心神喪失者等医療観察法の条文・審議(その53)

前回(id:kokekokko:20060227)のつづき。
ひきつづき、連合審査会での質疑です。
【西川委員質疑】

第156回参議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第1号(同)
西川きよし君 西川でございます。よろしくお願い申し上げます。
 私は私の視点から、ひとつよろしく、いろいろ細やかな部分までお伺いしたいと思いますが、よろしくお願いを申し上げます。
 まずは、民主党案の提出者にお伺いを申し上げます。朝日先生、よろしくお願いいたします。
 趣旨説明の中で、政府・与党の一連の動きは、全国各地で地道に取り組まれている障害者支援の活動に水を差すものとなったばかりか、新たな差別感情をあおることにもつながり、結果として障害者の社会参加を促進する動きを逆流させるものといった発言が先生の方からございましたですが、この発言の背景について先生の方から御答弁をいただきたいと思います。
江田五月君 お答えを申し上げます。
 まず最初に申し上げておきたいのは、本政府案の提出の森山法務大臣の御答弁によると、非常に重大なきっかけとなったのが大阪の池田小学校事件ですね。これについて小泉首相の発言もあったと。大変痛ましい事件だと。これはそのとおりで、そして精神的に問題がある人の医療法と刑法の不備なところを対応しなければならないと、こう言われて山崎幹事長に指示をしたと、こういうことでございます。
 しかし、この小泉発言というのは、これは結果的に重大な事実誤認だったわけですよ。つまり、犯人は今、被告人になって、この間、求刑もありましたよね。精神障害者でなかったわけですよね。それどころか、精神障害者をかたって、その前にいろんなことをやっておったと、そういう人であったわけで、それをもう、すぐに精神障害者の皆さんに大変な打撃を与えるような発言をされたというのは非常に軽率であったと思いますね。
 今、この小泉首相の発言だけでなくて、社会一般にも、あるいはこの国会の中でも、精神障害者は危険だから、だから野放しじゃいけないなんという言葉が使われるわけですね。閉じ込めていなきゃいかぬというようなことも言われる。これはしかし、危険だと言うこと自体がまず偏見で、で、閉じ込めていなきゃという、差別です。そういう偏見、差別がやっぱり社会の中にある。しかし、それでは本当の医療にならないので、やっぱり社会でしっかり受け止めて、そして社会の中でこういう皆さんも一緒に暮らせるように、そういう施策を取っていかなきゃならぬと。
 ところが、どうも政府のこの施策は、そういう社会内処遇をしっかりとレベルアップするというところに行かないわけですね。だけれども、その分を、言ってみれば地域のいろんな皆さんが一生懸命本当にもう大変な努力をして、精神障害者だけじゃありません、いろんな障害者の皆さんの社会の中での暮らしのために努力をしている人たちがおられるわけで、そういう皆さんからすると、もうこの池田小学校事件、小泉発言、そして今回の政府案、これは、自分たちが障害者の皆さんを地域で受け止めようという努力に言わば水を掛けるといいますか、あるいは逆なでするというか、そういうことになっていて、そしてみんな本当にこれはもうがっくりきたということであったわけで、それを申し上げたのが先ほどの委員御指摘の発言ということでございます。
西川きよし君 確かに、会館にも連日のように多くの精神障害者の方々が要請活動にお見えになります。そして、今お伺いしたような御懸念、いろいろお伺いするわけですけれども、大変皆さん心配をしておられますし、やはり私自身も今いろいろ答弁をお伺いいたしまして、精神障害者をお持ちの方々が不安を持たれたままでのこの新法の制定には問題があるのではないかなというふうにも思いますし、また、この点については政府はどのようにお考えなのか。
 大分前ですが、坂口大臣さんにお願いをいたしましたポリオの二次感染、五百八十万分の一という、でも本人にとっては一分の一であるというような、そういったお話もさせていただいたんですが、今回の法案でも大変細かい部分、双方から考えますと大変私自身も悩むわけですが、今御質問申し上げたこと、厚生大臣の方からよろしくお願いいたします。
国務大臣坂口力君) 先生から今御指摘になりまして、江田先生からも民主党の立場でお答えあったわけでございます。御尊敬申し上げる江田先生でございますが、若干意見を異にいたしておりまして、私は私の立場からお答えをさせていただきたいというふうに思っております。
 精神障害者全体の問題につきましては、御指摘をいただきましたとおり、私はやはり後れているというふうに思っております、制度として。したがいまして、全体のレベルアップをしなければならない。
 先ほどからも御議論がありますように、ベッド数が多くて長期入院が多い、そして地域の受皿がない、あるいはまた精神医療そのものの中の機能分化というようなことも進んでいないというようなことがあって、これらのことの改革を行っていかなければならない、前提条件として。そういうふうに思っているわけでございまして、いよいよスタートをさせて、来年度予算から本格的にそれを始動させたいというふうに思っているわけでございます。
 その中で、御議論になっておりますように、またこの法律の中にございますように、心神喪失等の状態で重大な他害行為が行われる事実がありましたとき、被害者に深刻な被害が生ずるだけではなくて、精神障害を有する人自身に対しましてもその病状のために加害者になると大変に不幸なことが重なるということもあるわけでございます。
 したがいまして、そうした皆さん方に対しましては、完全に社会復帰がしていただけるような体制を整える、そういう思いを何度かさせないようにするということもまた大事ではないかというふうに思っておりまして、こうした制度を作らなければならないというふうに思っている次第でございます。
