精神医療に関する条文・審議(その113)

前回(id:kokekokko:20051128)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の成年後見制度制定・精神保健福祉法改正についてみてみます。

第145回衆議院 法務委員会会議録第21号(平成11年7月2日)
【前回のつづき】
○木島委員 今回の民法改正で、聴覚障害者の皆さん、言語障害者の皆さんが公正証書遺言をすることができるようになりました。大変すばらしい改正だと思います。これは、本当に長年にわたる関係者の皆さんの努力が報われたと思います。
 六月十五日の当委員会において参考人質問をやりまして、そのときに、例えば、大変すばらしい制度なんだが、聴覚障害者、言語障害者の身近に通訳人がいないような場合、特に遺言ですから、法律的な非常に難しいことを通訳してもらわなくちゃいかぬわけで、通訳人が遠方から来ていただくような場合、やはり費用負担の問題があるんだということも指摘をされました。そんなための補助制度が本当に欲しいなと思っているわけでありますが、現状と見通し、どんな状況なのか。これは厚生省、御答弁いただきたい。
○今田説明員 御指摘のように、聴覚障害者あるいは言語障害者が日常生活を営む上で、手話などのコミュニケーションの手段を確保することは大変重要であると考えております。このために、現在、都道府県それから指定都市等におきまして、障害者の社会参加を促進する事業といたしまして、従来から、手話が必要な障害者に対する手話通訳者あるいは手話奉仕員の派遣事業を行っております。今回、公正証書遺言をされる場合に通訳人の派遣が行われるということになるわけでありますが、この場合におきましても、この制度の対象として取り組まれるものと考えております。
 なお、ちなみにこの派遣事業につきましては、平成十年度、都道府県、指定都市一カ所当たり、平均で年間約一千三百万円の予算で運営している、このように承知をいたしております。
○木島委員 これはちょっと予算が少な過ぎてとても話にならぬと思いますので、ぜひ来年度予算以降、こういうせっかくの民法改正が行われるわけですから、抜本的に手話通訳の皆さんへの財政援助を国としてもやっていただきたい。その結果が、この法律が生きて、多くの言語障害者、聴覚障害者の皆さんが晴れて、安心して公正証書をつくることができるようになるんじゃないかと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 厚生省さんはお帰りになって結構であります。
 時間も大分なくなりましたが、最後に、成年後見人と被成年後見人間の利益相反問題についてお聞きしたいと思うんです。
 同僚委員からたび重なる御質問もありましたのではしょりますが、今回の改正で配偶者法定後見人制度が廃止されます。法人を後見人とすることができるようになります。私は、本当に一番心配は、被後見人が悪徳後見人によってその財産を食い物にされはしないかなということであります。そこを歯どめをかけるのが本当に大事だということを前回も質問いたしました。
 そこで、改めて利益相反問題についてお聞きしたいと思うんです。
 前回質問したことははしょりまして、利益相反する法人は後見人にしてはならぬ、後見人にはなれないということを法律にしっかり書き込むべきだということを東京都を初め日弁連なども要求していたんですが、残念ながらそれは受け入れてもらえませんでした。
 しかし、この前の法務省の答弁によりますと、大丈夫なんだ、裁判所は必要があるときは後見監督人を選任できるんだ、職権で後見監督人も選任できるんだ、後見監督人を裁判所が選任する手続があるんだから、仮に後見人がふらちなことを考えても抑えることができるんだという御答弁でございました。それで、細川民事局長は、必要があるときというのはどういうときだという私の質問に対していろいろ答弁もしているんですが、それは、最高裁判所が家事審判規則の改正を今やっているようだけれども、そこできちっと、どういう場合が必要か家事審判規則で書いてくれるんじゃないか、そういうふうに受け取られる答弁をしているんです。手続等という面より実体法の解釈という面がございますから、規則には載りにくい問題なのかなという感じがしておりますが、少なくとも最高裁の結論が出ておりませんという答弁なんです。
 そこで、最高裁に聞きます。
 私は本当に、後見監督人が選任される、必要となるときというこの法律の運用の問題で、しっかり立派な家事審判規則を最高裁につくってもらいたいと思っているんですが、どうですか、今の現状。
○安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。
 ただいま御指摘の点については、後見監督人をいかなる場合に選任するか、まさに実体要件の問題になろうかと思うわけでございます。
 その運用に当たりましては、個々の事案を見ながら、その後見人の後見事務の適正を図るためにどういう場合必要かをよく見きわめていきたいと思うわけでございますが、この要件を家事審判規則に書くことは、実体法との関係では難しい問題があろうかと考えておる次第でございます。
○木島委員 では法務省の細川民事局長、最高裁はああいう態度ですよ、実体法上の解釈問題だから家事審判規則では書き込めないと。それなら解釈がやはり大事なんで、改めて答弁してください。必要とするときというのはどういう場合を想定しているか全部挙げてください。
