精神医療に関する条文・審議(その116)

前回(id:kokekokko:20051202)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の成年後見制度制定・精神保健福祉法改正についてみてみます。

第146回参議院 法務委員会会議録第3号(平成11年11月16日)
【前回のつづき】
阿部正俊君 わかりました。
 それからもう一つ、いわゆる従来の制度の是正されるべき点として、戸籍に記載されるということについて、なかなか利用が進まない点の一つの大きな特色として挙げられておりました。
 戸籍ということについて、特に日本の場合には、何か人間の存在そのものの原点のように受け取られている点があるものですから、そこに禁治産、準禁治産と書くと一人前の人間ではないというふうな烙印を押されるような受けとめ方をする方が少なくなかったのではないかというふうに思うのでございますけれども、今回の改正ではそれをやめまして新しい制度にするわけですけれども、同時にやはり利用者あるいは従来の取引上の安全というものも配慮しなきゃいけないことでございます。
 当事者自身も、そうしたふうな法律上の利用関係にあるということを確認できる制度がどうしてもやっぱり必要なのかなというようなことで、いわゆる登記法が新しくつくられたのであろうというふうに思うのでございますけれども、場合によっては、人によってはそんな登記制度なんて要らないじゃないかというふうな人もいなくはありません。と同時に、社会的な諸関係をさまざま取り結ぶわけですから、そうした関係を秩序立てていくためには何らかの登記制度、確認制度と言ったらいいのかもしれません、何か本人のレッテルを張るという意味ではなくて、どういうふうな法律関係にあるのかということを確認できる仕組みというのが必要なのかなというふうに思うわけでございます。
 今回の登記法の、従来の制度と変わっている点で、その登記制度の趣旨というものと同時に、それがだれでもかれでも見られるということもやはり防がなきゃいけない点だし、それは難しいところでございますけれども、どの範囲で確認できるのか、あるいはこういう人はできないのか、その辺について少し考え方をお話しいただければと思います。
政務次官山本有二君) 現行制度のもとにおいて、禁治産宣告または準禁治産宣告の裁判が確定したときには、後見人または保佐人からの届け出により、本人の戸籍に禁治産宣告または準禁治産宣告の裁判が確定した旨及び後見人または保佐人を特定する事項を記載しております。
 しかし、禁治産宣告、準禁治産宣告を受けたことが公開を原則とする戸籍に記載されることにつきましては、関係者にとって強い心理的抵抗感があり、これが禁治産制度、準禁治産制度の利用の妨げになっているとの批判があり、また今回の改正による補助類型の新設、任意後見制度の創設に伴い、補助人、任意後見人の多様な代理権等を公示するためには戸籍記載では十分対処できないことをも考慮し、現行の戸籍記載にかわる新しい登記制度を創設することとしたものでございます。
 成年後見登記制度における登記情報の開示は、登記官が登記されている事項を証明した登記事項証明書を交付することによって行いますが、取引の安全保護の要請と本人のプライバシー保護の要請との調和を図るため、登記事項証明書の交付を請求できる者につきましては、本人、成年後見人、成年後見監督人等一定の者に限定しております。
阿部正俊君 ありがとうございました。
 さて、もう一つ、今までの制度の利用が進まなかった点の一つとしていわゆる選挙権、被選挙権との関係の問題もあったのかなというふうに思うんです。残念ながら、この点については、今回の制度では少なくとも後見人がつけられる方についてはやはり選挙権、被選挙権というのは難しいのかなというようなことで見送られたやに聞いています。
 これは簡単で結構ですが、そういう事情にあるのか、あるいはこれから先も、これはどうしてもやっぱり選挙という自分で意思表示をするということから見て無理だということなのか、あるいはもう少し何か工夫はないのかという気もしないでもないんですけれども、お考えをお聞かせいただければと思います。
政務次官(橘康太郎君) 公職選挙法第十一条におきましては、禁治産者は選挙権及び被選挙権を有しないと規定しているところでありますが、これは禁治産者心神喪失の状況にある者であることから、選挙権及び被選挙権を有しないとされているところでございます。
 今回の民法改正案では禁治産者成年被後見人と変わるため、自治省として検討してまいりましたが、その対象者は一致するものであり、選挙時に個別に意思能力を審査することも困難であることから、従来の禁治産者と同様、成年被後見人について選挙権及び被選挙権を有しないとしているところでございます。
阿部正俊君 橘政務次官、わざわざお出かけいただいてお答えいただきまして、恐れ入ります。結構でございます。ありがとうございました。
 できれば、将来とも一つのテーマとして、これは課題の一つだというふうに御認識いただければありがたい、これは要望でございますが、申し上げておきたいと思います。
 さて、今回の禁治産制度の利用を困難にしている理由の一つとしてもう一つございますのは、いわゆる他の資格制度、さまざまな数百の資格制度があるわけでございますけれども、禁治産準禁治産者は門前払いといいましょうか、そもそも欠格事由に該当するんだということで、事実確認の前にそもそももう無理だというようなことで頭から門前払いをしている制度が結構あったやに思うし、これにつきまして法務当局もできるだけの改善をしたいものだということで御努力いただいたのではないかなと思うのでございますけれども、やはり大事なポイントの一つであると思います。
 これも時間が限られておりますので余り深くできませんけれども、できますれば、どんなふうな基準で各省庁に働きかけ、その成果についてどんなふうに思っておられるのか、どんなふうな成果があったのか、ちょっとお答えいただければありがたいと思います。
政務次官山本有二君) 欠格条項は、各種法律中の資格等にふさわしい能力を担保するために設けられるものであり、資格等を付与する段階においてそのような能力を有しているかについて審査を行うべきものであります。
 そこで、個別的な能力審査手続が整備されている法律については禁治産宣告等をあえて欠格条項として存置しないこととし、それ以外の当該法律中に十分な能力審査手続を有しないものなどについては欠格条項として存置するとの方針で、所管の各省庁と協議し、改正案を取りまとめたものでございます。
 その結果、欠格条項のうち、削除されるものが民法中のものを含めて四十二件、存置されるものが百十六件となっております。この結果につきましては、ある程度の成果を得たものと考えております。
阿部正俊君 どうかひとつこれからも、門前払いをするのではなくて、ある一定の目的を果たす、あるいはある仕事をするための資格でございますので、その資格が、能力が、そういう力があるのかないのかということを確かめることは結構でございますけれども、頭からレッテルを張るような欠格条項というのはできれば私やめてもらっていいのではないかなという気もしないでもないんですけれども、これからも引き続き御努力をお願いできればということをお願いしておきます。
 さて、以上いろんなことを申し上げて、これもむしろ先に聞いておきますか。
 今回の法律改正で、従来のいわば委任契約でもできたけれども、従来の契約よりも、一般論として、任意後見というものをつくってより普及させていきたいということで、任意後見の制度がつくられたと思うのでございます。法律論としては従来の委任契約等でもあるいはできたのかなと思うのでございますけれども、あえて一歩踏み込んで、こうしたふうな契約方式を取り込んでより幅広く利用しやすいようにしたと。私も結構なことだと思うのでございますけれども、むしろそのPRを一言、政務次官、お願いできればと思います。
