心神喪失者等医療観察法の条文・審議(その29)

前回(id:kokekokko:20060121)のつづき。
法務委員会と厚生労働委員会による連合審査会の第3号です。野党側委員による質疑です。
【山花委員質問】

第155回衆議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第3号(平成14年12月4日)
○山本委員長 これより法務委員会厚生労働委員会連合審査会を開会いたします。
 第百五十四回国会、内閣提出、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、これに対する塩崎恭久君外二名提出の修正案、第百五十四回国会、平岡秀夫君外五名提出、裁判所法の一部を改正する法律案及び検察庁法の一部を改正する法律案並びに第百五十四回国会、水島広子君外五名提出、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の各案及び修正案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花郁夫君。
○山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。
 政府案と民主党案、そしてこの臨時国会になりまして与党の修正案というものが出てまいりました。与党の修正案の中で幾つか私はまだ疑問があるところがあるんですけれども、その前提として、政府案の方について少々基本的なことをお聞きしたいと思います。
 法務大臣、刑事法の基本的な話だと思いますけれども、心神喪失であるとか心神耗弱の場合に刑法では犯罪が不成立であったりあるいは刑の減免があるわけですけれども、これはそもそもどういう理由に基づくものでしょうか。
○森山国務大臣 近代刑法は、いかに違法性の強い行為でありましても、行為者を法的に非難するためには、行為者に責任能力、つまり物事の善悪を判断し、かつその判断に従って行動する能力がある場合に限るべきであるという考え方から、責任能力がない場合には処罰し得ないという責任主義を基本原則といたしております。
 このようなことから、我が国の刑法では、責任能力がない者を心神喪失者とし、その行為は罰しないこととし、責任能力が著しく減退した者を心神耗弱者とし、その行為はその刑を減軽するということにしているものと承知しております。
○山花委員 つまりは、責任主義がとられているということは、責任能力がなければペナルティーは科し得ないのだと。そうでないとすると、例えば、具体的に今法案で審議になっているケースでいいますと、そういう主義をとらないと、犯罪を犯したから処罰されるのではなくて、心神疾患にかかっているがゆえに処罰されるというようなケースが出てきてしまうからだというふうに理解をいたしております。
 そこで、厚生労働大臣、さきの連合審査会のときの御発言で少々気になる御発言がございました。
 山井委員の質疑の中で、山井委員の方から、大変失礼な質問になるかと思うんですがということで、運悪く御自身が、あるいは山井委員は私でもいいんですけれどもというお断りをしていますが、精神疾患を患って心神喪失状態でだれかにけがをさせてしまった、そのときに大臣だったら、住みなれた地域の措置入院で、人手をそこに多くしてもらってそこでいいケアを受けたいか、それか、見ず知らずのところの専用病棟に入って、いつ出られるかわからないんですけれども、その方が親切ですからいいですよといって、そういう見ず知らずのところに行くのとどちらがいいでしょうか、こういう質問がありました。
 坂口大臣は、大変率直なお気持ちを言われたのかもしれませんけれども、私自身がどこの病院に行きたいと言う、それはなかなか通りにくいことになるのであろうという御答弁です。ただ、その前段の御発言ですが、私自身が精神病に罹患をいたしまして、そして心神喪失の状態になった、そして重大な過失を犯したということになりました場合、その重大な過失の内容にもよるかというふうに私は思いますが、それは取り返しのつかないような重大な過失を私が犯したということになればという前提がついております。二回繰り返しておられます。自分でどこへ行きたいという判断はなかなか自分では言えないことになるのであろう、こういう御発言があったわけでありまして、私はそのときに聞いていて大変疑問を持ったのです。
 つまりは、今回の政府提案の法案というのは、地域医療ではなくて、こういった今回の法案の措置をとられるということが何かペナルティーのようにも聞こえてしまうわけであります。先ほどあえて法務大臣に基礎の基礎の話をお伺いしたんですけれども、つまり、何か心神疾患があることが原因となってペナルティーを科される、それはしようがないんだと言っているようにも聞こえてしまったんですけれども、あの御答弁の真意をお聞かせいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 前回、山井議員からお尋ねがございまして、私は、自分がそうした立場に立ったときに例えて御答弁を申し上げたというふうに思っております。仮に自分が重大な他害行為を犯した場合には、その後のみずからの行動について率直に希望を申し立てることがはばかられるのではないかという個人の考え方を示したわけでございまして、それは私の思いでございます。
 それは先回にも申し上げたと思うんですが、正常であるという私の現在の立場から考えることですから、それはあるいは違うかもしれませんがということも申し上げたと思いますけれども、そのときに申し上げた気持ちといたしましては、一つは、自分がそういうことを犯したということに対する罪の意識みたいなものを持っている。あるいは、今回つくります指定病院というのはそれほど各地域に多くできるというわけではありませんから、地域の精神科の病院に行くということはなかなかできにくいんだろう。やはり同じ県の中であったとしても、少し離れたところに行かなければならないのではないかというような思いも込めて御答弁を申し上げたというふうに記憶をいたしております。
○山花委員 少々論点がずれたような気がいたします。問題は、主観的にどう思われるかということよりも、客観的な制度として、それが不利益な扱いになるのではないかどうか、そういうことではないかと思います。
 この点については疑義がありますけれども、時間が限られておりますから、その点留保させていただいて、先に質疑を急ぎたいと思います。
 法務大臣にお伺いをいたします。
 これも既に議論で出てきていることかと思いますが、改めて確認をさせていただきたいと思います。
 今回のこの政府案については、その対象となる行為は六つの類型となっておりますけれども、この類型を拝見いたしますと、例えば現在の刑法典、あるいは特別法も含めてですけれども、無期懲役が規定されているものを基準として、それより刑の上限が高いもの、あるいは懲役十年を超えるものというような形ではなくて、あえて六つの類型について対象行為とされているわけですけれども、この点について、どういう趣旨で類型化がされたんでしょうか。その立法事実についてお答えください。
○森山国務大臣 新たな処遇制度におきましては、殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ、傷害及び傷害致死に当たる行為を対象行為といたしまして、心神喪失または心神耗弱の状態でこれらの行為を行った者を本制度の対象としております。
 このうち、殺人、放火及び傷害致死につきましては、いずれも個人の生命や財産に重大な被害を及ぼす行為であります上、これらの行為に及んだ者の中に心神喪失者等が占める割合が相当程度高くなっているということが認められるわけでございます。例えば、平成八年から十二年までの五年間におきまして、検察庁の受理人員中に占める重大な他害行為を行った心神喪失者等の割合は、全体で約〇・二%でございますが、殺人におきましては約七・八%、放火においては約八・八%、傷害致死においては約三・四%というぐあいになっております。
