号まで読むかどうかということは、程度の問題によりますけれども、例えば当事者が千葉のどこそこにある物件というような自分たちに特有の言い方をしている場合には、そういう言い方を借用しまして、一番から五番までは千葉の物件、それから六番から十番までは静岡県の物件、それからその先も八王子にあるマンション、こういうような形で言っていただきまして、こちらもそういう目で確認をするということで、現実には、純然たる口頭のみでたくさんの不動産を確認するというのはかえって危険でございますので、両方をいわば混用しながら、本人の意思を確認し証書を作成しているというのが実態であろうと思います。
○漆原委員 なぜこんなことをお聞きしたかというと、物件目録みたいなものを事前につくらせて、本人のもちろん意思に従って遺言はなされるんでしょうけれども、往々にしてそこに力関係が働いて、お年寄りがある意味では半分しようがないなという感じで、弱ってきてから遺言をするケースが非常に多うございまして、そんなときに、積極的にきちっと自分の遺贈する遺言に挙げるという対象が、果たして言えないような感じでなされては非常に困るなという感じを持っております。さらにまた、今度手話による場合が広がってくるわけですから、ある意味では、そこを少し厳密に考えていただいた方が遺言者の権利の保護になるのかなと、こんな実感を持っておりますので、この点、ひとつどうぞよろしく御検討いただきたいと思います。
 それから久貴参考人にお尋ねしますが、今後の問題点として、「制度を支える態勢の整備と充実」という項目を挙げられておりますが、これについて御提言があられましたらお聞かせ願いたい、こう思います。
○久貴参考人 お答え申し上げます。
 先ほど抽象的に申し上げまして、ほかの参考人の先生方、これまでこういう取り組みをしてきた、あるいは、今後こういうことをしようと思っているという、具体的にいろいろおっしゃいました。まさにそのあたりが私申し上げたかったことであるわけなんでして、恐らくきょうのお話は、特に山田先生とか野沢先生の方のお話、具体的ないろいろな細かいお話があったんですけれども、私あえて申し上げさせていただきましたら、公証人の先生にも、今後かなり、御勉強と言ったら失礼ですけれども、実際の手話の問題をかなり御理解いただくようなそういうこともやはり必要になってくるんじゃないか。そういうことも含めまして「今後の問題」と申し上げさせていただいたわけであります。
 以上です。
○漆原委員 最後に山田参考人にお尋ねします。
 法律関係の仕事、弁護士の業務をやられて、大変難しい作業をされているんだなということを先ほどから感心しながら聞いておりました。また、大変御苦労があるなというふうに思っております。
 実際に先生のお書きになったこのレジュメの中で、ナンバー2の(7)のところで「現在私が取っている方法」というところがございます。大きな項目として「手話通訳または筆談による公正証書遺言の必要性」というこの項目の七番目に「現在私が取っている方法」というのがございますが、これはどんな方法なのか、先生、具体的に教えていただきたいと思います。
○山田参考人 山田でございます。
 実はいろいろと申し上げるつもりでレジュメには書いたんですけれども、どうしても時間がなくなってしまいまして、はしょってしまいました。
 私のとっております方法というのは、聴覚障害者の場合でございますが、まずまず文章が書けるような人の場合には、私が手話で相手と話をしまして、そして希望を聞く、その上で私が文章をつくってさしあげる、それを本人に大体はそのとおりに書き写してもらう、そういう方法をとっております。
 ところが、それでもなかなか文章のわからない人というのは、まあ四苦八苦と申しますか、一言一言、一字一字一字と書いておりまして、B4判の遺言書二枚のものを四時間もかけてやっと清書した。つまり、自筆証書遺言でもそれだけかかる。
 ところが、それだけかかってもまだできない人というのもやはりいるわけなんです。そういう場合でも、公正証書遺言の場合は公証人が文章をつくってくださいますので、それで、文章が書けない人の場合でも、自筆証書遺言はできませんけれども、公正証書遺言はつくってもらえる。まあ、口授と読み聞かせで遺言をつくってもらえるという制度はもともとは文章を読めない人のためにあったのだと思うんですけれども、聴覚障害者のためにもこういうふうにして利用価値があるものなんです。
 私としては、そういうふうにして大体聴覚障害者の半分には対応できていますが、残りの半分といいますかそのぐらいの人には、文章を書いてもらえないということからどうしようも手の打ちようがない、そういう現状なんでございます。ですから、今度の法改正はぜひともお願いしたいわけなんです。
 よろしくお願いいたします。
○漆原委員 以上で終わります。
 四人の参考人の方、本当にありがとうございました。
