心神喪失者等医療観察法の条文・審議(その52)

前回(id:kokekokko:20060226)のつづき。
ひきつづき、連合審査会での質疑です。
【風間委員質疑】

第156回参議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第1号(同)
○風間昶君 公明党の風間ですけれども、今ほど問題になった部分ともリンクしますけれども、現在のこの精神保健福祉法に基づく措置入院制度でのことですけれども、精神保健福祉法では、本人の申告によるほか、警察官、検察官、保護観察所所長の通報により診察が行われているというのが実態だと思います。
 実際に、本人が申告するよりも、むしろ警察官、検察官の通報の方が圧倒的に多いかと思いますけれども、そのケースは年間、何例ぐらいになっているのか、報告をまずいただきたいと思います。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 厚生労働省の統計によりますと、平成十三年度に精神保健福祉法に基づく通報等によって診察が行われた事例につきましては、一般人からの申請は三百四十一件、警察からの通報は五千百二十八件、検察官からの通報は七百三十五件、保護観察所の長からの通報が五件、矯正施設の長からの通報は百七件、精神病院の管理者からの届出につきましては五十六件となっております。
○風間昶君 そのうち、通報によって診察が開始される者の中には、通常の精神疾患を有している患者さんの不起訴になった例、あるいは裁判で無罪になった者も含まれていると思いますが、それは年間、何例ぐらいになるのか、教えてくださいますか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 法務省の調査によりますと、平成十三年に検察庁で不起訴とされた被疑者のうち、心神喪失又は心神耗弱と認められた者及び裁判所で心神喪失又は心神耗弱と見られた者は合計六百九十四名でございまして、そのうち、検察官又は警察官が措置入院制度に基づく通報を行った者は合計五百九十六名となっております。
○風間昶君 問題は、警察官や保護観察所長の通報で診察が開始された者の中に不起訴になった者、無罪判決を得た者について、今後、この法案では検察官が申し立てるということになりますから、警察官や保護観察所長の通報はなくなるというふうに理解していいのかどうか。また、もしそうだとするならば、そのように改正することのメリット、デメリットについてどういうふうに考えたらいいのか、考え方を教えてもらいたいというふうに思います。
○政府参考人(上田茂君) 重大な他害行為を行った者の、心神喪失あるいは心神耗弱を理由として不起訴処分又は無罪の確定判決を受けた者については、本制度により検察官が処遇を申し立てることとなります。しかしながら、重大な他害行為を行っていない場合ですとか、あるいは心神喪失又は耗弱でない場合であっても、適切な医療を速やかに提供するためには警察官や保護観察所の通報が必要となる場合もあると考えております。
 したがいまして、こういった自傷他害のおそれという方について、やはり早急に医療を行う必要があるケースにつきましては、引き続き精神保健福祉法でこのような通報制度、通報がございますので、こういった通報がまた必要になるケースも出てくるというふうに考えております。
○風間昶君 そうすると、二通りあるというふうに考えていいわけですね。
 そこで、今回のこの法律案では重大な犯罪事犯の犯人がまず対象となっているわけでありますけれども、それにしてもかなり大きな絞り込みがされているわけで、ただし、重大犯罪といってもいろいろあるわけで、殺人や強盗など被害者が個人であるもののほか、例えば列車通過を妨害したりあるいはハイジャックするなどの不特定多数の方々の生命あるいは身体を危険にさらす場合も、極めてまれなケースであるとは思います。
 したがいまして、事犯の刑罰の重さで一律に区切るのではなくて、本法案のように列挙した事犯に限定したのはどういう考え方に基づくのか、ちょっと伺っておきたいと思いますが。
○政府参考人(樋渡利秋君) 本法律案におきましては、御指摘のとおり、対象行為の範囲を法定刑の重さで一律に区切るのではなく、殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ及び傷害に当たる行為を対象行為とし、心神喪失等の状態でこれらの行為を行った者を本制度の対象としております。
 本法律案におきまして対象行為として類型化した行為につきましては、いずれも、法定刑が重く、また個人の生命、身体、財産等に重大な被害を及ぼす行為であることに加えまして、心神喪失等の状態により行われることが比較的多いことにかんがみ、心神喪失等の状態でこれらの行為を行った者については特に継続的かつ適切な医療の確保を図ることが肝要であると考え、これらの行為を対象行為としたものでございます。
 これに対しまして、委員御指摘のハイジャックや往来危険の行為につきましては、多数人の生命、身体等に重大な被害を及ぼす危険の行為ではありますが、心神喪失等の状態により行われることが多いとまでは認められないといいますことから、これらの行為を対象行為とはしてございません。もっとも、ハイジャックや往来危険の行為につきましても、それらの行為が同時に殺人、放火、傷害又は強盗等の罪を伴うことが少なくないと考えられまして、その場合には対象行為に該当することとなると思います。
○風間昶君 分かりました。
 先ほどの武見委員の質問とも重複しますけれども、現行の精神保健福祉法では、二名の精神科医都道府県知事が入院の必要性を決めるわけでありますけれども、この法律案では裁判官がお一人、それから精神保健審判員お一人の合議体で行って入院の必要性が、決めることになりますけれども、裁判官の関与については賛否両論あると思いますが、私は適正な手続の観点からは必要だというふうに思っております。
 ただ、やはり具体的に裁判をされるといいましょうか、裁判官の方々におけるいわゆる精神医学あるいは病理精神医学を含めた基礎的な部分だけでなくて、むしろ臨床的な部分も含めての研修制度を具体的にはどのようにやるのかということが極めて大事な問題だというふうに思います。