政務次官山本有二君) 任意代理人を選任する委任契約につきましては、本人の意思能力喪失後も代理人の代理権は存続すると一般に解されています。しかし、本人の判断能力低下後の任意代理人に対する監督の枠組みがない現行法制のもとでは、自己の判断能力低下後の後見事務を任意代理人に委任する委任契約は、実際には利用が困難であると考えられております。
 このような問題に対応するためには、本人の判断能力低下後の任意代理人に対する公的な監督の枠組みを法制化することについては、従来、関係各界からその必要性が強く指摘されてきております。特に、任意代理を活用して現在財産管理サービスを試みておられる地方自治体の社会福祉協議会弁護士会司法書士会、社会福祉士会等からは法制化に対する強い期待が寄せられておりました。
 任意後見制度は、このような関係各界のニーズを踏まえ、私的自治の尊重の観点から、本人がみずから締結した委任契約に対して、本人保護のための必要最小限の公的な関与を法制化するものであります。また、自己決定の尊重の理念に即した本人保護の制度的な枠組みを構築しようとするものでもございます。
阿部正俊君 大枠、承知いたしました。どうぞ利用されることをこれから望むわけでございます。
 今の任意の制度だけではなくて、制度体系全体が大きく変更するわけでございますが、これをどう利用していただくか。国民の日常生活の、いわば人間の尊厳ある生活を組み立てていく上において大いに役立てていただくということが大事なことなんだろうと。法的な枠組みをつくったからあとは利用するかどうかは本人次第ということでは、日本の今までの契約とか本人の意思とかというのを大事にする社会ではなかったといえばちょっとオーバーでございますけれども、待ちの姿勢ではなかなか定着しないのではないかなという気がするわけでございます。
 したがって、全体の制度、任意後見も含めて、任意代理人といいましょうか、それも含めまして、今までどうしても、私がこうなったらこうしてよというふうなことをしっかりしている間に意思表示をつくっておくというふうな考え方というのは余り一般的ではなかったわけですね。今までの老人福祉等々の考え方ですと、いわば最後まで御家族に契約なしに何となくお任せして、一方で、御家族も意思表示をしないで大変だなと思いながらもどん詰まりまで来ちゃってどうにもならなくなってしまうという例が意外と多かったのではないかと思うのでございますけれども、そういう意味で物の考え方そのものを、大いに事前に意思決定をし、本人の意思で事は動いていくんですよということをやはり国民によく了知していただかないといけない点ではないか。
 そういうことからすると、従来の法務行政ではいわばお裁き所ということで、来たら何か裁いてあげるよということではなくて、市民生活の中の秩序立てたルールづくりということについて国民の中に浸透していくことをぜひもっと積極的に乗り出していってもらいたいなと思うのでございます。
 制度のパンフレットをつくるとかいうだけではなくて、各層、例えば弁護士さんなり司法書士さんなりというふうな方々の意識も含めて、改めて国民の、庶民の生活の中を秩序立てていくというふうなこと、あるいは本人の意思が大事なんだということを前提にした仕組みを担い手として考えていっていただきたいなと思うのでございますけれども、そうしたこの制度の普及促進について、あるいは定着について、お考えがございましたらお聞きしておきたいと思います。
政務次官山本有二君) 新しい成年後見制度が真に利用しやすい制度として運用されるようにするための方策として、一般の利用者にとってもわかりやすいパンフレットその他の説明資料等を作成して、全国の関係機関、団体等に配付するなど、制度の周知や広報に鋭意努めていく予定でおります。
 また、新しい成年後見制度の利用のための相談体制の整備に関しては、家庭裁判所における家事相談のほか、社会福祉協議会等の福祉関係機関における相談事業、弁護士会司法書士会、社会福祉士会等における相談など、関係各方面と連携を図りながら相談体制の充実に努めたいと考えております。
 さらに、成年後見人等の制度の担い手の確保につきましても、各種の関係団体、機関等における候補者の研修、名簿作成、推薦等の体制の充実が円滑に進むよう関係各方面と緊密な連携協力を図ってまいりたいと考えております。
阿部正俊君 どうかひとつよろしくお願いしたいし、かつまた、これはいわゆる利用する人、障害を持った方あるいは判断能力が劣った方に対してということではなくて、私は国民全体の理解というのはやはり要るんじゃないかなと。そういう意味で、一人一人の障害の有無あるいは判断能力の良否だけにかかわらず、国民みんな、やはり個人個人の意思をまず確かめて、そこを基本にして物を考えていく社会のルールというものが求められるのではないか、その一つの典型の例として私は成年後見制度というのがあるのではないかなという気がしますので、どうかそういう点で直接かかわる方々だけではなくて、より広く私は意識の変革というものを求めていくスタンスでお願いしたい。
 人権尊重というのは、いわゆる物的な利害ということだけではなくて、そうした人間の尊厳の一番基本にある意思というものがどういうふうに尊重されるのかというのが基本かなというような気がしますので、新しい人権尊重あるいは人権擁護の基本理念として、その一番の典型として後見制度があるんですよというような視点からぜひ幅広い働きかけをお願いしたいなということを御要望申し上げておきます。
 さて次に、厚生省の政府参考人がおいでいただいていると思うのでございますが、やはり法的な枠組みとともに、いわゆる従来福祉制度で対応してまいった方々あるいは知的障害、痴呆の高齢者等々について、まずいきなり裁判所に行って手続するということはどうも抵抗があるのかなという気もしますし、もう少しそれの窓口的な役目を果たすところがやはりどうしても裁判所以外に要るのかなという気がいたします。と同時にまた、法的な枠組みをつくるまでいかなくても、事実行為として解決できるもの、あるいはその方が望ましいものというものもあるんだろうというふうに思うのでございます。
 そういう観点から、私ども自由民主党での小委員会の報告にも取り上げておりますけれども、法的な制度と、それを窓口として、あるいはそれを補完するといいましょうか、両々相まって機能する仕掛けが裏表で要るんではないか、車の両輪ではないかというようなことを申し上げてまいったわけでございます。
 どうも聞くところによりますと、厚生省の方でも地域福祉についての権利擁護事業というような形で、ちょっとかた苦しい名前だと思うんですが、というものをおやりになるというような話を聞いておりますけれども、そのことにつきまして、全体の説明は時間がないのであれですが、特に成年後見制度との関係でどういうふうな役目をしていくのかということと、それから法律的な手当てを、制度を利用する前の段階として何をしようとしているのか、この辺についてかいつまんでお答えいただければと思います。
○政府参考人(炭谷茂君) 地域福祉権利擁護事業につきましては、知的障害者精神障害者等、判断能力が不十分な方々に対しまして、先生が強調されております本人の意思の尊重の基本に立ちまして、福祉サービスの利用の援助やそれに付随した日常的な金銭管理等を援助する仕組みでございます。
 これと成年後見人制度との関係でございますけれども、基本的には成年後見人制度と相補い合う関係にあるわけでございます。具体的に申しますと、成年後見人制度は、法律事項また身上監護に基づく法律事項等について援助を行うというものでございます。
