心神喪失者等医療観察法の条文・審議(その28)

前回(id:kokekokko:20060120)のつづき。
連合委員会と同時に、法務委員会でも審議がされていますので、その様子をみてみます。与党側委員からの質疑です。
【佐藤委員質疑】

第155回衆議院 法務委員会会議録第14号(平成14年12月3日)
○山本委員長 これより会議を開きます。
 第百五十四回国会、内閣提出、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、これに対する塩崎恭久君外二名提出の修正案、第百五十四回国会、平岡秀夫君外五名提出、裁判所法の一部を改正する法律案及び検察庁法の一部を改正する法律案並びに第百五十四回国会、水島広子君外五名提出、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の各案及び修正案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長樋渡利秋君、保護局長横田尤孝君、人権擁護局長吉戒修一君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長上田茂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
○山本委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤剛男君。
○佐藤(剛)委員 佐藤剛男でございます。幾つかの点につきまして質問をさせていただきます。
 まず、さきの通常国会で政府から提出されたのが、今現在審議しております原案であります。これは既に二十時間を超える審議が行われていることは御高承のとおりであります。そして、かなり論点がはっきりしてきているのではないかと思います。
 もともと、この触法精神障害者の処遇をめぐる問題というのは、歴史的にもさまざまな経緯がございます。例えば、昭和四十九年、一九七四年でございます、今から二十八年前、約三十年前の話でありますが、改正刑法草案においていわゆる保安処分制度の導入が提言されたことをきっかけとしまして、その是非が激しく議論されたこともあります。また、近年におきましては、平成十一年の精神保健福祉法の一部改正法の審議に際しまして、「重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇の在り方については、幅広い観点から検討を早急に進めること。」こういう附帯決議が行われております。これまで、私ども自民党におきましても、あるいは政府におきましても、各種の議論、検討の場が設けられましてさまざまな議論が行われてまいりましたことは、委員御承知のとおりでございます。
 このような中で、昨年六月に、もう一年を超えたわけでありますが、あの大阪教育大学附属池田小学校において痛ましい事件が発生したわけであります。これをきっかけに、このような者に対する処遇のあり方について、国民の関心が高まってまいりました。もっとも、この大阪池田小学校事件の犯人につきましては、責任能力に問題はなかったとして起訴せられまして、現在裁判が進行中でございます。それとは別に、このような者の処遇の問題につきましては真剣かつ早急な取り組みが求められ、適切な施策を早急に講ずることが必要である、この点については国民的なコンセンサスがあるものと思われます。
 大阪の池田小学校の事件が発生いたしました直後に、私ども自民党を初め与党三党におきましても与党政策責任者会議が開かれまして、そのもとで心神喪失者等の触法及び精神医療に関するプロジェクトチームというものが設置されました。私はこのプロジェクトチームの座長を務めさせていただきまして、プロジェクトチームにおいて関係各界からの御意見を聴取して議論を重ね、あるいは精神病院も視察しました。そして、精神医療の現場の状況を把握するなどしまして、適切な施策のあり方についての検討を進め、昨年十一月に、このような者の処遇に関する改革案、また、精神障害を有する方々一般の医療や福祉の充実強化に関する改革案というものを提案させていただきました。
 このプロジェクトチームの報告書は車の両輪みたいなことでありまして、第一に、このような者の処遇の改革を図るということで、現在、予算あるいは定員の要求がなされているわけであります。それから、両輪と言った第二の問題は、ただいま申し上げましたが、精神障害者一般に関する医療、保健あるいは福祉の充実強化を図る、こういう二つの柱があるのではないかと思います。
 そして、その第一の柱としまして、現在この法案としまして、新たな処遇決定手続の創設とか、対象者の適切な処遇施設の整備、あるいは退院後の適切な処遇体制の確立、それから司法精神医学に関します研究、研修体制の充実強化を掲げてまいっております。
 当委員会におきましても、園田委員長のもとで、過日ロンドンにおいて視察をしてきたことは御高承のとおりでございます。
 それから、第二の柱になります一般の精神障害者の保健、医療、福祉の充実のための計画の策定、実施、それから診療報酬のあり方の改善、こういうふうな問題を掲げているわけでございます。
 そして、このような与党プロジェクトチームの報告書を受けまして、政府において検討が進められ、その結果、この第一の柱について、現在この場で審議しているいわゆるこの法案という形がとられて国会に提出されている。それから、第二の一般の問題というのは、自民党の中ではダイヤモンド・プランなどと言っておったのでありますが、厚生労働省社会保障審議会において議論が進められまして、その検討結果が、現在内閣府において作成中である新しい障害者基本計画及び障害者プランに盛り込まれることと承知いたしているわけであります。
 このように、私は、個人的にも当初から今回の法案の策定に深くかかわってきた者の一人であります。このような立場から、これまでの当委員会における活発な議論はもとより、各界の御意見等をも踏まえて、まずはこの新しい、処遇制度の根幹にかかわる基本的な事柄について、この機会にお尋ねさせていただきます。
 まず第一でありますが、この法案は、心神喪失等の状態で殺人、放火等の重大な他害行為を行った者を対象といたしておりますが、このような人々を本制度による処遇の対象者に選択したことについてはいろいろな意見が現にございました。
 与党プロジェクトチームにおきましても、どのような人々を対象とすべきかについてさまざまな議論を行いました。結局、心神喪失等の状態で殺人、放火等の重大な他害行為に当たる行為を行った人を対象にすべきであるという結論に至ったわけであります。すなわち、このような人々というのは、重大な他害行為を犯したということと、そのような犯罪の加害者とさせてしまうような精神障害を有しているということの、いわば二重のハンディキャップを背負っているわけでありまして、このため、本人やその御家族等の力だけでは円滑な社会復帰を遂げることが極めて困難である、その円滑な社会復帰を促進するためには、手厚い専門的な医療を受けて、そしてその精神障害を改善することが必要不可欠であるということが考えの根底にあるわけであります。
 そこで、法務省にお聞きいたします。副大臣に伺います。この法案において、どのような理由から対象者をこのような形で選定することとしたのか、お尋ねいたします。
○増田副大臣 お答えをいたします。