 医学部の研修課程においては精神科領域における時間数というのが決まっているわけでありますから、そういう意味で、先ほど御答弁の中に、精神保健判定医との合同研修というふうにお話もありましたけれども、これはむしろかなり臨床的に高度な部分であって、もっとその前の段階での研修制度が私は必要ではないかというふうに思いますけれども、どのように考えられていらっしゃるでしょうか。
最高裁判所長官代理者(大野市太郎君) お答えいたします。
 先ほどの質問にもございましてお答えしたとおりでありますけれども、現在の手続の中でも、責任能力等の判断で裁判官、具体的な事件を通して司法精神医学についての能力涵養に努めているところではあります。また、これまでも司法研修における研修も行ってまいりました。
 先ほど舌足らずでちょっと申し上げられませんでしたが、最近では実地、医療現場の実地研修も取り入れておりまして、実際の医療の現場に触れて、そこで医師との座談会等行うといったような研修も行うようになってきております。そういった研修が行われておりますし、さらに、先ほど申し上げた各裁判所での鑑定の研究会、それから鑑定書等、事例を集めた資料等も作成してまいりました。
 今後、この法案が成立した場合には、更に処遇事件の審判に関する執務資料の作成や配付といったことも考えておりますし、先ほど申し上げた精神保健判定医との研究会、ここでは医師それから法律家である我々との間での、それぞれの立場からの相互のコミュニケーションも十分図れるというようなことも含めまして研修を行っていきたいというふうに思っております。さらに、司法研修における研修におきましても、基礎的な医学的知識を身に付けられるような研修も含めまして検討してまいりたいというふうに考えております。
○風間昶君 厚生労働省は、今の法務省の考え方、またその具体的な進め方について同意できるかどうか、同意できると思いますけれども、もうちょっと、要するに与える側、知識というか、与える側としてはどのようにじゃ取り組んでいくのか、一歩踏み込んだ答弁をお願いしたいと思いますけれども。
○政府参考人(上田茂君) 私どもも、司法精神医学をこれから、例えば精神・神経センターにおける新しい臨床研究部ですとかあるいは海外への研修、そしてまた、そういった方あるいは専門家による研修を今後行うと同時に研究を進めていきたいというふうに考えております。また併せて、こういった研究の知見、成果を司法側と連携を取りながら、今後の取組について十分連携を図りながら進めていきたいというふうに考えております。
○風間昶君 先ほどの、朝日委員も御指摘がありましたが、簡易鑑定が、どちらかというと、現状は特定のお医者さんに集中している現象が見受けられるわけでありまして、そういう意味で、精神保健審判員という方々の基準を、どんな形で選任されるのかということが一つは大事な問題だろうというふうに思います。
 現行の鑑定が特定のお医者さんに集中している部分についても、公平性が担保されるのかどうかということもまた重要になるんではないかというふうに思いますけれども、この辺のところは、手続的には、まず選任をどうやってやって、それからどういうふうにして今度は裁判所の方で取り扱うのかということを教えていただきたいと思いますけれども。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 合議体に参加する精神保健審判員は、厚生労働大臣最高裁判所に送付する名簿に記載された精神保健判定医の中から処遇事件ごとに裁判所が任命することとされております。この精神保健判定医の資格要件につきましては、一定の水準を確保するために、原則として精神保健指定医であること、あるいは精神保健指定医としての臨床経験が一定年数以上あって、措置診察に一定件数以上従事したことがあること、あるいは司法精神医学に関する研修を受講したこと、こういうことを検討しているところでございます。
 現在、精神保健指定医が約一万一千人おられますが、私ども、ただいま議員御指摘のように、一定の数を、判定医をそれぞれ地域で確保するというようなことから、現在、三百名程度の精神保健判定医を確保することが一つというふうに考えているところでございます。
○風間昶君 なるほど、大体三百名ぐらいの精神保健審判員がその役割を担っていただくということになりそうなんですね。
 それでは、入院費用の問題について伺いたいと思います。
 現行の精神保健福祉法では、措置入院となっていることから、国庫の補助はあるにしても、都道府県が入院費用を負担しなければならないと思われますけれども、ここの法律では費用は全部国から出るというふうに理解していいんでしょうか。
○政府参考人(上田茂君) 議員、御指摘のとおりでございます。
 これは、この対象者についてその病状の改善とこれに伴う同様の行為の防止を図り、その社会復帰を促進することを目的としております。そのために、一般精神医療とは異なり、国が公権的観点から行う公共性の高い医療でありまして、また裁判所の決定に基づき全国で公平一律に厳格に実施すべきということから、このように国が一元的に行う医療として全額国費によることとしております。
○風間昶君 民主党さんの対案も出されていますけれども、その案によりますと、入院費用は従来どおり都道府県の負担というふうになっているようでありますけれども、私の理解はそういう理解なんですが、民主党案について、都道府県としてみれば、手続は厳格になるし、その費用も一切自分たちの負担ということになれば理解を得にくい部分もあると思いますけれども、法案提出者の方に御答弁いただきたいと思いますけれども。
○朝日俊弘君 御質問いただきまして、ありがとうございます。