 これに対して私どもの事業は、いわばもう少し軽微なもの、日常的に生ずるような福祉サービスの利用の援助ということに重点を置いておるわけでございます。したがいまして、私どもが相談を受けている過程において、これは成年後見人制度を利用された方がいいという窓口での判断があればそちらの方につながなければいけない、具体的に申しますと、契約を結ぶ意思能力が私どもの方では欠けるとか、またこれは重要な財産処分が伴う問題だというような問題については成年後見人制度の方へつなぐというような形での相協力という形で進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
阿部正俊君 局長、ちょっと忘れました。
 先ほど山本政務次官のお答えの中で、利用者支援のところについて厚生省の方に期待するような意味の御発言があったやに聞いておりますけれども、そうしたふうな答えについては、この権利擁護事業の中では何かお考えかどうか、一言だけお聞かせ願いたいと思います。
○政府参考人(炭谷茂君) これからの社会福祉サービスにおきましては、いわゆる現在行っております措置制度から介護保険などに見られるような利用契約制度という形になろうかと思います。そうした場合、あくまで利用者に判断をしていただいて選択をしていただくということが重要になってまいりますけれども、その場合、痴呆性高齢者のような自分で判断が必ずしも十分できないという形の場合が生じてまいります。そのような場合、その手続を代行するとか、また助言をするというようなことでこの地域福祉権利擁護事業が機能を発揮するんじゃないかというふうに考えているわけでございます。
阿部正俊君 もうちょっと具体的に低額利用のような話もあるのかなというふうに思っておりました。これは細部にわたりますのできょうはやめておきますが、いずれお聞かせいただければと思っております。
 さて、最後に、あと残り時間わずかですので二問だけにいたしますが、一つは、現在いわゆる入所者施設、例えば特別養護老人ホームあるいは養護老人ホームあるいは身体障害者療護施設等々で、御本人が例えば年金を受けておられる、あるいは貯金を持っておられるというふうな場合に、従来の福祉制度では、住所そのものを当該施設に移す場合が多かったわけでございます。ということになると、年金はその施設に入所されている方の通帳に振り込まれる、こういうことになります。かといって御本人のお部屋は個室は余りなくて何人かのお部屋が多いわけでございますので、そうなると勢いその御本人の年金やら貯金やらは施設が事実上お預かりし、若干の利用料の支払いとか、あるいは日常的な利便にそのときそのときで施設に申し出て管理し、うっかりすると時にはその預貯金が、例えば一人百万円ずつですと百人おれば一億円になるわけでございますね。ということで巨額なものになっておるんだろうと思うのでございます。
 このよしあしはいろいろ意見がございますが、私はこれを放置していいものだとは思いません。やはり御本人の意思なり、お一人お一人の違った形で管理されるべきだと思いますし、かつまたうっかりしますと、施設側にとりましてもやむなくやっているというようなことでございまして、少し意地悪な目で見ると、何かそこからいい思いをしているんじゃないかというように見られることに対して大変遺憾に思っている施設の経営者も少なくございません。
 この辺について、今回の成年後見制度の成立を機会に是正していくということがどうしても具体的に必要なことではないかなと思いますが、その前に、これについていわばどれくらいの推計額になるかというのは、ちょっと統計はないかもしれませんけれども、そうした施設入所者の預かり金の実態あるいは実例ということについて、まず最初に厚生省の方にお聞きしておきたいと思います。
○政府参考人(炭谷茂君) いわゆる社会福祉施設における入所者の預かり金の実態につきましては、その実際に預かっている金額というものの実態はなかなか把握できないわけでございますけれども、たまたまことしの四月に私どもの所管しております救護施設について調査いたしますと、大体三十万から四十万程度になっております。しかし、実際はもっと、特別養護老人ホームになりますとやはりその一けた上に行くんじゃないのかなというのが私どもの職業的な勘でございます。
 これにつきましては、現在、先生が指摘されましたいろいろな問題点、またこれをやらなければいけないような実態というものもあるとおりでございます。これについては入所者のあくまで自主性、本人の意思の尊重ということを原則にいたしまして、不祥事防止の観点から、各都道府県を通じまして、これら入所者預かり金についての施設における管理規定の整備、内部牽制体制の整備など、適正な管理について指導を行っているところでございます。
阿部正俊君 これ以上その点は触れませんけれども、ぜひこの機会に改善していってもらいたいものだなというふうに思います。
 この点について一つだけ法務省さんにもお聞きしておきたいと思うんですが、法律上今言った施設での預かり金というのはどういうふうに考えるべき問題なのか、今までですね。これから先、成年後見というふうな新しい仕組みができたらどういうふうな形になっていくのがより望ましいのか、この辺について一言お聞かせ願いたいと思います。
政務次官山本有二君) 何らの権限なく財産管理行為を行うことは本来許されるべきではないことであり、これは民法改正後も変わることはありません。
 この問題につきましては、成年後見制度の利用が広がることにより、施設に入所している方々の財産管理を成年後見人等が適法に行うことが定着することが期待されます。また、施設内で御指摘のような行為が行われることを成年後見人等がチェックすることが可能になり、トラブルの防止が図られることになるものと考えます。
 なお、成年後見制度は判断能力の不十分な方々のための制度であり、身体障害を有する方々につきましては、精神上の障害により判断能力が不十分である場合には成年後見制度の保護を受けることが可能だということだけ付言しておきたいと思います。
阿部正俊君 どうもありがとうございました。
 約一時間半近くさせていただきましたけれども、最後に一つだけつけ加えてお聞きしておきたいと思います。
 今回の改正で、民法の九百六十九条、いわゆる公正証書遺言につきまして改正が行われております。この内容は、公正証書遺言の作成方法が九百六十九条に書いてあるわけでございますけれども、公証人はあくまでも「遺言者の口述を筆記し、」と、こうなっているものですから、あるいは読み聞かせるということになりますと、口がきけない人、耳が聞こえない人は公正証書をつくれない、こういう運用をされてきておったようでございますね。
 私は、正直申しまして、法律の解釈論としてそこまで厳格にやらにゃいかぬのかな、本来の趣旨は何だということで、改正をするまでもなく、できれば幅広い解釈をしていく、いってほしかったものだなというふうに思います。
 ただ、今回、幸いよく気がついていただきまして、これをやめて、手話通訳でも結構ですし、筆記でも結構だということになるように聞いておりますけれども、この点について、いわば今回の改正の趣旨あるいはこれからの運用についての御決意といいましょうか、お考え方を最後にお聞きして、質問を終わりたいと思います。
政務次官山本有二君) 遺言の方式につきましては、公正証書遺言、秘密証書遺言、自筆証書遺言の三つの方式があり、利用者がこれらを適宜選択することによってあらゆる方が遺言をすることができるようになると考えられておりました。
 現行民法は、公正証書遺言の方式について口授、口述及び読み聞かせを必要としており、聴覚・言語機能障害者は公正証書遺言をすることができないと解されております。