 まず、いろいろと御指摘等を踏まえた御発言がございましたが、大体そのとおりでありまして、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者は、精神障害を有しているというハンディキャップに加えまして、人の生命、身体、財産等に被害を及ぼす重大な他害行為を犯したというハンディキャップをも背負っているものと言えます。
 このような者が有する精神障害は、重大な行為と結果を引き起こす原因となるものですから、一般的に手厚い専門的な医療の必要性が高いものであると考えられます上、仮にそのような精神障害が改善されないまま、再びそのために同様の行為が行われるようなこととなりますと、そのような事実は本人の社会復帰の重大な障害となるのであって、やはりこのような医療を確保することが必要不可欠だと考えております。
 そこで、このような者につきましては、国の責任において、手厚い専門的な医療を統一的に行い、退院後の継続的な医療を確保するための仕組み等を整備することによりまして、円滑な社会復帰を促進することが特に必要であると考えられます。
 心神喪失の状態で重大な他害行為を行った者を本法律案における対象者と、このようにしたのは以上のようなわけでございます。
○佐藤(剛)委員 副大臣、ありがとうございました。
 また、この法律案では、処遇の要否それから内容の決定というのは裁判所が行うこととされております。そしてまた、その裁判所は、我が国では初めて職業裁判官以外の医師、お医者さんを加えた合議体とすることとされたわけであります。
 与党プロジェクトチームにおいても、処遇の要否、内容についてだれが判断すべきかについてさまざまな議論を行いました。この制度の基本が、精神障害者に対して適切な治療を行うことによってその精神障害を改善し、そして本人の社会復帰の促進を図るということが必要である以上、医師等の医療関係者の判断が極めて重要である、そのような者が決定に加わることが必要不可欠であるということが一方であります。
 この問題については、これまで司法と医療という十分な連携が図られておらなかった、それでお医者さんの方に過重な責任が負わされていたわけでありまして、裁判官等の司法関係者が決定に加わるべきであるとの御指摘もされてまいりました。そして、結局、地方裁判所において、裁判官あるいは精神科医ソーシャルワーカーとかPSWとか、いろいろそれぞれの場所においてあるわけでありますが、決定すべきであるということの結論に達したわけであります。
 そこで、法務省に再びお伺いします。この法案において、処遇の要否、内容を地方裁判所において裁判官と医師の合議体により決定することとした理由について、再度、確認をお尋ね申し上げます。
○増田副大臣 お答えをいたします。
 この法案による処遇は、継続的かつ適切な医療等を行うことにより本人の社会復帰を促進することを最終的な目標とするものでありまして、その処遇の要否の判断に当たりましては、医学的知見が極めて重要でありますことは当然であります。
 自由に対する何らかの形での制約や干渉を伴うものでもありますので、医学的な立場からの判断の合理性、妥当性を吟味することに加えまして、対象者の生活環境にかんがみ、継続的な医療が確保されるか否か、同様の行為を行うことなく社会に復帰することができるような状況にあるか否かといった、純粋な医療的判断を超える事柄をも考慮することが必要であると考えられます。
 そこで、医師による医療的判断にあわせて、裁判官による法的判断が行われ、また両者のいずれの判断にも偏ることがないようにすることにより、両者が共同して最も適切な処遇を決定することができる仕組みとすることが重要であると考えられますことから、一人の裁判官と一人の医師により合議体を構成することとしたものであります。
○佐藤(剛)委員 それでは次に、厚生労働省にお伺いいたします。
 ところで、この法律は、処遇の決定手続や指定医療機関あるいは精神保健観察制度等々を定めているわけでありますが、このような制度を定める目的は対象者に適切な処遇を行うためであり、この法案の成立後、対象者の方々に対して間違いなく適切な処遇が行われるということを確認する意味で、指定医療機関における医療、それから、ここから退院した後の地域社会において行われる処遇について、そういう点についてお尋ねしたいわけであります。
 まず、指定医療機関についてお尋ね申し上げます。
 この法律の本質は、対象者が医療上の必要性から必要な限度において医療を受けることにあるということを考えますと、本制度において医療の実施を担当することとなる指定医療機関、とりわけ指定入院医療機関の役割というのは、本制度の効果的な運用を確保する上で大きなキーポイントになる、かぎになるわけであります。したがいまして、指定入院医療機関が貧弱なものとなれば、本制度は有効に機能せず、本制度自体が破綻しかねないと言っても過言ではないんじゃないかと思われます。
 こうした観点から、本法案に基づく指定入院医療機関が対象者に対して手厚い専門的な医療を提供する施設であるとの確認をしておきたいと考えています。
 与党プロジェクトチームの報告書においても、「対象者を適切に治療するため、医療従事者や設備を充実した専門治療施設を整備する。」ということを提言しているわけであります。これは、不幸にもその精神障害のために重大な他害行為に及ぶに至った者に対しまして、手厚く専門的治療を確保することによって、そうした人たちの早期の社会復帰を促進することが可能となるということの考えに基づくものであります。
 本法案に反対している団体等の反対理由の一つとしまして、政府案における指定入院医療機関は隔離収容を目的とした施設であって、手厚い人員配置も患者を監視するためであって、満足な治療も行われない、こういう主張を耳にいたします。そして、きょうも路上で反対のペーパーを配って、私もいただいたわけであります。
 そこで、政府としましても、この指定入院医療機関において手厚い専門的な医療を行うこととしていますが、どのようなことを想定しているのかをお尋ねいたしたい。副大臣にお願い申し上げます。
○上田政府参考人 本制度において、国の責任において指定医療機関で行う医療は、患者の精神障害の特性に応じ、その円滑な社会復帰を促進するために必要な医療であります。
 例えば、指定入院医療機関においては、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医療関係者の配置を手厚くすることなどにより、医療施設や設備が十分に整った病棟において高度な技術を持つ多くのスタッフが頻繁な評価や治療を実施するものであります。
 また、医療費についても、患者本人が負担することなく全額を国が負担することとされており、一般の医療機関に比べ、手厚い精神医療を行うものであります。
 さらに、附則第三条第一項の修正案に示されていますように、本制度は、最新の司法精神医学の知見を踏まえた専門的なものとすることとしており、例えば、欧米諸国の司法精神医療機関で広く実施されている精神療法を導入するなど、高度かつ専門的な精神療法を行うこととしております。
○佐藤(剛)委員 ただいまの答弁はよく了解しました。
 また厚生労働省にお伺いするわけでありますが、指定入院医療機関において医療を確保していくためには、一般の精神病院に比べまして、はるかに多数の優秀な人材を集める必要があると考えられます。
 それで、指定入院医療機関の人員配置基準について、第十六条第一項に規定される厚生労働省令によって定められることになると思いますけれども、司法精神医学が進んでいる諸外国の例も参考にして定めていくということが重要であります。これは、園田調査団がロンドン等にこの夏に行ってきた目的もそういうことであります。
 諸外国の同様の施設において人員配置基準がどのようになっているのかということをお尋ねいたしたいと思います。