 また、強盗、強姦、強制わいせつ及び傷害につきましても、同じように個人の身体、財産等に重大な被害を及ぼす行為でございまして、同様に他の行為に比べまして心神喪失者等によって行われることが比較的多いということが認められるわけでございます。
 このように、対象行為として類型化した行為につきましては、いずれも個人の生命、身体、財産等に重大な被害を及ぼす行為でございまして、心神喪失者等によって行われることが比較的多いものであるということにかんがみまして、心神喪失等の状態でこれらの行為を行った者につきましては特に継続的かつ適切な医療の確保を図るということが必要だと考えたことから、このように対象を考えたものでございます。
○山花委員 厚生労働大臣にお伺いしますが、全く同じ御認識ということでよろしいんでしょうか。それとも、もし何か違う理由がございましたら――ないということでよろしいですね。ないということですから、多分これで明らかになったことが一つあると思います。
 つまりは、今回のは医療、看護を目的としているんだという御説明が今までされてきましたけれども、実際はこれは法務の統計に従って類型化がされているわけです。医療的な観点から、こういうようなことを行った人についてはこういう治療が必要だからという観点では政府案はつくられていないということは指摘をさせていただきたいと思います。
 次に、これはもうきのうの質疑でもございましたけれども、また法務大臣にお伺いしたいと思います。
 私は、どうも今回の法案の大きなフレームでよくわからないところがありまして、と申しますのは、結局、今申し上げましたように、法務上の統計に従えば言われていることにもある程度の合理性があるのかもしれません、私は必ずしも納得はしておりませんけれども。ただ、そういった重大な他害行為をした場合に限って、言ってみれば身体の自由を、憲法論議でいえばこれは居住移転の自由であり、人身の自由でありますから、これを制限する、いわば不利益な処分を課すわけですから、そういう場合に限って処分を課すという話になりますと、まさに社会防衛的な発想ではないか。つまりは、今御答弁がありましたように、これは本当に生命とか財産とか身体、そういうものを保護法益とする重大な侵犯事件である、こういう場合について不利益な処分を課すというわけですから、まさにこれは社会防衛的な発想ではないか、このように考えられるわけですけれども、この点、どう説明をされるんでしょうか。
○森山国務大臣 この制度による処遇は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対しまして、継続的で適切な医療を行うということなどによりまして、その社会復帰を促進するというために行われるものでございまして、犯罪を行った者に対する制裁を本質とする刑罰とは異なったものであることはもとより、社会防衛を直接の目的とする保安処分などとも全く性質が異なるものと考えております。
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者は、精神障害を有しているというハンディキャップに加えまして、人の生命、身体、財産等に被害を及ぼす重大な他害行為を行ったというハンディキャップも持っているわけでございます。また、このような者が有する精神障害は、重大な行為と結果を引き起こす原因となるものでございますから、一般的に手厚い専門的な医療の必要性が高いものであるというふうに考えられます上、仮にそのような精神障害が改善されないまま、再びそのために同様の行為が行われるようなことになれば、そのような事実は本人の社会復帰の重大な障害となるのでございまして、やはりこのような医療を確保することが必要不可欠であると考えます。
 そこで、このような者については、国の責任において手厚い専門的な医療を統一的に行い、また、退院後の継続的な医療を確保するための仕組みなどを整備することによりまして、本人の円滑な社会復帰を促進することが特に必要であるというふうに考えられますことから、今回新たな処遇制度を創設することとしたものでございます。(発言する者あり)
○山本委員長 不規則発言はおやめください。
○山花委員 今の御答弁でありますけれども、私は必ずしもちょっと納得ができないんです。つまりは、社会復帰を目的とするというお話ですけれども、法務委員会で森山法務大臣と私は死刑制度の問題であるとかあるいは監獄の問題などについても議論させていただいておりますけれども、刑罰であったとしても、社会復帰というのは一つの目的となっていると思います、それだけとは申しませんけれども。
 今回の法律案についても、もちろん医療も確かに必要でありましょう。そのことと社会復帰というのは確かに連関しておりますけれども、刑罰、例えば普通の懲役刑で刑務所に入って、しかし、そこでの矯正の理念というのは、やはりもう一度そういう犯罪を犯さないような人になって帰ってもらうというところではかなり共通するところがあるわけでありまして、今回の政府案で、私の質問に対する答弁としてはちょっとまだすとんと落ちないところがあります。
 というのは、だんだん説明を、御答弁を聞いていますと、後ろの方は確かに納得できるところがあるんですけれども、そうだとすると、この六種の罪種に限る必要はないんじゃないか。要するに、私は、前半部分はちょっとどうかなと思いながら、後半部分についてはそういう思いがあります。ただ、ちょっと先を急ぎますので、指摘だけにとどめたいと思います。
 与党案の提出者にお伺いをしたいと思います。
 厚生労働大臣法務大臣はこのように御答弁されているんですけれども、過日の委員会でも、修正案を出した趣旨というのは、やはり医療を中心的な目的とするということをはっきりさせたいんだ、そういったような御答弁があったと思います。
 ここでちょっと指摘をしたいんですが、そうだとすると、今るる私からも政府の方に申し上げましたとおり、医療を中心的な目的とするんだとすると、政府案に対する修正を行うのであれば、対象行為についても修正しないと論理が一貫しないんじゃないでしょうか。なぜ六つの罪種のところについては修正を施さずにこういう修正案を出したのか。言いかえれば、医療を目的とするんだとすれば、今回、そんなにもともとの案がすばらしいのであれば、重大な他害行為を行ったケースに限る必要はないじゃないですか。いかがでしょう。
○塩崎委員 医療を目的というよりは、医療によって社会復帰を図るということが目的ということだと思います。
 そこで、今、対象行為そのものについて限定をする理由がないんじゃないか、こういうお話がございました。心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者は、いわば二重のハンディキャップを負って、精神障害であるということ、そしてまた重大な犯罪を犯して他害行為をしてしまったということでありまして、このハンディキャップというのは比較的軽微な他害行為を行った場合とでは格段の相違があるということだろうと思います。そこで、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対して、その社会復帰を促進するためには、今申し上げたような手厚い医療、専門的な医療を行ってその精神障害を改善することが必要不可欠だ、こう言っているわけであります。
 また、このような者が有する精神障害は、重大な行為と結果を引き起こす原因となるものでありますから、今御指摘のとおり、一般的に手厚い専門的な医療の必要性が高いということである上に、仮にそのような精神障害が改善されないままに、また再びそのために同様の行為が行われるようなことになれば、そのような事実が本人の社会復帰の重大な障害になってしまうという、言ってみれば悪循環を起こしてしまう。それを断ち切らなきゃいかぬということで、手厚い専門的な医療が必要だ、こう言っているわけであります。この制度において、このような理由から、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者を限って対象とするということにしているわけであります。