 先生御指摘のとおり、現在の精神保健福祉法による措置入院制度については、まず掛かった費用の全体について保険優先をします。その人が入っている保険を利かした上で、その残る部分について公費負担をします。その公費負担の割合は、国が四分の三、そして都道府県が四分の一という仕組みになっておりますから、もちろん所得に応じて一部費用徴収がございますが、基本的には都道府県の四分の一負担というのは変わりません。私どもの案では、新しい制度を作るわけではありませんので、現行の制度、そして現行の費用負担区分がそのままになると思います。
 なお、一九九五年、平成七年の改正で実は保険優先に変わりまして、それ以前は公費優先でありました。ですから、制度そのものとして公費優先に戻せという議論はあり得ると思いますが、現行はそういうことでございます。
○風間昶君 どっちがいいかどうかはみんなでまた判断しなきゃならない話でしょうからあれですけれども、分かりました。
 次に、退院、再入院についてですね。
 退院の申立てした方に、本人又はその保護者、あるいは付添人というのがあるわけでありますけれども、一方で現行の精神保健福祉法と異なって保護観察所長の申立てによる再入院の制度があります。したがって、本人側と保護観察所長側の所見が異なる場合には、退院あるいは再入院また退院というふうに繰り返されるようなことが危惧されるわけでありますけれども、そういう、言葉は悪いけれども、イタチごっこのようになることは避けなければならないと思いますが、退院のやはり明確な判断基準ということが必要になるというふうに思いますけれども、どのように考えているのか、法務省なんでしょうか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(樋渡利秋君) この新たな処遇制度におきましては、裁判所は、対象者につきまして、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰することを促進するため、入院をさせて、この法律による医療を受けさせる必要があると認める場合には、入院をさせ、又は入院を継続させる旨の決定を行うこととなり、入院をさせる必要まではないものの、この法律による医療を受けさせる必要があると認める場合には、入院によらない医療を受けさせ、又は入院によらない医療を行う期間を延長する旨の決定を行うことになり、いずれの場合にも当たらないときは、この法律による医療を行わない旨、又は終了させる旨の決定を行うこととなります。
 このように、対象者が退院許可の申立てをした場合でありましても、保護観察所長が再入院の申立てをした場合でありましても、裁判所は同一の基準に基づいて本制度における処遇の要否及びその内容を判断することになっております。
○風間昶君 いえ、だから、明確な判断基準というのは一言で言うと何になるんですか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 要は、この法案によりまして社会に復帰することを促進するため、入院をさせてこの法律による医療を受けさせる必要があるか否かということが判断基準となるということでございます。
○風間昶君 それは、何といいますか、仕組みの話であって、判断基準は何ですかというふうに聞いたら、一言では、分かりやすく言うとこうなんですという答弁があってしかるべきじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 要は、その対象者の病状、それから社会復帰の場等を考慮して、今申し上げた法律の要件を判断するということになろうかと思います。
○風間昶君 どうもすっきりしない部分がありますが、じゃこれ、大事なことですから、また後ほどの議論になろうかと思います。
 それからもう一つ、入院設備の病棟の問題ですけれども、全国で三十か所程度というか、三十病棟ぐらいを指定した入院医療機関を作るということでありますけれども、やはり設置基準というか方針というのが明確になっていないと作られないでしょうし、同時に、いろんな入院設備に必要な、例えば変な話ですけれども、逃走するというような行為を防止するためにもそういう施設も必要かもしれないけれども、やはりしかし、より開放的な人間的な明るい施設を作るということも大事であります。
 そういう意味で、それがそのまま治療につながっていくということの観点で、この入院設備の設計、施設設計の、言わば分かりやすく言うと、こういうふうにしたいなと、そしてこういう形で作りたいなというのがあってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 一ユニット三十床の病棟を考えておりまして、ここでは対象者についての社会復帰を進めるための手厚い医療ということを行う、またこういった医療を行うに当たってやはり療養環境と申しましょうか、あるいは今、ただいま議員御指摘のございましたスペースを十分確保し、そして可能な限りの開放感がある、そういう施設ということがやはり治療上非常に重要であるというふうに考えております。また、患者本人の治療状況あるいは治療、あるいは医療従事者等の安全が十分確保されることも重要でありまして、こういった施設については欧米で既に司法精神医療施設がございます。ですから、こういう施設を参考にいたしまして、ただいまの開放的な治療環境とそれから安全の確保、こういったバランスも十分配慮し、考慮しながら適切な基準を設けてまいりたいというふうに考えております。
○風間昶君 そうしますと、今の日本における精神医療というのは、非常にベッドは多くて治療、入院期間が長いというのが世界的にも飛び抜けているわけでありますけれども、そういう現行の精神医療体制とはまた違う意味で更なる研究をしていかなきゃならないというふうに思うわけでありますけれども、今度は地域精神保健福祉施設についても一つの医療機関、指定医療機関がその施設に来る、あるいは新しく作られるということになると、また地域の人にとってみればノーという声もまた出てこないとも限らないわけで、そういう意味で治療体制の整備、何といいましょうか、どのような形で臨んでいくのかということが、一つ地域との中でコンセンサスをまた作んなきゃならないのでないかというふうに思いますけれども、ここはどういうふうに考えていますか。