○上田政府参考人 指定入院医療機関における具体的な人員配置基準につきましては、現在検討を行っているところでありますが、司法精神医学が確立し、手厚い医療を実施しています諸外国の例も参考としつつ、平成十五年度中には適切な配置基準を定めることと考えております。
 なお、外国の例といたしまして、例えば、イギリスの地域保安病棟におきましては、入院患者二十五名に対し、医師が四名、看護職員が日勤では八名、準夜勤で八名、深夜勤で六名、また、精神保健福祉士二名、臨床心理技術者二名、作業療法士が二名、このように配置されているというふうに聞いているところでございます。
○佐藤(剛)委員 その点は一般医療との問題で非常に重要な点でございますから、ひとつしっかりと人員配置基準というのを定めていただきたい。
 それから、また厚生労働省に引き続きお聞きします。
 指定入院医療機関において治療に従事するスタッフというのは、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対して、その病状に応じた最高の医療を提供するということによって患者の社会復帰を促進していかなければならないということは当然であります。そのためには、先ほど申し上げました司法精神医学についても精通している必要があるんですね。しかしながら、我が国における司法精神医学というのは、同僚の議員が質問されておりましたけれども、諸外国に比べて低い水準にあると言われているわけであります。本法案を施行するに当たっては、その充実、振興は不可欠なものではないかと思うわけでございます。
 政府としては、日本における司法精神医学の現状をどのようにとらえており、また、それを踏まえた上で、本法案の施行に向け、我が国における司法精神医学の充実にどのように取り組んでいくのか、具体的な構想をこの機会に明確に出していただきたい。
○木村副大臣 おはようございます。
 佐藤先生がこの問題に対して大変一生懸命取り組んでおられますことに敬意を表する次第でございます。
 我が国の司法精神医学につきましては、従来は責任能力の鑑定に主眼が置かれておりました。いわゆる精神鑑定というものですね、それにこの主眼が置かれておりましたものですから、今後は、患者の治療や社会復帰促進の観点からその充実を図ることが重要であると考えておるような次第でございます。
 このため、厚生労働省におきましては、本年度から三カ年計画で実施している司法精神医学に関する研究への援助を行います。これを行いますとともに、来年度から、国立精神・神経センターにおきまして司法精神医学に関する研究部を我が国として初めて設置し、臨床、疫学、社会学、心理学などを合わせた総合的な観点から研究を進めていく予定でございます。
○佐藤(剛)委員 ただいまの木村厚生労働副大臣の力強い答弁がございました。ひとつよろしく取り組んでいただきたいと思います。木村副大臣におかれましては八面六臂の活躍をされておるわけでありますので、何とぞよろしく。
 それで、次に、最後の質問になってしまうと思いますが、法務省でございますけれども、一つは、処遇制度において、地域社会への円滑な社会復帰を促進するため、保護観察所が行うこととされています生活環境の調整ですね、法律でいいますと百一条についてであります。具体的にどのようにして退院後の生活環境を調整しようと考えているのか。保護局長、答弁願います。
○横田政府参考人 お答え申します。
 本制度におきましては、対象者の円滑な社会復帰を図るためには、対象者が指定入院医療機関に入院中から、保護観察所が地域社会における処遇のいわゆるコーディネーターとして、地域社会における医療、保健及び福祉の関係機関と連携して退院後の生活環境の調整を行うことが必要不可欠であると考えております。そういうことから、法案の第百一条におきまして「生活環境の調整」という言葉が使われているわけでございます。
 そこで、お尋ねの生活環境の調整の具体的な内容ということでございますけれども、これはもちろん個別具体的な事案によって異なってくるわけでございますけれども、例えば、保護観察所が指定入院医療機関の管理者やその医師と協議をいたしまして、入院中の対象者やその家族と面談するなどいたしまして退院後の居住地に関する希望を聴取し、そして、希望する居住地に住めるように、そこに確保できるように、もし障害があればそれを取り除くといったようなことをいたしまして、その生活環境を整えるということがございます。
 そのようにして居住地も決まりまして、家族等の引き受けがあればまたそれはよろしいんですけれども、中には家族等の引き受けが得られないというようなこともございますので、そのような場合には、また関係機関とも調整するなどして、通院の治療が確保できるような場を設定するということもございます。
 さらに、指定医療機関あるいは都道府県、市町村長、具体的には精神保健福祉センターであるとか保健所であるとかあるいは社会福祉事務所であるとか、さまざまな機関がございますけれども、そういういろいろなこの種の援助に当たっている機関等とも連携協力いたしまして、対象者が退院後に必要となる医療、保健及び福祉の措置が受けられるようにあっせんをしたり調整をしたりといったようなことをする考えでおります。
 以上でございます。
○佐藤(剛)委員 最後に、あと私の意見だけを申し上げまして、終わらせていただきます。
 この法律案につきまして、私、プロジェクトチームの座長として関係方面の意見を聞いて、そしていろいろな立場の御意見も伺いました。すべての方々に十分に御満足いただける施策を直ちに講ずることは大変に難しいということを身にしみて感じております。
 委員各位の中には、この法案の内容にさまざまな御意見をお持ちの方もおられると思います。しかし、この法律は、いろいろな御意見を踏まえてその中で最善の制度を創設しようというものでありまして、そしてまた、先ほど申し上げておりましたように、一般の精神医療、保健、福祉の充実強化、いわゆるダイヤモンド・プラン、こういうものと、それから今回の法案により行うという専門的な医療の充実ということがいわば重要であります。約二十八年間、これはみんなさわらなかった、刑法の保安処分で。そういうことじゃなくて、これは、役所の方々もこの問題にこれまで努力して法律が通らないとなると、私も役人やっておりましたからあれですが、もうさわらない、時間ばっかりかかっていてあれしても充実しない、こういうことは日本の精神医療のために非常にゆゆしきことでありますので、どうかこの法案を健やかに成立させるということが私たち国民から選ばれた政治家の責務であると確信いたしていることを申し上げまして、いろいろまだ質問したいことはあるんですが、私の質問を終わらせていただきます。
 以上でございます。

【左藤委員質疑】

第155回衆議院 法務委員会会議録第14号(平成14年12月3日)
○山本委員長 次に、左藤章君。
○左藤委員 自由民主党左藤章でございます。
 修正案に対して質問をさせていただきたいと思います。
 修正案により、本制度による入院の要件を、入院をさせて医療を行わなければ心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認めた場合から、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰することを促進するため、入院をさせてこの法律による医療を受けさせる必要があると認めた場合に修正がなされております。この修正をした理由を提案者からお答えをお願い申し上げます。