 これは、遺言意思の真正及び正確性の担保の観点から、特に厳格な口頭主義を採用したものです。手話の未発達であった約百年前の民法制定時には、聴覚・言語機能障害者につきましては、その意思を正確に反映する方法として自筆証書遺言または秘密証書遺言が相当と考えられたものと思われます。
 今回の改正は、手話の急速な発達、普及という近年の社会状況の変化に対応して見直しを行うこととし、手話、筆談等で足るというように改正したものでございます。
阿部正俊君 ありがとうございました。
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
 今回の民法の行為能力の制度、百年ぶりに大改正ということでございます。近年、高齢社会に突入をいたしまして、いろんな分野でこの行為能力の制度につきまして不備が目立ってきたなというふうに思っているところでありまして、今回の成年後見制度の改正というものはまさに時期を失したのではないかというふうに思っているような次第であります。
 私ども理事、また各法務委員会の委員のもとにもいろんな要望書が来ていると思いますが、今般、きのうですか、日本障害者協議会というところからも緊急要望書というのが送られてまいりました。その中には、「参議院におきましても、大綱においては各会派一致した見解にあると伺っております。事は障害のある人々の人権に関わる問題であり、また、筆舌に尽くし難い家族負担の軽減・回避という観点からも、その成立が急がれるのです。」、こういうような記述があります。七十一団体を擁する協議会ということでございますけれども、私ども当院の法務委員会としてもこの改正についてしっかり議論をし、また一日も早い成立を図っていきたいというふうに思っているところでございます。
 実態はどんどん現実対応が必要になってきておりまして、各自治体においてもいろんな制度というかアイデアというものが出てきました。先ほど厚生省の地域福祉権利擁護事業というのがことし十月から開始されたということでございますけれども、地方自治体でもかなり前からやっておられるんですね。東京都中野区ではもう昭和五十八年から、一人暮らし高齢者等財産保全サービス事業というのを開始されているようであります、今から十五、六年前ですか。
 それからまた、東京都においても平成三年から、平仮名で「すてっぷ」という表現になっておりますが、知的障害者や痴呆性高齢者、また精神障害者権利擁護センターというものを設けて、いろんな現実の生活のアシスト等をやっておられる。また、各県の弁護士会でも同じような制度をしようとしておりますし、大阪でも後見支援センター「あいあいねっと」というものが平成九年からスタートしているようであります。
 そして、先ほど来阿部先生の質問にも出ておりましたけれども、ようやく厚生省の地域福祉権利擁護事業というものがスタートしたようでございますが、先ほど厚生省の局長の方から、この擁護事業と今回の成年後見制度との関係につきまして相補う関係であるというような表現がなされました。
 ただ、例えば痴呆性老人にかわって軽微な法律行為とかまた財産管理、金銭管理というふうなことになりますと、補助だと思いますが、かなり重なり合う部分が出てくるんだろうというふうに思うんです。これは、まさに福祉と司法とをどうとらえるかというようなことかと思いますけれども、法務省としてはこの役割分担というものをどのようにお考えになっているのか。大臣あるいは政務次官でも結構ですから、コメントをいただければ幸いであります。
国務大臣臼井日出男君) ただいま委員御指摘のとおり、いよいよ始まります介護保険における地域福祉権利擁護事業、それから私どもの成年後見法、まさにともどもにしっかり両立していかなければいけない、こういうことでございまして、お互いにしっかりと相補いながらやっていく必要があろうかと思っております。
 そういう意味におきまして、今、委員御指摘でございますが、今後とも両法の事業というものをしっかりと確認をしながら、お互いに相補いながらやるようなことを心がけてまいりたいと考えております。
○魚住裕一郎君 それで、この成年後見制度、新たに拡大したというようなイメージで私はとらえるんですが、制度をスタートさせるについていろんな体制整備が必要かと思っております。特に後見人ということから考えますと、この後見人確保の問題があろうかと思います。
 日本司法書士会連合会では本年十二月に社団法人成年後見センター、こういうものを設立予定であるというふうに聞いておりまして、内容は、支部都道府県につくって、高齢者からの相談に応じたり、またみずから後見人となって生活支援も行うと。また、東京弁護士会でも約三百人というふうにお聞きしておりますが、高齢者・障害者総合支援センター「オアシス」を立ち上げたというふうに聞いているところでございますが、そういう状況の中で、後見人の候補者名簿等をつくってこの制度を支えていくというふうになろうかと思いますが、これらの機関との連携をどのように考えていくのか。
 先ほど来各弁護士会とか司法書士会とかいろんな福祉法人、協議会とか御説明ございましたけれども、そういう方々がかなり偏在しているのではないか。例えば、過疎地あるいは離島とかいった場合にこの対応策は一体どういうふうに考えていくべきなのかということもあわせてお聞きしたいと思います。
国務大臣臼井日出男君) ただいま御指摘の司法書士会あるいは弁護士会においては、高齢者や障害者の財産管理、身上監護を目的としたセンターというものを構想しているわけでございます。既に実施されているところも結構多いわけであります。成年後見人等の受け皿としても私どもも大いに御期待を申し上げている次第でございます。こうした関係機関との間において、相談体制の整備や成年後見人等の養成確保のための研修への協力などを通じて、十分な連携というものを図ってまいりたいと思っております。
 なお、委員御指摘の地域偏在というものも、先般もお答え申し上げましたけれども、日本の国のどこにおっても同じような権利というものを受けられるということにしなければならないと思っておりますので、そうした点につきましては実施に当たって特に配慮しながらこれからも実施をいたしてまいりたいと思います。
○魚住裕一郎君 今の法務大臣の御決意、ぜひ何とぞよろしくお願いしたいと思います。
 それから、裁判所の体制なんですが、これはもう既に質問が出ておりますが、地方における地家裁の裁判官含めて六百名だというような数の報告がございました。また、調査官も千六百ですか五百ですか、そういう数字もいただいているところでございますが、少年事件もやり、また家事事件もやり、かなり忙しいだろうなというふうに思うところでございます。
 ドイツでは成年後見の担当の裁判官、先ほどから質問が出ておりますが、必ず出向いて面接して判断を下すというようなお話がございましたが、五百五十名程度いるということでございますが、本当に今の日本の裁判制度で、家裁のあり方で間に合うんだろうかというのが実感でございます。
 予算審議にも関連するでしょうけれども、裁判官の増員も七十名とかそういうような数字だと。それは禁治産が七百件とか二つ合わせても二千件行かないような世界でやっていれば何とか間に合うかもしれないけれども、高齢者あるいは知的・精神障害合わせると三百七十万ぐらい、いろんなことを考えると、本当に今のままの裁判官の数では全く対応できないんではないか。需要の増加見込み、なかなか難しいかもしれませんが、その辺を踏まえた裁判所の体制整備について、最高裁の方からお聞かせいただきたいと思います。
最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 御説明申し上げます。
 今回、御審議されている成年後見制度の具体的担い手といたしましては、家庭裁判所におきましては、もとより裁判官が核になるわけでございますけれども、事柄の性質からいきますと、家庭裁判所調査官に大いに期待されるものがあるだろうと考えている次第でございます。