 医療の問題につきましては、この制度によって、いわゆる一般の医療機関に入院している患者で高度かつ専門的な医療が必要な者について、指定入院医療機関、今度できるものですが、これを活用して治療を行うということが制度上排除されているわけではないわけであって、御質問よりも少し広がりますが、このような者についても、本制度による医療の実施状況を踏まえた上で、必要に応じて指定入院医療機関を活用するなどの適切な対応というのは検討されてもいいんだろうと思うんです。
 ですから、ここで高度な医療をやりますが、目的は社会復帰ということでございます。
○山花委員 法案の具体的な条文についてお伺いをしたいと思います。
 その方向性がいいか悪いかはまだ議論の余地はあるんでしょうけれども、今回の政府案のやり方がいいかどうかは別として、論理的に一貫させようとしたら、つまりは、社会復帰を目的として医療を中心として考えるんだということであれば、六種の罪種に限定するというのは、先ほどの法務大臣の御答弁だってこれは法務上の統計の話だというわけですから、必ずしも医療を根拠とする話ではなかったように私は受けとめております。
 そこで、与党案の、特に三十四条なんですけれども、よくわからないところがあります。私は、六種の罪種よりも広げようとしているようにも見えるんです。と申しますのも、政府案は、「継続的な医療を行わなくても心神喪失又は心神耗弱の状態の原因となった精神障害のために」というところで、「再び対象行為を行うおそれが明らかにないと認める場合を除き、」ということで、「対象行為」という言葉を使っております。これに対しまして与党案の方は、「対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、」と「同様の行為」というふうに言葉が変わっております。
 先ほど法務大臣からも、今回のこの法案というのは刑事法とは違うのだという御答弁がありました。そのとおりだと思います。刑法ではありませんから、また刑法の特別法ということにもなりませんから。そうだといたしますと、刑事法の場合は、基本的に類推解釈が禁止されている、拡張は許されるけれども類推は許されないというテーゼがありますけれども、そういうことになっております。
 ところで、今回のこの法案というのは、法律の一般論として申しますと、類推解釈というのがある程度できるものである、そういうものだと思うんですけれども、政府案の場合には「対象行為」となっていますから、類推解釈をしようにもある程度枠がかっちり決まっているわけであります。これに対しまして、「同様の行為」というふうな言い方をしてしまいますと、類推の基礎が非常に広がる、このように思われるわけであります。
 わかりやすく申し上げますと、当委員会でいいますと、例えば与党の理事という規定の仕方があれば、これは、私も法務委員会の野党の理事ですけれども、恐らく類推の基礎はないんだと思いますが、与党の理事さんと同様の立場といったときに、それは目的論的にいろいろな解釈をしますから、ただ委員会運営に責任を持つ人だという類推の基礎があれば、類推解釈できますよね。
 つまりは、「同様の」ということは、広げる余地があるというふうに読めるんですけれども、これは政府案と比べてそもそも広いのか、狭いのか、あるいは同じなのか、この点について御答弁ください。
○塩崎委員 ただいまの山花委員のような御疑問を持たれるということでございますが、結論から言いますと、同じでございます。つまり、「同様の行為」というのは、法第二条第二項各号に掲げる対象行為のいずれかの行為をいうということでございます。
○山花委員 ということは、その対象については修正案の中では全く変化がないということだと思います。
 もう一点伺いたいと思います。
 この三十四条についてなんですけれども、政府案はこう書いてあります。「継続的な医療を行わなくても心神喪失又は心神耗弱の状態の原因となった精神障害」、こういう書き方をしておりますが、修正案の方は、日本語的には緩やかになっているように読めます。「対象行為を行った際の精神障害を改善し、」ということで、昨日の参考人の質疑でも、因果関係が不明確になったじゃないかという指摘がありました。私もそう思います。
 例えば、例えばの話です、統合失調症の人がいらっしゃったとします。その人が深酒をして泥酔状態で人をあやめてしまったとします。
 政府案ですと、このケースで、心神喪失の状態で対象行為を行ったかもしれませんけれども、その「原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれ」ということについては因果関係がはっきりしておりませんから、泥酔状態が原因となって人をあやめた、もともとからアルコール中毒とかで、飲むと粗暴な振る舞いをするという症状がもともとあった人であればそれはまた違うんでしょうけれども、たまたま深酒をして泥酔状態になって心神喪失状態で人をあやめたというケースは恐らく入らないと思います。
 ところが、今回の修正案ですと、「対象行為を行った際の精神障害を改善し、」ということですから、対象行為を行った際心神喪失状態で、あるいはお酒が原因で人をあやめているかもしれないけれども、対象行為を行った際にその人が統合失調症であれば、対象行為を行った際に精神疾患があって、その際の、あくまでも「際の」という言葉ですから、その機会にというふうに読むのが普通だと思いますけれども、そういうふうに読ませるつもりなのか、いや、そうじゃなくて、もともとこれは政府案と全く同じことなのか、その点について御答弁ください。
○塩崎委員 引き続き解釈で紛らわしいことで大変恐縮でありますが、「行った際の精神障害を改善し、」と書いてあるわけでありまして、行った際の心神喪失状態を言っているわけではございません。したがって、この「対象行為を行った際の精神障害」という部分は、やはり精神障害が原因で対象行為を行ったという意味で、先ほどの例でいきますと、泥酔状態だけで心神喪失になっているときに行ったことであるならば、それは入らないということだと思います。
○山花委員 要するに、政府案と趣旨としては同じように読むのだという御答弁だと思います。ただ、私は、立法技術として、際にというのは、普通はそう読まないと思いますよ。その点は少し疑問があります。際にというのは、その時点でどうであったかという話ですから、そこは少し読み方に疑問があるんですが、答弁でそうだということですので、そう読むのが立法者の趣旨だというお話ということになるのだと思います。
 ところで、そうだとすると、与党案提出者にお伺いしますけれども、対象行為について、精神科のお医者さんと裁判官、裁判官とは言わないんでしたっけ、実際は裁判官の人が一体何を判断されるんでしょうか。これは結局政府案と同じような判断をするのか。つまりは、判断の対象とその基準について御答弁いただきたいと思います。
○塩崎委員 これまでも繰り返し御答弁してきたことが含まれていると思いますけれども、要件につきましては、もう御案内のとおりであって、裁判官は、専門とする法律に関する知識、学識経験に基づいて意見を述べるということになり、また審判員の方は、医療における、医学における専門的な知識で意見を言う、こういうことになっているわけであります。
 修正案においては、精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療が必要と認められるか否かという要件を判断するに当たりまして、例えば、身近に適当な看護者がいるのかどうかとか、そういうような生活環境に照らして治療の継続が確保されるのかどうか、それから、やはり常に身近に十分な看護能力を有する家族がいて、同様の行為を行うことなく、社会に復帰することができるような状況にあるかどうか、こういうような純粋な医療的な判断を超える判断というものを裁判官というのはするべきではないのか。
 政府案におきましては、継続的な医療を行わなければ心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれの有無を判断するということであったわけでありまして、そのときに、対象者の生活環境に照らして治療の継続が確保されるか否か、それから対象行為を行いやすい状況にあるのかどうかというような考慮をするというのが政府案であったと思うのです。