○塩崎委員 先週の金曜日にも質疑でお答えをいたしましたけれども、政府案の際には、入院等の要件につきまして、今御指摘のとおり、「再び対象行為を行うおそれ」、この有無のみが要件になっていたわけでございます。それがために、例えば不可能な予測を強いるんじゃないかとか、あるいは漠然とした危険性のようなものを感じる人もその対象にして社会から隔離しようとするんじゃないかとか、あるいは危険人物としてレッテルを張るようなことになるんじゃないか、こういうようなさまざまな誤解や御心配をいただいていたわけでございます。
 そこで、今回の修正は、本人の精神障害を改善するための医療の必要性が中心的な要件であって、それを明確にする。そして同時に、このような医療の必要性の内容を限定し、精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰できるように配慮することが必要な者だけがこの対象となることを明確にする。やはり、入院等の要件を明確化するとともに、本制度の目的に即した限定的なものにする。こういうことで修正をさせていただいたということでございます。
○左藤委員 よくわかりました。
 それと、政府案の第一条に、本制度の処遇に携わる者は対象者の円滑な社会復帰に努めなければならないとの責務に関する規定を加えることになりました。これは私は賛成なんですが、改めて確認をさせていただきたい。処遇に携わる者には、指定医療機関の医師や社会復帰調整官はもちろん、処遇の要否、内容を決定する裁判所の合議体の裁判官や医師も含まれるべきであるという考えがあります。先ほど言った医師が含まれると考えるがどうですかということです。
 それと、精神保健観察官の名称を社会復帰調整官に変更なさいました。これの理由とその資格を法律に明記したということの理由をはっきりしていただきたいと思います。私も、この調整官に関して、必要な専門的な知識を十分に有して、また十分な数を確保する必要もあると思うんですね。ひとつこの辺の御意見を賜りたいと思います。
○塩崎委員 ただいま御質問の責務のことでございますが、本制度は、言うまでもなく法案の第一条に規定されておりますように、適切な医療を継続的に行う、このような医療を確保するために必要な観察等を行うということで、本人の病状の改善とこのような病状の改善に伴って社会復帰を促進するという最終的な目的があるわけであります。
 今回、この政府案に対しましていろいろな御心配があって、御批判もあったわけでありますが、やはりそれぞれ明確な責務を与えることによって誤解を解こう、こういうことでございました。したがって、この制度に携わる者は、当然、このような本制度の目的を踏まえてこの処遇の対象となる者の円滑な社会復帰に努めるべきである、このことから、この点を法文上明確にするということをまずする。本制度の処遇に携わる者の自覚を促すとともに、その責務を明らかにするためにこのような規定を加えたということでございます。
 だれが対象かというと、指定医療機関のお医者さんとかそれから社会復帰調整官、そして今お話ございました新しい合議体の裁判官、そしてお医者さん、審判員、これも当然含まれるということでございます。
 それから、保護観察所は、今までと少し趣は違いますが、地域社会における今回の処遇のいわばコーディネーターとして、精神保健観察のみならず、例えば生活環境の調整であるとか、それから処遇の実施計画をつくらないといけない、それから指定医療機関あるいは保健所、こういったところの協力体制を整備する、あるいはそれぞれの関係機関の連携を確保するためにこのコーディネーター役をするわけでございます。
 そういうときに、ここで携わる者が、これまでの名前でいきますと精神保健観察官、観察官という言葉が、いかにも監視をしている、こういう旧来型のイメージが強かったものですから、ここはやはり社会復帰調整官と。たかが言葉かもわかりませんが、しかしされど言葉でありまして、これについては、事務の内容にかんがみまして、精神保健福祉士の有資格者を初めとする、この制度による処遇の実施に当たって必要な精神保健あるいは精神障害者福祉などに専門的な知識を持っている方々がやはり必要不可欠であろうということで、精神保健福祉士、あるいは場合によっては看護師の皆さんでこういう資格というか条件を満たしている方々などは当然入ってくると思うわけでありますけれども、こういった方々についていただいて、そして法文上も明確にそれをあらわすためにこの名前にさせていただいた、こういうことでございます。
○左藤委員 今言われたとおりだと思います。そういう専門的な知識を有して、しかもこれは数もかなり必要じゃないか。やはり、十分な手当てをしないと今おっしゃった趣旨もできないと思いますので、その辺はまた改めてお願いを申し上げたいと思います。
 次に、政府案の第三十一条を修正し、審判において本人の精神障害の状況に応じて必要な配慮をしなければならないということを明記していますが、このような修正を行うことになった理由を改めてちょっとお聞きしたいと思います。
 そして、この必要な配慮というのは具体的にどんなことをおっしゃっているのか、これも説明をお願い申し上げたいと思います。
○塩崎委員 これまで措置入院制度のもとでは医療のサイドにかなりの負担をかけてきたわけでありますが、今回これを司法の場というか裁判という形で裁判官も入って、審判で入院等が必要かどうかを判断する、こういうことになったわけでありますけれども、そうなりますと、いろいろな精神障害者を対象とした審判を行う際に、その必要性というのは、やはりこれまで一般の犯罪等の場合とは少し違う配慮をしなければいけないだろう。こういうことで、特に、その最終目的が社会復帰を促進するという目的でもございますから、いろいろな精神障害、いろいろなパターンがあるんだろうと思うんですが、これを有することが想定されるということでありますので、それぞれの状況に十分な配慮をして、今回の法案のプロセスである審判を受けていただくということにならなければならないし、その際には、当然、人道上の配慮も含め、人身の自由を奪うということもございますので、何しろ、原点は、精神障害者の皆さんの状況に配慮をするということを明確にすべきじゃないか、こういうことだったかと思います。
 では、どういう配慮をするんだということでございますけれども、当然、さまざまな障害に応じて、例えば、審判の場で相手のペースに合わせて議論を進めていくとか、そういうことから始まって、病院で審判期日を開かなければならないときにはその必要に応じて病院に出向いて行うというように、臨機応変に障害者の状況に応じてやらなければいけないということで、この修正をさせていただいたということでございます。
○左藤委員 次に、政府案の第五十条第二項に規定されています入院患者側の退院等の申し立ての期間を、三カ月と最初あったと思うんですが、これを削除しましたね。これの考え方をひとつお願いを申し上げたいと思います。
○塩崎委員 もともと、政府案に対する御批判の中心は、かつての保安処分ではないかというようなこともあって、要は、入ったら出てこれないんじゃないか、こういう御懸念があったと思うんです。それは医療の問題にも起因するところもたくさんあって、今回そういうことで附則を加えて、医療についても配慮をすることを明確にしたわけでございます。
