心神喪失者等医療観察法の条文・審議(その34)

前回(id:kokekokko:20060126)のつづき。
法務委員会です。野党側委員による質疑ののち、この日の委員会で採決が行われました。
質疑における議論は、与党・政府と野党との間で平行線をたどり、そのために採決でも、野党は反対にまわりました。
【金田委員質問】

第155回衆議院 法務委員会会議録第15号(平成14年12月6日)
○山本委員長 次に、第百五十四回国会、内閣提出、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、これに対する塩崎恭久君外二名提出の修正案、第百五十四回国会、平岡秀夫君外五名提出、裁判所法の一部を改正する法律案及び検察庁法の一部を改正する法律案並びに第百五十四回国会、水島広子君外五名提出、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の各案及び修正案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長樋渡利秋君、保護局長横田尤孝君、人権擁護局長吉戒修一君、厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長太田俊明君及び社会・援護局障害保健福祉部長上田茂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
○山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金田誠一君。
○金田(誠)委員 おはようございます。民主党金田誠一でございます。
 まず第一点目は、去る七月十二日の連合審査の私の質問に際しての積み残し事項について、引き続き質問をしたいと思います。
 このとき要求した資料を昨日ちょうだいをいたしました。七月からですから、五カ月ほどたったんだなと思っておりまして、大変お手数をおかけしましたこと、恐縮に存じます。この程度のものが五カ月もかかるのか、不思議に思いつつ受け取った次第でございます。
 この資料を拝見しますと、平成八年から十二年の五年間の累計で、対象者総数二千三十七、うち殺人等の重大な他害行為の前科前歴のある者二百四十、一一・七八%となってございます。また、重大な他害行為のほかに、その他の粗暴犯が五十四、その他の罪が二百七十四、これらすべて合計をしますと五百六十八となるわけでございます。二千三十七の対象者に対して五百六十八、二七・八八%となっております。
 ところが、両省の連名で提出された法案関係資料、これでございます、本家本元の議案でございますが、この法案関係資料の末尾についている資料には、五百六十八、二七・九%という数字はあるものの、二百四十、一一・七八%という数字はどこを探しても載ってございません。
 しかし、今回の法案は、重大な他害行為を犯した者を対象とする法案であることからすれば、より重要な数字は二百四十、一一・七八%であるはずでございます。この数字が隠されて、五百六十八、二七・八八%のみが公表されているということは、心神喪失者等の再犯率を意図的に高く見せかけようとしたものにほかなりません。極めて重大な問題であると思います。法務大臣は、当委員会に、国民に謝罪をすべきであると思います。
○森山国務大臣 御指摘のような誤解を与えた結果になったとすれば、まことに申しわけなく、遺憾でございます。
 しかし、その真意を申し上げますと、法案関係資料としてお示しいたしたかったのは、統計の基準が異なりますので一概には比較はできませんが、心神喪失等の状態で殺人等の重大な他害行為を行った者の前科等の状況と、重大な他害行為を行って起訴、不起訴となったすべての者の前科等の状況との対比でございます。
 しかしながら、重大な他害行為に当たる罪で起訴、不起訴となったすべての者については、重大な他害行為に限定した前科の統計資料がございませんことから、心神喪失等の状態で殺人等の重大な他害行為を行った者につきましても、重大な他害行為の前科前歴に限定せずに記載したものでございます。
 なお、再犯率に関してのお尋ねでございましたが、御指摘の一一・七八%という数字は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の過去の重大な他害行為の前科前歴の割合でございまして、この数字は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者がその後重大な他害行為を行う割合という意味での再犯率ではございません。
 このような再犯率というものは、その統計的な調査に困難を伴うものではございますが、仮にこれが算定されたといたしましても、その後の措置入院等によりまして精神障害が改善したかどうかなどを考慮しないものとなってしまいますので、この点を御理解いただきたいと存じます。