 継続的あるいは適切な医療を実施をする、あるいは病状の改善、そしてそれによって社会復帰ができるような体制、今まで社会復帰といいましても地域でそれを受けていただく皆さん方がおみえにならなかったわけでございますから、そういう地域で受けていただけるような体制を確立をしながら社会復帰をしていただくようにするといったことで、全体的なレベルアップをしていくというのが私たちの気持ちでございます。
西川きよし君 続きまして、もう一度、民主党案の発議者の皆さん方にお伺いしたいんですけれども、政府案では司法精神鑑定の在り方、司法と精神医療の連携、あるいは措置入院制度の実態等々、現行制度上の問題点は一切目を向けることなくという大変厳しい指摘があるわけですけれども、皆さん方が、専門家、そしてまた特に朝日先生、専門家のお立場から是非お答えいただきたいと思うんですけれども、それぞれの問題点、そして具体的にはどのような点をおっしゃっているのかというのをここでただしておきたいと思うんですが。
江田五月君 これも私からお答えをいたしますが、この現状ですね。まず、先ほどもちょっと申し上げました社会の偏見や差別、そういうものに言ってみれば裏打ちされて、あるいはこれを温存する、そういう制度が今あるんだろうと思います。そして、さらにそうしたものを温存する、あるいはそれを助長する制度を今作ろうとしているのではないかと私たちは心配をしています。
 制度としては、長期入院あるいは社会的入院が先ほどの七万二千人、地域のケアが非常に弱体である、そういったようなことがあるわけですね。そして、精神医療の現場の皆さんからこんなことが言われております。一つは、検察官の起訴、不起訴の判断がどうも恣意的になっているんじゃないかとか、あるいは二つには、偏った精神科医による安易な簡易鑑定が行われているんじゃないかと、これ、起訴前ですよね。あるいは三つには、刑事施設等の中での精神医学的な援助体制というのは非常に不十分ではないのかとか、あるいはまた精神保健福祉施策の立ち後れに問題があるなど、制度の不備より先にまず現行制度の運用に問題があるのではないかと、そうしたことがいろいろと言われております。
 そこで、不幸にして犯罪行為に該当するようなことになってしまったそうした人たちの施策として、起訴前の鑑定、これをもっともっとしっかりさせて起訴、不起訴の振り分けがちゃんとできるように、あるいは刑事手続の中での鑑定、これをもっとしっかりさせてそこで本当に的確な、あるいは確度の高いそういう鑑定ができるように、あるいは刑事手続、これは捜査の段階あるいは公判の段階、さらにまた刑の処遇の段階でもそうですが、全体にわたってもっと精神医療というものがしっかり行われるように、こうしたことがしっかり行われることが今一番必要なんじゃないかと。ということで、私ども、精神保健福祉法の改正、さらに起訴前の鑑定、そして裁判手続の中での鑑定、こういうものをしっかりさせようと、こういうものを法案として出し、さらに精神医療全体の底上げのための施策、これを提案をしたということでございます。
西川きよし君 時間の都合で最後の質問とさせていただきますが、いろいろ御指摘もございました。ただいまの御指摘、そして司法精神鑑定、司法と精神医療の連携、そして措置入院制度についてただいま御質問いたしましたこの質問を、御答弁は法務大臣そして厚生労働大臣から、政府側の見解として是非お聞かせをいただきたいと、このように思います。よろしくお願いいたします。
国務大臣森山眞弓君) 今お話がございました精神鑑定につきましては、特に簡易鑑定に関して適正に実施されているかどうかなど、様々な御意見や御批判があるということを承知しております。
 法務省といたしましても、一層その適正な運用を図りまして、不十分な鑑定に基づいて安易な処理が行われているとの批判を決して招くことのないようにする必要があると考えます。
 このような観点から、専門家の意見等も踏まえながら、捜査段階において精神鑑定が行われた事例を集積いたしまして、精神科医等も加えた研究会等においてこれを活用すること、検察官等に対し、いわゆる司法精神医学に関する研修を充実させること、鑑定人に被疑者に関する正確かつ必要十分な資料が提供されるような運用を検討することなどの方策を講ずることを検討しなければならないと思っております。
 また、司法と精神医療について適切な連携を図ることが肝要でございます。特に、本法案における対象者である心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対する適切な処遇の確保、矯正施設等における適切な精神医療の確保など、様々な分野においてこれまで以上に司法と精神医療の連携を図ることが重要であると考えております。
 また、修正案にありますように、本制度の指定医療機関における医療について、司法精神医学の知見を踏まえ、その水準の向上に努めることが司法と精神医療の連携に資するものと考えております。
国務大臣坂口力君) もう法務大臣からお答えいただきましたから十分ではないかというふうに思いますが、確かに江田先生がおっしゃいましたように、運用に不十分な点があるということは、それは私たちも反省をしていかなきゃならないというふうに、率直にそう思っているわけでございます。
 今お話ございましたとおり、特に司法と精神医療との連携というのは、これはやはり不十分であったその典型だというふうに思っておりまして、是非ここは改善を加えていかなければならない。とりわけ、医療の中でもこの司法精神医学というのは特に日本の中では未成熟であったわけでありまして、これは是非成熟をさせていかなければならない分野であるというふうに思っておるところでございます。