○橘委員長代理 達増拓也君。
○達増委員 自由党達増拓也でございます。
 まず、山田参考人に質問させていただきます。
 今回の民法改正、この制度改正につきまして、聴覚障害の皆様、また言語機能障害の方々、どのような議論をされているのか。期待ですとか、あるいは不安ですとか、いろいろあるかと思いますけれども、山田参考人お耳にしたところあれば伺いたいと思います。
○山田参考人 山田でございます。
 実のことを申しますと、この問題は、野沢参考人公正証書遺言書の作成を拒絶された、そういう問題が起こったときに、聴覚障害者たちの間では、遺言なんてつくらないでもいいのじゃないかなどという、理解の足りない人もかなりいたことは事実でございます。
 しかし、それからだんだんと話をしてみまして、なるほど、そうか、遺言というのはそういうふうに有効性の高いものなのか、そして、公正証書遺言というのはその中でも特にすぐれたものなのか、そのあたりがわかってくるような人がどんどんとふえてきました。今は期待している人が多いと思います。
 私のもとにも、法律が改正されまして公正証書遺言の制度が利用できるようになったら利用したいという聴覚障害者は何人かいます。また、野沢参考人のもとにも何人かいると聞いております。そのように、期待をもって迎えられていると思います。
 一方では、遺言の制度を利用したいけれども、どのようにしていいのかわからない。これは、正直言いまして、漠然たる不安。遺言というものは自分の死後に財産関係、身分関係をはっきりさせるために残すものということはわかっていると思うのですけれども、それ以上に、どういう手続でやったらいいのかわからないという不安を持っている人が聾唖者の中にはかなりいると思うのですね。そういう人たちには、いろいろな場面をとらえて、例えば講演会とか、そういったところを利用しまして、遺言というのはこういうものでこんなふうにつくります、そういうことを説明しております。
 ただ、正直言いまして、私の努力もまだまだ十分ではないと思いますので、これからもいろいろな機会をとらえて、そのような不安を解消していくために努力していきたいと思っております。
 よろしいでしょうか。
○達増委員 はい、ありがとうございました。
 次に、野沢参考人に質問させていただきます。
 この機会ですから、今回の民法改正を離れまして、一般的に法律関係や経済活動などで不便を感じる点、聴覚・言語機能障害者の立場から法律や経済関係で不便を感じる点について、少なくないかとは思うのですけれども、特にこれはと思うものあれば挙げていただきたいのです。
○野沢参考人(手話通訳) 野沢でございます。
 私は、昭和四十年大学を卒業しましてから、ずっとソーシャルワーカーとして、聞こえない人たちの相談にかかわってまいりました。
 今、やはり聞こえる人たちと同じように、年配の聾唖者がリストラその他に遭っております。
 法律的な不備といいますと、例えば、先生も御存じのように、障害者の場合、障害者の雇用の促進に関する法律がございます。それは、一・八%雇えという義務ですけれども、ほとんどの企業は軽い障害者、若い障害者を雇って、四十代、五十代、職を失った後の人たちへの保障、職業訓練も含めて保障する体制が何もございません。
 ですから、仕事を探すのに、雇用保険が切れてもなお見つからない、三年も四年も仕事を探し続ける、そういう聞こえない人が、私が相談を受けているだけでも今八百人ほどおります。
 これは、職業上の問題、景気の問題も関係あるかと思いますが、法律制度的な問題で申し上げますと、今回の遺言とも関係ありますけれども、聞こえない人の、昭和五十年ごろから少しずつ年金制度の確立ですとか、法律的には雇用促進に関する法律等ができて、いい面もありますけれども、そういうのができる前からさまざまな問題がございます。
 例えば、今までは、親が死んだ場合に、兄弟が財産を分けるようになってしまうとか、遺言について情報がないから兄弟の言うままにそれを受けてしまう、自分の持ち分が本当に兄弟と同じなのかわからない。また、それを強く主張すると、聞こえないくせに、兄弟の世話になっているのに、これからも世話になるのに何を言うのかというふうに言われて黙らざるを得ない。
 また、先ほど佐藤参考人のお話の中にもございましたが、聾唖者の場合、特に五十、六十歳以上の高齢者は、昔の経済状況、社会状況も悪いので、結婚しても子供を産まない、あるいは産めなかったという聾唖者が大勢おられます。結婚して、夫婦でやっと頑張って自分の土地へ小さな家をつくった。どちらかが死んだら、今の法律では、例えば御主人の名義だとすれば、奥さんは四分の三だけ、四分の一は亡くなった御主人の兄弟の方に相続されてしまう。それを強く主張されると、聾唖者は非常に弱いですね。それに対して抗弁もできない。そういう現実がいつもいつも私の相談の中にはございます。