○金田(誠)委員 お認めいただけないようでございまして、大変残念でございます。
 重大な他害行為二百四十件、このほかに、その他の粗暴犯五十四、さらにその他の罪二百七十四まで加えた五百六十八、二七・八八%のみを公表したというのが問題でございます。二百四十、一一・七八%というのは数字として示されてもおりません。これがすなわち再犯率ではないということはよくわかるわけでございますが、再犯率を類推する上で極めて重要な数値でございます。二七・八八のみを公表して一一・七八をふせた、それが問題でございます。その程度のこともおわかりにならないようでは極めて残念でございます。
 次に、二点目の質問に移らせていただきます。第四十二条に係る修正案の意味についてでございます。
 提出者にお伺いをいたします。
 修正案が出ているということは、四十二条による入院、通院、その他の措置を決定する要件が当然この修正によって変更されるんだ、こう思うのが普通でございますが、先般来の答弁によりますと、そうでもないようでございます。言葉上は修正するが措置を決定する要件としては変更されるものではないというような御答弁をされているようでございますが、どちらなんでしょうか。この修正案によって措置を決定する要件が変更されるのかされないのか、明快にお答えをいただきたいと思います。
○塩崎委員 これまで何回かお答えを申し上げているわけでありますけれども、今回の政府案の、「再び対象行為を行うおそれ」という要件については、いろいろな御批判があって、今回の修正をさせていただいたわけでございます。本人の精神障害を改善するための医療の必要性、今回の修正案によりまして、これが中心的な要件であることを明確にするとともに、そしてこのような医療の必要性の内容を限定いたしまして、精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰できるよう配慮することが必要な者だけが対象となることを明確にするということによりまして、入院等の要件を明確化し、本制度の目的に即した限定的なものにしたということでございますので、今金田議員のおっしゃったように、変わっていないのじゃないかということは必ずしも当たっていないということだと思っております。
○金田(誠)委員 今の御説明のその意味するところをお尋ねしているわけでございます。この四十二条によって、入院の決定、通院の決定、その他というふうに振り分けられるわけでございます。原案に基づいて振り分けられる振り分け方と修正案に基づいて振り分けられる振り分け方が同じなのか違うのか。これを端的に、同じなら同じ、違うなら違う、そのように答弁していただきたいと思います。
○塩崎委員 端的に申し上げれば、異なるということでございます。
○金田(誠)委員 どこがどういうふうに異なるのでしょうか。犯罪の状態あるいは病気の状態、社会復帰の可能性の状態、家族の状態、いろいろな要件があると思いますけれども、修正案によれば、どういう要件がどう異なるのでしょうか。
○塩崎委員 政府案の要件は、再び対象行為を行うおそれの有無だけが要件になっておったわけでありまして、医療の必要性の有無については明記されていなかったということで、この点を特に明記しようということで、このような形で修正をさせていただいたわけでございます。
 したがいまして、これまで何度か答弁しておりますけれども、対象者の精神障害に、例えば治療可能性がなくて医療の必要性がない場合、それからこの法律による手厚い専門的な医療までは特に必要がないと認める場合、あるいは対象者の精神障害について単に漠然とした危険性のようなものを感じられるというものにすぎないような場合、そういったものが特に政府案の場合には含まれてしまうのではないのかということがあったので、そういうことではないということを明らかにするためにこのような形で要件を少し変えたということでございます。
○金田(誠)委員 文字づらは変わっているわけです。それはもう読めばわかるわけでございます。しかし、その意味するところが変わっているのか変わっていないのかと。
 例えば、入院措置が決定される方がいらっしゃったとします。政府原案によって入院措置が決定される方で、修正案によっては入院にならない方があるということですね、今のおっしゃり方では。しかし、その逆もあるということでしょうか。政府原案では通院であった者が修正案によって入院になるということもあるということでしょうか。二点について。
○塩崎委員 前段につきましては、そのとおりだと思います。
 後段については、そういうことではないということでございます。
○金田(誠)委員 それでは、政府の原案で網をかぶせるところよりも、入院について言えば狭まっているということだと思いますが、どこがどう狭まったんでしょうか。