○細川政府委員 前回申し上げましたが、家事審判規則は手続的な問題ですから、実体要件の解釈については、それは規則を書くのは難しいんではなかろうかというふうに私は申し上げたつもりでございます。
 必要のあるときというのは、まさに必要のあるときでございまして、典型的な例を申し上げますと、例えば、被後見人御本人が相当の財産がある、あるいは相当の取引をする、多額の金銭を授受しなければならない、そういうような場合にはこれは権限濫用の誘惑があるわけですから、そういう場合には後見監督人を付さなければならない、それが一つ典型的な例だと考えております。
○木島委員 それでは、もう時間がありませんからずばりと聞きますが、だれが後見人に選任されるかというのはやはり決定的だと思うんですね。
 そこで、利害関係の有無については判断材料の一つなんでしょうが、端的に聞きます。
 特別養護老人ホームを経営する社会福祉法人があった、そこに入所しているお年寄りが痴呆症になった、そういう人が被後見人になる。その場合に、入所している特別養護老人ホームを経営する社会福祉法人と痴呆性老人になってしまった被後見人、入所者は利害関係があるということでいいでしょうか。そして、そういうような社会福祉法人を後見人に選任できるんでしょうかできないんでしょうか、端的に答えてください。
○細川政府委員 ただいまの設例でございますと、入所契約を結んでおるわけですから、利害関係があります。
 二番目の御質問で、適当かどうかということですが、後見人の場合には包括的な代理権がございますので、そういう利害関係のある人を後見人に選任することは基本的には不適当であるというふうに考えております。ただ、後見人を複数任命して、片っ方の人は金銭関係を扱わないということであれば、その扱わない方にだけ任命する、あるいは、補助人でごく一部の代理権があるというならば可能性はないことはないというようなことを考えております。
○木島委員 時間ですから終わります。実は、私は、任意後見の場合の後見人と後見監督人、そして被任意後見人、そしてそれを監督している裁判所、この関係は非常に大事だと思ってたくさん質問要項を準備してきたんですが、やめます。
 ただ、先ほど同僚委員からも質問されましたが、この任意後見制度は、裁判所は間接監督なんですよ。後見人を監督できないんです。後見監督人を通じてのみ後見人を監督するという間接監督なんですね。私は、この次の見直しのときは、ぜひともこれは、せめて裁判所は後見人を直接監督するということをやらないと、一つだけ欠点を言いますと、後見人と後見監督人がぐるになっちゃったとき、後見監督人と後見人が共謀したときには全く歯どめがないんですよ。どうしようもないということになるので、次の見直しのとき、ぜひ間接監督から直接監督へと転換をしていただきたいと希望するんですが、法務大臣の御所見を伺って終わりにしたいと思うんです。
    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
○陣内国務大臣 任意後見契約というのはあくまでも私的自治に基づく任意契約でございます。いわゆる法定後見とは制度の枠組みが異なるわけでございます。したがいまして、国家機関である家庭裁判所が直接的に任意後見人を監督するということは、私的自治の原則との関係で問題があるのではないかと考えます。
○木島委員 終わります。
○杉浦委員長 次に、保坂展人君。
○保坂委員 社会民主党保坂展人です。
 私が最後の質問者になりましたので、まず、全体を通した極めて素朴なところからお聞きをしていきたいと思います。
 これまでの長らくにわたった禁治産者制度あるいは準禁治産というものが今回大幅に変わる、そしてまた戸籍などに記載もされなくなるということで、かなり画期的な改正ということで議論をしてきております。
 しかし一方で、これまでのイメージ、印象は多くの人々の心の中あるいは印象の中に残っているところでありまして、こういうふうに変わりましたよと言っても、名前が変わっただけじゃないんですか、やはり自分がまさに人間として大きく何かアイデンティティーを失うようでこれは使いたくないとか、あるいは自分の能力を疑われる、あるいは世間から何か排除されたように思えるというようなマイナスイメージを持つ方もいらっしゃるんじゃないかというところで、今回の法改正について、その趣旨、特に使われる人みずから望んでという部分もあるわけですから、法務省の方でどのようにこの立法趣旨をPRしようとしているのか、その計画や手法あるいはその要点を伺いたいと思います。
○細川政府委員 今回の改正案は、障害のある方でも社会の中で健常者と一緒に生活していくというノーマライゼーションの考え方に基づいてなされているわけで、したがって、従来のマイナスイメージを払拭するということが非常に大事だというふうなことは御指摘のとおりだと思います。
 私どもといたしましても、この新しい制度の趣旨について広く国民に理解していただかねばならないと思っておりまして、そこで、一般の方々にとってわかりやすいパンフレット等の説明資料やポスターを作成しまして、全国の家庭裁判所都道府県、市区町村、福祉事務所、社会福祉協議会社会福祉士会、その他福祉関係団体、弁護士会司法書士会、公証役場、法務局等に配布するとともに、制度の内容に関する詳細なQアンドAや解説書の出版、関係機関、団体等に対する説明会の開催、さらには政府広報等を通じまして制度の周知広報に努めてまいりたいと考えております。