 今回の公正証書、小林さんの手話で認められるということは非常に大きな進歩だと考えております。山田参考人も、筆談もなかなか難しい聾唖者もいるということをおっしゃられましたが、私も、そのとおりです。
 ただ、そういう聞こえない方も、手話では非常に高いレベルでの会話が可能になってくるということです。学校に行っていない未就学の聾唖者にも何人も手話を教えておりますけれども、手話でやりますと、私どもの言語と全く同じように高いレベルで話をする。それは学問的にどうなのかというふうに言われると、私、ちょっと説明が長くなってしまいますけれども、そういった面がございます。
    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
○達増委員 今挙げられましたリストラや雇用の問題、また年金の問題というのは、これはもう全国民共通の喫緊の課題、急がれる課題でありますし、また、相続の問題は、これも健常者、障害者超えて深刻な問題となってきている。
 ただ、そういう共通の問題について、独自の角度からの特有の問題があるということでありまして、健常者側からすれば、同じテーマについて違った特有の課題で問題を感じている、そういうあたりをきちんとお互い理解することで、立場を超えた連携ができていくんだなということを感じました。
 もう一つ野沢参考人に伺いたいと思いますが、手話、手話通訳制度に対する国の支援について、今までの支援について先ほど述べられましたけれども、それでは、今後の支援のあり方について期待するところを述べていただきたいと思います。
○野沢参考人(手話通訳) 野沢でございます。
 先ほどもちょっとお話し申し上げましたけれども、厚生省が手話通訳の制度をつくり、本腰を入れるように現在なってきています。
 その理由の一つといたしましては、来年の四月から介護保険制度がスタートいたしますが、介護支援専門員、手話通訳士もそこに入れるか、聾唖者問題に詳しい人を入れるかということを制度として認める、手話通訳者をもっとふやす必要があると考えております。聴覚障害者の情報提供施設で働く指導員をふやす必要があります。そうでないと対応ができない。
 そういう意味で、厚生省も力を入れて取り組むように現在なってきております。また郵政省も、字幕放送、それから難聴老人がどんどんふえてきておりますので、そういったことにも力を入れてやっていただくようになっております。労働省の方でも、トライアル雇用のような制度、これは主に知的障害者を対象としておりますけれども、そういう細かな対応をやるようになっていただいております。そういう面で、我々も国に対して大いに期待しているところです。
○達増委員 最近パソコンが著しく技術的に発達しております。人間同士のコミュニケーションということで、手話通訳に取ってかわることのできないところもあるとは思いますけれども、パソコンが発達して、特に最近目立って発達しているのが、一つは音声認識ソフトの発達。一万円台でかなり性能のいい、このくらいのペースで話していることをどんどん字にしてくれるソフトが既に商品化されております。これを活用すれば、テレビの字幕ですとか、あるいは国会審議のような公的な審議をどんどん字にしていくことが可能になると思います。
 もう一つ極めて発達しているのが、立体アニメーションをつくる技術でありまして、英会話の教材をパソコンを使って行う例がどんどん見られますけれども、手話についても、手話映像をパソコン上に出すことができるようになる。
 こうしたパソコンの発達について期待されるところ、また何か問題として感じるところがあれば、これも野沢参考人に質問させていただきたいと思います。
○野沢参考人(手話通訳) これは御存じのように携帯文字電話です。Jフォンと申します。文字を入力できますので、我々聴覚障害者は非常に便利になってまいりました。パソコンが発達普及いたしましたので、Eメール、インターネット、そういったものを聞こえない者も活用しております。
 ただ、手話通訳にかえられるかといいますと非常に難しい問題がございます。何が難しいかというふうにいいますと、一つは感情という問題です。例えで申し上げますと、失礼ですが、国会答弁に字幕がついても、先生方、感情を余りお出しにならない。字幕を見ていて、それでわかるわけですが、ただ、先生方の感情部分がわからないわけです。手話通訳の場合には感情を込めて、手のほかに表情なども含めて表現をしています。どういった気持ちで話しているかといったことがわかってきます。パソコン、インターネット、Eメール、文字、あるいはテレビで手話をやっても、本物と同じようになるかと言われますと、やはり違うというのが正しい答えになるんじゃないかと思います。
○達増委員 大変参考になりました。時間の関係で一部の参考人にしか質問できませんことを、失礼をお許しいただきたいと思います。