○塩崎委員 それが、先ほど御答弁申し上げたように、政府案の場合には、例えば、漠然としたおそれがあるという、危険性のようなものが感じられるものの場合にもひょっとするとこれが取り込められてしまうかもわからないということであったり、それから、さっき申し上げたように、治療の可能性がなくて、そして医療の必要性がないというような場合とか、それから、繰り返して恐縮でありますけれども、この法律による手厚い専門的な医療までは特に必要ないといったようなケースにはこの法律が適用はされないということが出てくるという意味において、政府案よりも範囲が少し狭まった、限定的に明示をいたした、こういうつもりございます。
○金田(誠)委員 実は、政府案の概念規定も非常に不明確でございます。恣意的に全部該当させることだって可能だと私は思うわけでございますけれども、それに対して狭まったということですから、政府案としてはどういう要件であれば入院になるのか。政府案としてはどういう具体例であれば、具体的に、犯罪の状況、あるいはどういう項目があるかわかりませんよ、今まで示されていないわけですから、あるいは社会復帰の可能性、家族の状況とか、いろいろあるのかもしれませんが、それは示されておりません。そういう政府案によって入院決定というふうにされる状況の方はどういう方なのか、それが修正案によって入院でなくなるというのは、どういう方がそこに具体的な違いが生ずるのかをきちんとお示しいただけませんでしょうか。
 こういう場合もありこういう場合もあるでは、きちんとした概念規定とは言えないと思います。これをきちんと文書に整理して、政府案によればこうなる、修正案によれば具体的にはこうなるんですと。今までの説明ではその違いがわかりませんよ。きちんと説明できる、ペーパーに整理をして出していただけませんか。
○漆原委員 今の質問にお答えしたいと思うんですが、まず政府案では、先ほど塩崎議員がおっしゃっていましたが、「再び対象行為を行うおそれ」というのが中心的な要件になっております。それに対して、この修正案の方では、「対象行為を行った際の精神障害を改善し、」というのが一つの要件になっておりますね。だから、対象者の精神障害に治療可能性がない、医療の必要がない、こういう場合には、政府案によれば、再犯のおそれがあるということで対象になる可能性がある、しかし、修正案によれば、入院の可能性はない。これは明白でございます。
 また、さらに、この法律による手厚い専門的な医療までは特に必要としない場合があると思います。その場合でも、政府案によれば、再犯の可能性があるということであれば入院の対象になり得る、しかし、修正案の方では入院の対象にならない。これは明白な違いがあると思っております。
 もう一つ、先ほど塩崎提案者も言っておられましたが、政府案では、漠然とした危険性、再犯のおそれ、これが拡大解釈をされるおそれがある。したがって、これを拡大解釈されないように、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要性の有無を要件にしたわけであります。
 もう一つは、政府案では、再び対象行為を行うおそれがあるとして入院の決定がされると考えられる場合でも、この修正案では、対象者に十分な看護者がいるなど、その生活環境等にかんがみて社会復帰の妨げとならないと認められる場合には入院の決定は行われない。
 私は、明白な基準があるというふうに思います。
○金田(誠)委員 聞いていて、何が明白なのか全くわかりません。というのも、もともとの政府案自体がわからないからなんです。どうにでもなる政府案だからです。それに対していろいろおっしゃっても、片や、どうにでもなるものですから、それに対してどうだと言っても特定しようがない。これが原案であり修正案である、その本質だと思います。
 改めてお伺いしますが、政府案として、具体的に、こういう、こういう、こういう事例であれば入院になる、こういう、こういう、こういうことであれば入院にはならない、通院だ、こういうのを幾つかの例で示していただけませんか。それに対して、提出者の方は、原案ではこうだけれども、修正案ではこうなるんだ、この違いを、御答弁では明白だとおっしゃったわけですから、明白にちょっと書いていただけませんか。書けないような状態なら、それはそれで結構です。書けないと言ってください。政府と提出者と、両方に聞いています。書けなきゃ書けないと言ってください。書けないようなものを出したんですと言ってください。
○漆原委員 この法律の要件でございますから……(金田(誠)委員「具体的に」と呼ぶ)いやいや、私は、この要件で十分判断できるというふうに思っております。
○金田(誠)委員 政府はどうですか、原案について。――大体、どっちが答えるかもわからない。――大臣、答えてください。何で刑事局長が答えるんですか。刑事局長が医学の知識でもあるんですか。