○保坂委員 二点目に、後見人についてのことなんですけれども、例えば後見人が利害関係のないと思われる第三者に、だれだれの後見人をしている、あるいはその内容について伝えてしまう、話をしてしまう等々、被後見人のプライバシー、あるいは資産内容だとか健康状態、いろいろな部分の情報をきちっとガードしていただく必要があるかと思います。そういった後見人の方々が、どういう研修といいますか、そういう資質を身につけていただく仕組みづくりについては、どのように法務省の方はお考えでしょうか。
○細川政府委員 後見等を受けているということを第三者に知られたくない、知らせないようにするというプライバシーの保護は、御指摘のとおり大変重要な問題だと思っております。
 もちろん、本人を保護する立場にあります成年後見人は、そのプライバシーを守る義務があるわけでございまして、その義務に違反した場合には、民事的にいえば損害賠償責任があるとか、さらには、甚だしい場合は後見人の地位を解任されるということもあり得るわけでございます。ただ、そうなる前に、今申し上げたようなことは当然の前提でございますが、さまざま後見人として守っていただかなければならないことはどういうことかということにつきまして、制度の趣旨徹底の際に改めて周知徹底いたしたいと思っております。
○保坂委員 後ほど、その研修などについてはまた伺います。
 次に遺言についてなんですけれども、今回まさに現場からの声を受けて大きく遺言についても改正をされるということで、大変、遅過ぎたなどとの声もあるわけですけれども、しかし必要なことだと思います。
 しかし、例えば公正証書遺言という遺言のスタイルがあるんだということも、国民幅広くだれでも知っているというたぐいのものではなくて、そういう制度をぼんやりとは知っていても具体的に中身などよく知らない、あるいはそういったものに預けるよりは自分で財産はきちっと押し入れにでも入れておくんだというような方が多いと思うんですね。そういった方にちゃんと、こういう制度のメリットがあるんですよということをまた幅広く知らせるということについては、何か考えを持っておられるでしょうか。
○細川政府委員 公証制度一般あるいは公正証書による遺言等につきましては、従来から、公証週間というようなものを設けまして制度のPRをする、あるいは政府広報でも取り上げたことがございますが、あるいは必ずしも十分ではなかったのかもしれません。
 私どもといたしましては、今回の改正を機にいたしまして、わかりやすいポスター、パンフレット等解説書をつくりまして、先ほど申し上げましたいろいろな関係機関、団体等にお送りしまして、さらなる広報を図ってまいりたいと存じております。
○保坂委員 今回の遺言の部分の改正の趣旨、つまり、これまで拒絶をされていた方々、聴覚または言語機能に障害がある人たちに対して、手話、手話通訳をもって、あるいは筆談をもってこれを可となすというこの趣旨はどこにありますか。つまり、何のためにそういうふうに枠を広げなければならないのかという、その理念であり趣旨についてちょっとお答えいただきたいと思います。
○細川政府委員 遺言の方式には三種類、一般的なものがあるわけですが、今まで、言語機能に障害がある方は、その一番中心となる公正証書による遺言は利用できなかったわけでございます。
 公正証書による遺言は、この前の参考人の先生も言っておられましたように、さまざまな利点があるわけでございまして、やはりそれを利用できるということが大切なことである、その御要望も大変強かったということでございますので、それを利用できるように従来の欠陥を改めたということでございます。
○保坂委員 みずからの意思を持つ方が、この規定があるために、みずからの意思をあらわす手段、例えば手話、あるいはこうやって書いてということができても、これは認められないんだというのは、これはちょっとおかしいのだろうという声が今回の改正の最初の動機のところにあったんじゃないでしょうか。
○細川政府委員 まさに、障害者の団体の方々からはそういう御意見が強く出されたわけでございます。
○保坂委員 そうしますと、ここが大事なところだと思うのですけれども、病気並びに障害によって発声、発語が困難、声が出ない、そしてまた、ペンを握るというわけにもいかない、そしてまた、手話も残念ながら知らないか、あるいは手などが十分動かないという方が、みずからの意思を伝達する何らかの補助器具を使って公正証書遺言をするという声もまた今後かなりの場面で出てくるのではないかと想定できるのですが、細かい話は後ほど聞きますが、まず大きくどういうふうにこういった問題、つまり、筆談や手話によらない意思伝達、ほかの補助器具ということについてはどうお考えですか。
○細川政府委員 まず、今回の改正案は、通訳人による通訳と書いてあって、手話による通訳とは書いていないものですから、ほかの手段でも通訳と認められるものであれば、それは構わないわけです。それが第一点目です。ですから、手話でない、例えば唇を読むという方法あるいは指点字という方法がありますが、そういうものでももちろんよろしいわけでございます。
 それから、それもできないという方が、例えばワープロを使って、私の遺言はこうですということで公証人の前でされたということになりますと、それは、まさにペンを使って字を書いたのと、ワープロは一種の筆記用具ですから、それと同じように考えればいいわけですから、そうしますと、そういう場合でも、今回の改正は公証人の前での自書に当たるというふうに解釈すべきだというふうに考えております。
