心神喪失者等医療観察法の条文・審議(その57)

前回(id:kokekokko:20060303)のつづき。
ひきつづき、法務委員会での質疑です。
【千葉委員質疑】

第156回参議院 法務委員会会議録第15号(同)
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、裁判所法の一部を改正する法律案、検察庁法の一部を改正する法律案及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に法務省入国管理局長増田暢也君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
○委員長(魚住裕一郎君) 休憩前に引き続き、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、裁判所法の一部を改正する法律案、検察庁法の一部を改正する法律案及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
千葉景子君 民主党・新緑風会千葉景子でございます。
 今日は、本案の法案の審議をさせていただく前に、一点ちょっと確認をさせていただきたい件がございますので、急遽よろしくお願いをしたいと思っております。
 実は、今朝の読売新聞を拝見いたしました。この一面のトップに、この新聞の表題の仕方ですのでそのまま読ませていただきますと、「北元工作員難民認定へ」と、こういう大きな表題が載っております。私もこの表題を見て、本当にちょっと衝撃を受けたところでございます。
 これまで私も、長らくといいましょうか、難民の認定について、あるいは日本がやっぱり国際社会の中で難民問題に積極的に取り組むべしと、こういう意見も、この間、度重ねて出させていただいてきたところでもございます。そして、今回、大変もう会期末ということでございますが、法務省の方では入管難民法の改正というものも国会へ提出をされている、こういう状況になっている、そういうさなかのことでございます。
 これまでは日本の難民認定というのは大変厳しく、なかなか認定をいただけない、こういう声がたくさんございました。よく言われますように、年間で本当に数人とか、これまでの合計でも三けたようやくというような数字でございまして、本当に国際社会にこれできちっと言い訳ができるのだろうか、こういうことすら言われてきたところでもございます。今回、こういう難民認定が行われるのかどうか、これが今後の日本の難民問題の行方と、それから、これは一方では、この難民認定が行われるということになりますと、北朝鮮という国に対する言わば一つの評価を下すということにもつながっていく、大変センシティブで、そしてまた極めて重い問題ではないだろうかと受け止めさせていただいております。
 なかなか今の段階でどういう状況か、お尋ねしても難しいのかもしれませんけれども、やはりこれだけ大きな新聞での報道になっているということでもございますので、そしてこれからの日本のやはり難民政策やあるいは外交政策に大きな影響を与える、こういう問題でもございますので、今日はこの事実関係についてお尋ねを、確認だけさせていただきたいというふうに思っているところでございます。
 こういう申請が本当になされているのかどうか、そして「近く最終判断」というこの新聞報道ではございますけれども、そういう方向にあるのかどうか、こういう点含めまして、ちょっと確認をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○政府参考人(増田暢也君) 個別の案件についてお尋ねを受けましたけれども、個々の難民認定申請につきましては、申請の有無を含めまして、申請人であるとか、あるいはその申請人の家族、関係者等の生命、身体の安全の確保という必要性もございますし、プライバシー保護の必要もございますので、お尋ねの件については、恐縮でございますが、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
千葉景子君 そういうお答えではないかなという予測はなかったわけではないんですけれども、今私が申し上げましたように、この問題というのは大変今後に大きな影響を与える、日本の進路を本当に大きく定めていくということにかかわるわけですので、是非そういう点も含めてどう受け止められておられるか、大臣、率直な、こういう報道も出ているところですので、何かコメントがございましたらお願いをしたいと思います。
国務大臣森山眞弓君) 個別の申請についてはお答え申し上げられないということを今、局長から申し上げたようなわけでございます。
 先生が、日本の難民政策が非常に厳しく、なかなか認めないという方向だということをおっしゃられましたが、必ずしもそうでもございませんで、日本にはまず難民を申請する人というのが非常に少のうございまして、ヨーロッパ諸国のように何万、何千というような申請があるわけではございません。最近は、以前に比べれば少しは、ちょっと増える傾向ではございますけれども、それでも百とか二百とかの単位でございますので、その母数に対比いたしますと、日本の難民を認める割合は、そう特によその国に比べて劣っているわけではないと存じます。