 以上で私の質問を終わります。
○杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。四人の参考人の皆さんには大変すばらしい御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。四人の皆さんがそれぞれの立場から、聴覚障害者の皆さんあるいは言語障害者の皆さん方が公正証書遺言をつくることができるというこの民法の改正のために本当に長い間、並々ならない努力をされてきたことに対して、私は本当に心からの敬意を申し上げたいと思います。一日も早くこの法改正が成立をし、そして具体的に障害者の皆さんが公正証書遺言をつくれる、それが実現するということが非常に大事だというふうに思いますので、そんな立場から幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
 最初に、私は、山田参考人が法学セミナーの昨年の六月号にお書きになった論文、「公正証書遺言と聴覚障害者差別」と題する大変すばらしい論文を読ませていただきました。本当に感銘をいたしました。その最後のところで、山田参考人はこのようなことを言っています。「考えていただきたいのは、民法のような私法の一般法において、差別規定が差別規定と実感されないまま百年も放置されていたということである。私が調べた範囲では学者の手になる相続法の基本書や注釈書で聴覚障害者が公正証書遺言を作成してもらえないことの不当性を指摘したものはなかった。むしろ、現在の取扱いはおかしいと気付いたのは当の公証人であった。」、こういう文章がございます。
 民法が施行されてからちょうど百年。しかも、基本的人権の尊重を最大の柱の一つとしてつくられた新しい憲法施行から五十二年たって、ようやくにしてこのような民法改正ができる。本当に私は、遅過ぎた、この間国会は何をやっていたんだ、法務委員会は何をやっていたんだと厳しい指摘をされたんではないか、そんな気持ちで先ほど来からの皆さん方の公述をお聞きしておりました。
 そこで、山田参考人にお聞きしたいんですが、さきの論文の最後に、「民法十一条の改正は法律における聴覚障害者の実質的平等を達成するための一里を印したマイルストーンであった。」中略しますが、「完全な平等を達成するための行く手は険しい。重要なものでも次のような差別的な取扱いとその根拠条文がある。」と記して、例えば、公職選挙法百五十条一項選挙権にかかわる問題、道路交通法八十八条一項二号免許取得の問題、著作権法二十条一項、三つ挙げられておるんです。
 我々がなかなか勉強不足で、聴覚障害者の皆さん、当然のことながらの権利が現実上制限されている、制約されていることがたくさんおありかと思うんです。余り時間もございませんけれども、まず山田参考人から、今回民法改正が一歩前進でありますが、こういう点残されている問題があるんだということをお知らせいただければ、ここでお述べいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○山田参考人 山田でございます。私の書いたものに興味を持っていただきまして、まことにありがとうございます。
 さて、ただいま御指摘いただきました公職選挙法とか著作権法の問題ですけれども、これも今回の民法の問題と同じように、法律上は聴覚障害者を差別しているとは言えない問題ですけれども、解釈によって結局聴覚障害者が排除されているという問題でございます。
 それについて、これは私個人の見解ですけれども、例えば著作権法の場合には、まだまだ著作権者の権利が確保されていない、確立されていないという面があるのではないかと思います。私の考えといたしましては、いわゆる公共の福祉といいますか、権利に内在する制約といいますか、そういうものから、著作権者の権利はある程度制限される。それで、聴覚障害者のために著作権者の同一性保持権が少しは後退して、字幕とか手話をつけることも当然であると考えられるような世の中に持っていくことが大事ではないかと思います。現実に外国では、そういうことが十分になされている国もかなりあるようでございます。
 ですから、日本人の法意識が発達して、そのように、聴覚障害者のためには自分たちの権利が若干制限されることがあってもそれは当たり前のことであるという法意識、そういうふうな法意識の世界に変わっていくように私どもは努力をすべきではないかと考えております。またその場合、どうしても解釈だけでは限界がある場合には、今回のように法律改正ということを先生方にお願いしたい、そういう希望も持っております。