 結論的に申し上げますと、修正案、政府案、その処遇の要件が異なりますけれども、裁判官はそれぞれの処遇の要件について、それらの純粋な医学的判断を超える事柄をも考慮して、法律に基づく、あるいは法律に関する学識経験に基づいた判断を行うということだと思います。
○山花委員 いや、その法律的な知識、学識経験に基づいて何を判断するかというその中身が問題だと思うんですよ。社会復帰に必要なための医療の継続があるかどうかというのは、それはお医者さんだって判断しますよね。
 ちょっと水島委員にその点について。そういうことは医療じゃないのかどうか。あと、医療を中心として考えるということを突き詰めていけば、先ほどから申し上げていますように、六つの罪種に限定する必要はないと思いますけれども、その点、民主党案はいかがお考えでしょうか。
○水島議員 答弁いたします。
 まず、医療の判断であるかどうかという点なんですけれども、やはりその人の生活環境を調べて、どのようなソーシャルサポートがあるかというようなことを調査した上で医療の環境を調整していくというのは、医療現場で日常的に行っていることでございまして、ただ、人手が余りにも足りないので、その底上げをすべきだということをかねてから訴えてきているわけでございます。
 また、六つの罪種に限るべきではないのではないかという御指摘ですけれども、私たちはそのように考えましたので、民主党案ではあくまでもこの問題を、精神医療の底上げ、そして司法と精神医療の連携の充実、それこそが解決策なのだという観点から民主党案を提出させていただいておりますので、ぜひこの法案が成立するように引き続きよろしくお願いいたします。
○山花委員 時間が参りましたので終わりますけれども、まだ随分疑問点が残ったなということだけ申し上げまして、質問を終了いたします。ありがとうございました。

【金田委員質問】

第155回衆議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第3号(同)
○山本委員長 次に、金田誠一君。
○金田(誠)委員 民主党金田誠一でございます。
 まず、大きな一点目として、本法案の基本的な性格についてお尋ねをいたしたいと思います。
 感染症患者や精神病患者に対する法制については歴史的な変遷をたどってきたと思います。過去には社会防衛に重点が置かれ、その代表がらい予防法やエイズ予防法であったわけでございますが、これらは既に廃止をされているところでございます。一方、患者を人権の主体としてとらえ、適切な医療の提供を中心とする立法もあり、社会防衛は目的ではなく、その医療の結果としてとらえられていたという法律もございました。その代表例は、必ずしも十分とは言えませんが、結核予防法というものがあったと思うわけでございます。
 ところが、精神医療に関しては、感染症に比較しても著しく立ちおくれており、入院患者数や入院期間から見ても、外来治療あるいは社会復帰という側面から見ても、適切な医療の提供あるいは人権という観点は極めて弱いものであったと思います。結果として社会防衛的要素が色濃く残っておりまして、前近代的な医療環境になっているのが現状でございます。大臣よく御承知だと思うわけでございますが、精神医療の分野は、我が国に残されたやみの部分といいますか、恥部とでも申しましょうか、そういう状態に現在あると思うわけでございます。
 しかし、残念ながら、今回の法案は、人権を基礎にした適切な医療の提供というよりも、社会防衛の色彩が極めて濃いものとなっております。すなわち、らい予防法、エイズ予防法の類型に入る法案でございます。それというのも、現行の精神保健福祉法に手をつけず、その上で何かができると考えていることにそもそもの間違いがあると思うわけでございます。
 したがって、本法案は廃案として、人権と適切な医療の提供というものを基礎にして、現行法の改正を含む新たな法体系を組み立てるべきと考えているところでございますが、厚生労働大臣の御所見を賜りたいと思います。
○坂口国務大臣 大変、金田議員から大局的な立場のお話がございました。
 精神医療というものにつきまして、現在おくれているということにつきましては、私も率直にこれは認めなければならないというふうに思っております。そのことを前提にしながらも、しかし、本制度の目的は、第一条に明記されておりますとおり、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対して、継続的な、そして適切な医療を行うことにより、その社会復帰を促進することにあるわけでございます。すなわち、本制度は適切な医療の提供を基本とするものでありまして、社会から隔離することを目的にするものではございません。この点をひとつ御理解いただきたいというふうに思います。
 それから、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者につきましては、必要な医療を確保しまして、不幸な事態を繰り返さないようにして、その社会復帰を図ることが重要でありまして、そのために、精神保健福祉法における措置入院制度とは異なっているというふうに思います。
 指定病院等をつくるということにつきまして、先日来、それならば、一般の病院にもそれは当てはまることではないかという御指摘もあったところでございます。したがいまして、一般病院につきましても、これは充実をさせなければならないというふうに思っております。先日も、これは充実をしますということをここで申し上げたわけでございますけれども、しかし、私がここで充実しますというふうに申し上げても、君一人でできるのかという話に多分なってくるんだろうというふうに思いますが、ここは真剣にやはり考えてそうしなければならないと実は思っております。
 したがいまして、厚生労働省の中に、一つの部局だけではなくて、全体で一つ、精神保健、医療、福祉、そのトータルの推進本部をつくりまして、そして全体の精神医療の底上げができるように、これは真剣に図っていきたいというふうに思っております。
 それをやろうと思いますと、多分いろいろのことがございます。一つは、医師なり看護婦なりの配置の問題や、それから、その人たちがそれで足りるのかどうかといった問題もあると思います。それは、現在、そうはいいましても、急にその人たちをふやす、とりわけ医師の数をふやすということはなかなか難しいことだというふうに思いますが、一般の精神医療も含めて、そこをかさ上げをしていこうということになりますと、現在入院をしていただいている皆さん方をもう少し地域に戻すということが当然そこで並行して行われないと、精神病院の中身というのは変わってこないというふうに思っている次第でございます。
 したがって、地域にそういう受け皿をつくるということとセットでこれは進めていかざるを得ないというふうに考えておりまして、それらのことも含めて、地域の問題もやらせていただきますが、先ほど申しましたような趣旨というものも御理解をいただきたい、そう思っております。
○金田(誠)委員 大臣、よく精神医療の実態について御存じのお立場から、大変誠意を持って御答弁をいただいたと受けとめさせていただいております。いわゆるハンセン病問題、この全面解決という大変な決断をされた大臣でございますから、決してわからないわけではないというお立場で、この法案は厚生労働省はかかわりが少ないわけでございますけれども、そういう中でも精いっぱいの御発言をされているなということは伝わってまいりました。しかし、だからこそ言わせていただきたいと思うわけでございます。
 本法案は、「医療及び観察」という表題にはなっているものの、本質的には刑事法制でございます。社会の法秩序を維持するというのが基本的なこの法律の性格でございます。「北風と太陽」というイソップの童話がございますが、本来太陽の政策が、法を犯した犯さないにかかわらず、今精神病患者さんに求められていることではないのか。その基本的なところが日本の恥部ともいうべき状態になっている。この間、大変な御努力をそれぞれ厚生行政の側面で私はされてきたと思うんですが、突破できない状況に現在ある。精神病院は、この二十一世紀の日本においてあれが病院と言えるのか、そういう実態にあるということは大臣一番よく御承知だと思うわけでございます。そういう中で、その土台の上にこの刑事法制を組み上げた場合にどうなるかということが今問われているわけでございます。大臣として本当に今決断をするべきときに来ている、私はこういうことを申し上げたいと思うわけでございます。