 それから、措置入院制度につきましては、これはもう法務大臣の方の御答弁にありましたから多くを申し上げませんけれども、その措置入院制度の運用につきましても、これは入院患者数でありますとか入院期間に大きな地域格差があることも事実でございまして、地域格差があるということはその基準が明確になっていないというふうに御指摘を受けてもやむを得ないというふうに思いますので、そこはそうしたことのないように私たちもしていかないといけないというふうに思っている次第でございます。
西川きよし君 ありがとうございました。

【大脇委員質疑】

第156回参議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第1号(同)
○大脇雅子君 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、これは他害行為者のみを特記いたしまして、司法の関与を行い、手厚い医療と社会復帰に向けて対象者を回復させていくというのが主たる筋道になっていると思います。
 問題は、家裁における少年事件の付添人のように、いわゆる付添人の権利行使が非常に限定的であるということが言われてきたわけであります。身柄の拘束を行うという、国民の基本的な権利というものが十分に保護されるかどうか、そのために弁護権がどれだけ十分に保障されているかということが重要であろうかと思います。
 粗雑な事実認定で、ただでさえ冤罪の可能性が高い精神障害者の事件については、弁護権を十分に保障するシステムを確立するということが必要であると考えますが、法務大臣の所見を伺います。
国務大臣森山眞弓君) この制度におきましては、不起訴処分をされた対象者について裁判所が対象行為の存否の確認を行うことにまずしておりますが、この対象行為の存否の事実認定は、刑事訴訟手続ではなく、裁判所が必要と認める場合に、職権により証拠調べ等を行う審判手続によってこれを行うこととしております。また、この制度において、最初の処遇の要否、内容を決定するための審判において対象者に弁護士である付添人を必ず付することとしている上、付添人に対し、審判への出席権、意見陳述権、資料提出権、処遇事件の記録又は証拠物の閲覧権、決定に対する抗告権を認めるとともに、入院患者の退院許可や通院患者の処遇終了の申立て権を認めるなど、対象者の適正な利益を保護するために様々な権利を保障しております。
 この制度は、刑罰に代わる制裁を科することを目的とするのではなくて、その手続としては、裁判所が適切な処遇を迅速に決定して、医療が必要と判断される者に対してできる限り速やかに手厚い専門的な医療を行うことが重要であるということから、刑事訴訟手続より柔軟で十分な資料に基づいて適切な処遇を決定することができる審判手続によることが最も適当であると考えたからでございます。
 そこで、この本制度については裁判所が事実の存否を職権で探知する審判手続を採用することにしたのでございますが、弁護士である付添人に種々の重要な権利を認めまして、これによって対象者の適正な利益が十分保護されるものと考えているわけでございます。
○大脇雅子君 今、様々な付添人の権利の保障状況を御説明いただきましたが、私は、やはり対象者からの非常に事情聴取の困難もあることから、この手続の中で患者の権利というものがどれだけ保障されるのか、とりわけ対象者の収容に対する拒否権というものを付添人がどのようにきちっと弁護できるのかということが非常に重要だと思います。様々、今言われました付添人の権利というものは、証人尋問の請求ができないとか警察や検察庁が作った調書のチェックが同意、不同意でできないとか、様々な手続的な保障として十分ではないと、むしろ権利性がないということが一番大きな問題ではないかということを考えます。裁判官の人権保障機能というものの何をチェックできるかということが非常に問題であり、収容の方向に流れていくということをどうチェックできるかということが実務としては非常に不安なところがございます。
 この点について再度、そうした付添人の権利性についてもう少し強化をしていく、あるいは留意する見解があるかどうか、お尋ねをいたします。
○政府参考人(樋渡利秋君) そういうような見解を聞くことはございますが、この制度につきましては、先ほど大臣が御説明申し上げましたように、本制度はその対象者が社会に復帰するための治療を受けさせるかどうかということの審判でございまして、そのような審判におきましては、刑事訴訟よりは柔軟な審判手続によって事実の存否も含めて処遇の要否を決めていくのが適当であるという観点からこのような制度にしたものでございます。
○大脇雅子君 実務におきまして、処遇事件の性質に反しない限り様々な権利の行使が許されているということから、このような諸点に対する厳密な検討が司法で、この司法手続で、司法手続と言うと問題ですが、司法の関与で審判決定の手続において遂行されることを望むものであります。
 精神科医として専門性を持たない裁判官が判断をするということでありまして、対象者の家族が社会復帰の責任を負うことができないような場合というのは、生活訓練施設とか福祉ホームとか授産施設とか福祉工場とかあるいは地域支援センターもないような自治体におきましては、社会復帰施設のある自治体とそうでない自治体ということの場合、その施策いかんによって対象者が不公平な取扱いを受けることも予想されますが、その点に関する御所見はいかがでしょうか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 精神障害者社会復帰施設の充実等の精神保健福祉全般の水準につきましては、衆議院における修正により、その向上を図るべき政府の責務が本法案の附則に明記され、また厚生労働省からもこれらに努めていくとの御決意を伺っているところでございまして、本法案の成立により今後これらが更に推進されていくものと考えております。