○保坂委員 かなり答弁が微妙だと思いまして、今細かい事例を用意してきたのですけれども、そういうお答えですと、確認の作業になりますが、私の知人に、やはり手などが余り動きません、そして声もなかなか聞き取れないという方で、頭に鉢巻き状のバンドを巻いて、そして頭にちょっと棒をつけまして、その棒でパソコンのあるいはワープロのキーを的確に打っていくという方がいるのですね。こういう方の場合は、そうすると、無理なく成立というふうに考えられましょうか。
○細川政府委員 現在の改正案の趣旨から申しますと、それは当然ということになります。
 この前、参考人の質疑のときに、保坂先生が質問されているのを国会テレビで見ておりましたが、あれは、答えられた方は現行法のことを言われたのですね。改正法のことを言われたのではなかったのでそういう御疑問が生じたのではないかと思っております。
○保坂委員 では、余り長くこのことをやる必要はないのかもしれません。
 ただ、そうなりますと、ワープロももちろんですけれども、例えば、手は十分に動かないけれども、手の一部を使って何らかの機械的な伝達をして文字を選び出していくような、そういう装置もございます。あるいは、逆に、これを音声で表現するという装置もありますね。要するに、手や体の一部分を動かして、口は動かないんだけれども、その音声で自分の意思を表現するというような、あらゆる、その人の意思であることがその場で確認されれば、これは認められ得るというふうに考えてよろしいですか。
○細川政府委員 さまざまな意思の伝達手段があると思いますが、本人の本当の真意が確実に伝わっているという手段であれば、それはそれで差し支えないというふうに考えております。
○保坂委員 そうすると、今、公正証書遺言を中心に答弁していただいたのですが、それ以外の秘密証書遺言であるとか、あるいは、特別方式と言われているところの死亡危急者遺言だとか、船舶遭難者あるいは隔絶地、こういうところの扱いはどうなるでしょうか。
○細川政府委員 自筆証書は、まさに自筆で書かなければいけませんので、これはだめなんですけれども、それ以外の方法は、つまり、自筆でやることによって後で本人の筆跡であることが確認できるという意味がありますので、自筆証書は本人がみずから記載することを要求されていますが、それ以外の自筆で書くことを要求されていないものにつきましては、ワープロで打ったものを、中身を秘密証書にするということは可能でございます。ですから、そのほかの場合には可能であるというのがお答えでございます。
○保坂委員 その自筆証書遺言なんですけれども、例えば、手を失った方で、義手というのですか、要するに機械の部分でペンを握って書く、これはどうなんでしょうか。
○細川政府委員 これは、結論的に申しますと、先ほど申し上げましたように、筆跡で後で本人の意思に基づいたものかどうか確認できるという要件でございますので、それができるような場合であればよろしいのではないかというふうに考えております。
○保坂委員 そうすると、もし仮に、ペンを握っているのが機械であっても筆跡は出るわけですよね。要するに、動かしている人固有の癖がありますから、筆跡というのは出ると思うのです。さらに、例えばペンを握らせる、要するに手の部分だけ、あるいはペンを握らせておく機械、これを遠隔操作して手のいろいろな強弱で動かす、こういう装置を開発しても固有の筆跡は生まれ得ると思うのですが、それはいかがでしょう。
○細川政府委員 常識的に判断しますと、そういうことでもよろしいのではないかというふうに思います。
 ただ、これは裁判所の判例等があるわけではございませんので、責任を持って申し上げる確信はありませんが、常識的に考えればよろしいのではないかというふうに考えております。
○保坂委員 ちょっと法務大臣に伺いますが、いろいろちょっと細か過ぎるほどお聞きしましたのは、我々は、やはり立法する際に、これだけ痛切な声がずっと聞かれないでいた。大改正なわけですけれども、その際に、ほかの部分の、要するに、十分な意思を伝えるお気持ちがあるのに、手段がないためにこれがなかなか伝えられないでいるという方に対して、やはり十分運用において配慮していただきたいということをお願いしたいのですが、大臣の所感をお願いします。
○陣内国務大臣 基本的には、国民の権利意識の高まりを受けまして、聴覚・言語機能障害といった健常者じゃない方も、健常者と同様に公正証書遺言等を利用することができるようにしようということでございますので、それぞれの問題はあろうかと思いますので、すべてというわけにはいかぬと思いますが、今のような趣旨を大事にしていかなければならないと思っております。
○保坂委員 ありがとうございました。
 もちろん、その機械というのは万全ではありませんで、その機械が工作されていて、あたかも本人が伝えているかのように偽装しながらにせの遺言がなされて、その資産が動いたなんということがあってはいけません。そこはだから厳正に判断していただくということが大前提でしょうけれども、意思が存在する際には、それが何らかの形で表現された際には、ぜひこれは尊重していただくようにお願いをしたいと思います。
 それでは、厚生省に来ていただいていると思うのですが、これは前回の質問でもお聞きをしたように、この成年後見制度のいわば適用というか、この制度を使って保護されなければならない、あるいは保護を希望される方というのは潜在的には大変な人数がいらっしゃると思うのです。具体的に、介護保険が来年の春から導入をされていきますけれども、介護保険の制度と、特にこの成年後見制度、家族などがいて見ている場合ということではなくて、例えば身寄りのない、全く天涯孤独というか、ひとりで暮らしておられる方も多数今いらっしゃいます。それから、逆に難しいのは、家族の中には暮らしているのだけれども、家庭の中で老人虐待といいますか、そういう中で虐待を受けている。いろいろなケースが考えられるのですけれども、介護保険の制度のスタートとこの成年後見制度をどう切り結んでいくかというところで、まず厚生省のお考えを。