○山本委員長 樋渡刑事局長。
○樋渡政府参考人 政府案の要件は、心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれでございまして、その考慮の要素は、精神障害の類型、病状等、三十七条第二項に列挙していることでございます。
 どのような場合に入院決定が行われるかということにつきましては、裁判所がさまざまな事実を考慮して決定するものでございまして、一概にお答えできるものではないと思っております。
○金田(誠)委員 それでは確認をしたいと思います。
 具体的にこうした事例の場合は入院措置になりますよ、そこまでいかない、この程度であれば通院になりますよというような具体例を、原案について幾つか、修正案について幾つか示してくれということで申し上げてあるわけですが、それについては出せないということを政府、提出者、それぞれおっしゃっている。書いたものにはできないということを確認してよろしいでしょうか、政府と提出者。出せるか出せないかでいいです。
○漆原委員 何度も言っていますように、明白な基準を提示しておりますので、これに該当するかどうかの判断は具体的事案によって異なるというふうに思います。
○森山国務大臣 先ほど刑事局長から申し上げたとおりでございまして、個別のケースについてここで申し上げるということはいたしかねるわけでございます。
○金田(誠)委員 例えばこういう場合ということさえも示せない、ずさんな法案だということがはっきりしたと思います。
 次に、質問の三点目に移らせていただきたいと思います。
 第四十二条「入院等の決定」という項目でございますが、この四十二条の意味についてお尋ねをしたいと思います。
 この条項では、対象者は入院、通院、その他のいずれかの決定がなされることになるわけでございます。しかし、それがどういう数値になるかは、前回の連合審査で再三質問したにもかかわらず、解明されませんでした。改めて質問をしたいと思います。
 対象者は過去五年間で二千三十七名でございますから、五で割りますと年間約四百名ということになります。このうち、入院と決定される方はどの程度と想定されておりますでしょうか。また、その根拠は何でしょうか。法務省厚生労働省、それぞれからお答えいただきたいと思います。
○樋渡政府参考人 何度も繰り返して恐縮でございますけれども、入院等の決定は、処遇事件を取り扱う裁判所の合議体が、個々の事件に応じ、第三十七条第一項に規定する鑑定を基礎とするとともに、同条第三項の意見及び対象者の生活環境をも考慮して判断するものでございますから、検察官による申し立てがなされたもののうち、入院等の決定がなされるものの割合について確定的なことを述べることは困難であると思っております。
○上田政府参考人 入院等の決定は、処遇事件を取り扱う裁判所の合議体が、個々の事件に応じ、第三十七条第一項に規定する鑑定を基礎とするとともに、同条第三項の意見及び対象者の生活環境をも考慮して判断するものでありますから、入院等の決定がなされるものの割合について確定的なことを申し上げるのは困難であると考えております。
 なお、厚生労働省の調査におきましては、平成十二年度中に精神保健福祉法に基づき検察官から都道府県知事に対し通報がなされた事例で重大な他害行為に該当するケース約三百四件のうち、六四・五%が措置入院となっています。本制度による処遇を受けることになる者の数を想定する場合においては、このような数値も一つの参考となるものと考えております。
○金田(誠)委員 何の参考になるんですか。入院措置される方が六四・五になるというんですか。そうではないんでしょう。そうも言えないんだよ。ただの数字を挙げて、ただ参考になると言っているだけで、何の根拠もない数字をおっしゃっているだけですよ。これからの想定、シミュレーションも全くされていない。シミュレーションもせずに、よくもまあこういう人権を拘束する法案が出せるものだ。余りにも無責任ではないですか。
 それでは、別な角度からまた質問していきます。
 前回の連合審査で、私は、例えば、平成十二年の対象者は四百十七人であるから、この方々について本法案を適用されるとすればどのように措置されることになるか、資料の提出をお願いしたところです。今後の問題としては、皆さんおっしゃるように、シミュレーションもしていない。これまたひどい話だと思いますが、今後のシミュレーションもしていないんだったら、過去の平成十二年の四百十七人の記録をたどれば、新法を適用すればどうなるか、おのずと明らかじゃないですか。この資料の提出をお願いしたわけでございますが、検討の結果いかがですか。
○樋渡政府参考人 入院等の決定は、処遇事件を取り扱う裁判所の合議体が、個々の事件に応じ、三十七条第一項に規定する鑑定を基礎とするとともに、同条三項の意見及び対象者の生活環境をも考慮して判断するものでございます。