 こういった観点からのお尋ねかと思うわけでございますけれども、今回の成年後見制度につきましては、新しい制度でもありまして、一定程度の負担の増加は予想されるものの、御指摘のように事件数の予測はなかなか難しい面がございます。そしてさらに、事件数を受けまして、事件処理の効率化でございますとかあるいはOA化とか、こういったような推進も図っていく必要もあるわけでございまして、こういったことを踏まえてみた場合に、この制度の導入によってどの程度の人的体制が必要になるかということについては、現時点では具体的に予測することはなかなか難しい面があることを御理解いただきたいと考えている次第でございます。
 しかしながら、家庭裁判所といたしましては、今後、社会の法的ニーズの高まりでございますとか、今回の法改正に伴って係属することになる事件数の動向でございますとか、新しい制度の具体的な運用状況というものを踏まえながら、家庭裁判所がその特色でございます科学性、さらに後見性というものを十分に発揮して的確な事件処理ができますように、さらなる事務処理の効率化あるいはOA化を推進するとともに、家庭裁判所の人的体制のあり方についても検討してまいりたいと考えている次第でございます。
 以上でございます。
○魚住裕一郎君 それから、今度の新しい制度においても後見人の報酬という側面については、被後見人というか被保佐人というか、そういう本人側の負担になっているんです。
 それで、資力がない人にもこれは利用できるのか。裁判の審判の申し立てとかそういう問題ではなくして、資力がない人は取引社会とは関係ないよと言ってしまえばそれで終わりかもしれないけれども、そうはいかないわけであって、やはり資力がない人にも後見人をつけて、本人の心身の状況や生活状況に配慮しなければならないのではないか。そうすると、これは法律扶助とかそういう問題ではなくして、後見人の報酬については公費負担という制度がきっちりできないと新しい制度も本当に現実の社会に対応してうまく運用されていかないのではないかというふうに思うところであります。
 先ほどから出ているドイツの世話法ですか、いろいろ改正もあったようでございますけれども、ボランティアでやっている後見人という方もいるようでございまして、そういう方には、ボランティアですから全く無料ということだけではなくして、ボランティアだけれども報酬をアップしていこう、逆に、職業的に後見人をやっている方については報酬をダウンしていこう、そんなことも考えているやに伺っているわけであります。
 後見人のなり手というのも大事な要素だと思います。どういう人材を確保できるかというのも大きな問題でございまして、私は公費負担ということも含めて、報酬について、この改正案ではちょっとそこまでいっていませんけれども、どういうふうに考えていかれんとするのか、御所見をお伺いしたいと思います。
国務大臣臼井日出男君) ただいま委員御指摘のとおり、成年後見制度におきましては、本人の利益の保護の観点から本人の財産管理等を適切に行うために利用されるものでございますので、成年後見人等の後見事務に要する費用またはその報酬等の経費につきましては、基本的には本人がその財産の中から支弁すべきものであるというふうに考えられております。
 なお、現行の禁治産、準禁治産の宣告に要する費用につきましては、一般の家事事件と同様に、資力の要件等の法律扶助の要件を満たしておる場合には法律扶助の対象となっております。新法における補助、保佐、後見の開始の審判に要する費用につきましても、同様に要件を満たしておる場合には法律扶助の対象となるものと考える次第でございます。
 なお、今御指摘いただきましたいわゆる経費のことにつきましては、今後、社会福祉分野において、低所得者も含めて、日常生活に必要な援助を行うための利用者支援の取り組みについて、成年後見制度と、先ほど申し上げました介護保険におけるシステムとの提携、そういうものをしっかりととっていく必要があると考えます。
○魚住裕一郎君 いろんなそういう介護保険等のシステム利用も考えられると思いますけれども、公費負担というものをさらに御検討いただきたいというふうに思っております。
 それから、今回の改正では鑑定というのが必ずしも必要ないというような形になってきますけれども、私も前にこの禁治産宣告の申し立てをしたことがあります。寝たきり状態というのですか、ほとんど意思表示できずに、酸素マスクというか、チューブが入っている、そういう人に対する財産管理で必要性があったんですが、そのための禁治産宣告申し立てをしまして、それでも約半年ぐらいかかりましたし、鑑定が必要だと、鑑定費用を予納しろ、三十万持ってこい、そういうような形でありました。鑑定ということだけでもかなり時間がかかるなということがございますし、また費用面でもいかがなものかなというふうに思っております。
 また、司法改革の中でも、鑑定制度というのが非常に裁判の遅延というような結果も招来するやに聞いておりますし、もちろん裁判所の大変な努力ということも承知をしているところでございます。そういう意味で、軽度な痴呆等について鑑定は不要だ、これは大きな前進だというふうに思うんです。
 ただ、新聞記事等を見てみますと、これは六月の新聞なんですが、例えば鑑定が必要な場合でも、「法務省は、鑑定を行う場合にも、必要限度で運用したい考えで、五万―十万円程度を想定している模様だ。」、こういうような記事が載っておりました。これは「法務省は、」という形で載っておるんですが、本当に五万、十万レベルで判断能力といいますか、意思能力の判断ですから、これはできるのかどうか。ここでは法務省と載っていますけれども、実際には鑑定作業をやるというのは審判でやるわけですから、裁判所の方も五万、十万でできるというふうにお考えなんでしょうか、その点いかがでしょうか。
最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 鑑定の実情を御紹介申し上げたいと思いますが、平成七年に行われました事件からとったものでございますけれども、大体五万円から二十万円で鑑定を行っていただいているものが全体の六割強あるという状況にあるようでございまして、中にはもとより高くかかっているものもあるようでございますけれども、それなりの額におさまっているということであると思います。
 しかしながら、委員御指摘のように、今後の運用におきましては、この鑑定費用を抑えられないかという問題意識は十分持っておりまして、そういった面での工夫も重ねてまいりたいと考えておる次第でございます。
国務大臣臼井日出男君) 費用の点につきましては、今御説明のあったとおりであろうかと思います。
 このたびの新しい成年後見制度のもとでは、鑑定は精神の状況の認定方法として重要なものと考えられております。鑑定をより利用しやすいものにするための改善方策や、あるいは補助制度及び任意後見制度における精神状況の認定のあり方等につきまして、現在裁判所において関係機関等とも連携をとりながら検討しておられるものと思います。
○魚住裕一郎君 今までは一応体制整備という視点からちょっとお聞かせをいただいたんですが、けさからずっと出ておりますが、成年後見制度、やはり一元的に立てるべきではないかというような思いを午前からの議論を拝聴しておっても感ずるところであります。
 そもそも、この成年後見制度というのは、主に精神、意思能力の問題ですから、自己決定を尊重しつつ残った能力をどう生かしていくか、そして健常者と同じように取引社会にも参加するというような、その援助をどういうふうにしていくか、そういうことだろうというふうに思います。