○近藤(純)政府委員 介護保険制度の運用におきましては、例えば、要介護認定を申請する。それから、要介護認定されますと、例えば施設に入るときには契約をする、こういう形になっておりますので、御本人の意思を確認して、それを尊重しながらやるというのが介護保険制度の建前になっております。
 ただ、先生御指摘のような重度の痴呆の高齢者の場合で、なおかつ家族の方もいらっしゃらない、こういう方につきましては、当然この成年後見制度を利用するというのはかなり出てくるのだと思います。ただ、そういう需要がありましても、後見人を選定すること自体が時間がかかりますので、その間につきましては、必要があれば市町村が措置をするという制度が、例外的な制度としては残されております。
○保坂委員 今、厚生省の方でおっしゃった、重度の痴呆になっていたり、家族等がいない場合、そしてまたこの制度を運用しなければならないというときに、極めて公正できちっとした、しかも、利益追求ということではなくて、社会活動としてこの後見人を務めていただく方をつくり出していかなければならないだろう。また、そういったお年寄り自身と、あるいはお年寄りとは限らないわけです、そういう被後見人になる方との間を行政やいろいろな手続のシステムをつないでいくというふうな、ケアマネジメントといいますか、そういうものも必要だと思いますね。そういう制度やあるいは後見人の担い手を育てるなど、今準備されていることはありますか。
○炭谷政府委員 ただいま先生が御指摘されましたような成年後見人制度をいかにうまく利用していただくかという、つなぐ制度といたしまして、実は、先ほども御説明させていただきましたけれども、地域福祉権利擁護制度というものが一番役に立つのじゃないのかなというふうに思っております。地域福祉権利擁護制度につきましては、これから、今年十月の発足を目指しまして、いろいろ準備を進めております。この担い手としては、現在、都道府県社会福祉協議会などに期待しているわけでございますけれども、この社会福祉協議会が活動することによって、いわば場合によっては、この人は成年後見人制度を利用した方がいいなというケースについては、そこにつなげていくというような機能も考えております。
○保坂委員 それでは、厚生省の方はこれで結構です。
 裁判所の方に伺いますけれども、これは繰り返し出ている質問で恐縮といえば恐縮なんですが、しかし、大変多くの方がこの制度を今後希望されるかもしれないということは、この委員会あるいは参考人の質疑の中で明らかになってきたと思うのですね。まず、家庭裁判所の中で、現行の制度ですら相当の労力、人的な、あるいは時間的な労力を割かれていると思うのですが、そういう家庭裁判所の現状でどの程度まで持ちこたえられるのかというところを、率直なところを本当に知りたいわけなんですが、まずは現状がどうか。
 そして、この成年後見制度は、それこそ今法務省の答弁もあったように、政府広報なども使って、関係機関はもちろんのこと、どんどん宣伝公布していくということであれば、もっともっと希望者がふえると思うのです。裁判所の方で、現状、家庭裁判所の中でどの程度の力を割いて当たっているのか、そしてこれがふえていくとしたらどの辺が限度かというようなことを逆にここで明かしていただいて、その後必要な人員や予算も考えていかなければならないと思うのですが、いかがでしょうか。
○安倍最高裁判所長官代理者 現在の家庭裁判所の実務におきましても、この禁治産宣告事件、準禁治産宣告事件は大変重要な事件だという認識で処理に当たっているところでございます。その判断の段階、さらに後見人の選任の段階、さらに監督の段階とあるわけでございます。
 ただ、これをどのくらいの事件まで持ちこたえられるか。なかなか難しい御質問でございまして、私どもといたしましては、現在の体制の中でできるだけの準備を整えまして、事件について手当てをできるように考えていきたいと考えている次第でございます。
○保坂委員 いや、ですから、堂々めぐりなんですけれども、限度があるのじゃないでしょうか、現在の体制では。限度はないのですか。どのぐらいまでなら大丈夫、しかしそれを超えたらやはり増員し手厚い陣形を組まなければだめだということはこの審議の中で言っていただきたいのです。
○浜野最高裁判所長官代理者 平成十年に家庭裁判所に提起されました禁治産申し立て事件それから準禁治産申し立て事件、さらにこれらの取り消し事件でございます、合計約三千六百件余りでございます。家事事件全体が約四十九万件でございますので、先ほどの三千六百件というのは約〇・七%にとどまっております。そういうことで、家事事件の中ではそういう比率でございますので、先ほど家庭局長からも御説明いたしましたように、今のそういう状況では現体制で十分対応できるということを申し上げたわけでございます。