 今回、この申し立ての期間の制限を削除いたしましたのは、この議論の過程でやはりさまざまな御批判がありました。今申し上げたように、不必要に、必要がないのに入ったままになるんじゃないだろうかというようなこともございました。それから、不必要に通院を強いられるのではないかというようなこともある。そういうことで、今回、三カ月でございました退院、あるいは六カ月でありました通院の申し立ての制限について削除をするということにしたわけでございます。これは、やはり正当な理由があれば、入ってすぐにその精神障害の状況が変わってもうこの医療が必要ないということになれば、直ちに出る申し立てをできるようにするということを明確にするために、この三カ月、六カ月の申し立ての制限を削除いたした、こういうことでございます。
○左藤委員 よくわかりました。やはりそうした制限というのは撤廃をすることが適切じゃないかなと私も思います。
 しかし、仮に、入院患者が入院の決定を受けた直後に、その症状が全く変化がないにもかかわらず退院の許可の申し立てをするようなことがあるかもしれません。そういうときに、裁判所の事務処理に支障が出たり、他の審判が滞ったりするようなことも心配されますけれども、このような場合、裁判所はどのような判断をなされるのか。これについて塩崎先生のお考えをちょっと聞かせていただきたいと思います。
○塩崎委員 今御指摘のような御懸念というのは当然あるわけでありますが、今申し上げましたように、人それぞれいろいろな障害を抱えておられるわけでありますので、一概にどうだということを申し上げることはなかなか難しいんだろうと思います。つまり、個々の事案でそれぞれ判断をしなければならないということであろうかと思います。
 しかし、一たん入院ということを仮に決めた場合、その直後に、何らの事情の変化がないままに申し立てが行われるような場合には、やはりそれは不適法として却下する決定をすることもあり得るということであろうかと思いますけれども、あくまでも、やはり個別の、ケース・バイ・ケースで考えていくべきことかなというふうに思っております。
○左藤委員 ありがとうございました。
 ちょっと話が飛ぶので申しわけないんですけれども、裁判所の云々で、ちょっと話を飛ばさせていただきます。
 実は、十一月の二十四日に新聞に出ましたのですが、大阪で、法律扶助協会の大阪支部において、景気が悪過ぎるということもあるんでしょう、自己破産の事件が急増して法律扶助協会に援助を申し立てる方が増大して、財政上の問題だと思いますが、十二月六日で窓口を停止せざるを得なかったとの報道があったんです。
 これは大変なことだと私は思うんですが、これについて法務省はどういう対処をなさるか、財政上の問題でございますので、ひとつお答えをお願い申し上げたいと思います。
○吉戒政府参考人 お答え申し上げます。
 民事法律扶助につきましていろいろ御心配いただいておるところでございます。これは、最近の経済不況に伴いますリストラでありますとか倒産によりまして自己破産事件の需要が急増いたしております。先生御指摘のとおり、扶助協会の大阪支部におきましては、新聞が報道しているような事態となっているものと承知しております。
 こういうふうな自己破産事件の需要の急増に対しまして、適切に対処いたしたいというふうに考えております。そのためには、民事法律扶助事業は、失業者の救済を支援し、再就職のための環境整備を図る、雇用面でのセーフティーネットの役割を果たす側面も有するものとして、今般の補正予算におきまして所要の予算措置を要望いたしております。それと同時に、これは、実際やっていただくのは弁護士会、弁護士さんでございますので、弁護士会などの協力も得ながら、今後、民事法律扶助事業の発展に力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。
○左藤委員 わかりました。
 予算の問題は非常に厳しい問題がありますけれども、やはり困っている人たちを助けるというのが扶助協会のお仕事だろうと思いますので、その辺の手当ても、ひとつ重ねてお願いを申し上げたいと思います。
 それでは、申しわけないんですが、厚生労働省側にちょっと質問をさせていただきたいと思います。
 実は、今度の法案ですが、不幸にして心神喪失等々の状態で重大な他害行為を行った者に適切な医療を行い、社会復帰を促進するというのが目的なんですけれども、その社会復帰を促進するためには、やはり立ちおくれている地域の精神保健福祉施策の充実が非常に大切だと私は思うんですね。
 二十一世紀の精神保健福祉ビジョンというのが残念なことに我が国にはありませんし、ノーマライゼーションの理念を実現し、一九九一年に決議された国連の原則に基づき、施設から在宅、地域へとの方向性が確実なものにしなければならない方向だと私は思います。
 法案が地域精神保健福祉施策と車の両輪であるとすれば、やはり社会復帰が可能となるように地域社会を支援しなければならない、このように思うんです。
 現在、社会保障審議会において、十年間で、社会的入院、七万二千人と言われているんですが、この解消と精神病棟の削減について審議をしていると聞いております。十年ではちょっと遅いという指摘もあると思います。また、OECDの比較でも、我が国の精神病棟は、七万床が減少したとしても、やはり多過ぎるという指摘もあるんですね。こうした指摘を踏まえ、十年計画を限りなく短縮していただきたい。
 そして、具体的な施策を推進して、その後も引き続き計画的な取り組みを行うことが必要ではないかと私は思うんです。その際、地域生活支援を基本とした施策を柱に、住まいの確保や在宅福祉サービスの充実が必要じゃないかな、このように思いますけれども、厚生労働副大臣はどのようにお考えでございましょうか。
○木村副大臣 今御指摘のように、条件が整えば退院が可能な者であるとされている人は約七万二千人おいでになるわけでございまして、このことは極めて重要な課題であると考えておるところでございます。
 このため、先生御指摘のとおり、ホームヘルプサービスなど在宅生活を支援する福祉サービスの充実、グループホーム、福祉ホームなどの住まいの確保、生活訓練施設、地域生活支援センターなど社会復帰施設の整備、精神科救急システムの整備、また、私は、クリニック等がもっともっと地域にふえて退院された方々が気楽にぱっと相談に行ける、そういうような地域医療というのが本当に重要じゃないか、こう考えておるわけでございますけれども、新しい障害者プランにおきましても、可能な限り具体的な数値目標を掲げまして、先生が御指摘のように、今後十年間においても、速やかに解消が進むように取り組んでまいりたい、このように思っておるんです。
 ただ、速やかにというのは非常にいい言葉でありまして、余り急激に、例えば来年、再来年どうしろなんといったってできるわけありませんから、その辺のことはまた十分に御理解をいただけるんじゃないか。やはり一定期間の中において、まさに速やかに解消していくのが重要じゃないかな、このように思っているわけであります。
 いずれにいたしましても、社会的入院の解消のためには、障害者施策だけではなくて、一般の福祉や医療施策などとの有機的、総合的な連携が重要である、このように思っておりまして、厚生労働省挙げて全力で取り組んでまいりたい、このように思っておるような次第であります。
○左藤委員 ありがとうございます。本当に、減らしたい、こういうことはあるんですが、地域によって、私の地元でもあったんですけれども、そういう施設を受け入れるということになると、地元の人は賛否両論があるわけです。つまり、偏見がかなりあるわけですね。そういうものは、地域の我々もしっかりやらなければなりませんけれども、やはり厚生労働省の方も、いろいろな方々に御理解をいただけるように、ひとつそういう施設を受けていただくように、また、先ほど申し上げましたように、社会的入院の患者が減るようにひとつお願いを申し上げたいと思います。