 また、そのほかにも実は聴覚障害者の権利を排除するような条項、例えばですけれども、ただいま御指摘いただきました道路交通法八十八条は、耳の聞こえない者には車の運転免許を与えない、そういうような規定がございます。これも解釈によって、ある程度の聴力が残存している人は、会話などはできなくても、音が聞こえることで免許をもらうことができるようになっている、現実にこの私も免許はいただいております。ただ、野沢さんのように完全に聴力を失った人には今でも免許が与えられていない、そういう状態にあります。また、薬剤師に対してはやはり免許を与えないということになっておりまして、現実に、薬剤師の国家試験には合格しましたが免許は与えられていない、そういう人がいるわけなんです。そういうのは解釈ではちょっと難しいかと思いますから、やはり法律を改正していただきたい。これは立法の方でお願いしなければならないことですので、ぜひお願いしたいと思うのであります。
 それに関連いたしまして、今回、民法とともに、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案というのも提出されていると思いますけれども、この中には、いわゆる公催仲裁法、ここの中に、聴覚障害者は仲裁人の資格を制限されるとか、また検察審査会法、検察審査員から聴覚障害者を排除するというような条項がございますが、これらもあわせて改正されるようになると思うのですね。私どもとしてはこれは大変ありがたいことで、直接的には民法改正だけを目的としておりましたけれども、あわせて二つも、差別条項と言うんですけれども、それを改正していただけるようになったことは大変うれしく存じます。
 ただ、聴覚障害者に関する欠格条項という差別条項のある法律だけでも、数え方にもよるんですけれども、大体三十ぐらいあるわけなんです。これらのほとんどは、聴覚障害者はコミュニケーションが十分にできないから資格を与えられないんじゃないかというような、そういった漠然とした誤解に基づいて立法されているんじゃないかと思われるものですから、これらについても早急な改正をお願いしたいと思うのであります。
 どうも少し外れましたが、ぜひよろしくお願いいたします。
○木島委員 ありがとうございました。国会としても今後とも努力を続けていかなければならないと私は思います。
 具体的に、この法律が成立して使いやすさが求められていると思います。運用がスムーズになされることが大事だと思います。そんな立場から幾つかお聞きしたいと思うんです。
 私は、聴覚障害者の皆さんが公正証書をつくるために公証人役場に行くのは一番最後だと思うんです。その前提としては、みずからの権利を確認するために、法務局へも行って不動産などの具体的な特定もきっちりしなくちゃいかぬだろうし、どういう遺言をつくったらいいか、場合によっては法律相談ですね、弁護士事務所も行かなければならない。それでようやく腹を固めて、その最後に行くのが公証人役場だろうと思うんですね。
 そうすると、そこに到達するためのさまざまな障害等もあろうかと思うんです。法務局関係あるいは法律事務所、また、具体的に公証人役場に行く、さまざまどんな問題があるだろうかという点をひとつお聞かせ願いたいと思うんですが、これはぜひ野沢参考人、考えられる幾つかで結構でありますが、こんな点は改善してもらいたいということが、公正証書をつくるその問題についてありましたら、率直に語っていただければ幸いであります。
○野沢参考人(手話通訳) 野沢でございます。
 私は、聞こえない人の専門のソーシャルワーカーをやっております。私は、国の制度のソーシャルワーカーとは違いまして、東京都の専門職としてのソーシャルワーカーですが、私と同じように地域で聞こえない人の相談等にかかわっている、名称はさまざまです、聾唖者相談員という言い方をしたり、情報提供施設の職員であったり、それぞれの地方自治体独自の聾唖者相談員など、全国で百八十人ぐらいおります。全日本ろうあ連盟と一緒に全国的な組織をつくっております。
 しかし、ほとんどが、私と違いまして、週に三日、四日の非常勤、あるいは週に五日であっても嘱託。給料も、よくて月給二十万円、悪い人は給料が月額六万円、七万円で働いているというのが現状です。そういうところで聴覚障害者の相談を受けています。福祉事務所に手話通訳が置かれているところもございますが、手話通訳つきで相談を受けられるというところもございます。
 また、本当はだめというのか、よくないことではありますが、地域によっては、そういう情報提供施設がございません。情報提供施設は、皆様も御存じのように、現在、都道府県、義務設置ということになっておりますが、まだ全国で二十カ所できているだけです。ですから、聾唖者が、そういう場所がないというときにはどこへ行くかというと、手話通訳派遣協会に相談に行くという形になります。そこではコミュニケーションはできます。ですけれども、通訳というのは、そういう相談を兼ねるということになってくると、逆に通訳がやりにくくなってくるという立場もございます。だからといって、来られた場合に帰れとは言えない、そういう矛盾を抱えながら働いているということもございます。