 本質的に刑事法制であるということは、もう釈迦に説法でございますが、決定は裁判所が行う、観察は保護観察所が行う、法務省が所管をする、法務委員会で採決をされるということからも明らかでございます。太陽の政策ではなく、まさに法秩序の維持。私は、これは必要ないなんということは申し上げるつもりはありません。国家として当然法秩序の維持は必要でございます。いわば北風の立場でございましょうかね。しかし、今精神病患者さんに必要なことは、現行の余りにも劣悪な、前近代的な精神病医療、この仕組み全体を変えていく。その中で、あるいはその上で、不幸にして法を犯した方について特別な手当てが必要なのかどうなのかという検討がされなければならない時点に今あるんではないでしょうか。
 そういう意味からいいますと、らい予防法やエイズ予防法と同じ類型と申し上げましたけれども、それは褒め過ぎかもしれません、少なくともこの二つの法律は医療の分野の体系であったわけでございますから。今回は、法秩序の維持、その体系なわけでございます。
 厚生労働大臣、今の精神医療の実態をよく知るお立場から、今の時点でこういう法律が本当に上程されていいものなのか、再度御所見を賜りたいと思います。本当に今、私ども政治の場にある者の決断が迫られている。今しかないと思います。
○坂口国務大臣 法秩序の維持ということも大事なことでございましょう。一方において法秩序を守りながら、そして、その再発を予防していくというようなことも考えていかなければなりません。そうした意味で、一度重大な他害行為というものを行った人に対しまして、みずからの行為についての認識を高める、そしてまた、みずから抑制することを促すための専門的な医療ということも必要でございましょう。
 私は、一般的な精神科の病気、その治療、それを高めなければならないことも事実、現実問題としてそこがおくれてきていることも率直に先ほど認めたところでございまして、それに対するかさ上げも同時にこれは行っていかなければならない、そういうふうに申し上げたところでございます。
 前回、どなたの御質問でございましたか忘れましたけれども、ハンセン病のことが問題になりましたときに、やはり精神医療についても早急に考え直さなければいけないということを内部で議論をしたことがございます。それを行いますためには、これは厚生労働省の中におきましても担当部局がやっておるだけでは前に進みません。そうした意味で、これは厚生労働省の中で全体の意思として前進をさせる。そういう意味で一つそこを担当する本部をつくって、そして全局が同意してそれをやっていこう。それで、厚生労働省の中だけではこれはいかない話で、各省庁にも及ぶ話でありまして、財源も必要なことになってまいりますから、そこは、それはそれで進めていく意思を持ってやっていこうと。
 そうはいいますものの、これを進めていきますためには、しかしまだ財源的な問題だけでは足りない、人材の問題等もその中にはあるわけでございます。だから、精神科の先生が足りないという場合にそれをどうするかということもあわせて考えていかなければならない。そうしたこともあわせて考えながら前進をしなければならないわけでありますが、現在の状況を考えますと、社会的入院という言葉がありますように、もうそれは地域にあるいは家庭にお帰りをいただいた皆さん方も多くお見えになる。その人たちを地域やあるいは家庭に引き取るということと同時にやっていかなければ、充実をした現在の精神医療というものを前進させることはでき得ない。それを同時にやっていこうとすれば、地域でのいわゆる地域福祉というもの、あるいは中間施設と申しますか、一度に家庭に帰すといいましてもそれはできないだろうと思いますし、御家族のお見えにならない方もあるだろう。それは中間施設なのか福祉施設なのか、そうしたものもあわせてこれは総合的に前進をさせなければならないというふうに思っている次第であります。
 しかしここは、この法案を出させていただきます以上、一方においてこの法律があり、一方において一般精神病院の問題があり、ともにこれは車の両輪で前進をさせなければならないという決意を持っているということを申し上げたところでございます。
○金田(誠)委員 大臣がおっしゃりたいことはよくわかります。お気持ちもよくわかります。本来あるべき姿ということを描いておられるということもわかります。しかし、それは大臣の頭の中にあるだけでは実になってこないわけですね。
 今、日本の精神医療というこの土壌があって、それをしっかりしたものにつくる、それがなければ社会復帰なんかできませんよ。多少人員配置の多い、多少きれいにした病棟に入ったところで、そこに入ったって、今度は新たなレッテルが張られるんじゃないですか。その上で社会復帰なんかどうやってできます、今の状況で。
 まず現行の精神医療、医療ですよ、これを本来のものに仕立て上げていく。それと同時並行に、不幸にして法律を犯すことになった方々の処遇はどうあるべきなのか、これは一緒に考えないと、木に竹を接いだようなことでその場しのぎをしても傷が深くなるだけだ、私はこういうことを申し上げたい。大臣もよくそれはわかっておるんじゃないですか。
 今求められていることは、精神医療そのものの構造改革、まさに構造改革ですよ。例えばハンセン病の全面解決をやってこられた大臣ばかりに困難な決断を迫るということは本当に申しわけないと思っております。よく御決断していただいた。今、やはり政府としてもう一度決断のときだと私は思います。何もするなと言っているわけじゃないんですよ。全体をリフォームしよう、構造改革しよう、そういう中できっちりと話し合っていけば済む話じゃないですか。ぜひそのことを申し上げたいと思います。
 ちなみに、事務的なことで、事前通告していなくて恐縮でございますが、この法案の中で厚生労働省の所管部分というのは第何条、何条というふうに分かれているんですか。これは全部法務省がやっているものなんでしょうか。ちなみに、第何条、第何条、第何条は厚生労働省の判断でここは出させていただいたとか、これからも変えられるとか、責任は厚生労働省にあるとか、そういうものを事務的にちょっと教えてくれませんか。
○坂口国務大臣 その事務的な話は、私もそこまではなかなか割り切って御答弁をできませんし、多分それはなかなか、そう二つに竹を割るように割れないんだろうというふうに思っております。あるいは事務局が答弁するかもわかりませんが、その前に、先ほど先生がおっしゃったのは、私が思っていることとそんなに違わない、同じことを先生言っておみえになるんではないかというふうに思っています。
 この他害行為を行ったような人たち、そういう人たちに対する問題をやらなければならないのと同時に、一般の精神病院のことにつきましてもあわせて前進をさせなければならない。一方を今のままに置いておいてはいけないというのは、私も同じ考え方を持っているということを申し上げた。
 私が今ここで私の頭の中だけで言っているわけではなくて、これは厚生労働省の中にそうした対策本部をつくって、もう積極的に動きますということを申し上げているわけで、これは私個人の意思として言っているわけではございません。これは、必ずここは突破口を開こう、そして、今入院をしておみえになりますいわゆる社会的入院と言われる人たちをどう解放できるかということを、必ず着手をしよう、前に進めようということを申し上げているわけでありまして、決して金田議員と違うことを私は考えているわけではないというふうに思っております。
○上田政府参考人 この法案におきます厚生労働省の担う部分でございますが、まず医療の部分でございます。第三章の医療でございます。それから、第四章にございます地域医療による処遇につきましては、法務省と一緒に担うものでございます。