 また、インドシナ難民などを考えますと、一万人以上の人がインドシナから難民になって来ておられる、現に日本にいらっしゃるわけでありまして、それらも含めますと、決して国際的に見て特に恥ずかしいというようなことはないというふうに思います。
 特に、個別のこの問題につきましては、大変申し訳ないんですけれども、さっき御説明申し上げたような理由で、どういうふうにするとか、どういうふうになる予定であるとかいうことを申し上げることは、今日においては差し控えさせていただきたいと思います。
千葉景子君 今日は難民問題について御論議をするという時間ではございませんので、この程度にさせていただきますが、いずれこの問題もどういう形であるか、事実関係が分かってくるものではないかというふうに思います。是非、適切な対応が取れますように、大臣もよくよく頭に置いておいていただきたいというふうに思っているところでございます。
 それでは、本題の方に移らせていただきたいというふうに思いますが、この間、この法案についての審議を何回かさせていただき、私もその議論を聞きながら、頭の整理をしながらいるわけでございますが、どうもここに至っても、先ほど午前に市川理事がおっしゃったことをまた私も引くわけではありませんが、私もどうもいま一つ、頭が余り良くないせいか、何かこの法案が一体何をしようとしているのか、そして何を目的にし、そのためにどういうそれに適切な手続を本当に定めているのか、その辺がどうもいま一つはっきり分からない。そして、今日は修正案の提案者にもお越しをいただいて、御足労をいただいておりますけれども、修正がなされましてより分かるようになったのかと思って、私もよくよく考えてはおるんですけれども、修正がされて、よりまたちょっと分かりにくくなった部分もあるのかなと、こんな感想も持っているところでございます。
 そういう意味では、この法案でちょっと質問に立たせていただくのが私は最初なものですから、少し基本的なことにもかかわって、これまでも御答弁をいただいている部分があるかもしれませんけれども、ちょっと私も頭を整理させていただきたいと、こんなことも含めまして、御答弁のほど、よろしくお願いをしたいというふうに思っております。
 まず、法務大臣、もうこれ本当に一番素朴な疑問でございますけれども、この法案、やはり一つの手続の下に、精神障害を持つ方を強制的に入院をさせることができると、こういう内容を持っているわけですね。これまでも精神医療の分野で、そして精神障害を持つ方に対する医療の面で、医療保護入院あるいは措置入院という形で強制的な入院をさせるという制度がございました。それがあった上に、今回のこういう法案がまた改めて作られ、しかもまた別な形での強制的な入院が許されるようになると。一体これはどういう必要性といいましょうか、これまでの制度ではもういかんとも何かし難い、そういうものがあってこういう法案が出ているのでしょうか。その辺のこの法案の根本的な必要性と申しましょうか、これまでの制度とはこう違うんだというところを改めて分かるように教えていただけませんでしょうか。
国務大臣森山眞弓君) 心神喪失等の状態で重大な他害行為が行われるということにつきましては、精神障害を有する者がその病状のために加害者となるという点で極めて不幸な事態でございます。しかも、そのような者の円滑な社会復帰には普通以上の大きな困難が伴うと考えられるわけでございます。そこで、このような者につきましては、国が手厚い専門的な医療を統一的に行うことによりまして、その社会復帰を促進する必要があるというふうに考えたわけでございます。
 このような者につきましては、これまで、御指摘の措置入院制度等による処遇が行われてまいりましたけれども、これにつきましては、まず、様々な程度の精神症状を持つ一般の精神障害者と同様のスタッフ、施設の下で処遇することとなりますので、専門的な治療が困難となっているということが挙げられます。次に、都道府県を超えた連携を確保することも必要なんですが、それがしにくいということがございました。また、退院後の通院治療を確実に継続させるための実効性のある仕組みがないということもございました。これらの問題があるということが指摘されてまいりまして、これらを何とかしなければいけないということが言われてきたわけでございます。
 そこで、この制度におきましては、まず厚生労働大臣が指定する医療関係者が手厚く配置された指定入院医療機関におきまして、個々の患者の病状等に応じた手厚い専門的な医療を行うことにいたしまして、また、退院後の処遇に関する言わばコーディネーター役として、保護観察所に社会復帰調整官を置きまして、医療機関精神保健福祉センター等の各機関が都道府県の枠を超えて連携できる体制を整えることによりまして、対象者に必要な医療、保健及び福祉が与えられるようにするということなどによりましてこのような問題を解決しまして、本人の円滑な社会復帰ができますようにこれを促進することにしたものでございます。
千葉景子君 細かく説明をいただきました。