 だから、その援助の内容というものは、判断能力だけではなくしていろんな援助の必要性とか財産状況とか生活状況、健康状況、いろんなレベルに応じて具体的に必要性に即して決定されていくべきではないか、ましていわんや身上監護の必要とかあるいはその内容についてはそれぞれ全然違うのではなかろうかなというふうに思うわけであります。
 それを踏まえながらも、先ほど法務大臣、多元的なというか、三類型というような形で理由をいろいろ述べられたわけでございますが、その中で我が国の実情に即して云々というような御説明がございましたけれども、我が国の実情に即して、非常にわかるようなわからないような言葉なのでございまして、その我が国の実情という部分につきましてちょっと補足説明をお願いしたいんですが、法務政務次官で結構です。
政務次官山本有二君) 既に禁治産、準禁治産制度が制定されて百年、しかも千七百件の禁治産あるいは二百数件の準禁治産、これが多いか少ないかは別といたしまして、このような制度との連続性というものを考えた場合に適当でないかというのが我が国の実情であろうというように思います。
○魚住裕一郎君 実務の連続性といいましても、結局、全く判断能力ゼロの人、著しく劣っている人、今度は補助の類型ということになるんでしょうけれども、これはこんな鋳型にはめたような形で判断できないだろうと思うんですね、当該個人にとっても段階的によくなったり悪くなったりするでしょうし。
 そうすると、例えば宣告して数年たったら見直すというような形も必要になってきますでしょうし、何も実務の連続性というような、それは使っている弁護士なり裁判官が今までの類型の方が理解しやすいよと、それが実務の連続性じゃ余りにもわびしいと思うんです。やはり本人サイドに立って考えると、実務の連続性と言われてもさらに理解しがたい部分があるんですが、法務政務次官、もう一度お願いします。
政務次官山本有二君) 本人にとりましても一元的な制度であって、すべて裁判所等に対応をゆだねるというよりも、三類型あるときに、本人の選択肢を考えた場合にある程度予測がつくということも大事でなかろうかというように考えております。
○魚住裕一郎君 ただ、予測といっても、本人サイドからしてみるとどう援助をしていただけるかという内容の方が大事であって、私はこういうレベルというかラベルですよというようなことは必要ないわけです。
 午前中、マイナスのイメージという言葉がありました。これは言葉をかえてもやはり精神障害者には三類型、三ランクあるんだなということを真正面から認めるというような感じになるわけです。そうすると、世の中でノーマライゼーションとか言われている中で、百年たってもまた同じことをやるのというような形になるのであって、これは本人サイドの予測可能性といってもちょっとどうなのかなというふうに思うんです。本人は援助内容が中心だと思うんです。いかがでしょうか。
政務次官山本有二君) 審判開始決定に本人の同意が必要なものは補助開始の審判だけでございまして、あと保佐とか後見とかは不要というふうになっておりますが、本人としましても、特定の法律行為だけで代理権を与えていきたいという、例えば補助開始の問題を考えてみるならば、それで足りるという本人も当然いらっしゃるだろうと思います。
 そういう意味においては、私はこれだけでいいんだぞと、阿部先生のお言葉ではありませんが、本人の意思の尊重という意味におきましては、そういう選択の意思も考慮する必要があろうと私はそう思います。
○魚住裕一郎君 そうすると政務次官は、例えば保佐を申し立てたときに後見はできない、そういう審判はできないということですか、裁判所には。あるいは、後見を申し立てたにもかかわらず、いやそこまで行っていないよ、これは保佐でいいんじゃないのと、そういうような判断もできないという意味ですか。
政務次官山本有二君) 保佐開始の審判は保佐開始の審判の申し立てがあって初めてできるわけでございますので、当然に保佐開始の申請をしたならば、結果として後見が開始されたということはあり得ないというように考えております。
○魚住裕一郎君 そうすると、後見の申し立てに対しては、保佐はオーケーなんですか。
政務次官山本有二君) 後見開始の申し立ては、当然後見の開始があるかないかだけの判断になろうと思います。
○魚住裕一郎君 では、それは保佐の審判ができないということですね。
政務次官山本有二君) そのとおりです。
○魚住裕一郎君 ちょっとその辺、本人の援助をどうするかという観点からしてみると、いわゆる後見まで当たらなくても、ちょっといろんな手助けをすればいいんじゃないのかな、それはもう一度申し立てをしろというふうな形になるのであって非常に利用しづらい制度になるんじゃないのか、本人の予測可能性というようなことが言われながらその辺いかがなものかなというふうに思うんですが、何かございますか。
政務次官山本有二君) 先生の御質問の御趣旨を踏まえてお答えするならば、後見の申し立てをした場合、申請書の趣旨を一部手直ししていただけるという簡便な形で保佐開始審判が行えるという実務上の応用も十分可能であろうというように考えております。
○魚住裕一郎君 それにしても、基本法の中で知的な判断能力、意思能力にランキングをつけるというような、非常に私としてはなかなか納得できない部分がございますが、これ以上議論をしてもあれかなと思いますので、次にまた別途議論させていただきたいと思います。
 成年登記についてちょっとお聞きしたいと思うんです。
 これはけさほどから質問が出ておりますが、成年登記所は一カ所だというふうに伺っております。当分の間、一カ所に限られると。やはり利用者の側から見ると不便ではないかなというふうに思っておりまして、将来的に考えますと、利用の拡大、登記所の拡大、これについてちょっと御所見をお伺いしたいんです。
国務大臣臼井日出男君) 委員御指摘のとおり、当初は東京法務局のみで登記事務を取り扱うということで予定いたしております。将来的には制度全体の利用状況等も勘案いたしまして、指定の法務局を追加することも当然考えてまいりたいと思います。
○魚住裕一郎君 とりあえず東京一カ所だということなんですが、午前中の説明でも出頭する必要ないよ、また嘱託もあるし郵送もあるよということでもあると思うんですけれども、そういうことでありますと、何で東京なのかというのも聞きたいんです。
 私は東京選出でございまして、首都機能移転とかいろいろ言われている状況の中で大反対なんですけれども、そういう意味では東京でいいのかなと私は思っちゃうんですが、なぜこれが大阪ではないのか、何で高知ではないのか。それは郵便だし嘱託だしということを思いますと、何で東京なのか。コンピューターでいろいろ設備をつくらなきゃいけない、それは大阪だってできますよ、名古屋でもできます。何で東京なのか、そこのところをちょっと教えてくれますか。
政務次官山本有二君) 現在の成年後見の申し立ての利用件数の予測上、東京法務局が最も多数あるだろうという予測をつけたからでございます。
○魚住裕一郎君 なるほど、よくわかりました。これも一つの首都機能かなと私はとらえておきたいと思っております。
 また、阿部先生からもまた他の先行委員からもお話がございましたが、この成年後見制度の普及という部分でございます。
 啓発事業ということも、いろんな形でパンフレットをつくったりいろんな関連団体等に徹底していきたいというようなお話でございましたけれども、やはり禁治産準禁治産者を変えて新しい成年後見制度ということですから、マイナスのイメージをここで一発大きく変えると。新聞広告みたいな、政府広報みたいなそんなのも考えてもいいんではないかと私は思うわけでありますが、その辺も含めて、テレビでやれとは言いませんけれども、もう少し周知徹底方、四百万人近くいろいろ障害がある方がおられるわけですから、もう身の回りにもたくさんおられると思うんですね。そういう専門筋での周知徹底ではなくて、一般国民への周知徹底方についてちょっと御所見を承りたいと思います。