○政府参考人(上田茂君) 我が国の精神医療につきましては、精神病床数が多く、あるいは長期入院が多い、あるいは入院中心ですとかいろいろな課題があるわけでございます。そういう中で今回の司法精神医療を、ただいま申し上げましたような療養環境あるいは治療内容、あるいはスタッフ等々につきましても今申し上げましたような形で進めていくわけでございますが、こういった点についての関係者の理解というものを進めながら整備していく。
 また、もう一方では、こういった医療を進めると同時に、今申し上げました一般の医療においてもいろんな課題がございます。こういった一般医療の充実についても併せて進めていきたいというふうに考えております。
○風間昶君 この復帰の部分でありますけれども、社会復帰調整官はどうやって当初確保されていくのか、まず一点ですね。デイケアに通って、先ほど武見委員もグループホームの話もされていましたけれども、治療プログラムを立てる上で精神保健福祉センターがどういう役割を果たしていくのか、大変大事な問題だと思いますし、犯罪を犯したということを自らが認識して再犯を防止する特別プログラムなんかはアメリカではなされているようでありますけれども、それも必要でないかと思いますけれども、そこはどうされていくつもりですか。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 本制度の下では、通院医療を受けることとなりました対象者の処遇につきましては、保護観察所が言わばコーディネーターとなりまして、医療機関はもとより、地域社会で精神障害者に対する援助業務を担っております精神保健福祉センターや保健所等の関係機関とも連携して本人の社会復帰を促進することとしております。
 厚生労働省といたしましては、適切な治療プログラムの策定のために、平成十四年度から司法精神医学に関する研究に助成を行うとともに、今年度から精神・神経センターに司法精神医学に関する研究部を設置し、治療に関する研究を進めていくこととしております。
 なお、欧米の司法精神医療機関におきましては、一般の精神障害に対する治療だけでなく、自身が、本人、当事者自身が行った重大な他害行為やあるいは被害者に対する認識を高めるような治療プログラムが導入されておりますので、こういった例を参考にしながら対象者の社会復帰に有効な治療プログラムを今後策定していきたいというふうに考えております。
○風間昶君 この法律案はもう本当に多くの市民団体の人たちが反対の陳情に来られまして、中でも多いのが、この法律案が刑事手続上の保安処分ではないかというのが非常に多かったわけですけれども、多分、この保安処分とこの法律案の制度の違いを、やっぱりごっちゃになっている部分があるのではないかというふうに思いますので、この保安処分とこの法案の制度の違いを明確にやっぱりしていく必要があるんじゃないかというふうに思います。
 何が違うのかということを明らかにすべき問題だと思いますけれども、どうぞ。
○政府参考人(樋渡利秋君) 昭和四十九年の改正刑法草案及び昭和五十六年の刑事局案における保安処分におきましては、刑事手続の一環として、当該刑事事件の審理を行った裁判所が刑事訴訟手続によって刑事処分としてその要否や内容を決定することとされており、また改正刑法草案において、処分を受けた者は法務省が所管する保安施設へ収容することが想定されておりました。
 これに対しまして、この法律による新たな処遇制度は、刑事事件を審理する裁判所とは別の精神科医をもその構成員とする裁判所の合議体が刑事手続とは別個の審判手続により法的判断と医療的判断を併せて行うことによって処遇の要否や内容を決定するもので、刑事処分とは異なるものであり、また、処遇を受けることとなった者は厚生労働大臣が所管する病院へ入院又は通院することとされております。
 さらに、制度の目的という点につきましても、改正刑法草案等における保安処分は刑法に規定することとされており、刑法という法律の性格からして、社会防衛ということが直接の目的とされていた部分もございましたが、この法律による新たな処遇制度は、対象者に対して継続的かつ適切な医療を行うこと等によってその社会復帰を促進することを目的としております。
 このように、この法律による新たな処遇制度と保安処分とは全く異なるものだと考えております。
○風間昶君 今の説明では反対の陳情はまだ多くなると思われるので、もうちょっと明確に、カットできるような答弁にしていただきたいことを要望して、質問を終わりたいと思います。

【小池委員質疑】

第156回参議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第1号(同)
小池晃君 日本共産党小池晃です。
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者をどう処遇するかという問題は、これは厚生労働行政と司法行政両方にかかわる重大なテーマです。徹底した審議が求められるというふうに思います。
 そもそも、今回の法案は他害行為を初めて行う者に対しては何ら効力を発揮し得ない。重大な他害行為を防止し社会復帰を適切に進める上で、より根本的には、精神医療全体の水準をこれ、抜本的に引き上げること、そして地域ケア体制の整備を図ることが欠かせない課題だと思います。日本の精神障害者に対する医療福祉制度をこのままにして処遇制度を作るということは、これは新たな矛盾を生むことになりかねませんし、精神医療福祉の改革こそ急ピッチで進める必要があるというふうに思います。
 そこで、まず最初に、そもそも日本の精神医療が国際的にも異常と指摘されているのは、これは入院患者の数が多いことだと。しかも、諸外国が入院患者を減らしている中で我が国は逆に入院患者が増えてきている。そこで、まず厚生労働大臣に、こうした入院偏重の我が国の精神医療の在り方についてどういう問題意識をお持ちか、最初にお尋ねします。