 そういうようなことが幾つかございます。けれども、一番いいのは、国がつくることを身体障害者福祉法で義務づけている情報提供施設を、できるだけ早く全国四十七都道府県、指定都市も含めてつくっていくことだと思っています。
 ただ、この情報提供施設の職員定員がたった五名です。ビデオ制作と、所長ですとかそういった人たちも合わせてたった五人です。その中で相談員の担当者はたった一人。とても全部の、県の中でたった一人の相談員、とてもできません。今、全国の相談員が受けている数が、一年間大体二千件の相談を受けています。一人で三件、四件担当しているというようなことがあります。とても、体力に自信がない限り、仕事を続けることができないという状況にあります。
○木島委員 ありがとうございました。これは法務委員会だけの問題ではありません。厚生委員会その他、国会全体としての問題だと思いますので、努力をしていきたいと思います。
 時間も迫っておるのですが、具体的に、公証人役場に公正証書遺言作成依頼があった、しかしなかなか適当な手話通訳人が見つからない、遠方から来てもらわなければいけない、費用の問題などはやはり大きな問題としてこれから解決しなくちゃいかぬ。国庫補助制度などもあるのでしょうか、ないのでしょうか。つくらなきゃいかぬと思うのですが、佐藤先生に、最後に、そういう費用の問題はどうお考えか、あるいは国に対する要望等ありましたら、お聞かせいただいて終わりにしたいと思うのですが、よろしくお願いします。
○佐藤参考人 お答えをいたします。
 現在の公証人法の規定は、手話通訳に限らず、通訳人一般について、通訳人は嘱託人、つまり当事者本人がこれを選定することを要する、こういう規定になっております。
 こういうことなものですから、通訳の方は公証役場においでになる御本人が選んで同行していただくというのが法律の建前でございます。したがいまして、その通訳を必要となさる方と通訳をされる方とがいかなる報酬契約をするかというようなことも、いわばそういう意味では当事者の関係に任せているというのが法律の建前でございまして、公証役場の方から通訳人にその報酬を支払うというようなことは法律の予想している建前ではないわけでございます。例えば、裁判所で通訳などを使った場合には裁判所から通訳の報酬を支給するようになっていると思いますけれども、そういうのとは仕組みが違っているわけでございます。
 ただ、これからの問題としまして、それではそういうことで、適当な通訳人もいないというような場合に、それは全部御本人の問題だということで公証役場が対応できるかということは、我々としても、それはとてもそんなことをしているときではなかろうと理解しておりますので、まず第一番には、適当な通訳人がいない場合には、先ほど申しましたけれども、一覧表などを参考にいたしまして、信用できるところに御紹介をする。
 そうなると、その次には、当然その通訳の報酬はどうなるのかという御質問が御本人の方から公証役場の方へ参るだろうと思いますが、これもそういう意味で公証役場一存でどうするというようなこともまいりませんので、この前も、実は先ほどもちょっと触れました通訳者団体との内々の意見交換の機会でも、やはり広い意味の弱者援護というような発想もあるわけですから、通訳者団体でも、そういうものを含めて、公証役場で通訳をする場合に、一体一つの基準としてどういう額を設定するか、公正証書遺言を作成するのに非常にそれが手かせ足かせになるような高額な報酬とか、そういうことがないようにひとつ検討していただきたい。団体などでも検討していただくということで、現在のところは、それ以上特定の具体的な方策が打ち出せているわけではございませんけれども、方向としてはそういう方向で検討しているところでございます。
○木島委員 ありがとうございます。
 時間の関係で、久貴先生には質問できませんでした。お許しいただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
 重ねて、四人の皆さん方のこれまでの御努力に大変感謝を申し上げ、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○杉浦委員長 保坂展人君。
○保坂委員 社会民主党保坂展人です。
 まず、この手話通訳の問題に入る前に、佐藤参考人に伺いたいのですが、午前中の参考人質疑の中で、私の方で精神障害の方と成年後見制度についてちょっと質疑を交わしたのですが、今回の九百七十三条で、いわゆる成年被後見人という、今までは禁治産者だったわけですが、事理弁識能力をいっとき回復した場合に、医師二人の立ち会いのもとにということで遺言ができるという部分がございますけれども、これは過去こういった実例はあったのでしょうか。簡単で結構です。