 ただ、ただいま御審議いただいております成年後見制度につきましては、今後法案が成立いたしました後に、家庭裁判所におきます運用、これも工夫をいろいろ凝らしていく必要があろうかと思いますし、そういう点も加味して、また、現段階では新しい事件でございますので事件数の動向が非常に予測しがたいというところもございますが、高齢化の進展等社会構造の変化等も十分踏まえまして、家庭裁判所がその特色でございます科学性や後見性を十分に発揮して的確な事件処理が図れるように、家庭裁判所の人的体制のあり方についても検討してまいりたい、かように考えております。
○保坂委員 大変控え目な御答弁で、大変不思議なんですが、やはり裁判官は忙しいし、事件はラッシュだし、ですから、これが宣伝され広がれば広がるほど、例えばあと五年、十年で、今三千六百ですが、これが二十倍、三十倍、五十倍、百倍になるとしてもおかしくはないわけですね。しかし、それには人的な体制が必要なので、ぜひそういうことも率直に今後は答弁をしていただきたいと思いますが、今のところは大丈夫だけれども、しかし今後はわからないというふうに受けとめました。わからなければ、予算を要求して人員増加に努めていただきたいと思います。
 最後に、法務省に再び伺いますけれども、これは同僚議員からたびたび指摘があったことなんですが、いわばカルト的な集団あるいは新興宗教などが、例えば福祉施設的なものを、これは社会福祉法人になっているかどうかは別にして、お年寄りを集め、信者の寄附を集め、そしてそこで寝起きをする。そして、その中で、実はねらいどころは、これは財産だ、金であるということは、過去数々の事件、あるいは一種のカリスマ性を持つ人間を中心とした詐欺、実際にそういうことでお年寄りの資産がねらわれてきたということがあります。
 今回の制度を、悪用をどう防止するのか、そういった犯罪のえじきに、よもや人権を保護しようという法律が悪用されることがあってはならないと思うんですが、ここをどう防止する工夫をなさってきたのか、また、運用の中でそれを心がけるのかについてお聞きいたします。
○細川政府委員 この制度を適切に運営するためには、後見人等に適切な方が選ばれて、本人の保護のためになるということが大事なことでございます。
 そこで、今回の改正案では、後見人を選任するに当たって、家庭裁判所が考慮すべき事情を列挙しまして、それを十分家庭裁判所が慎重に審査して判断してもらいたいということを明らかにしているわけでございます。
 それからもう一つは、従来は後見監督人等は、申し立てがなければ選任できなかったわけですが、今回の改正法案では、家庭裁判所が職権で後見監督人を選べることとしております。そういう体制にいたしましたので、今後、家庭裁判所の適切な運用が得られれば、御指摘のような問題は生じないのではないかというふうに考えております。
○保坂委員 もう一度その点を裁判所に伺いますが、例えば大学の先生だとかあるいは著名人、作家ですとか、実際に身の回りでもそういう被害があるんですけれども、そういう方たちが勝手に名前を使われたり、たった一回あった講演会の写真を使われて、あたかもその組織やグループ、その法人の顧問であるかのように装いをつくられて、そして詐欺を仕掛ける、そういう犯罪が後を絶たないわけなんですが、とりわけ後見人が法人として出てきた場合に、裁判所がそこを見抜くという具体的な方策、何かお考えでしょうか。
○安倍最高裁判所長官代理者 法人の適格性につきましては、当該法人の活動状況を把握するに尽きるわけでございますけれども、情報収集の方法といたしましては、私どもの方で調査官が出向いて各種の帳簿等を見せていただくということもあろうと思いますし、あるいは、各地域における活動を関係福祉機関から情報としていただくということなども考えられるだろうと思っております。このようなことを踏まえまして、できる限りの情報は集めて、的確な判断をしていきたいと考えている次第でございます。
○保坂委員 とりわけ、この立法の趣旨にかんがみて、まさに人権保護のための法律であるということを、今の質疑でも手ごたえある御答弁をいただいたと思いますので、ぜひその趣旨を今後運用において徹底していただくようにお願いをして、私の質問を終わります。
○杉浦委員長 以上で各案に対する質疑は終局いたしました。
○杉浦委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに各案について採決に入ります。
 まず、民法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○杉浦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、任意後見契約に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○杉浦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○杉浦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、後見登記等に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○杉浦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
○杉浦委員長 この際、ただいま議決いたしました民法の一部を改正する法律案に対し、八代英太君外六名から、自由民主党民主党公明党改革クラブ自由党日本共産党社会民主党市民連合及びさきがけの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。八代英太君。