国務大臣坂口力君) 今お話ありましたように、日本の精神医療の特徴と申しますか、他の先進諸国との間の違いというのは、今お挙げになりましたように、ベッド数が多い、そして長期入院が多いという一つの点、それからもう一つは、それと裏腹になるわけでございますが、地域における受皿が充実していないということだと思います。それからもう一つ挙げますならば、これはいわゆる精神医療の機能分化と申しますか、機能が分化されていないということ、そうした特徴があるのではないかというふうに思っておりまして、やはりその七万人を超える社会的入院があります以上、ここをやはり改革をしていくということがなければならないことは御指摘のとおりだというふうに思っておりまして、地域における受皿をどうしていくか、ハードの面、ソフトの面、両面にわたりまして整備をしていかなければいけないというふうに思っております。とりわけその中で人の問題が大事でございますので、人をどう育成をしていくかといったようなことに重点を置いてこれからやっていかないといけないというふうに思っている次第でございます。
小池晃君 今お話あったように、社会的入院は七万人という数字が出されておりますが、その根拠をまず最初に説明していただきたいと思います。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 平成十一年患者調査によりますと、病院の精神病床に入院している約三十三万人のうち、生命の危険は少ないが入院治療、手術を要する者が十九万七千人、生命の危険がある者が約五千人、受入れ条件が整えば退院可能である者が約七万二千人、その他の者が五万六千人、このような患者調査でございます。
 このような、今申し上げました受入れ条件が整えば退院可能である者をいわゆる社会的入院者と想定し、これらの方々が退院し社会復帰を実現することができるよう各種の施策の推進を図っているところでございます。
小池晃君 そこで、この七万人、七万二千人、こういう数字、実際はもっと本当は多いんじゃないかと。かつての調査ではもっと多かったという指摘が衆議院でもされました。そして、当時の部長は実態調査の検討を行うというふうに答弁をされているんです。
 そこで、その後の検討、調査、どうなっているか、御説明願います。
○政府参考人(上田茂君) 先ほどは患者調査による結果で七万二千という御説明を申し上げておりますが、いたしましたが、この精神障害者の社会復帰のサービスニーズにつきまして、精神障害者の社会復帰推進施策の基礎資料を得ることを目的として委託調査として現在実施をいたしております。
 具体的には、全国から抽出しました精神病床の在院患者、精神科外来通院患者及び精神障害者社会福祉施設の入所者、こういった方を対象といたしまして、また調査の趣旨について同意の得られた対象者に関し、本人が記入する調査とそれから主治医が記入する調査、これを併せて実施するものでございます。
 調査内容は、例えば入院患者の調査票におきましては、性、年齢、精神保健福祉手帳の有無、保有、診断名、病歴、本人の退院希望や主治医から見た退院可能性、精神症状の状況、障害の程度、日常生活能力、退院後の暮らしの場、退院後の必要な支援等でございます。調査は現在集計中でございまして、取りまとめた段階で私どもその結果を公表するということを考えております。
 また、精神病床あるいは在宅福祉に関する検討会、今後開催を実施することを予定しておりますが、こういった検討会の場の資料として活用させていただきまして、今後の精神保健福祉施策の充実に反映させていきたいというふうに考えております。
小池晃君 その調査、どこに委託されましたか。委託先を教えていただきたい。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 当初、全家連に委託予定でございましたが、全家連からの申出により委託を中止いたしまして、日精協に、日本精神科病院協会に委託しております。
小池晃君 日本精神科病院協会社会的入院が七万人という見解に対してどのような見解を持っている団体なのか、御説明願います。
○政府参考人(上田茂君) 実は、日精協におきましても、入院患者のいわゆる社会的入院、今後の退院が可能な患者につきましての調査が行われております。そういう中で、日精協の方もこういった患者さんがおられるということにつきましては認識され、ただ、日精協の調査の中で七万二千でなくまた別な数字というようなものを出されてもおります。
 したがいまして、今回はこういった調査を更に進める中で今後の対策を考えていきたいというふうに考えております。
小池晃君 日精協はもっと明確に言っているんですよ。昨年二月に皆さん方は、七万人という数字を社会保障審議会の障害者部会精神障害分会で報告されました。その直後に日精協の常務理事は、協会の雑誌の五月号で、机上の空論だと言っているんですよ。七万二千人の数字の算定根拠も明確でないと全面反論しているわけですよね。
 このように明確に、社会的入院七万人という数字にもう明確に異議を唱えているこういう団体に調査を委託して、客観的で公平、公正な調査ができると、そういうふうに考えるんですか。いかがでしょう。
○政府参考人(上田茂君) 先ほど申し上げましたが、当初は全家連に予定でございましたが、先ほどの答弁のとおりでございます。この調査は、確かに日精協に委託をしているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、全国自治体病院協議会、あるいは国立病院・療養所精神科医師協議会、あるいは精神科医学講座担当会議、あるいは全国精神障害者社会復帰施設協会、こういった関係団体にも御協力いただきながら調査を行っているものでございますので、単に一団体ではなく、今申し上げましたように、幅広い関係者の協力を得ながら調査を進めているものでございます。
小池晃君 日本精神科病院協会は、昨年十一月の全国集会でこう決議文まで出しています。今回、一方的に七万二千人の社会的入院を持ち出してきた、このことは、国民に精神医療、特に精神科病院の現状を大いに誤解させるものであり、断じて容認できないと。もうはっきり、七万人という数字は容認できないとまで明確に言っている団体ですよ。そこに取りまとめをさせて、それでいいんだという説明は、これは成り立たない。