○金田(誠)委員 大臣とは認識は同じなんだと思うんですね。そうであれば、刑事法制としてのこの法案が今なぜここで出てくるのか、このことを申し上げたかったわけでございます。
 そうであるならば、厚生労働省所管の医療の体系の中で、まず現行の精神医療の構造改革が行われ、さらに法を犯した方々についての処遇というものが医療の体系の中でまずきちんと打ち出され、その上で法務省にどこまでかかわっていただくのか、これが大臣、順序でないでしょうか。大臣のおっしゃることを素直に解釈すればそういうことになる。そうなっていないから今この法案は成立させずにもう一度仕切り直しすべきだと私は思うわけでございます。公明党の皆さんも……(発言する者あり)何かおっしゃっていましたか。
○山本委員長 不規則発言はできるだけお控えください。
○金田(誠)委員 公明党の皆さんも席にいらっしゃると思いますけれども、大臣一人に決断をさせるんでなくて、与党の中の公明党の役割を私は果たしていただきたいと思います。ハンセン病の全面解決で役割を果たされたわけですから、ぜひひとつ、本質に立ち返って、原点に立ち返って。
 私は、触法の方々に何もするななんと言っていることでは全くないわけですよ。私ども民主党もそういう立場ですよ。ぜひひとつお考えをいただきたい。池田小学校の事件から流れとしては出てきました。しかし、そういう浮ついた報道の中で右往左往するんではなくて、もっと本質、原点を見据えた、それこそ骨太の方針を出していただきたいな。これはお願いを申し上げたいと思います。
 厚生労働省から今事務的な御答弁いただきましたけれども、この法案第何章とかというのは厚生労働大臣の決裁によって出しているというものなんですか。その辺、私は役所のことは余りよくわかりませんので。この法案の主務官庁というのは法務省でないんですか。その中でも、第何条、第何条というのは、これは法務省関係ございません、厚生労働省ですというものなのかどうなのか。ちょっとその辺を教えてください。
○樋渡政府参考人 全体的に法務省厚労省とが御相談申し上げながらつくったところでございまして、当然に厚労大臣の御決裁も、法務大臣の御決裁もいただいているところでございます。
○金田(誠)委員 だから、どういう区分けになっているのかということを聞きたいわけですよ。裁判所がどうこうというものは、保護観察所がどうこうというのは恐らく法務省でやっているんでしょうし、医療行政という立場からどこまでどうかかわっているんですか。法務行政というか、刑事行政というか、刑事政策というか、それがどういうウエートになって、双方どういうかかわりになっているのかということを知りたいわけですよ。何か書いたものできちっと説明してもらえませんでしょうかね。
○樋渡政府参考人 それぞれの専門の立場から意見を申し上げながらこの法案をつくってきておりまして、要は、こういう重大な他害行為を行った方々の社会復帰を図るためにどうすればいいかというところから意見を出し合ってまいったものでございます。
○金田(誠)委員 刑事局長が答弁しているということは、この法律は全部刑事局の所管だという話なんですか。
○上田政府参考人 先ほど申し上げましたように、医療につきましては厚生労働省が担当しているわけでございますが、基本的にはそれぞれ全体について法務省と一緒になって取り組んでいるところでございます。
○金田(誠)委員 だから、その一緒になっているなり方を聞いているわけですよ。どういうふうに一緒になっているんですか。どこまでどういう権限で、何条何項のこの部分はこうだ、この部分はこうだというふうになっているの。それとも、法務省所管で、一般的に合い議というんですか、そういうことで厚生労働省の意見を聞いたということなんですか。その辺、ちょっと、私言われてもわからないものですから、わかるように紙に書いてくれませんか。
○樋渡政府参考人 繰り返すようなんでございますが、それぞれの所管のことで意見を出し合いながら、しかしながら法律が一体なものでありますから、一体に考えて出しておるものでありまして、どちらが主管かということにはないというふうに思っております。
○金田(誠)委員 これはどちらが所管かということではないんですか。
 では、責任はだれかわからないという話なんでしょうか。
○樋渡政府参考人 失礼いたしました。
 そういう意味ではございませんでして、両方が主管だということでございます。
○金田(誠)委員 これは、権限としては全く対等ということなわけでしょうか。その中の担当の割り振りみたいなものはあるんですか、ないんですか。
○樋渡政府参考人 医療の関係につきましては、当然に厚労省の方で主体的に考えていただかなきゃならないことでございまして、私が先ほど申し上げましたのは、言葉足らずでございますけれども、主と従の関係にはないということでございまして、両方が管掌する法律だということでございます。
○金田(誠)委員 役所の仕組みのことをお聞きをしておるわけでございますが、そういうものは何か内閣の取り決めみたいなものがあるものなんでしょうか。
○樋渡政府参考人 そういうものはないというふうに承知しております。
○金田(誠)委員 これは何か、どちらかがウエートが高いとかということはないんですか。全く対等なものなんですか。
○樋渡政府参考人 そのようにお考えいただきたいと思います。
○金田(誠)委員 まだ理解できませんが、後でまた質問させていただきたいと思います。
 次に、法務大臣に伺いたいと思いますけれども、今、精神医療あるいは感染症のことで歴史的経緯にも触れさせていただいたわけですが、このことは犯罪者に対する処遇についても言えると思うわけでございます。
 過去においては、拷問などということが常識だった時代もあり、残虐な処刑が日常的に行われていた時代もあったと思うわけでございます。しかし、人類は進歩をしてきた、時代は進歩をしてきたと思うわけでございまして、例えば死刑制度について言えば、一九九一年に死刑廃止条約が発効して、九九年の時点では絶対的廃止国七十四、相対的廃止国十一、事実上の廃止国三十九、この合計、死刑廃止国百二十四カ国に上っているわけでございます。これに対して、死刑存置国七十カ国にすぎないわけでございます。残念ながら、我が国はこの人権後進国のグループに今なお入っている、極めて残念な状況にあるわけでございます。
 あるいは、受刑者の処遇についても、精神病院と同様に、先進諸国と我が国とでは大きな落差がございます。そうした中から、名古屋刑務所の事件も私は起こるべくして起こったと思うわけでございます。
 今回の法案は、我が国における以上のような人権感覚の後進性のもとに発想されたものと思います。すなわち、人権や適切な医療の提供という発想からではなくて、社会防衛、予防拘禁という観点からの立法であって、そのことは先ほど来答弁者として刑事局長が再三立っておられることからも明らかだと思うわけでございます。
 したがって、本来あるべき法案は、人権と適切な医療の提供を基本にして、医療という立場から精神保健福祉法の改正を含む新たな法体系が組み立てられる必要がある、こう思います。その場合、主たる官庁は、法務省刑事局などではなくて、厚生労働省でなければならないと思うわけでございますが、法務大臣の御所見を賜りたいと思います。
○森山国務大臣 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者につきましては、必要な医療を確保し、不幸な事態を繰り返さないようにして、その社会復帰を図るということが重要でございまして、今申し上げましたように、必要な医療を確保するという点では、厚生労働省の重要なお仕事であり、確かに今まで十分でなかったという御指摘があるわけでございますし、大臣御自身もそれをお認めになっておられるわけですから、その点について、この機会に新たな思いで、その内容の充実、改善、向上をぜひ図っていただきたいと思いますが、この法律自体の目的は、そのような人々が十分な、必要な医療を受けることができて、そして不幸な事態を繰り返さないようにする、社会復帰をしていただくということがもう一つ目的でございます。