 そもそも本制度におきまして、裁判官と精神保健審判員による合議体は、対象者について、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰することを促進するため、この法律による医療を受けさせる必要があると認められるか否かによって処遇の要否、内容を判断するものでありますところ、この判断に当たっては、対象者の生活環境も考慮されることとなり、その内容としましては、当該対象者の居住地の状況、家族の状況、家族の協力の意思の有無、程度等のほか、対象者が利用可能な社会復帰施設を含む社会資源があるか否かという事情も含まれ得りますが、このような事情は継続的な医療が確保されるか否か等を判断するための種々の考慮要素のうちの一つでございまして、御指摘のように、対象者の居住する自治体に精神障害者社会復帰施設があるか否かによりまして直ちに審判の結果に差が出るというものではないと考えております。
○大脇雅子君 そうした点で不公平な取扱いが現実に受けることがないよう私どもとしては危惧をしながら、その対象者の権利の侵害がないように望むものであります。
 さて、刑事手続における鑑定の問題点についてお尋ねしますが、簡易鑑定については地域差や精度差や個人差等によって様々な格差というか落差があるということで、公平な鑑定がなされるかどうかということについて様々な危惧が述べられてまいりました。そうした意味では、公平、公正な鑑定がなされるためのガイドラインというものを作るべきであると考えますが、その点についての作業はどのようになっておりますでしょうか。
○政府参考人(樋渡利秋君) いわゆる責任能力鑑定は、刑事手続におきまして被疑者、被告人の責任能力の有無、程度を判断するため、個々の事案ごとに裁判所の命令又は捜査機関の嘱託により専門的な学識経験を有する者が行うものでございます。
 いわゆる本鑑定、簡易鑑定という用語は法令上のものではございませんが、一般に、被疑者、被告人を鑑定留置した上で行われる鑑定を本鑑定、それ以外の鑑定は簡易鑑定と呼称されているところでございます。
 責任能力の鑑定の具体的な手法は鑑定を行う精神科医が決定しているものと承知しておりまして、精神科医におきましては、その専門的知見を踏まえ、事案の内容、性質、被疑者の供述や心身の状況等、様々な事情を総合的に考慮しつつ、個々の事例に応じ、問診や必要な医学的検査を行っているものと承知しております。
 したがいまして、精神鑑定の実施方法につきましては、事柄の性質上、検察当局において基準等を一律に決め得るものではございませんが、検察官側におきましても、鑑定医に対する資料提供等を行う上で鑑定が適正になされるよう配慮すべきことは当然でございまして、このような観点から、今後、精神科医を加えた研究会等の議論をも踏まえ、鑑定の更に適正な実施を図る上でどのような方策が有益かについて検討してまいりたいと存じております。
○大脇雅子君 法案では鑑定入院というのは最大三か月ということですが、これは、どこ、指定病院で鑑定をすることになるのでしょうか。そして、その間の医療が中断され、あるいは遅れたりすることが危惧されておりますが、その間の対象者の医療はどのように確保されるのでしょうか。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 鑑定入院先の医療機関につきましては、国立あるいは都道府県立の精神病院、又は精神保健福祉法上の指定病院でありまして急性期や重症患者の治療等について十分な経験を有する医療機関が望ましいと考えておりまして、このような医療機関の御協力が得られるように努力したいというふうに考えております。
 また、鑑定入院は、鑑定その他医療的観察を行うことを目的としておりまして、この目的を踏まえつつ、対象者に対しまして、病状が急性期にある場合には症状の悪化を防ぐために投薬を行う、こういうことですとか、あるいは治療の効果を高める、確かめるため、その経過を観察するために精神療法を行うことなど、このように必要な医療が行われることとなります。
 なお、鑑定入院先の医療機関におきましても、医師を始めとします医療の担い手は、医療法上、「医療を受ける者に対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。」とされておりまして、当然、鑑定入院中の患者に対して適切な医療が行われるものと考えております。
○大脇雅子君 社会復帰に関しまして、精神保健観察官の名称を社会復帰調整官に変更されたという修正案については、非常にその法の目的から妥当だと考えるものであります。
 しかし、保護観察所の社会復帰調整官による実施計画というものが策定されるわけですが、これは医療と福祉のバランスを取ることが必要だと考えれますが、具体的にこの実施計画というのはどのように策定されていくのでしょうか、お尋ねをします。
○政府参考人(津田賛平君) お答えいたします。
 処遇の実施計画の作成に当たりましては、保護観察所は、地域社会の処遇に携わります指定通院医療機関都道府県、市町村等の関係機関と十分に協議をいたしました上で、例えば指定通院医療機関による医療につきましては、通院の頻度でございますとか訪問看護の予定等、これを定めます。保護観察所におきます精神保健観察につきましては、訪問や出頭による面接の頻度等を定めます。それから、都道府県、市町村等による援助につきましては、社会復帰施設等の利用でございますとか福祉的措置の内容等をそれぞれ定めることといたしておりまして、これによりまして、個々の対象者の病状や生活状況に応じて必要となる処遇の具体的内容を明確にして、また各機関の役割分担を明確にいたしますとともに、計画的で、かつ効果的な処遇が行われるよう調整することといたしております。
○大脇雅子君 保護観察、刑事手続の保護観察と比較するということは必ずしも妥当ではないかと思いますけれども、保護司や民生委員の地域的なネットワークなど、保護観察において蓄積された今までのノウハウというものはあるわけであります。