○佐藤参考人 正確な調査をしたことはございませんけれども、私が先輩から聞いたり、あるいは私の経験したところでは、まず九九%ないであろうと思っております。
○保坂委員 わかりました。
 それでは、続けてやはり佐藤参考人に伺いたいのですが、今回大変抜本的に法改正が進んだということだと思うのですけれども、例えば突然の事故などで、手話は使えない、そしてまた文字を書くことも不可能であるという場合に、例えば文字盤だとか、あるいはキーボードを打つとすぐ音声になる機械などが出ていると思うのですが、そういうものは実務の世界で今回の法改正によってどうなっていくか、そのあたりのことをちょっと聞かせていただきたいと思うのです。
○佐藤参考人 実は、先日の内々の勉強会の席でも、今委員のおっしゃるような、OA機器の進歩に伴ってそういうことがあり得るがどうだろうかという議論をしたわけでございます。
 これは今回の法律の解釈の問題になるわけでございますが、意見としては、それもいいではないかという意見と、やはり今回の改正は広い意味でランゲージになるようなもの、ボディーランゲージでもいいけれどもランゲージと理解できるようなものでなければぐあい悪いのではないかというようなことで、そこまで踏み切るにはちょっと問題があるのではないかという意見が出ておりまして、公証人会として今特定の見解を決めるというところまでには至っておりません。もう少しいろいろ勉強させていただきたいと思っております。
○保坂委員 それでは、今の点について久貴参考人に伺いたいのですが、確かに、高齢者で病弱の場合に、言葉が話せなくなる、そしてまた書いてもらおうにもちょっとペンを握る力はない、しかし意識ははっきりしていて、今言ったような機器を使用して意思表示をするということは可能だというケースは非常にこれからふえてくると思うのですね。今の点について、御見解をお願いします。
○久貴参考人 お答えいたします。
 基本的に、少し保守的かもわかりませんけれども、民法自体が規定しております従来の自筆証書遺言とか、特に今おっしゃったのは自筆証書遺言になるかと思いますが、自分の手で字を書く。もちろん、手でなくても、口でもいい、足でもいいというところまでは私たちは解釈として出しております。ですけれども、やはり全文を自書というふうに明文で規定がありますので、余り緩くは解釈しないようにというか、そこが保守的と見るか、その枠を広げるかというのは解釈にもよるかわかりませんが、少なくとも裁判例は比較的文言に忠実な解釈をしてきた。
 ところが、先ほどの、省略いたしましたけれども、自筆証書遺言で、最高裁の六十二年十月八日、先生御指摘になった、まさに手が震えてというケースであったわけでありまして、これは添え手と私たちは言うておりますけれども、手が震えるので手を添えて書かせた、これが有効かどうか。
 ところで、実は私これも意見書を書かせていただいて、震えている場合、支えるのは構わないと私は思っておりますし、最高裁もそういう考えなんです。ただ、基本的には自分の意思でこういう字を書くということははっきり意識して、ただ、うまく書こうとするのだけれども、特に一番わかりやすく言いますのは、ここで行を変えようと思うのに、手が震えてうまく行変えができない。そういうときに、手を添えてあげて行変えを手伝ってあげるとか、そういうふうな、どちらかといいますと形式的という言い方もちょっとふさわしくないかわかりませんが、遺言者自身が書いているその行動を制約して、あえて内容を変えていくような、それは決してここで言うところの添え手ではないだろう。全くの補助的なというものであれば、他人さんの、遺言者以外の人の手が加わったとしても、重ねて書いたようなものであったとしても、それを無効ということはないんじゃないかと私はずっと思っておりましたし、最高裁もそういう考えをとりました。
○保坂委員 では、山田参考人にお願いしたいのですが、私なども文章はほとんどキーボードで書いていまして、メモとかそれ以外はほとんど長い文章はワープロなりコンピューターで書く習慣になっているわけなのですが、手話が使えなくて筆が握れないという場合にどうなのか。これは本当にケースとしては少ないのかもしれないけれども、高齢化時代ということに目を移すとやはりここも考えなければいけないように思うのですが、御意見をお願いします。
○山田参考人 山田でございます。
 ただいまの御指摘は、まことにおっしゃるとおり、今後は非常に重要な問題になっていくのかと思います。
 それに関連しまして、今回の民法改正の問題についても、法務省の皆さんといろいろと協議をしてまいったわけですけれども、今までの話にもありましたが、オフィスオートメーションの利用ということはどうか、そういう問題につきましては、これは私の記憶ですから記憶違いがありましたら御容赦願いたいのですけれども、まだまだ機械に対する信頼性が十分ではないのではないのか。そういう問題が指摘されたと思いまして、なかなかそこのところまでは今のところはいっていないというようなお話があったと思います。