○八代委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
 
  民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
 一 政府は、新しい成年後見制度の実施に当たっては、自己決定の尊重、ノーマライゼーション等の改正の理念が制度の運用に十分反映されるよう、新制度の趣旨・内容について、福祉関係者、司法関係者等の関係者に十分周知徹底されるよう努めること。
 二 新設の補助の制度に関しては、本人の自己決定を尊重する法の趣旨にかんがみ、補助開始の審判、補助人への同意権・代理権の付与及びその範囲について出来る限り本人の意向を尊重し適正な運用を期するように配慮されたい。
 三 成年後見人等の選任に当たり、本人との利害関係の有無を考慮事情とする法の趣旨にかんがみ、成年後見人等となる法人及びその代表者と本人との利害関係及び利益相反の有無の確認について適正な運用を期するように配慮されたい。
 四 政府は、後見等による事務費の負担、NPO等関係諸団体への支援、後見人等の研修など、後見制度がより有効に機能するように実施体制の整備に努めること。
 五 政府は、後見登記等の利用者の利便の向上に資するため、登記の申請数等を勘案しつつ、利用者にとって利用しやすい登記所の体制の整備に努めること。
 六 政府は、新しい成年後見制度について、その運用状況、高齢者・障害者をめぐる社会の状況等を勘案し、必要に応じて制度についての見直しを行うこと。
 七 政府は、聴覚又は言語機能に障害がある者が公正証書遺言をすることを可能とした本改正の趣旨・内容について、周知徹底を図るとともに、その適正な運用につき公証人等を指導すること。
 
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○杉浦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 八代英太君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○杉浦委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。陣内法務大臣
○陣内国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。ありがとうございます。

第145回衆議院 本会議会議録第43号(平成11年7月6日)
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第一、民法の一部を改正する法律案、日程第二、任意後見契約に関する法律案、日程第三、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、日程第四、後見登記等に関する法律案、右四案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。法務委員長杉浦正健君。
    〔杉浦正健君登壇〕
杉浦正健君 ただいま議題となりました四法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、民法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、高齢社会への対応及び障害者福祉の充実の観点から、痴呆性高齢者、知的障害者精神障害者等の判断能力の不十分な者の保護を図るため、禁治産及び準禁治産の制度を後見及び保佐の制度に改め、これに加えて補助の制度を創設するとともに、聴覚または言語機能に障害のある者が手話通訳等により公正証書遺言をすることができるようにするものであります。
 次に、任意後見契約に関する法律案について申し上げます。
 本案は、任意後見契約の方式、効力等に関し特別の定めをするとともに、任意後見人に対する監督に関し必要な事項を定めることにより、任意後見制度を創設しようとするものであります。
 次に、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について申し上げます。
 本案は、民法の一部を改正する法律の施行に伴い、公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律ほか百八十の関係法律について規定の整備等を行うとともに、所要の経過措置を定めようとするものであります。
 最後に、後見登記等に関する法律案について申し上げます。
 本案は、民法禁治産及び準禁治産の制度を後見、保佐及び補助の制度に改め、新たに任意後見制度を創設することに伴い、禁治産及び準禁治産の宣告を戸籍に記載する公示方法にかわる新たな登記制度を創設し、その登記手続、登記事項の開示方法等を定めようとするものであります。
 委員会においては、四案を一括して議題として、去る六月十一日陣内法務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、同月十五日には参考人から意見を聴取する等慎重に審査を行い、七月二日これを終了し、採決を行った結果、四案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、民法の一部を改正する法律案に対して附帯決議が付されたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(伊藤宗一郎君) 四案を一括して採決いたします。