 関係機関との連携の確保など、今、十分に協議と言われましたが、更に具体的にそうしたノウハウの蓄積等、検討をされているのかどうかということについてお尋ねします。
○政府参考人(津田賛平君) お答え申し上げます。
 本制度におきましては、対象者の円滑な社会復帰を図りますために、保護観察所は地域社会におきますいわゆる処遇のコーディネーター役を担いまして、対象者にとって必要な援助等が得られますよう、指定医療機関都道府県、市町村の関係機関相互間の連携の確保に努めることとしておりますが、保護観察所は、御指摘のように、これまで保護司による平素の地域活動などを通じまして、精神障害者の社会復帰に協力される個人や民間団体などの社会的資源に関する情報も持っておりますので、今後とも、これらの情報を適時適切に活用するなどして、関係機関、団体との連携の確保に当たることといたしております。
○大脇雅子君 触法行為を行った精神障害者にとっては、適切な治療と同時に温かいケアを地域で行うということが私は重要であろうと思います。
 対象者の自立に向けて、地域医療と福祉のサポートのネットワークの構築ということなしにはこの実施計画というものは効果を上げないと思いますが、こうしたサポートネットワークの構築について、どのようなこれから努力をなさっていくのでしょうか。
○政府参考人(津田賛平君) 対象者の自立と社会復帰を促進するためには、ただいま御指摘のとおり、地域社会におきます関係機関相互の連携が極めて重要であると考えております。
 本制度におきましては、地域社会における処遇に携わる医療機関精神保健福祉センター、保健所等の関係機関相互の連携を確保するため、保護観察所が、先ほど申し上げましたように、地域社会におけるコーディネーターとしての役割を担いまして当たっていきたいと思っております。
 具体的に申し上げますと、保護観察所は、これら関係機関と協議をいたしました上で地域社会における処遇の実施計画を作成することといたしておりまして、その適正かつ円滑な実施を図るため、対象者の病状や生活状況等の情報を関係機関と交換し、あるいは随時、処遇会議を開くなどして情報の共有化を図るほか、実施計画に定められました処遇の実施状況を把握して、必要に応じ、処遇の適切な実施を各機関に要請するなどして緊密な連携を図ることといたしております。
○大脇雅子君 本件においては、いわゆる手厚い医療がどのようにしてできるかということで、絶対的な要件としては精神医療の底上げが必要だということになっております。医療法施行規則第十九条における病院の従事者数の標準によって、患者四十八人に対して医師が一人でもよいという精神病床の人員配置というものは、これは現実の問題として、軽い患者が重い患者の面倒を見るというような民間精神病院があるということがつとに指摘されておりますし、これは正にハンセン病と同じ問題を含んでいるのではないかということであります。
 これまで、こうした医師の一般的な病棟との格差というようなものについても指摘されておりますが、何度でも改定の機会があったにもかかわらず、現在もこの特例が維持されている理由はどこにあるのでしょうか。
○政府参考人(上田茂君) ただいま議員御指摘のいわゆる精神科特例につきましては、旧医療法の下、厚生省事務次官通知によりまして、主として精神病、結核等の患者を収容する病室を有する病院について一般の病院よりも低い人員配置基準の適用を認めていた制度でありますが、平成十二年の医療法改正に伴い廃止し、新たな基準を設けたところでございます。
 このような人員配置基準が認められてきたその背景でございますが、精神疾患についてその多くが必ずしも積極的な医療を必要としないと、このように考えられていたということもあるものというふうに推測されるところでございます。
○大脇雅子君 最後に、大臣にお尋ねいたしますが、インフォームド・コンセントや情報開示も行われていない病院もある、そして社会復帰の支援を始めとする精神福祉施設も十分ではない、そして精神病者に対する偏見や社会の中でできてしまった精神医療に対する黒いイメージといったものを結局は払拭しない限りは、こうした法案が隠れた保安処分になってしまうという危惧は一般的に言えるわけであります。池田小学校の場合もこれは人格障害の問題だということも言われてもおりますが、精神医療、福祉に対する現状認識とその抜本的改善に対する大臣の決意をお伺いいたしたいと思います。
国務大臣坂口力君) 精神医療につきましての後れというものは御指摘のとおりでございまして、これを是非改善をしなければならないというふうに思っております。とりわけ、精神病院内におきますインフォームド・コンセントでありますとか、様々な問題があるわけでございまして、そうした問題の一つ一つをやはり解決をしていくということになりますと、やはり人の配置の問題に突き当たってくるということは先ほど御指摘をいただいたとおりだと私も思っております。
 しかし、これはもう悪循環でございますが、地域での受皿を作らないということがまた病院の過剰入院といったようなことに結び付いてきておりますし、そしてまた、そのことがまたインフォームド・コンセントを始めとして病院内の質の問題にも結び付いてきているというふうに思っている次第でございまして、ここをこの際に断ち切らなければいけないというふうに思います。
 精神科の先生は、現在のところ、全体で見ますとやはりかなり不足をしているんだろうというふうに思います。やはり、もっと精神科を目指す先生方が増えていただいて、そうしてもっと少ない患者さんの収容で、そこで十分な医療を行っていただけるようにやはりしなければいけない、看護師さんもそのとおりというふうに思っているところでございます。そうした問題の第一歩に今回これをしないことにはいけない。