 しかしながら、御指摘のような過去の事件に関する資料といたしましては、刑事事件記録しかございませんで、本制度が予定するような鑑定が実施されていないということ、刑事事件の精神鑑定は主に犯行当時の責任能力に関するものでございまして、本制度上の医療の必要性を判断していないということ、今後の医療の必要性やその内容を判断するために必要な資料が十分でないこと等の問題がございまして、本法案における処遇を推測することは困難であると思っております。
○金田(誠)委員 過去に実際に起こった触法の事案について、新法を当てはめればどういう決定がなされるのかさえ示されない状況とよくわかりましたけれども、そんなことでいいんですか、こういう法案を提出する際に。両大臣に後でお聞きをしますから、よく御判断をしておいていただきたいと思います。
 これは、余りといえば余りではないですか。これさえも出ないとすれば、さらに百歩譲って、同じく平成十二年の対象者四百十七人について、現行法上どのように措置されたかは、つかめるんではないですか。新しくつくろうという法律を当てはめたらどうなるかという数字は出せないというんであれば、今現在の法律で、この触法の方々、大変な問題だと皆さんおっしゃって法案をつくっているわけですよ。つくるからには実態ぐらいはつかんでおられると、当然のこととして推測をいたします。現行法でどのように措置されたのか、明らかになっていると私は思います。
 例えば、措置入院、こういう方が何人、それはどういう方が対象になったのか。通院ということになった方は何人で、それはどういう方なのか。こういう数字を出していただきたいと思います。四百十七人、現行法で、精神保健福祉法ですよ、これでどう措置をされたかお示しをいただきたい。
○山本委員長 樋渡刑事局長。
○金田(誠)委員 精神保健福祉法で聞いているんですよ。何を言っているんですか。委員長、何で刑事局長なんですか。精神保健福祉法でどう措置されたか聞いているんじゃないですか。
○山本委員長 質問者は、樋渡刑事局長の答弁を聞いてからもう一度再質問してください。
○樋渡政府参考人 調査によりますと、平成十二年におきまして、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者四百十七名のうち、精神保健福祉法措置入院となった者は二百七十名、これは、四百十七名全体の約六四・七%に当たります。
 これを重大な他害行為の罪名別に見ますと、殺人罪の者が九十四名、強盗罪の者が十八名、傷害罪の者が七十八名、傷害致死罪の者が十名、強姦・強制わいせつ罪の者が六名、放火罪の者が六十四名でございます。
 そのほか、四百十七名のうち医療保護入院が四十名、これは約九・六%に当たります。通院治療が八名、これは約一・九%に当たりますが、となっております。
○金田(誠)委員 この数字から、措置入院をされた方六四・七%ということでございますけれども、これは自傷他害という概念に当てはめてやったわけですね。
 これに対して、今度は、原案、修正案それぞれの対応がなされる。これは、では追っかけることができるんではないですか。措置入院されたカルテも残っているんではないですか。先ほど申し上げた資料をつくれるんではないですか。
 まず、この四百十七名について、それぞれ措置された状況、具体的にどういう状況だったのかも含めて、現行法による措置の中身のわかる資料の御提出を要求したいと思います。
○樋渡政府参考人 何度もで恐縮でございますけれども、先ほど申し上げましたように、これは刑事事件の記録しかございませんでして、本制度が予定するような鑑定が実施されておりません。
 この刑事事件記録によります鑑定は、当時責任能力があったかどうかという点に絞っての鑑定でございますので、これからのどういう治療で回復していただけるのかというような観点がわかる資料がございませんので、それでつくれないということを申し上げておるわけであります。
○金田(誠)委員 この平成十二年度の対象者四百十七名については、それぞれ精神保健福祉法でどういう取り扱いがされたかは掌握をしているんだということですね、その結果はわかっていると。
 そうしたら、入院なら入院、通院なら通院すれば、その病院にカルテはあるんではないですか。これは、患者の同意というのは本来当然必要だと思いますけれども、そうした御同意をいただける方もいらっしゃると僕は思います。これほど重要な法案の審議に際してですから。過去の事例、措置入院になってどういう医療が施されて、どういう形で退院をして、現在どういう状況にあるのか、こういうものをきちんとつかんだ上で、その不足分を補うというのが新法であるはずですよ、本来。
 先ほど、これについてどう措置されることになるかということは出せないということでございましたけれども、どう措置されたかはきちんとわかると。これから考えれば、今後のことだってわかるんではないかと思います。そこまでわかっているんであれば、今後のことだってわかるんではないか。