 次に、精神病床の機能区分と人員配置基準の引き上げについてちょっとお願いを申し上げたいと思います。
 この法案の指定入院医療機関は手厚い人員を配置するということになっています。手厚い配置というのは、重大な他害行為を行った者だけではありませんし、例えば、救急などの急性期病棟を初め、薬物専門治療病棟、児童思春期病棟、身体合併症病棟等、こっちの方も手厚い体制が必要じゃないかなと私は思うんですね。また、いわゆる自傷他害のおそれを要件とする強制入院を行う措置入院指定病院の人員配置基準をやはりもっと高くする必要があるんじゃないか。そうしないと、重大な他害行為を行えば手厚い治療が受けられますけれども、それ以外は低いレベルの治療体制での治療が行われるというのは、やはりバランスに欠けるんじゃないかな、このように思います。
 また、医療関係者の話をお伺いしますと、治療抵抗性や処遇の困難さというものが現場では非常に問題になっているという指摘もあるんですね。そういう指摘を考えますと、精神病床の機能区分を行って、病床の機能にふさわしい人員配置をやはり考えなければならない、このように思います。この辺について、副大臣の御見解をお願い申し上げたいと思います。
○木村副大臣 精神病床の人員配置につきましては、平成十二年の医療法の改正によりまして、従来の精神科特例を廃止いたしまして、新たな基準を設け、人員配置をより手厚いものとしたわけでございまして、具体的には、精神病床を二つに分けました。大学附属病院及びいわゆる総合病院の精神病床と、その他の精神病院、いわゆる単科の精神病院に分けたわけであります。
 前者につきましては、一般病床と同じ基準を平成十五年九月から適用することといたしまして、後者につきましては、療養病床と類似の基準を平成十八年の三月から適用することとなっているようなわけでございます。要するに、簡単に言いますと、急性期とそれから慢性とを分けた、こういうようにお考えになっていただければいいんじゃないかと思うわけであります。
 このため、現時点では、新基準に対応して体制の充実に努めることがまず第一だと考えます。さらに、その後でございますけれども、その後の人員の体制のあり方につきましては単科の精神病院がポイントになる、私はこのように思っておるような次第でございまして、これにつきましても、先ほど言った大学附属病院や総合病院の精神病床と同じような仕組みがとれるかについて今後検討を進めてまいりたい、このように思っているような次第でございます。
○左藤委員 わかりました。ぜひとも、今後検討する精神病床の機能区分などの検討に際しては、いろいろな関係者、関係団体があると思います。十分ひとつ意見も聞きながら御配慮を賜りたい、このように思います。
 また、この間、さまざまな課題が刑事司法と精神医療の問題に関して指摘されましたけれども、例えば、起訴前の精神鑑定及び刑事施設等における医療提供体制等、刑事司法と精神医療の運用状況の課題についても、今後とも必要な検討、検証を加えることが必ず必要じゃないかな、このように思うんです。これについて、ちょっと法務省の御意見を賜りたいと思います。
 それと、精神保健福祉法措置入院制度のあり方についても検討を行ってほしいと思います。これについて、厚生副大臣の方からお答えをお願い申し上げたいと思います。
○増田副大臣 起訴前の精神鑑定については、事案の内容や被疑者の状況等に応じまして、適切な手段、方法を選択する必要があると考えております。特に、簡易鑑定のあり方については、さまざまな御意見があることにかんがみまして、さらにその適正な運用が行われるよう、専門家の意見等を十分踏まえつつ、捜査段階においても精神鑑定が行われた事例を集積しまして、精神科医等をも加えた研究会等においてこれを活用する、このように進めていきたいと考えます。
 また、検察官等に対するいわゆる司法精神医学に関する研修を充実させること、また、鑑定人に被疑者に関する正確かつ必要十分な資料が提供されるような運用を検討することなどの方策を講ずることを検討したいと考えております。
 そのほかにも、刑務所や拘置所における精神科医療の問題等を十分踏まえながら一層の充実に努めてまいりたい、このように考えます。
○木村副大臣 御指摘の精神保健福祉法措置入院制度等のあり方についての検討のお申し越しでございますが、現行の措置入院制度について、制度の運用状況について地域的なばらつきが大変多い、そういう問題点が指摘されているのはごもっともなことでございまして、こうした問題点を改善するため、措置入院制度の現状に関する実証的分析を踏まえ、措置入院の診断書、マニュアル等の見直し、作成、精神保健指定医研修の改善、精神医療審査会の充実、精神病床の機能分化等に取り組むこととしたいと思っております。
 このように、従来からさまざまな努力と改善とを図ってきておるところでございますが、本法案が成立いたしましたら、本制度と精神保健福祉法とに基づく医療が有機的、一体的に運用されますようにさらに一層の改善、努力を図ってまいりたい、このように思っているような次第でございます。
○左藤委員 まだ質問したいことがたくさんありますけれども、時間がないのでこれにて御無礼しますけれども、最後に、五年後の見直しについては、いろいろな状況、情報開示も踏まえて検討をしながらひとつお願いを申し上げて、質問を終わらさせていただきます。どうもありがとうございました。

【福島委員質疑】

第155回衆議院 法務委員会会議録第14号(平成14年12月3日)
○山本委員長 次に、福島豊君。
○福島委員 副大臣、また提案者の皆様には、大変御苦労さまでございます。
 先ほども佐藤先生からお話がございましたけれども、私も、与党のプロジェクトチームで検討させていただいた一人でございます。本法案に対して今般修正案が出されたということを私は評価いたします。この委員会におきましてさまざまな議論がなされたわけでございまして、法案に対して懸念があるというのであればその懸念を払拭すべきであろうと思いますし、一人でも多くの国民の皆様に御理解をいただけるような努力をしていただいたということに対して、敬意を表したいと思っております。
 いまだに、この法案に対して、また修正案に対しても意見が分かれているわけでございます。日本の精神医療の水準というものがまだまだ不十分ではないか、そしてまた精神障害者の福祉施策、特に社会復帰にかかわる福祉施策というものの充実が必要だ、こういったところは大方の方の御理解をいただいていると思いますけれども、しかしながら、精神医療と司法というものがどうかかわるべきかという点についてはまだまだ意見の相違というものがある、この委員会における議論を要約するとそういうことになるのではないかというふうに私は思っております。
 しかしながら、この法案の検討の段階で、私も幾つかの精神病院を訪れ、そしてまた実際に精神医療を担っておられる医者の方々にお話をお聞きいたしました。現在の制度というものはやはり問題がある、触法行為を重ねた精神障害の方、現在専ら医療の世界でこれをお引き受けしているけれども、しかしながら、その制度を何とか見直してほしいというのが現場からの痛切な声であったというふうに私は思います。
 もちろん、見直すといいましても、かつてのような、保安処分といったような、国民の皆様に大変な心配と不安を与えるようなあり方であってはならないということは当然でございますが、実際に携わっておられる医師の方々からは、そしてまた医療関係者の方々からは、一日も早く制度を見直して新しい制度をつくってほしいということが率直な意見であっただろうというふうに私は思っております。