 これは、現実問題としてかなり財政的に大きな負担になる話ではないかというふうに思いますけれども、一方、それは入院の患者さんを減らすということにもなるわけでございますから、プラマイどうかということにもなるわけでございますが、私は、全体としてやはり人の配置をより多くするということは、それは財政的には負担になるというふうに思いますけれども、しかし、この際にこれはやり遂げなければならない分野の一つというふうに自覚をしているところでございます。
○大脇雅子君 終わります。

【森委員質疑】

第156回参議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第1号(同)
森ゆうこ君 国会改革連絡会(自由党無所属の会)の森ゆうこでございます。
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案について、私、本日最後の質問者でございますが、質問させていただきますのでよろしくお願いいたします。
 一昨年の六月に大阪の池田小学校において多数の児童の尊い生命が奪われるという非常に痛ましい事件があったわけです。そして、その事件が今回のこの法案の策定の直接的な原因にもなったとも言われております。その事件の容疑者であります宅間被告に対しましては、今月二十二日、検察は、我が国の犯罪史上においても特筆されるべき凶悪かつ重大な無差別大量殺人と断罪して、死刑が求刑されました。
 また、先週、五月二十二日の木曜日には、九七年に起きました神戸市須磨区での小学生連続殺傷事件で関東医療少年院に収容中の男性が年内に仮退院する可能性が高まったとして、その被害者の父親が初めてテレビカメラの前でインタビューに答えておりました。大臣もごらんになったかと思います。
 このような世間を震撼させた凄惨極まりない事件は憎んでも憎み切れないものであります。そして、その被害者や遺族の心の内はいかばかりか、想像できないところだと思いますが、今までこの委員会におきまして加害者の人権に配慮する様々な議論が行われてきましたが、私は、こうした犯罪被害者やその遺族の方々の思いに対してもやはりこたえていかなければならないと思っております。
 その観点で質問をさせていただきたいと思いますが、今回の、先ほど例に挙げました大阪の池田小学校事件の被告、そして神戸の小学生連続殺傷事件を起こした当時少年は、仮に今回審議されておりますこの法案が成立して、この制度がスタートしていたとしてもその対象とはならないようではございますが、もし仮に、こうした重大な事件を起こした者がこの制度の対象になった場合だと仮定しましても、法案の四十七条、裁判の傍聴や、四十八条、最初の裁判の結果通知に規定された対策だけで被害者の遺族の感情や人権にも配慮した制度となっていると言えるのか大変疑問に思っております。加害者が退院する場合や、この制度における処遇が終了する場合についても、被害者若しくはその遺族にきちんと情報が提供されるような仕組みとすべきではないかと考えますが、大臣の見解を伺います。法務大臣
国務大臣森山眞弓君) 今、先生が例に挙げられました二つの事件は大変痛ましく世間を震撼させたものでございまして、このようなことが二度とあってはいけないという気持ちが非常に強うございました。
 しかし、精神障害を持った方が重大な他害行為をするということは前から時々ございまして、その折々に問題になったものでございまして、何とかしなければいけないという気持ちの人がたくさんおりまして、そのたんびにどうしたらいいかという議論が巻き起こったわけでございます。
 その中の一つとして、十数年前あるいは十年ぐらい前、二回にわたって、法務省でも何かやることはないかと、できることはないかと考えて、法案の提案にこぎ着けたこともあったのでございますが、なかなか議論が熟さなかった、あるいは環境が十分ではなかったということもありまして、それが実現はいたしませんでした。
 しかし、被害者の方のお気持ち、あるいは世間全体に与えたいろんな問題を考えますと、何とかしなきゃいけないというものはそのまま残ったわけでありまして、池田小学校事件の半年以上前に、厚生労働省法務省において、法律と、あるいは精神衛生あるいは福祉の面からできることはないかという相談が既に始まっていたわけでございます。
 その後、半年ぐらいたって池田小学校事件も起こり、結果として、鑑定等の結果、その犯人はこのような者ではないということが分かりましたけれども、そういうことが時々世の中にあって、世間を騒がし、多くの方が被害に遭い、あるいは問題になるということが変わらないことでありますので、これを法律の面から、あるいは精神衛生の面から十分なケアをして、本人が無事に立ち直るように、また被害者の方にも落ち着いていただけるようにというようなことで考えてまいったことでございまして、これが政府の提案となり、また各党もそれぞれお考えいただいて真剣な議論が行われているということは、大変一歩前進であるというふうに私は評価しているわけでございまして、是非、できれば政府提案の法案が皆様にお認めいただいて成立できますように願っているところでございます。
森ゆうこ君 御答弁いただいたわけですけれども、私の質問には直接お答えはいただいていないかと思います。
 細かく通告はしておりませんけれども、関連してもう少し伺いたいんですが、大臣に。
 先週、先ほど申し上げました神戸市須磨区で起きました小学生連続殺傷事件の、その当時少年でございましたけれども、その被害者の父親が初めてテレビのインタビューに答えたわけですが、そのときに、この加害者が今秋ですね、この秋に、今年中に退院する、社会復帰するであろうということを、その情報を法務省に提示を求めたわけですね。その段階ではなかなか前へ進まない、その情報を得るだけでも随分被害者の父親は苦労をしたというようなこともありました。