 どうですか。まず、それでは、今後のことがわかるかどうかは別にして、四百十七名の現行法による措置がどうされたのか、これについてはっきりわかる書いたものを出してくださいよ。今口頭で言われましたけれども、メモしながらこの場で判断しろといったって無理ですから、きちんと、五カ月かかったペーパーもこの間ありましたけれども、これは五カ月もかからないでしょう。五分もあればできるんじゃないですか。
○上田政府参考人 先ほど刑事局長の方から、措置入院患者数につきましてはお話しされたとおりでありまして、ただ、議員御指摘の、それぞれ実際に一人一人の状況については、具体的な固有名詞、カルテ……(金田(誠)委員「固有名詞なんて言っていませんよ。冗談じゃないよ」と呼ぶ)いえ、ですから、そういった状況が把握できていない中での調査は難しいというふうに考えております。
○山本委員長 金田君。御質問、もう一回。
○金田(誠)委員 いやいや、今の資料を出してくれと言っただけの話ですよ。答えてくださいよ。
○山本委員長 再度、もう一度、御要求いただけませんか。
○金田(誠)委員 時間がないから、もったいないですよ。刑事局長の言った数字と、さらにまだそれに付随したものがあるのなら、それを紙に出してくださいと言っているんですよ。
○樋渡政府参考人 数字の中身は先ほど申し上げたとおりでございまして、この資料を要求されるのであれば、今お出しできますが。
○金田(誠)委員 お願いします。
 そういうことで、どのように措置されたかは押さえておられると。出す資料には固有名詞はなくても、その数字をつくる元データには固有名詞はあるはずですね。それをたどれば、どういう現行法の対応がされて、それが不十分だというんでしょう、それが不十分でそしてこの法律が必要だというんだから、現行法でどこがどう不十分で、どういう医療なりをやればこういう状態になるんです、こういう調査をして、どういう法律が必要かを議論しませんか。そこまでわかっているのであれば、たどれるでしょう。
 両大臣、いかがですか。これはやろうと思えばできることです。そして、本来、こういうとんでもない法律をつくるという以前に、現行法による措置が不十分であってこれが必要なんだという根拠を示すのが当たり前のことではないですか。それも全く出されずに、新しい法律によってどう措置されるのかの説明もできずに、シミュレーションも行わずにやるなんというのは、とんでもないこと。最低でも、四百十七名の行き先はわかるというんですから、それをたどって、わかるところまで調査しましょうよ。
 その上で、不備があるのならどういう不備があるのかを、お互い共通の認識のもとに、あなた方だって認識ないんでしょう、今の話からすると。四百十七名が、どこが不備だったかというのは、認識ないわけでしょう。承知をしていないわけでしょう。四百十七名の処遇が、具体的にどういう不足があるのか、これを承知しておらない、厚生労働大臣法務大臣、そうでしょう。それをまずお認めいただいて、そうであるならば、たどれるだけたどって、共通の認識のもとに、新法はどうあるべきかという議論をしましょうよ。
 お二人に、それぞれお答えいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 今御指摘になりました、過去の、例えば平成十二年なら十二年におきますところの措置入院について、それがどういう経過で措置入院になったかということは、これは調査をすればわかることだというふうに私は思います。
 ただし、本法律というのは今回初めて行うわけでありますから、本法案に基づいて判断をしたときにどうかということがそこからわかるかどうかは、なかなか難しいところだというふうに思いますが、措置入院についての過去のデータというのは、これはやはり出るだろうというふうに思います。
○山本委員長 森山法務大臣
○金田(誠)委員 まあ、いいですよ。同じ答弁になると思いますので。
 その場合、それをたどれるだけたどりましょうよ。本法案によってどうなるかは、確かに難しいかもしれません。しかし、現実にどういう処遇をされて、何が不備なのかというのはわかるはずですよ。それもわからないままに法律を出すこと自体が間違っていますよ。
 大臣、措置入院になった経過はわかると、その後どうなったかもわかるわけですよ。それをやってくれませんか。
○坂口国務大臣 それは、過去をたどればわかる話でございますから、それはでき得るというふうに思います。
○金田(誠)委員 そのデータが、半年かかるか、一年かかるか、その間、この法案の審議は待ったっていいんじゃないですか。それをきちっと精査した上で、本当にどんな新法が必要なのか、そういう取り扱いをぜひ御決断していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○山本委員長 どなたに。