 ですから、そのためには、この法律に基づいて入院をしていただくということを決定されましたならば、その入院を御本人の意思、希望とは直接関係なく、一種の身体拘束になります入院をしていただくということを強制しなければいけませんので、それは人権の問題にもかかわりますから、その点から適当であるかどうかということを判断しなければいけないという意味で、法務省もかかわってまいるわけでございます。
 そういう意味で、両省がそれぞれの立場で知恵を出し、お互いに協力をして、最初の目的でございますこのような人たちの社会復帰を図るということをやっていきたい、それが目的でございますので、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。
○金田(誠)委員 申し上げていることが全く御理解いただけなくて残念でございます。
 次の質問に入らせていただきますが、大きな二つ目、去る七月十二日の連合審査におきまして質問をさせていただきましたけれども、その積み残し事項についてお尋ねをいたします。
 古田政府参考人は、殺人その他の重大犯に当たる行為をした人で心神喪失等の人は二千三十七名、そのうち過去十年間に同様の重大な他害行為をしている人は二百四十名、約一一・七%という答弁をしております。
 私は、その二百四十名の内訳がどうなっているのかと資料要求をしたところですが、その後、音さたございませんので、どのようになっておりますでしょう。
○樋渡政府参考人 法務省といたしましてはこれを提出する準備ができておりますので、後刻提出したいと思っております。
○金田(誠)委員 それではよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 同じく七月十二日の連合審査で、私はこのように申し上げました。毎年平均約四百人の対象者があり、重大犯罪の再犯率が一一・七%とすれば、第四十二条による入院等の決定は、四百人掛ける一一・七%ですから、四十人から五十人程度になると理解していいか、このような質問をしたところ、明確な答弁はなかったわけでございますが、改めて両大臣からそれぞれお答えをいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 毎年約四百人の対象者があったときに、重大犯罪の再犯率が一一・七%だからその人だけか、こういうお話なんだろうというふうに思いますが、毎年平均して出てまいります対象の四百人の中にはさまざまな内容の人たちがいるというふうに思いますから、いわゆる重大犯罪の再犯率だけでこれを見ることというのは少し無理があるのではないか。中には、もっと軽いけれども、しかし治療を要するという人たちもお見えでございましょう。したがいまして、この重大犯罪の再犯率だけでその数字を出すことは少し無理があるのではないかというふうに私は思います。
○森山国務大臣 七月十二日の委員会で政府委員から御答弁申し上げましたとおり、入院等の決定は処遇事件を取り扱う裁判所の合議体が個々の事件に応じて判断するものでございますから、検察官による申し立てがなされたもののうち入院等の決定がなされる者の割合について、確定的なことを述べることは大変難しゅうございます。
 御指摘の約一一・七%と申しますのは、平成八年から十二年までの間に心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者のうち、本件犯行以前の十年間に重大な他害行為の前科前歴がある者の割合でございます。したがいまして、この数字は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者がその後重大な他害行為を行う割合という意味での再犯率ではございません。
 このような再犯率というものは、その統計的な調査に困難があるわけでございますが、仮にこれが算定されたといたしましても、その後の措置入院等によりまして精神障害が改善した、治ったかなどということを考慮しないことになってしまいますので、入院等の決定がなされる者の割合を想定する場合における参考には直接なるとは言えないと思います。
○金田(誠)委員 お二方それぞれから、どの程度の方が例えば入院をさせる旨の決定の対象者になるのかは御答弁なかったわけでございます。そのようにお聞きをいたしました。
 しかし、この法律が仮に通ったとして、第四十二条による入院の決定等がどういう形でどの程度なされていくのか、それは非常に重要な判断要素でございます。これについて、確定的なことを話していただきたいとは申し上げません、おおむねこの程度を想定していると。
 例えば、今までこの対象者と言われる方がこの法律以前にはいろいろな形でそれぞれ処遇をされていたと思うわけでございますが、仮にこの法律があったとすればどういう処遇になるのかということなどは、これは調べようと思えば調べられる話でございまして、こういう法律を出すに当たっては当然なされているんだろうと私は思っております。やみくもに、約四百名の方が対象者、この数字は出ているけれども、その結果、入院、通院、その他の振り分けがどうなるのか全くわかりませんという話で法律を提出しているわけではないだろうと思うわけでございますね。しかし、お二方からはそれぞれ御答弁は今ないのでございますが、これはどのようになっておりますでしょうか。
○森山国務大臣 法務省の調査によりますと、平成八年から平成十二年までの五年間におきまして、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者のうち精神保健福祉法措置入院となった者の割合は約六六・五%となっております。この数字が直ちにこの法案の制度においてもそのまま妥当するとは考えられませんけれども、この制度による処遇を受けることとなる者の数を推定するのにはこのような数字も一つの目安かなというふうに思われます。
○金田(誠)委員 厚生労働大臣、どうでしょう。
○坂口国務大臣 これは法務省からちょうだいしたものだというふうに思いますが、平成十二年度中に精神保健福祉法に基づきまして検察官から都道府県知事に対し通報がなされた事例は、重大な他害行為に該当するケース三百四件のうち、六四・五%が措置入院というふうになっております。したがいまして、今法務大臣からもお話ございましたが、この範囲の中の数字ではないかというふうに思っております。
○金田(誠)委員 いわゆる再犯率というのは一一・七%、後で資料をいただきますけれども、そういうことで数字をお示しいただいているわけでございますが、今度この法律ができれば、措置入院の比率、六六・五とか六四・五とかということで今それぞれお話がございましたが、こういう形で入院が決定されていくという話なんでしょうか。
○樋渡政府参考人 再犯率を出すのが難しいといいますことは法務大臣のおっしゃったところでございまして、また、厚労大臣の方からも、そういう人たちだけが対象になるのじゃないというお答えをなされておりますが、正確な数字は、おっしゃるようになかなか出せないのでありますけれども、この制度のイメージ的なことを申し上げますと、まず、御指摘のありましたように、年間約四百人ぐらいの方が重大な他害行為をなさるといたしますと、正確な再犯率ではありませんけれども、その一一・七%の方が過去にそういう前歴を持っておられるということでありまして、そうしますと、その約四百人の方々は、この後ほとんどの方が措置入院等によりまして治療を受けておられます。これを、本案の修正案のお言葉をおかりすれば、同様の行為を行うことなく社会復帰をされた方がたくさんいらっしゃるはずでございまして、これも治療を受けた効果であります。
 反対に申し上げますれば、一一・七%の方といいますのは、不幸にして社会復帰をされながら再び同様の行為をされた方か、あるいは治療を受けておられる中で、または完全に社会復帰されていない中で不幸にもまた同様の行為をされた方ということになるわけでありまして、両方とも治療を受けていただくということが必要だろうという意味で、その確実な数字は、これはこの法案に基づきまして裁判所が判断して確定していくことでありまして、正確な数字は申し上げられませんけれども、しかしながら、先ほど法務大臣が申し上げましたように、四百名というのはリミットでございまして、そのうちの措置入院の方が約七割近くいらっしゃるから、多分それよりは少ない数字だろうというところまでは何とか言えるだろうというふうに思っております。