 そういう意味で、加害者の人権には最大に配慮をされていると、その一方で、やはり被害者の人権はどうなのかなということを考えますと、バランスを欠いているのではないかなというふうに思われますが、先ほど質問させていただきました加害者が退院する場合や、そしてこの制度における処遇が終了する場合において、きちんとやはり被害者にもお知らせすべきではないかと思いますけれども、その点についてきちんと御答弁いただきたいと思いますが、お願いいたします。
国務大臣森山眞弓君) 御指摘のように、重大な犯罪の被害者やその御遺族にとりましては、犯罪によって受けた衝撃や悲しみは容易にいえるものではございませんで、私としても、そうした被害者や遺族の方々に常に心に止めて職務に当たらなければならないと考えております。
 ところが、この制度におきましては、当該対象者の精神障害の類型や過去の病歴、現在の病状、治癒状況、治療状況、予想される将来の症状といった対象者の精神の状態等に関する事実が審判で取り上げられることになりますが、その性質上、そのような事実は対象者のプライバシーに深くかかわりまして、当該対象者の社会復帰に与える影響をも考えますと、このような事実を他人にすべて知らせるということは本来慎重でなければならないというふうに思っているわけでございます。
 一方で、重大な他害行為の被害者にとっては、当該対象者の処遇がどのように決定された、また、あるいは実際にどのように処遇されているのかということを、強い関心をお持ちになることも理由があることでございますので、例外的に重大な他害行為の内容や当該対象者の具体的な処遇内容の決定に関する審理が行われる最初の処遇の要否、内容を決定する審判につきましては、被害者等による傍聴を許し、申出があるときは被害者等に対象者の氏名や決定の主文、理由等を通知することとしているわけでございます。
 しかしながら、その後の退院の可否等に係る審判につきましては、重大な他害行為に関する審理が行われるわけではないし、一般に当該対象者が重大な他害行為を行ったときからある程度の期間が経過しておりますので、かつ当該対象者の一般社会への復帰も近づいているということも考えますと、その円滑な社会復帰を図るとの観点からも、これらの審判については傍聴を認めないということが適当ではないかと考えられますので、これを認めないことにいたしたわけでございます。
 しかし、保護観察所におきまして対象者の生活環境の調整を行うに当たりまして、対象者の社会復帰の促進等に十分に配慮しながら、個別具体的な事情を踏まえて、被害者等の心情を確認するなどの必要があると認められる場合には、退院させることとなる事情等を含め、必要な事項を被害者等に説明することもあり得ることでございまして、またその際に被害者等が不安等を訴えた場合には、それに真摯に耳を傾けるということも、その不安を取り除くように努めるということも非常に重要なことでありますので、誠実に対応していきたいというふうに考えております。
森ゆうこ君 とてもよく分かる答弁だったのかなと、ちょっと分からないんですが、要は、この表にしていただきました、今回の法整備についてね。被害者の、そしてまたその御遺族の権利というのはここだけなんですね。傍聴って書いてあるんですが、その最初の処遇の決定の傍聴だけ。やはりこれではいかがなものかと思うわけです。
 そして、加害者から被害者を遠ざけることが本当にいいことなのか、私はこれに対して疑問があるんです。
 大臣も行かれたのではないかと思うんですが、三月に命のメッセージ展というのが国会内でございました。もちろん、これは重大な犯罪を犯した精神の障害者による犯罪によっての被害者ではなくて、様々な被害者、犯罪による被害者、凶悪な犯罪や悪質な交通事故、そしていじめによっての自殺などで理不尽に命を奪われた人々の御遺族が中心となって、被害者の等身大の大型パネルと、そして靴ですね、靴が置いてあったわけです。
 私は、ここで、十五歳の息子さんを暴行殺人で失われて、現在ではNPO法人の犯罪被害者支援の会の代表理事を務められている飯島京子さんとお会いしましていろんなお話をさせていただいたんですが、飯島さんは、被害者として加害者を恨むのではなく、深い愛情を持って子供たちを更生させたいと考えて、少年院を訪問する活動をされているんですね。そこで飯島さんがいろいろ、少年院にいる子供たち、犯罪を犯した少年たちにいろんなお話をする中で、初めてその少年たちが自分が罪を犯したんだということを認識し、そして自分の犯した罪の深さを悔い、そして自分が罪を犯したことによって悲しんでいる被害者の家族がいるんだというところに初めて思いを致すことになると。
 ですから、被害者と加害者を引き離しておいただけではその人たちは本当に罪を認識することはできないのじゃないかというふうに思います。この犯罪を犯した、今回の心神喪失等で犯罪を犯した方たちについてもある意味そういうことも言えるのではないか。何も分からない状態ではなくて、一方できちんとやっぱり罪を償いたいと思っている方たちもいらっしゃる。そういう意味で、今回の提案されている法案ではここでしか認められていない。いろいろな面で配慮されると今ほど大臣は答弁されましたけれども、今後もそういうことについていろいろ考えなければいけないと思っております。
 そのことについても一言コメントをお願いしたいということと、そして、通告していなくて大変申し訳ないんですが、そもそも現行のこの刑法というのは、最近多発しております通り魔ですね、その殺人という行為そのものを目的としている、しかも計画されている、そういう大量殺人、通り魔殺人というものを想定しているものなのでしょうか。非常に唐突にこういう質問して大変申し訳ないんですが、これ、非常に私、今疑問に思っておりまして、通告していなくて申し訳ないんですけれども、答えをお願いしたいと思います。