 ただ、今、大臣に御説明いただいたのはこの法案のどういう仕組みかと、内容でございまして、だからこれが必要なんだというところはどうしても私は分からない。今おっしゃったことは、逆に申し上げますと、これまでの一般の精神医療には手厚い医療がないのだ、あるいは社会復帰がさせるような体制がないのだと、言わばこれまでの一般の精神医療の、言わば非常に貧弱なといいますか問題点、そして不足している部分、それを正に御説明いただいたわけでございまして、もし考えるのだとすれば、まずそこがきちっと体制を整える、そしてだれもが手厚い医療を受けられ、そしてできるだけ早く社会の中へ復帰できると、こういう体制をその医療の部分で作るというのがまず先決の問題だったのではないだろうかと思うのです。今の大臣の御説明を伺いますと、正に逆にそれをおっしゃっているというふうに私は受け止めざるを得ないところでございます。
 そういうことを御説明をいただきましたが、だとすると、この法案の個々の内容を見ましても、本当に少なくともその御説明をいただいているような内容が、本当にこの手続で、あるいはこの法案で十分に満足できるんだろうかと考えると、これまたどうもよく、矛盾があったりつじつまが合わない部分がたくさんあるように思います。
 そこで、少し順次お尋ねをいたしますけれども、これも、これまでも質問が出ておりますので同じことの繰り返しと言われては困るんですけれども、やっぱりどうして、それだとすると、この制度、その目的に照らして考えたときに、対象行為というのが極めて限定されているのでしょうか。非常に重大な犯罪、その結果というんでしょうか、それの社会的影響というか衝撃みたいなものに非常にとらわれているのではないかと思わざるを得ないのですけれども、この対象行為がやっぱりこういう形で限定されているというのには明確な理由があるのか、改めてお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(樋渡利秋君) 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者は、精神障害を有していることに加えまして重大な他害行為を行ったという、言わば二重のハンディキャップを背負っている方でございます。そして、このような者が有する精神障害は一般的に手厚い専門的な医療の必要性が高いと考えられまして、また、仮にそのような精神障害が改善されないまま再びそのために同様の行為が行われることとなれば本人の社会復帰の大きな障害となりますことからも、やはりこのような医療を確保することが必要不可欠であると考えられるのでございます。
 そこで、このような方につきましては国の責任において手厚い専門的な医療を統一的に行い、また、退院後の継続的な医療を確保するための仕組み等を整備することにより、その円滑な社会復帰を促進することが特に必要であると考えられますことから、このような者を本法案における対象者とすることとしたものであります。
 また、一般に重大な行為と考えられるものの中で、殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ及び傷害に当たる行為を対象としました理由は、これらの行為がいずれも個人の生命、身体、財産等に重大な被害を及ぼすものであることに加えまして、心神喪失等の状態により行われることが比較的多いことにかんがみ、心神喪失等の状態でこれらの行為を行った者につきましては、特に継続的かつ適切な医療の確保を図ることが肝要であると考えられたためでございます。
千葉景子君 お答えは以前にも聞いているものでもございますので、ただ、今もお話がございましたように、二重のハンディキャップを負うということがしばしばお答えに出てまいります。しかし、これは決して、ここで絞られているような本当に重大な犯罪、結果としてそう言われている犯罪を犯したというだけに限るのだろうか。じゃ、一定の軽微なものであっても、やっぱり仮に犯罪を犯したということがハンディキャップにならないということになるのかと、こういう疑問も出てくるわけです。そういう意味では、非常にやっぱり、よく言われておりますように、これが、法案の促進の一つの大きな起爆剤になったのがあの池田小事件だったと。
 これは決して、無関係な結果的には問題だったわけですけれども、やっぱりそういう大きな社会的な何か衝撃、そういうものを背景にこの法案が作られているのではないかと。決して、本当に精神障害を持つ方のハンディキャップあるいはその治療、そして社会復帰、そういうものを本当に真に考えて作られているのかどうかということを私はちょっと本当に疑問に思うところでございます。
 この法案では、当初の修正前、そして修正案を作っていただきまして、かなりその治療、社会復帰、こういうことに大変重点が置かれてきたというふうに私も受け止めてはおります。しかし、そうなりますと、この重大な他害行為を行ったこういうケースについて社会復帰そして治療を行う、そのためであるならば、なぜ裁判所の関与というものが本当に必要なんだろうかと。
 修正案の提案者の塩崎先生もおられますけれども、やっぱりむしろできるだけ手厚い治療で、そして社会復帰をということになりますと、一体この裁判所の関与というのはどういう意味を持つんだろうかと。ここは、修正案の提案されましても、特段修正をされたという経緯はございません。その辺りはどういうふうに考えておられるか。これは法務省そして提案者の方に双方お尋ねをしたいと思います。