○金田(誠)委員 両大臣。どっちが判断するんですか、そういうことは。そんなデータもないのに出すのはおかしいですよ。――時計をとめてくださいよ。委員長、私、まだ質問があるんですよ。時間をとめてくださいよ、私の持ち時間ですから。そんな無理なことを言っているわけではないんですから、委員長、時間をとめてください。
○山本委員長 もうすぐ答弁ですから、ちょっと待ってください。
○金田(誠)委員 頼みますよ。私、まだ質問があるんですから。
○坂口国務大臣 先ほど申しましたように、そのデータは出るというふうに私は思います。
 これは、法務省とも御相談を申し上げなければならないことでございますから、厚生労働省単独でできることではございませんので、それは御相談を申し上げさせていただいて、過去のデータをどうたどるかということは可能である。それはやらせていただくことはでき得るというふうに思っておりますし、そこは御相談をさせていただきたいというふうに思います。しかし、その問題があるからすべてそれまで待てというのではない、私はそう思っております。
○山本委員長 森山法務大臣
○金田(誠)委員 同じ答弁でしょう。いや、時間がないものですから、ちょっと、済みません。もう、あと一分しかないものですから。恐縮です。
 やはり、もう一度両大臣できちっと相談をしていただきたいと思います。
 そういう、本当の基礎的なデータがないということはおかしいですよ。僕はためにする議論をしているわけではないんです。だから、納得されていないわけですよ、関連する皆様方が。政治というのはやはり納得の努力をするのが当然のことではないですか。ぜひひとつ、両大臣で御相談をしていただきたい。
 それについて、両大臣、まだ、今回の法案の適用になるかもしれない患者団体の方には直接お目にかかっていないそうですね、お二人とも。精神障害者の置かれた状況、病院による処遇とはどういうことなのか、社会の中でどういう目で見られて、経済的、社会的あるいは人間関係の中でどういう立場に置かれているのか、お二人に直接耳で聞いていただきたいと思います。大臣室でもどこでも、そんなに、大集団を前にやれとは言いません、三人でも五人でもいいと思います。ぜひ当事者の話を聞いていただきたい。これは、大臣それぞれに簡潔に御答弁をいただきたいと思います。
○森山国務大臣 先生が先ほど来おっしゃっております問題について、調査できるものはもちろんいたしたいと思いますし、またいろいろな方の御意見も十分聞かせていただきたい。既にかなり聞かせていただいたつもりでございますが、今後とも、そういうつもりで対処してまいりたいと思います。
 この法案は、例えば過去一年とかいうような具体的な問題だけではなくて、長い間の大変難しい問題、そしてさらには、日本における精神医療の内容の充実向上というようなことを考えて両省で検討してまいったものでございますので、ぜひ一歩でもその状況を前進させるために、御審議をいただいて、一刻も早く成立させていただくようによろしくお願いしたいと思います。
○坂口国務大臣 今、金田議員がおっしゃったのは、一般的な精神病の皆さん方の御意見といいますか、そういうことのようにお聞きをいたしました。それはお聞きをすることを決して拒否するものではございませんし、お会いさせていただくというふうに思います。
 ただ、もちろん私は、過去にも精神病を病む皆さん方とは何度もお会いをしたことがございますから、どういう立場に置かれておみえになるかということにつきましては存じているつもりでございます。しかし、この法律につきましてお話をしたわけではございません。
○金田(誠)委員 そういう社会的な状況に置かれている方々が、この法律によってどういうことになるのか、この法律をどう認識し、どう受けとめておられるのか、本来、そうした方々が望む、不幸にも犯罪を犯してしまった場合の処遇はどうあるべきと考えておられるのか、それらについて、法案を提出するに当たって直接当事者から事情聴取もされていないということは、データがないということと同等、シミュレーションがないということと同様に、私は、法案策定作業における重大な瑕疵がある、こう言わざるを得ないわけでございます。
 これは無理がある話でしょうか。これほどの法案を準備する際に、過去の状況、実態、法を適用した場合のシミュレーション、そして当事者の声、この最も大切な部分が欠落した上での法案は、審議、採決をするに値しない欠陥のある法案だということを両大臣、よく認識をしていただいて、お二人とも政治家でございますから、修正案を出された方々も含めて、ぜひ政治の立場での御決断をいただきたい。採決はすべきではない、しかるべく私が前段申し上げました扱いをぜひしていただきたいと強く要請をして、終わります。