○政府参考人(樋渡利秋君) 人を殺害する故意を持ちましてそういう行為に及ぶこと、これは刑法百九十九条の殺人行為でございます。ただ、今言われましたような通り魔というような呼び名がこの明治に作られたときにあったかどうかということはまた別でございまして、しかしながらどういうようなことであれ、人を殺すというような行為に走ることは殺人行為として認識されているところでございます。
森ゆうこ君 大臣は。
国務大臣森山眞弓君) 今、先生の御質問がどういう御趣旨なのかちょっとよく分かりませんけれども、法律の意味は今、刑事局長が申し上げたとおりだと思います。
森ゆうこ君 唐突にする質問ではないというふうに今、同僚委員から言われましたけれども、今後こういうことについて一度きちんと、私は法務委員会に属しておりませんけれども、議論が必要なのではないかなと思っております。そもそも、通り魔殺人というもの自体は条文に規定されていないわけでして、一方、こういう犯罪の被害者も目に見えて増えているような状況もございますので、今後の問題点ということで提案させていただきました。
 次の質問に移らせていただきたいと思うんですけれども、もう、少し時間がなくなりました。
 先ほど大脇委員の方から社会復帰調整官による実施計画ですね、処遇に関する実施計画について少しお尋ねがあったんですけれども、私、一点だけ確認させていただきたいんですが、どうもイメージがよく浮かばなかったんですが、要するに、社会復帰調整官というのは、今あります介護保険のケアマネジャーのような存在というふうに考えてよろしいんでしょうか。そして、この社会復帰調整官が言わばケアプランを策定するというふうなイメージでよろしいのでしょうか。その点についてだけお答えいただきたいと思います。
○政府参考人(津田賛平君) 保護観察所に置かれます社会復帰調整官でございますが、社会復帰調整官は、当初の審判の段階では生活の調査、それからその後は退院を目指しまして生活環境の調整ということをやりますし、その後、精神観察ということを行うことになっておりまして、この制度の始めから終わりまでずっとある程度把握するという立場にございます。そのような意味で、通院治療を与えるときにおきましてコーディネーターといたしまして関係機関と連携を取りながら対処していくと、このようになっております。
森ゆうこ君 そのような説明は先ほどいただいたんですが、要するに、多少の違いはあれ、介護保険のケアマネジャーのような存在か、そしてケアプランを策定するというような感じなのかと、イメージをお聞かせ願いたかったんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(津田賛平君) 処遇いたしますためにはこの実施計画というものを策定するわけでございまして、この実施計画を策定する理由は関係機関が、どの関係機関がどのような処遇をしていくかということにつきまして、それぞれの関係機関の間に情報の共有を図りまして意思の統一を図るとともに、その関係機関がどのような処遇をしていくかということを定めるということでございます。
森ゆうこ君 質問の通告に来ていただいたときには、そのようなものと考えていいというようなお返事もいただいていたんですけれども、もっと分かりやすくさせたいがためにこういう質問をしているわけですから、きちんと答えていただきたかったと思いますが。
 私、地域で様々なボランティア活動をやってきた経験上、いわゆる統合失調症の方、それからうつ病にかかった方、そういういろんな方の、言わばここでうたわれております地域社会への復帰ということをお手伝いさせていただいた経験がございます。特別偉そうなことをやったわけではなくて、地域の保健婦さんから依頼されていろんなボランティア活動にそういう方たちを、参加して一緒に見守りながら参加していただいたと。その中で、やっぱり自分が役に立つ、社会にとって有用であるということで自信を持って、そして地域社会にまた復帰されたという経験が大変ありまして、そういう意味で私は、今回のこの社会復帰調整官というものも大切なんでしょうけれども、この中で、本当に地域のそういういろんな意味でのケアをまとめている方というのに保健婦さん、保健師さんになりましたけれども、ちょっと味気ないネーミングだなと私は思って残念だったんですが、保健師さんですね、保健師さんの役割が大変重要だと思うんです。
 坂口大臣が先日、SARSで日本の公衆衛生は中国に比べて高いというふうなお話、だからSARSがそんなに急速にというふうなお話を何かテレビでされていたらしいんですけれども、それも、その日本の公衆衛生が向上したのも、やはり保健婦さんたちの活動、地域でのそういう活動というのが大変大きかったわけですね。
 そういう意味で、今後、その地域への復帰ということについて保健師さんの果たす役割はますます重要になってくると思うんですけれども、本法案の施行を踏まえ、保健所の保健師に期待されている、役場の保健師に期待されている役割、そしてその人的拡充を図っていくべきと私は考えますが、御所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
○政府参考人(上田茂君) 保健所あるいは市町村等で勤務します保健師は、専門的な知見と技術に基づきまして地域住民の保健指導等に従事しておりまして、また地域の精神障害者に対しましても、医療機関等との連携の下、保健指導ですとか社会復帰支援等を行っております。このため、本制度による通院患者に対しましても、社会復帰調整官と連携をしつつ、保健指導などの面において重要な役割を担うこととなることと考えております。
 なお、保健所及び市町村の保健師につきましては、平成十三年度から十六年度までに千三百五十五人の増員を行うことができるよう所要の地方財政措置が講じられているものと承知しているところでございます。
森ゆうこ君 じゃ、終わります。
 ありがとうございました。
○委員長(魚住裕一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。