国務大臣臼井日出男君) 先般来、今、委員御指摘のとおりお答えを申し上げておりますが、専門の方々だけでわかるような、そうしたものではない、一般の皆さん方がわかりやすいパンフレット等というものもつくっていく、あるいは専門家、各団体等で理解できるような、そういった資料等もつくっていくということをいたしておりますし、また最近利用の多いインターネットのホームページ等もつくるというふうなことも考えさせていただいております。
 今、委員御指摘をいただきました新聞広報につきましては、費用対効果の問題もございますが、御指摘でございますので検討させていただきたいと思います。
○魚住裕一郎君 それでは、今度は公正証書遺言について若干お伺いをしたいと思います。
 今回、口述、口授だけではなくて手話通訳でも公正証書遺言ができるようにするわけでございます。この手話通訳さんの確保といいますか、そういう意味での体制の整備が必要かなと思っておりますが、この点についてはいかがでしょうか。
国務大臣臼井日出男君) 平成元年に発足いたしました厚生大臣認定の手話通訳士試験に合格いたしました方々が約千名おりまして、この手話通訳士を含めまして、国による手話通訳者、手話奉仕員の養成、設置、派遣事業により全国各地に合計約三千人の手話通訳者の通訳の能力を有する者がおります。
 したがいまして、公正証書遺言をするに当たって、各都道府県の手話通訳派遣協会等を通じて正確な手話通訳の能力を有する手話通訳者を迅速かつ確実に確保することが可能である、このように考えております。
○魚住裕一郎君 先般、私の部屋にも弁護士の山田裕明さんがお見えになりました。ちょっとお会いすることはできなかったんですが、論文を置いていかれました。山田裕明さんは、山本政務次官、また私と同じ司法研修所三十五期の弁護士でございます。確かに、このときには専属の通訳は研修所は認めていなかったわけでございますので、ちょっとどうかなとは思うんですけれども、非常に頑張ってこられて、手話通訳による公正証書遺言の今回の民法の改正に大きな働きをしておられて、私は同期として大変誇らしく思っているところでございますが、山田さんの立場は、現行法においてもこれは手話通訳で解釈上認めるべきでないかと。
 というのは、口授等の要件というのは、要するに公証人とか証人、それから遺言者本人の相互のコミュニケーションをきっちり図っていくんだと。その遺言者の自由に表明された意思が伝えられる、そういうような状況があればいいんではないか。それが確保されることが大事であるというような理由づけ。また外国人の場合には、外国人の外国語通訳つきで公正証書遺言を作成してもらえる制度になっておりまして、外国語というと本当にきちっと通訳しているのかどうかわからないんですが、そういうような理由づけもして、その対比の中でこの手話通訳も認めるべきであると。そもそも健聴者に比べて聴覚障害者を不当に差別するものではないか、憲法十四条に違反するものではないかと、そういうような立論なんですね。
 本当にそのとおりだなと私は思いますが、今回のこの改正の中では「通訳人の通訳による申述」という表現なんですが、これは今度は目の見えない方、口もきけない、耳も聞こえない、こういう方は点字で意思表明できると思うんですね。この点字通訳というんでしょうか、そういう表現が正しいかどうかわかりませんが、これには含まれるのかどうか。点字の方でも立派な意思表示をしっかりできる方がいるわけでございまして、こういう点字であっても同じような、今ちょっと御紹介をいたしましたコミュニケーションを図れますし、きちっと通訳できますし、あえて排除する必要はないと私は思料するところでございますけれども、この点についてお教えいただきたいと思います。
国務大臣臼井日出男君) 今、委員御指摘をいただきました点字を使った意思疎通しかできない方についての御質問でございますが、今回の改正案では、公正証書遺言を作成するに当たっては通訳人の通訳により口述することでも足りるとされておりまして、通訳は手話による通訳に限られるというわけではありません。したがって、点字の方法であっても、本人の真意に基づくことが確認できるのであれば、公正証書遺言を作成するということは可能であると思われます。
○魚住裕一郎君 ちょっと時間が五分ほどありますが、今の点、確認できましたのでこれで終わりにいたします。
福島瑞穂君 社民党福島瑞穂です。
 総理府は障害者に係る欠格条項の見直しについて検討していらっしゃいますが、今どういう状況なのか教えてください。
○政府参考人(冨澤正夫君) 免許、資格等の制度におきまして、障害があることまたは障害者であることを理由に取得を制限する等の制度を障害者に係る欠格条項と申しておりますけれども、これらにつきましては、平成五年に定めました障害者対策に関する新長期計画等におきまして、障害者の社会参加を不当に阻害する要因とならないよう必要な見直しを行うこととされております。
 政府におきましては、本年八月九日に障害者施策推進本部を開催いたしまして、障害者に係る欠格条項を有します六十三の制度につきまして一斉に見直しを行うこと及び見直しの方向を決定いたしましたところでございます。現在、それぞれの制度を所管いたします各省庁におきまして見直しを進めているところでございます。
福島瑞穂君 総理府ノーマライゼーションの観点から欠格条項の抜本的な見直しをされていることには大変敬意を表したいというふうに思います。
 先ほどから同僚のほかの先生方からも質問がありました欠格条項、今回の点でも残る欠格条項についてお聞きをしたいというふうに思っております。今回の改正で禁治産準禁治産者であることを理由とする百五十八件の資格制限のうち四十二件が廃止されますが、百十六件は資格制限として残ります。このことについてお聞きをいたします。
 リストをいただいたんですが、撤廃されたものもありますが、残るものもある。例えば公証人は撤廃をされるんですが、残るものとしてさまざまなものがあります。
 まず、株式会社の取締役にはなぜなれないんでしょうか。
○政府参考人(細川清君) これは、昭和五十六年の商法の改正で取締役の欠格条項として新しく入れられたものでございます。そのときの議論は、株式会社の取締役は非常に大きな責任がある。例えばタコ配いたしますと、取締役会で反対をしなければそれを全部会社に戻す義務があるとか、そういうことがあります。
 そういうことで、そういう責任が一つ大きいということと、もう一つは、やはりこの司法書士と保護司の場合と同じですが、その資格にふさわしい判断能力があるかどうかを個別に審査する手続が整備されているかどうかという観点から見ますと、商法の選任手続というのはそれだけでは不十分であろうと。そういう二つの理由から、今回については、ここの点については欠格条項として残さざるを得ないという判断に至ったわけでございます。
福島瑞穂君 しかし、代表取締役は業務執行権がありますが、取締役は取締役会に参加をして議論をすると。総理府の今回のノーマライゼーションの考え方にも共通すると思うんですが、絶対的欠格事由をできるだけなくして、相対的にやっていくと。初めから門前払いで、要するに禁治産、準禁治産などになれば自動的に排除されるというよりも、個別的に判断をしていくという方が私はやはり時代の流れだというふうに思っております。そういう意味で、今回残っているものについてもこれからでも結構ですのでぜひ見直しをしていただきたい。
 公証人は今回欠格事由とはならなかったわけですが、では、なぜ公証人にはなれて取締役にはなれないのかという議論も起こると思います。
 次に、今回残っているものの一つとして保護司にはなれません。これはなぜなんでしょうか。