 その意味で、修正を行った上でぜひとも成立を図っていただくべきであると思いますが、それに際しても、司法と精神医療というものはどうかかわるべきなのか、最も鋭く対立している点について、今般修正案をお出しいただきました提案者の方は、どのように受けとめ、そしてまた、それについてどのように国民に対して説明するのか、この点をまずお聞きいたしたいと思います。
○漆原委員 本法律案につきましては、これまで既に二十時間を超える審議が行われてきましたが、その中で、最も対立する本質的な問題として議論が行われた問題は、本制度の趣旨、目的に関するものではなかったのかなというふうに考えております。
 この制度が、心神喪失等の状況で重大な他害行為を行った者について、医療を行うため本人の同意がなくとも入院させるというふうな趣旨のものですから、これが、刑罰にかわる制裁を科するものではないか、あるいは、社会防衛を目的とする保安処分ではないのかというふうな観点からの議論がなされてきたと思っております。
 これに対し、政府からは、本制度は本人の社会復帰を促進することを最終的な目的とするものであって、刑罰にかわる制裁を科すものではない、あるいは、社会防衛を目的とするものではない、また、改正刑法草案が定める保安処分とは違うんだというふうな説明がなされてきたところでございます。
 今回の修正案は、この点に関する議論を踏まえて、本制度が本人の社会復帰の促進を目的とするものであることをさらに明確にするため、入院等の要件について、本人の社会復帰のための医療の必要性が中心的な要件であることを明確にしております。また、本制度の処遇に携わる者は、対象者が円滑に社会復帰をすることができるように努めるべき責務を有する、あるいは、付添人の選任また審判手続において、対象者の精神障害の状態を配慮すること等を明記することにしております。
 このような修正によりまして、本制度は本人の社会復帰の促進を本来的な目的とするものであることがさらに明確になったと考えておりまして、この点について、各委員の先生方にも、ぜひとも御理解賜りたい、また御理解を賜れるものというふうに考えておるところでございます。
○福島委員 今の御説明を要約すると、医療とそしてまた社会復帰、この二つの目的というものを明確にするために修正案というものを提出したということではないかと思います。
 となりますと、直ちに出てまいりますのは、新たに審判機関によって判断される処遇というのは、これは医療的な判断ではないですかと。医療的判断であるとすれば、そこで裁判官が関与する必要性はないのではないか。これは先般の委員会でも御指摘あったかと思います。そしてまた、第十三条では、裁判官は、「法律に関する学識経験に基づき、その意見を述べなければならない。」このようにされております。
 ですから、どのような医療をするのか、そしてまた社会復帰をどうするのかということが目的だというふうにおっしゃっておられるわけですから、なぜここで裁判官が関与する必要があるのかということについて、より明確に述べていただく必要があると思います。
○漆原委員 おっしゃるとおり、修正案の要件に該当するかどうかにつきましては、医学的見地からの判断が極めて重要なことでありますが、反面、医療を強制するという人身の自由に対する制約、干渉が許されるかどうかという観点、これは法的判断でございます。
 また、精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰することを促進するため、この法律による医療が必要と認められるか否か、これも法律的な判断でございます。
 例えば、本人の生活環境に照らして治療の継続が確保されるのかどうか、あるいは同様の行為を行うことなく社会に復帰することができるような状況にあるのかどうか、そういった問題は、純粋な医学的判断、医療的判断を超える事柄をも配慮する、考慮する必要がありまして、したがって、この判断に当たりましては、医師による医学的判断にあわせて、このような裁判官の有する法律に関する学識経験に基づく判断が行われることが必要であり、また重要であるというふうに考えております。
○福島委員 ですから、医療を受けさせるということは一種の強制である、であるからには、そこで人権をどのように守るのかということについて裁判官の適切な関与というものが必要だ、そしてまた、社会復帰というようなことを考えたときにはさまざまな事柄を勘案しなければいけない、そこで裁判官が関与するのであるというふうに要約できるんだろうというふうに思います。
 そういう意味では、裁判官がどのように人権というものに配慮して、そこで適切な意見を述べていただくことができるかということが大切であろうと思っております。新しい制度でございますから、この審判機関の運営ということに当たって、また裁判官の皆様にもさまざまな形で十分に知見を深めていただいて、ぜひ適切な対応をしていただきたい、そのように要請をいたしたいと思います。
 時間も限られておりますので、先ほど左藤委員から御指摘のありました御質問については重複を避けまして質問をさせていただきたいと思っております。
 ただ一点、精神保健観察官の名称を社会復帰調整官というふうにしたわけでございます。これは、社会復帰を目的とするんだということでこのように名称を変えたという御説明だったと思います。その同じ条文の三項においては、「精神保健福祉士その他の精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識を有する者」というふうにされているわけでございます。具体的には「政令で定める」ということになっておるわけでございます。
 ただ、精神保健福祉士のサイドから迫りますと、これは一般の精神障害者の方に対してのトレーニングというものは受けておる。多分、私は、こうした立場についていただくに当たって、触法行為を犯されたということで、そのまま横にシフトするかなという話も想定いたします。ですから、むしろ、このように規定して明確にしたということはそれで結構だと思いますけれども、その上で、どういうふうに社会復帰を図るのかということについては、恐らくやはり一定のトレーニングといいますか、研修といいますか、そういうものは要請されるだろう。保護観察ということから、こちらの精神医療、精神福祉の領域に明確化したということは、逆に言うと、そこのところをしっかりしていただく必要があるんじゃないかというふうに思っておりまして、これは要請をさせていただきます。
 そしてまた、精神医療の問題でございます。先ほど、木村副大臣から大変力強い御答弁を多々お聞かせいただきまして、ぜひ全力を挙げて日本の精神医療の向上に努めていただきたいと思っております。
 提案者の方にお聞きしたいわけでございますけれども、附則にこうした項目を盛り込んだわけでございます。提案者のお立場から見て、日本の現在の精神医療というものはどのようなものであるのかということについて、お考えをお聞きしたいと思います。
○塩崎委員 繰り返し申し上げますけれども、今回のこの政府案に対してさまざまな批判が出てきた中に、やはり精神医療の底上げが先じゃないか、こういう御議論がありましたし、確かに、政府案を見ると医療のことについては何も触れていないということで、いろいろな疑念がわいた。
 無理からぬところがあって、私ども自民党の中で議論をしたときにも、例えば二段ロケットで、最初にこういった触法精神障害者に対する扱いの法律をやるにしても、やはり精神医療についての向上は必ず要るんだ、だから、じゃ、とりあえず二段ロケットでいきましょう、こういうことになったわけですけれども、二段目に火がつかないロケットではいけないということだろうと思うんです。