 四案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、四案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

第146回衆議院 法務委員会会議録第9号(平成11年11月26日)
○武部委員長 これより会議を開きます。
 第百四十五回国会、内閣提出、参議院送付、民法の一部を改正する法律案、任意後見契約に関する法律案、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び後見登記等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
 各案は、前国会、本院において原案のとおり議決の上、参議院において継続審査となり、原案のとおり議決の上本院に送付されたものであります。
 したがいまして、その趣旨につきましては十分御承知のことと存じますので、この際、趣旨の説明を省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
○武部委員長 各案につきましては、質疑、討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、民法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○武部委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、任意後見契約に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○武部委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○武部委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、後見登記等に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○武部委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

第146回衆議院 本会議会議録第7号(平成11年12月1日)
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第一、民法の一部を改正する法律案、日程第二、任意後見契約に関する法律案、日程第三、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、日程第四、後見登記等に関する法律案、右四案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。法務委員長武部勤君。
    〔武部勤君登壇〕
武部勤君 ただいま議題となりました四法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 まず、民法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、高齢社会への対応及び障害者福祉の充実の観点から、痴呆性高齢者、知的障害者精神障害者等の判断能力の不十分な者の保護を図るため、禁治産及び準禁治産の制度を後見及び保佐の制度に改め、これに加えて補助の制度を創設するとともに、聴覚または言語機能に障害のある者が手話通訳等により公正証書遺言をすることができるようにするものであります。
 次に、任意後見契約に関する法律案について申し上げます。
 本案は、任意後見契約の方式、効力等に関し特別の定めをするとともに、任意後見人に対する監督に関し必要な事項を定めることにより、任意後見制度を創設しようとするものであります。
 次に、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について申し上げます。
 本案は、民法の一部を改正する法律の施行に伴い、公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律外百八十の関係法律について規定の整備等を行うとともに、所要の経過措置を定めようとするものであります。
 最後に、後見登記等に関する法律案について申し上げます。
 本案は、民法禁治産及び準禁治産の制度を後見、保佐及び補助の制度に改め、新たに任意後見制度を創設することに伴い、禁治産及び準禁治産の宣告を戸籍に記載する公示方法にかわる新たな登記制度を創設し、その登記手続、登記事項の開示方法等を定めようとするものであります。
 以上四法律案は、いずれも、前国会、本院において可決され、参議院において継続審査となっていたものであり、今国会の去る十一月二十四日参議院において原案のとおり可決の上、本院に送付され、同日本委員会に付託されたものであります。
 委員会においては、四案を一括して議題とし、十一月二十六日提案理由の説明を省略し、質疑及び討論の申し出もなく、直ちに採決を行った結果、四案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(伊藤宗一郎君) 四案を一括して採決いたします。
 四案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、四案とも委員長報告のとおり可決いたしました。