 なるほど、機械に対してまだまだ信用性が十分ではないというのでは、それは仕方がないという気がいたしますけれども、ただ私としては、ただいまのお話に直接的な回答になるのかわかりませんけれども、私自身の経験で、これは公正証書遺言の場合でしたけれども、本人に最後に署名させたのですけれども、物すごく読めないような字だったのですけれども、一応字の形をなしているということで、本人の署名あり、そういうふうにやっていただいた、そういうようなのもありました。
 もっとも、そういう場合、署名だけの問題でいいますと、公証人に書いていただく、代筆していただくということができるのですから、そっちの方で解決することもできるわけですけれども、実際に、自筆証書遺言とかそういうのができないような人たちに対して、これは人の最終的な意思をどう見きわめるかという問題ですから、厳格性にとらわれず、できるだけ柔軟に解釈して、その人の最終的な意思を尊重する方向でやる。ただ、それでもどうしても対応できないような問題につきましては、やはり立法及び技術の進歩に任せるしかないのではないか、そういうふうに考えております。
 私としても、今回の民法改正でとどまるということではなしに、どんどん新しい問題に対してはいろいろと考えていかなくてはならない。また、その場合には先生方のお力をおかりすることになる、そういうように考えておりますので、その節はよろしくお願いいたしたいのであります。よろしいでしょうか。
○保坂委員 それでは、なるべく今回の改正をきっかけに、意思を表現するという、そこがきちっと信頼できれば幅広く認められていくように、私個人としては努力をしていきたいと思います。
 最後に、野沢参考人に伺いたいと思います。
 お配りいただいた手話通訳の派遣状況を拝見いたしますと、東京都議会の中継放送あるいは傍聴人に対する手話通訳ということで既に実績があるということなのですが、これによって都議会の審議内容を正確に早く把握をして、都議会においてはこれがあるわけでございます。これは大変国会の側の努力として恥ずかしい話なのですけれども、本日の大変関心の高いこのやりとりも、例えば傍聴の方に、あるいは国会テレビというのがありますけれども、そこで手話で伝えるという努力はまだ欠けているわけなんですね。この国会の審議内容を手話で伝えるということについて、恐らく御要望はあると思うのですけれども、改めてそこの御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○野沢参考人(手話通訳) 野沢でございます。
 都議会に通訳がつくようになりましたのは、そんな長い昔ではございません。二、三年前からではなかったかと思います。現在、議会に正式な手話通訳を雇うというか認めて置いているのが、岐阜県議会だけだと思います、多分。
 私たちもきょうの午前中、成年後見法についてインターネットに出ていたというふうに伺っています。ただ、手話通訳がないので、そばでその画面を通じてまた通訳をやってもらわないとわからないという状態でした。我々も一般国民と同じように情報はすべて欲しいと思います。情報公開法というようなものはできておりますけれども、それは役所の資料の関係だけですから、手話をつけるというようなことにはなっていないわけです。ぜひ国会でも取り組んでいただきたいと思います。
 私は時々、アメリカ、スウェーデンなどに勉強に行きますけれども、そういったところでは手話通訳が必ずつくという状況にあります。当たり前だというふうに思いますけれども。日本も手話通訳制度が徐々に充実していくと思います。
 公正証書遺言のようなもの、我々もやっと皆さんと同じように利用できるようになりましたので、国会のこういった審議等についても、ぜひ通訳ですとか字幕をつけていただいて、全国の方がわざわざここに傍聴に来なくてもわかるようにつくっていただきたいということを強くお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。
○保坂委員 今の点は、今回の法改正の本当に前提となる点だと思いますので、これは恐らく与野党問わず、党派を超えて、なるべく早くそういった努力ができるように力を尽くしていくことが必要だということを改めて思いました。きょうは、大変貴重な意見を四人の参考人の皆さんにいただきまして、ありがとうございました。
 以上、終わります。
○杉浦委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 各参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。