 それで、この政府案の議論の中で、本当に二段目に火がつくのか、こういう疑念が全国的に、私の地元でも勉強会なんかやってもそうでありました。そういうことで、この精神医療につきまして、あるいは福祉について、あるいは保健についても、我が国が他の先進国に比べてもおくれている、あるいは他の障害の分野に比べてもおくれているということは共通の認識、これは与野党を問わず持っていると思うんです。
 そこで、それを今回明確にすることによって、今回の法律がとりあえず一歩前進をするけれども、二段目のロケットで精神科医療についても、あるいは保健、福祉についても底上げを必ずしていくんだということを国民に対してお約束するという意味で、附則で明確にしておこうじゃないかということであります。
 したがって、今回は、特に司法精神医療あるいは重厚なる医療を施すという分野での医療を向上させていこうということでありますが、一般の精神医療についてもそれに伴って向上することを期待する、そしてまた、社会復帰もそれに伴って容易になるようにという思いを込めて、この附則を加えさせていただいたということでございます。
○福島委員 京都女子大学の野田先生が昔出されました本が最近復刊されて拝見いたしました。精神障害と犯罪についての、いろいろと具体的なケースの研究といいますか、足を使って調べたレポートのまとめでございますけれども、その一つ一つを読んでおりますと、本当に、もっともっと、触法行為を犯す前にできることというのはやはりたくさんある、そういう事例がたくさんあるんだろうな、そこのところがまだまだ十分、精神医療、また福祉もありますけれども、及んでいないということで、さまざまな悲劇というものが生まれている。
 今の日本の実態というものは、野田先生がこれを書かれたのはもう二十年ほど前でございますけれども、大きく変わったのかというふうに問い直すと、なかなかそうではないのだろう。そういう意味で、今、塩崎先生からお話ございましたように、附則に盛り込んでいただいてよかったと思います。そしてまた、明確にされたわけでございますから、厚生労働省としては全力で取り組まなきゃいかぬということだと思います。
 先ほど、人員配置基準のお話が副大臣からございました。また、機能分化を図るというお話がございました。一つ一つ、大切なことでございます。
 先般の医療法の改正のときには、私は答弁をさせていただく立場でございましたけれども、委員の先生方からは、もっと踏み込んだ判断をすべきだという指摘を多々いただきました。社会復帰、そしてまた早期退院ということを考えたときに、人員配置基準というものを厚くして、ヒューマンサポートというものをしっかりしていくしかないというふうに私は思っています。
 今後、どう進めていくのか。先ほども言いましたように、大学病院はありますけれども、大学病院というのは受け皿が小さいわけですね。ですから、一般の病院をどうするかということは極めて大切でございますし、そしてまた、機能分化を図る、いろいろと専門的な外来もできてきておりますけれども、社会復帰というものに向けて、病床そのものも分化というものを考えていく必要もあるだろうというふうに思うわけでございますが、これは再度の御質問になりますけれども、御答弁をいただきたいと思います。
○木村副大臣 今先生御指摘いただいたんですけれども、私は、やはりいろいろと考えている中で一番大事なのは、ちょっと自分で何となく感じるような方々は、どうしても相談に簡単に行けないという今の現状があるんではないかな。それで、あそこの病院に行ったらそのまま入っちゃって永遠に出てこられない、そういうような感覚というのはまだまだ大勢の方々が持っておられるので、そういうのの払拭というのが本当に一番肝心なのかな、こういうふうにいつも感じているんです。
 それで、先生の方がむしろプロフェッショナルでありますから、もっと、より一層そんなふうに感じているんですけれども、私は、そういう本当に気楽に入っていけるようなクリニック、外来というのがもっともっと地域に普及をしていったらいいかなというようなことを考えつつ、この精神病床につきましては、激しい症状を有する患者さんとか、または、本当は治療しなくてももういいんじゃないかというような患者さんまで、いろいろな方が病棟内に入っているわけでありまして、急性期の方、思春期の方、薬物中毒、また専門的な医療を必要とされる患者さんも、本当に一般的な患者さんと一緒になっているわけでございます。
 こういう問題を踏まえまして、これを是正するために、病態に応じた適切な処遇を行うために、精神病床の機能分化を図り、病床の機能にふさわしい人員配置を設定する必要があり、今後は、高度で集中的な医療を要する患者について、それに適した機能を持つ病床において医療を行うこと、これを先生のときに決めていただいた、こういうわけであります。
 もっと具体的にこれを進めるために、今後、病床機能の分化と人員基準のあり方については、省内に新たな検討会を設けましてさらに検討を進め、早急に結論を得る、先生の御期待にこたえるようにしてまいりたい、このように思っている次第であります。
○福島委員 よろしくお願いをいたします。
 そしてまた、附則には、精神障害者社会復帰施設の充実ということが規定をされております。箱も大事でございますけれども、大切なのは人材であろう。精神障害者の福祉が市のレベルにまでおろされていっても、なかなか対応できる人材がいないというのが、残念なことですけれども、現状ではないかなというふうに私は思っております。この人材の養成ということについて政府としてどのようにお取り組みになられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
○木村副大臣 確かに、精神医療というのは、人材にかかっている面がほかの医療に比べても非常に多いんですね。ほかの医療は、やはり新しい器具とかその他、いろいろなので大分進歩しているところもあるんです。もちろん精神も薬に随分依存している面もあるんですが、それ以上に大事なのは、やはり人材、それを担う方々にかかっていると言っても過言ではないわけでございまして、そういう精神医療や福祉施策に携わる人材を養成するために、精神障害者に対するケアマネジメントを担う人材の養成、介護でいうケアマネジャーみたいな感覚なんですけれども、そういう人たちの養成や、医師や看護者等を対象とする研修をより一層充実を図ってまいりたい、こういうふうに思っております。
 そして、こうしたことを十分考えながら、今後、新しい障害者プランに基づきまして必要な対策というものを強力に進めてまいりたい、このように思っているような次第であります。
○福島委員 ほかにも通告をいたしましたものもございますが、先ほどの左藤先生の御質問で重複しておりますので、省略をさせていただきまして、最後に申し上げたいことは、五年後の見直しが極めて大切だと思っております。これは、厚生労働そしてまた法務両省が共管で、その見直しに向けてのさまざまな実態調査といいますか、そういうものをしなきゃいかぬのだろう、何年目からするかということは別といたしまして。そういったこともこの法案の成立ということが前提でございますけれども、ぜひとも、この委員会でさまざまな指摘があったということを受けとめていただいて、適切な御対応を要請いたしたいと思います。
 若干短いですが、私の質問は以上でおしまいにしたいと思います。大変御苦労さまでした。
○山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。