○金田(誠)委員 措置入院の方の比率がこういうことだということはわかるわけでございますが、これは自傷他害のおそれですよね。これは要件が異なるわけでございます。法案の第四十二条、原案には原案の要件が示されていて、修正案には修正案の要件が示されている。これは自傷他害ということではないわけでございますね。しかし、出てきた数字は、自傷他害の措置入院ということが一つの目安ということでお示しをされているわけでございます。
 措置入院の数字が、今回の法案、原案、修正案、修正案はどうなのかまだ御答弁いただいておりませんが、提出者、修正案も同じ考え方になるんでしょうか。後でちょっとそれはお答えいただきたいと思いますが、新法による入院も措置入院の比率が一つの目安になるという根拠をお示しいただきたいと思うのです。
○上田政府参考人 先ほど大臣の方から、重大な他害行為に関するケース三百四件のうち六四・五%が措置入院になっているということにつきまして御説明申し上げましたが、措置入院と申しますのは、いわゆる自傷他害という要件での判定でございます。したがいまして、今回の要件と自傷他害の関係でいきますと、自傷他害の概念が広いわけでございますので、我々といたしましては、この六四・五よりも少ない数字というのが考えられるというふうに思っております。
 いずれにしましても、御参考までに措置入院の状況を御説明申し上げたところでございます。
○金田(誠)委員 提出者の方から。提出者の修正案でも同じ考えかどうかというのをさっき質問したんですが。
○塩崎委員 今回これを修正しても、合議体が新たな組み合わせで、裁判官と精神科のお医者さん、審判員として、それぞれの鑑定に基づき、それから、先ほど来ずっと質問が出ておりますけれども、裁判官としての知見に基づいてさまざまな判断をして、意見の一致を見たところで判断をするということでありますから、基本的には、先ほど答弁があったように、さあ、この四百人のうちのどれだけがというようなことはなかなか今確定的に申し上げることは難しいだろう。特に、今どうなのかということが大事なわけでございますので、難しいということだと思います。
○金田(誠)委員 この法律がもし動き出したらどうなるのかが示されなければ、判断も非常に難しいということになりますね。
 今、一つの目安、これより少ないということで出たのが、森山大臣は六六・五、坂口大臣は六四・五%と、ちょっと違いますが似たような数字が出ておりますね。これが自傷他害の場合こうであった、しかし、もっと概念は狭くなるのでこれよりも少ないだろうというお話でございましたが、仮に六五%程度というような話になりますと、再犯率、実際は一一・七ということになりますから、五〇%以上の方が予防のために収容される、それも自傷他害ということの措置入院ではない形でこの新たな法律の対象になる、こういうあいまいな話でやろうとされているわけですか。
 六六・五なり六四・五より、これより少ないだろうという話です。この程度の数字しか出ませんか。少ないだろうでは、一一・七になるものなのか、五〇になるものか、四〇になるものか、いずれにしても、相当その必要のない方が入院させられるという話なわけですよ。それが、これよりは少ないだろう程度の話で納得しろと言われても困るんですが。
○上田政府参考人 先ほど、入院等の決定につきましては、処遇事件を取り扱う裁判所の合議体が個々の事件に応じまして判断いたすものでございますので、そういう意味で、現時点で確定的なことを述べるのは困難であるということを申し上げました。しかしながら、議員の方から、この点についてのデータについて私ども把握していないのかという御質問だったと思います。そういう意味で、重大な他害行為に該当するケースについて措置入院の状況を御参考までに御説明したところでございます。
○金田(誠)委員 ですから、今の数字は措置入院の数字なわけですよ。新法の原案による数字でもなければ修正案による数字でもないわけですよ。我々、この法律ができたらどうなるんだということを判断できないままに、示されないままに賛否を問われても困るわけですね。
 そこで、両大臣にお願いでございます。中をもうすっかり飛ばしまして、時間がなくなりましたので、最後の質問で用意していた部分をお願い申し上げたいと思います。
 具体的な事例について、入院、通院、その他がどう振り分けられるか、法案の可否の判断に当たり、私はどうしても必要だと思うわけでございます。これは、確定的に一人一人まで全部確定しろなんて言うつもりはありませんよ。しかし、六十何%、措置入院の数字しか出ていません、それよりは少ないでしょうという話では余りにもこれはお粗末じゃないですか。ある程度誤差を見ても、この程度のものは入院になるし、この程度は通院、その他と、想定でいいですよ。一定の根拠のもとにこう想定するというものはぜひ必要だと思うわけでございます。
 例えば、平成十二年四百十七人の対象者ということでこの資料集に数字が載っていますが、それぞれどう振り分けられるのか。固有名詞なり事件の詳細などはプライバシーにかかわると思いますから、そんなことは求めません。そういう固有名詞などに及ぶことのない、プライバシーに及ぶことのない範囲で、概略、犯行の状況なり病状、これがわかる形で、こういう方は入院措置ですよ、こういうのを、例えば平成十二年四百十七人、これについて、御専門の立場から振り分けをして数字をお示しいただけませんでしょうか。そのぐらいのことをやるのは、この法案審議に当たっては私は当然のことだと思いますが、いかがでしょう。
○森山国務大臣 今先生御指摘の四百十七人というのは、平成十二年に検察庁で不起訴となった被疑者のうち、精神障害のため心神喪失及び心神耗弱と認められた者並びに第一審裁判所で心神喪失及び心神耗弱が認められた者の人数というふうに理解いたしておりますが、入院等の決定は、その事件を取り扱う裁判所の合議体が、個々の事件に応じまして、第三十七条第一項に規定する鑑定を基礎といたしますとともに、同じ第三十七条第三項の意見及び対象者の生活環境をも考慮いたしまして判断するわけでございますので、具体的な事件についてどのように判断がなされるかということを想定するのは大変困難でございまして、なかなかお答えがしにくいというふうに思います。
○金田(誠)委員 そんなことはないのではないですか。現実に四百十七人という対象者が例えば平成十二年の場合はいらっしゃるわけです。十二年でなくてもいいですよ、十一年でも十年でもいいわけですけれども、そういう方々が、この法律ができればおおむねどういう処遇を受けるのか、その程度のことをお示しいただかなければ、これは判断のしようがない。
 それをやってみてくださいよ。それは、専門のお医者さんだって厚生労働省にはいらっしゃる、専門の法律家は法務省にいらっしゃる。手分けして、皆さんがどういう想定でこの法律を出しているんですか。措置入院の数字しか出ないということじゃないでしょう、新たな体系をつくるというんだから、それは出してください。――刑事局長の話じゃないでしょう、これは。何を考えているんですか。(発言する者あり)
○山本委員長 樋渡刑事局長。
 不規則発言は御注意ください。(発言する者あり)不規則発言でございます。不規則発言に御注意ください。委員長の秩序維持の権限がありますので、委員、中川委員、御注意申し上げます。
○樋渡政府参考人 端的に申し上げまして、現在、そういう資料はございません。要は、入院等の決定は事件の記録のみに基づくものではございませんでして、この法案の三十七条第一項に規定する鑑定や、生活環境に関する資料等が必要でございますから、そういうものがまだ出されていない段階で想定することは困難でございます。
○金田(誠)委員 これでは審議ができませんので、委員長に、この資料を政府で作成して提出するように求めたいと思います。
○山本委員長 理事会において協議させていただきます。
○金田(誠)委員 時間になりましたので、終わります。
○山本委員長 午後一時から連合審査会を再開することとし、この際、休憩いたします。