 副大臣、木村副大臣はこの全国集会に参加されているから、こういう決議が上がったことも御存じだったと思うんです。私、社会的入院の七万二千人という数を、これ、集会では断じて容認できないと決議されていた、副大臣御存じだと思いますよ。こういう団体に、その数が、再検討を委託すると。私は、これで公平、公正な調査と言えるのか、副大臣、ちょっと御見解を伺いたいと思います。
副大臣木村義雄君) 御指摘の集会でございますけれども、私は確かに出席をさせていただいたのでございますが、私が、ごあいさつをさせていただいた後、都合がございましてすぐに退席をいたしたわけでございまして、その後どういう議論が行われたかは存じ上げない次第でございます。大変恐縮でございます。
小池晃君 極めて無責任ですよね。でも、今のもね、厚生労働省を代表して出たのに何が決議されたか知らないのかというのも無責任だと思いますが、私が聞いたのはそういうことじゃないんです。この問題ではっきり言っているわけですよ。もう七万人というのは駄目だと言っているような団体でしょう。そういうところに調査を依頼して公平と言えるのかと。
 私、この七万人という数字は極めて重要な数字だと思いますよ。だって、これからの日本の精神医療、精神福祉行政、左右する数字じゃないですか。この数によって、どれだけの施設や人員、整備するかの根拠になるんですよ。ですから、本来であればこんな調査は、私は厚生労働省が自ら責任を持ってやるべき調査だと。
 百歩譲ったとしても、そもそもこれは七万二千人という数の検証をすることが目的だったわけですから、その七万二千人という数字に異議を唱えている団体に調査を委託する、私はこれは全く筋違いだし、こういう調査に基づいて政策決定が行われていいのかということを厚生労働副大臣にお聞きしているんですよ。お答えいただきたい。
副大臣木村義雄君) まず、やっぱり事実関係を確かめ、真意を確かめないとその辺のことがはっきり言えないわけでございまして、十分、もし、十分にその辺をまだまだ理解をしていないわけでございますので、そこは直ちに今お答えをしろといっても、これはよく分からないところでございます。
小池晃君 日精協が七万人に異議を唱えているというのは常識ですよ、これは。みんな知っていることですよ、運動団体もみんなそのことを指摘しているんですから。それを知らずに委託したんだとしたら、これは大変なことですよ。むしろその方が私、責任は大きいと思いますよ。
 利害関係が余りにも明白だ。これ、断じて認められない。こんな調査を基に提案されるような精神障害者の社会復帰施策など、私は議論の前提が失われているんじゃないかと思いますね。
 しかも、お尋ねしたいのは、この調査に対して、厚生労働省、委託費、幾らお払いですか。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 予算額は八千六百四十二万八千円でございます。
小池晃君 約九千万円であります。
 七万二千人の数字を糾弾し、その引下げを画策している団体に、私は調査を依頼すること自体が非常識だと思う。その上、これだけ多額の委託費を支払うなんというのは、本当、耳を疑います。
 日精協は、常務理事のコメントでこう言っているんです。日精協でなければ調査分析はできません、日精協独自の現状分析を行い、それに基づく提案を早急に行わなければならないと。こうまで言っていたんですから、何もお金払う必要ないじゃないですか。勝手にやってもらって、それで提案してもらえばいいんですよ。そういう団体に九千万円もの税金を出してわざわざ委託をする、これ、木村副大臣、こんなことをやって国民の納得、得られると思いますか。いかがでしょう。
副大臣木村義雄君) 先ほどから申し上げておりますように、その七万二千人の件で日精協がどういう対応を取っているか、今初めて委員の御質問でお聞きしたところでございまして、そこは私が、急に答えよといってもなかなか判断しかねるところでございますし、さらに、その上にその委託金がどうだこうだ言われましても、それはどういう水準で支払われているのか、それはもう今日は全く初めての御質問でございますから、私にやぶから棒に言われても、それが高い水準であるのか安い水準であるのか、中身がどういう契約が行われているのか、それは全く存じ上げないところでございまして、そこは、急に言われてもそれはなかなかお答えしづらいわけでございますので、その点は御理解を賜りますようによろしくお願いを申し上げる次第でございます。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 まず、この調査につきまして、先ほど私、調査内容を申し上げました。この調査では、社会的入院者が七万二千ですとか、あるいはどのような数かというのではなく、あくまでも、私、申し上げましたが、これから入院の患者、精神障害者の社会復帰を進めるために必要な基礎データでございます。これが一点でございます。
 それからもう一点……
   〔小池晃君「駄目だ、さっき七万二千人の再検証の調査だって言ったじゃないか、答弁で。駄目だよ、そんなの。さっきの答弁と違いますよ。でたらめですよ、これ。駄目ですよ、答弁でたらめですよ」と述ぶ〕
○委員長(魚住裕一郎君) 許可を得て発言してください。
 答弁してください。
○政府参考人(上田茂君) いや、私、先ほどこういうふうに申し上げました。
 精神障害者社会復帰サービスニーズ等調査は、精神障害者の社会復帰推進施策の基礎資料を得ることを目的として委託調査として実施したものということでお答えさせていただきました。
 もう一点は、確かに日精協に委託でございますが、これも、先ほど申し上げました国立大学ですとか自治体病院協議会ですとかあるいは社会復帰施設の協会、こういった各種の幅広い関係者に参加していただいております。それからまた、全家連もこの調査にも参加していただいておりますので、必ずしも日精協だけで行っているものではなく、こういった医療関係者の、精神医療関係者の、あるいは福祉関係者が一緒になって調査を進めている調査でございますので、その点についての御理解をよろしくお願いしたいと思っております。