○政府参考人(馬場義宣君) お答え申し上げます。
 今般の改正におきまして、この欠格条項を存置するという形になったわけでございますが、これにつきましては、保護司法につきましては法令上心身の故障のため職務の遂行にたえないと認められるときに保護司を解任できる、こういったような心身故障の一般的な規定が保護司法にございません。そういう意味で、保護司の能力を担保するための一般的な規定として必要最小限度こういうものを残してある、そういうことでございます。
福島瑞穂君 今のことを踏まえて、逆にお聞きします。
 資格審査の手続で能力を担保されても、資格付与後に資格を付与した職務にたえられなくなった場合は、例えば検察庁法二十三条一項、実質的、相対的な基準、すなわち回復の困難な心身の故障のために職務をとるに適しないときという条文があります。また、弁護士法十二条一号は心身の故障があり、「弁護士の職務を行わせることがその適正を欠く虞がある者」となっております。今の答弁ですと、例えば資格を取るときは別に問題がなかったけれども、その後何十年かたってさまざまな個人的に問題が生じてきた、そういう場合には個別的に判断できるわけです。
 先ほど、なぜ保護司には欠格事由が残っているのかという私の質問に対して、保護司の場合にはこのような適しない場合という条項がないので残しましたとおっしゃいました。では、逆にお聞きします。弁護士法、司法書士法それから検察庁法などではあるにもかかわらず、なぜこれらは欠格事由なんでしょうか。
○政府参考人(細川清君) 資格にふさわしい能力を持っているということはぜひとも必要なことでございます。それで、欠格条項、例えば従来ですと禁治産の宣告を受けますと、それは欠格条項ですから当然その人はその資格を失うということになるわけでございます。
 ですから、そういう事実が生じた場合に、すべて自動的に資格を取り扱っている機関にわかるのであればそれは問題がないわけですが、そうでない個別的な審査でわからないという場合もある。したがいまして、そういう場合にはやはり欠格条項として残してほしいという意見が、これらの問題について他省庁と協議した場合に皆さんそうおっしゃいましたので、最終的にはそういう結果になっているということでございます。
福島瑞穂君 しかし、総理府の見直しの中でもそうですが、障害者の方たちなどからもよく意見が聞かれるのは、初めから門前払い、初めからなれないという形ではなくしてほしいということがあるんです。というか、欠格条項をできるだけなくす方向で検討をすべきだと思いますが、ちょっとしつこくて済みません、いかがですか。
○政府参考人(細川清君) 総理府で御検討されておりますのは身体障害による欠格でございます。我々が今ここで取り扱っておりますのは、精神上の障害により判断能力が欠けている状況にある、あるいは著しく不十分な状況にある方の問題でございます。ですから、そこはおのずから別があるというふうに私どもは考えておるところでございます。
福島瑞穂君 総理府が検討していることが身体障害に限っていることはもちろんわかります。ただ、総理府が今検討している障害者の欠格条項の見直しの根底には、やはりできるだけ欠格条項を門前払いという形でなくしていこうということだと思います。その点は、今回せっかく新しい制度を設けて、もし今回の成年後見制度に意義があるとすれば、禁治産、準禁治産という負のイメージを払拭して、みんなが負い目を感じずに使える新しい制度をつくろうということであるとすれば、欠格条項、後見がついたりしたらもうできないというよりも、できる限り個別的に判断していこうという方が私は方向性としては正しいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(細川清君) 基本的な考え方といたしまして、今、福島先生が言われたのはそのとおりだと思います。
 ですから、私どもも、この法律の改正をするときには、先ほど来大臣、政務次官から御説明申し上げているような、要するにノーマライゼーションの観点ということから、今回の民法等の改正はこういう意味であるということで、担当者が全省庁を回りまして、一年間かけて御協議させていただいた。そういうことで、私たちから見ればある程度の成果が上がったというふうに思っておるわけです。
 ですから、基本的にはそういうお考えはそれで正しいと思うんですが、また個別の具体的な問題になりますと、それぞれ担当のところでそれぞれの別の考慮もある。要するに、立法上にはさまざまな価値があるものですから、それを調和させなきゃいかぬということで、その結果が現在の整備法のでき上がった姿だと、こんなように御理解いただければよろしいかと思います。
福島瑞穂君 百十六残っておりますので、ぜひ検討をお願いします。
 それで、先ほども先輩の議員から質問がありましたが、公職選挙法上についてお聞きいたします。
 実は、これは一番最大の問題ではないかと思うんですが、禁治産者の場合、今選挙権、被選挙権はありません。やはりこれは憲法上の権利ですので、それと衆議院でも議論になっておりますが、常に心神喪失の状況ではなく、きょうはやっぱりあの人に絶対投票したいとか思う状況はあるわけですね。つまり、取引をする場合の能力と、投票したい、この党には投票したいという能力は違います。選挙権の行使の方がもっと原始的に判断ができるという気もしますが、公職選挙法上なぜ今回欠格条項としていまだに残ったんでしょうか。
政務次官(橘康太郎君) お答えいたします。
 公職選挙法第十一条におきましては、禁治産者は、心神喪失の状況にあるものであることから、選挙権及び被選挙権を有しないとされているところでございます。
 今回の民法改正案では、禁治産者成年被後見人と変わるわけでございますけれども、その対象者は一致するものであり、選挙時に個別に意思能力を審査することも困難でありますことから、従来の禁治産者と同様、成年被後見人について選挙権及び被選挙権を有しないとしているところでございます。
福島瑞穂君 しかし、選挙に行けば相手方の字を書かなければいけないわけですから、私は、もし例えばいわゆる寝たきりだとか行けない場合は、その人がその人の状況で行かないわけで、その人がはっていってでも書きたいなと思えばそれは認めるべきだと思います。
 ですから、今お聞きしたいことは、禁治産というのと被後見人というのが同じものか違うものかということではなく、なぜ今回も欠格事由としたのかということをお聞きしたいと思います。
政務次官(橘康太郎君) お答えいたします。
 今回の民法改正により欠格条項の見直しが行われ、個別的な能力審査手続が整備されているものにつきましては欠格条項を削除されておりますが、十分な個別的能力審査手続を有しないものや資格等の性質上欠格条項による一律の審査を必要とするものにつきましては、欠格条項として存置されているところと承知いたしております。
 選挙権及び被選挙権につきましては、選挙時に個別に意思能力を審査することは困難であることから欠格条項を存置しているものでございます。
福島瑞穂君 質問と答えがちょっとずれていると思うんですが、私がお聞きしたいのは、なぜ意思能力がなければ選挙権、被選挙権が自動的に奪われてしまうのかということなんです。この後見制度が開始をすると、これは財産上の取引を保護するものあるいは本人を保護するものだと思うんですが、それとなぜ公職選挙法上の選挙権、被選挙権がリンクしなくちゃいけないのかというところがわからないためにお聞きしているんです。
政務次官(橘康太郎君) 選挙権及び被選挙権を有する者の範囲をどのように定めるかにつきましてはさまざまな角度から検討すべき課題ではございますが、事理を弁識する能力を欠く状況にある者について選挙権を認めることにつきましては慎重に検討すべきものと考えております。
【次回へつづく】