 それからもう一点は、入院、対象者の施設についてはかなり幅広い調査を実施いたしておりますので、そういった費用を計上しているところでございます。
小池晃君 さっき言ったことを繰り返しただけです。しかも、私は七万二千人という数の検討はどうなっているのかと言ったときに、精神障害者社会復帰サービスニーズ等調査を行っておりますと答弁したじゃないですか。だから、これは七万二千人再検討するための検討だってさっき答弁したんですよ。でたらめなことを言わないでいただきたい。
 ところで、木村副大臣は、日本精神病院協会の政治連盟から二〇〇〇年には百三十万円、二〇〇一年には六十万円の献金を受け取っている。そして、衆議院厚生労働委員会の答弁では、二〇〇二年度には百十万円。ですから、合計、あなたは日本精神病院協会政治連盟から合計で三百万円の政治献金を受け取っていることになる。
 衆議院の審議でも、この入院偏重の精神医療に対して批判があって、社会復帰を促進するというふうに政府は答弁してきました。しかし、その社会復帰促進のための施策に決定的な影響を与える調査を、少しでも不必要な入院の数を小さく見せたいというふうに思っている団体、当事者、病院経営者の団体にその調査を委託し、その上、九千万円もの税金を委託費として投入をした。そして、木村副大臣はその政治団体から三百万円の政治献金を受け取っている。これは絵にかいたような利益誘導じゃないですか。税金の還流そのものじゃないですか。あなたはそうでないというふうに国民に対して言えるんですか。
副大臣木村義雄君) 私への政治献金は、これはまず政治連盟からの献金でございます。そして、その政治献金は適法に処理をさせていただいておるわけでございますし、大臣、副大臣政務官規範にのっとり、決して、政治献金の有無にかかわらず、その政策がどうだこうだということは決してあるわけではございません。
小池晃君 あなたね、法律に直接違反しなければ何やってもいいということですよ。これは、ずっとあなた衆議院のときからそれしか答えない。政治資金規正法に基づいて届出をしているんだと、これだけですよ。結局、あなたは法律に違反しなければどんな疑惑を招くことをやっても構わないということじゃないですか。このように疑いを持たれることをやっておいて本当に恥ずかしくないのかというふうに思いますよ。
 もう一点、ちょっと厚労省にお聞きしますが、日精協への調査の委託契約は、これはいつ行われましたか。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 日精協との契約日は十二月十三日でございます。
小池晃君 何年。
○政府参考人(上田茂君) 昨年。
小池晃君 昨年十二月十三日に契約をしたと。
 木村副大臣に確認をしたいんですが、これはもう答弁されていますので間違いないと思うんですけれども、昨年十一月に三十万円、十二月に五十万円の政治献金を日本精神病院協会政治連盟から受け取っている。間違いないですね。
副大臣木村義雄君) 日精協政治連盟からは、先生御指摘の十一月に三十万円、十二月に五十万円の政治献金を受けているわけでございますが、日精協政治連盟はあくまでもこれは任意団体でございます。日本精神科病院協会とはこれはあくまでも別な組織でございますので、その点を十分に御理解いただきますようにお願いを申し上げる次第でございますし、政治献金は政治家の活動として法律上認められているものであり、政治資金規正法に基づき適正に処理をしているところでございます。
小池晃君 あきれた話ですよ。これは、昨年十一月に三十万円もらっているわけでしょう。そして、十二月に厚労省は日精協との委託契約を結んで九千万円支払っているんですよ。そして、その十二月に五十万円、あなた受け取っているんですよ。これ、どう考えたって委託契約の見返りの献金じゃないですか。こんなの言い逃れできませんよ。あなたこれでも、これだけの露骨な形で金を受け取っておいて、政治資金規正法に基づく届出をしているから問題ないというふうにあくまでおっしゃるんですか。こういうやり方であれば委託契約の見返りの献金だというふうに思われたって仕方がないと思いますが、いかがですか。
副大臣木村義雄君) 先ほどから申し上げておりますように、政治献金は政治家の活動として法律上認められているものでございますし、政治資金規正法に基づきまして適正に処理をさせていただいております。
 私は、副大臣といたしまして、公共の利益のために職務を遂行してございます。我が国の司法精神医療の充実を図る観点からこれからも頑張っていかなければいけないなと、このように思っているところでございますけれども、決して一部の利益のため影響力を行使したことは断じてございませんし、先ほどから先生の御質問に答えているように、今回のその先生が御指摘になった今の委託の話は今日初めて聞いたわけでございまして、どうぞ御懸念がないように、どうぞくれぐれもよろしくお願いを申し上げる次第でございます。
小池晃君 本当にむなしく響くだけですよ。これ、国民から見たら、こんな分かりやすい、こんな汚い金の動き方ないですよ。こういうやり方で金を受け取って政策決定が進んでいく、そして国民あるいは精神障害者の人権に深くかかわる精神医療の政策が決定されていく、あるいは法案が決められていく。こんなこと断じて国民は許しませんよ。私、これは重大な問題だと。
 それから、ちょっともう時間がないので、もう一つも、あなた、指摘したいんですが、昨年十一月のその精神病院協会の全国集会であいさつされていますね。ユダヤ人云々で大問題になったあいさつですよ。そのあいさつで副大臣、どういうお話しされているか覚えていらっしゃると思うんですが、こう言っているんです。
 ところで、ここに掲げられている心神喪失者等医療観察法案の早期成立でございますけれども、何とか頑張ってこの法案をできるだけ早く通したいなと思っているような次第でございます。とにかくこの法案が通らないことには、また皆様方からよく言われておりますいわゆる一般対策、これが見込みが立たないと言っても過言ではないわけでありまして、こういうことからもできる限りこの法案に、早期成立に一生懸命に頑張ってまいりたい。こういうふうにあいさつされている。
 お聞きしますが、この法案、成立しなければ精神医療や精神障害者の一般対策の見込みが立たないなどということは、あっていいはずないと私は思うんですね。精神医療や精神障害者の福祉政策というのは、この法案の成否にかかわらず全力で取り組まなければならないことなんじゃないですか。この法案が通らなければ一般施策が進まない、こういうことを言う。これは脅迫みたいなものですよ。副大臣ね、このような発言をあなた、されたんですよ。適切な発言だったと、これもおっしゃるんですか。
副大臣木村義雄君) 御指摘の点はでございますね、精神病院協会の方々が常々一般精神保健対策の充実の必要性について主張されていることをこういう表現で紹介させていただいたものでございまして、この点は私の発言内容を十分によくごらんいただければ、なるほどそう書いてあるなというふうに御理解をいただけるのではないかと、このように思っているような次第でございます。
小池晃君 かなりこれは行政の施策をゆがめたあいさつだと私は思いますよ、どう考えても、これをしっかり読んでも。
 私は、国民の人権に深くかかわるこの法案を提出している責任者が関係団体との重大な疑惑を抱えている、そして公の場で政府の立場をゆがめる発言まで行っている。木村副大臣、私はあなたは担当副大臣として全く不適格だと思います。潔く辞任するべきじゃないですか。いかがですか。
副大臣木村義雄君) これからも一生懸命厚生行政の進展に、微力ではございますが、尽力をしてまいりたいと、このように思っているような次第でございます。
小池晃君 ちなみに、この日精協の全国集会の参加者三百八十五名、国会議員の本人の参加だけで四十三名、全員与党なんですね。自民党の山崎幹事長を始め、厚労大臣経験者が多数参加している。こうした集会で、この法案が通らなければ一般施策が進まない、こういうあいさつをして支援を呼び掛け、しっかり献金を受け取っている。
 木村副大臣をめぐる問題、坂口大臣に最後にお聞きしたいんですが、これは日本精神科病院協会にかかわる問題だけじゃありません。九七年、柔道整復師の団体から要望を受けて圧力を掛けて、そして保険請求適正化の行政指導を見送らせたという疑惑も出ている。そして、その文書をめぐって厚生労働省内部で、ある文書がないというような話も出ているようであります。
 私は厚生労働大臣に伺いたいんですが、今日の問題も含めて、一連の木村義雄氏の言動を見る限り、私は厚生労働副大臣としての適格性を著しく欠くというふうに思わざるを得ませんが、大臣はどのようにお考えですか。
国務大臣坂口力君) 木村大臣がこの日精協の大会に出席をいたしましたのは、これは本人が言っておりますように、政務として、いわゆる衆議院議員として出席をしているわけでございます。
小池晃君 副大臣として。
国務大臣坂口力君) いえ、それで私はこれを調べたんですよ。大臣に出席依頼が来ていて、私が行けなかったから木村大臣に行ってもらったんなら、これは厚生労働省代表として行ってもらったことになる。ところが、調べましたところ、厚生労働大臣には招待状来ていないんですよ。ですから、これは木村大臣は御自身で行かれたということでございまして、そこは誤解をしてもらってはいけませんので──いや、いかに手を振られても、それはそういうことでございます。
 それで、ちょっと小池先生もいろいろなこと、余り関係付けていろいろなことをおっしゃり過ぎるんじゃないでしょうかね。
小池晃君 事実を言っているんですよ。
国務大臣坂口力君) 現在の、今日のそのデータの話も我々、今日初めて、初めて、どこへそんなあったんだか、済みません、今日初めて僕らも知ったわけで、一切我々にそういう相談があったわけではありません。多分、木村さんもそういう相談はしてもらっていないんだろうと思います。
 したがって、もしこの日精協にそういう依頼をしたといたしましても、先ほど部長が答弁をいたしましたとおり、大学病院にも出している、あるいはまた公的な機関にも出しているということでございますから、そのデータを集めてきて見れば、日精協が一般の病院から集めたものと、あるいは公的な病院で集めたものとの違いがあれば、それは明確になるじゃないですか。
 だから、今回のこの問題につきまして、我々は我々として前回に集めました七万二千というのを一応今、目標にしながら、それを基にして、これからどうしていくかということを今やっているわけでありまして、もし一方的なデータが出てまいりましたら、それはそのときに分かるわけでありますから、私はそのときに明確になると思っている次第でございます。
○委員長(魚住裕一郎君) 時間ですが。
小池晃君 委託の問題ですけれども、これ、委託じゃない、その集会の問題ですけれども、木村副大臣のあいさつは、日本精神科病院協会の雑誌でも、野田保守党党首、それから山崎幹事長の前にちゃんと紹介されているんですよ。これは政府代表としてちゃんと掲載されていますよ。後で御確認いただきたい。これはあくまでも、日精協の中では政府の代表としてのあいさつという受け止め方をされていることは間違いないということは申し上げておきたい。
 それから、各団体にお願いしたと言うけれども、それは調査票を回しただけで、だったら何で、このように明確に七万人というのは絶対おかしいというようなことを、旗印掲げているような団体に何で委託するんですかと、それには説明に全くなっていないということを申し上げたいと思います。
 私、そのほかにもいろんな疑惑出てきているわけですよ。もう正に厚労省版宗男疑惑みたいになっているわけでしょう、もう疑惑のデパートみたいになっているわけですよ。こういう副大臣をかばい立てする大臣も私は同様の責任があると、問われるということを厳しく警告をしておきたいというふうに思います。
 木村副大臣には改めて辞任を要求したい。そして、このような問題を脇に置いたまま本法案の審議を粛々と進めるわけにはまいらない、国会として疑惑の責任に全力を挙げるべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。