○政府参考人(樋渡利秋君) 先ほどもお答えしましたように、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行いました者は言わば二重のハンディキャップを背負っている者でございまして、社会復帰に大きな困難が伴うと考えられますことから、国の責任において本人の円滑な社会復帰を促進するため、裁判官も加わった地方裁判所の合議体がこのような方の適正な利益を十分に保護しつつ、厳格かつ慎重な手続により最も適切な処遇を決定することが適切であると考えられるところでございます。
 また、本制度による処遇の要件に該当するか否かの判断におきましては医学的知見が極めて重要でございますが、この判断は、本人の意思にかかわらず医療を強制するという人身の自由に対する制約、干渉が許されるか否かという法的判断でもあることに加えまして、その過程で、例えば本人の生活環境に照らし治療の継続が確保されるか否か、また、同様の行為を行うことなく社会に復帰することができるような状況にあるか否かといいました純粋な医療的判断を超える事柄をも考慮することも必要であると考えられるのでございます。
 そこで、本制度による処遇の要否、内容の決定につきましては、裁判官と医師の合議体がこれを行うことが適当であるというふうにしたものでございます。
衆議院議員塩崎恭久君) 千葉先生のただいまの御質問に答える前に、ずっと参議院のこの議論を聞いていて、答弁を聞いていて、少し衆議院の我々が修正をしたときの思いと違うというか、少し力が特に厚生労働省の方に入っていない部分があるかなということを感じたものですから、ちょっと今のお話の前に少しだけ、なぜ修正をしたかということ等、自分のこの修正に臨む思いというのをちょっとだけ申し上げさせていただきたいと思うわけでございます、それが裁判官の役割のお話にもつながると思うんですけれども。
 今回、正直言って、我々も、自民党の中でほぼこれに近いような案を決める際に、本当にこれだけでいいのかと。つまり、精神科医療全般の底上げをするという担保なしでこれだけ進んでいいのかということを、私も正直言って悩みました。私も地元で随分いろいろな、家族会の人であるとかPSWであるとか看護師さんとか、いろんな人と勉強会をやると、みんな反対だと言うんですね。私も正直言って悩みましたが、しかし、さりとて、じゃ医療全般を底上げするのを待つのかというと、やっぱりそれはどうもそうじゃないだろうなと。
 そうすると、特に手厚い治療が必要な人たちに対して、何らかのやっぱり手だてを施す。言ってみれば、一段ロケットをまず飛ばして、そして二段ロケットできちっとした精神科医療を、底上げをやっていくものを同時にやっぱり火を付けていかないといけないんじゃないかという整理をしながらやってきたわけでありまして、民主党の案では特に医療に力を入れられた案になっているので、だからこそ私は、冒頭、江田先生の御質問のときに、合体することも可能だったかなという思いすら持ったんだということを申し上げたわけであります。
 先ほどの裁判官のお話に行く前に、なぜ措置制度があるのにこんなものを作るんだというお話がありました。私は、この修正案を作るときに、厚生労働省には将来的にやっぱりこの措置制度と今度の新しい制度は有機的に一体化してもらわないと困るということも言ってほしいということを言って、何回か衆議院では言っているはずです。
 それともう一つは、今回のこの新しい病棟は今回対象になる人たちだけに限られているわけではなくて、重い精神障害を患っている方々が将来的にはやっぱりこれを受けられるような、今でも制度的には排除しているわけじゃないんですけれども、そういうものにしなきゃいけないという思いを持っていて、なおかつそれでも社会復帰ができないような形のものであるならばやっぱり見直そうよといって、今回修正で五年後の見直しというのを作ったわけですね。
 そういうことで、正直言って私もいろいろな悩みを持って今回の修正に、このぐらいのぎりぎりのことで何とかスタートしようよという思いでやったということであります。
 それから、裁判官の話は、やはりそれまで私も地元でいろいろとそういう勉強会の中で聞いてきたのは、今まで医療に全部責任を押し付けてきて、医療に判断を全部任せてきて、そしてお医者さんがみんな悩んできている。その姿を見て、当事者の方々からも、司法と医療と、両方のやっぱりいいコンビネーションの中で判断をしてもらいたい、場合によっては裁判でという方もおられましたけれども。
 そういうことで、中身についてはさっき言ったようなやっぱり人権の問題であるとか人の自由を奪うというようなこともありますし、そういうことで裁判官がかむということについて私も一定の意味があるなというふうに考えておりますが、今までのゆがんだ制度の中から一歩前進ということでいく制度になればなという思いで今回修正をさせていただいたということでございます。
千葉景子君 多分、かなり率直な思いを語られておられるのだというふうに思います。ただ、逆に言えば、率直がゆえに、やはりこの法案の置かれている問題、そして今の精神医療の問題というのがある意味では本当にそのとおりだということをおっしゃっておられるのではないかというふうに思います。
 やっぱり、一般の精神障害を持つ方の医療がきちっと整備をされていないと、そこが本当に手厚いものであって、そしてできるだけ早い社会での生活、社会復帰を促すことができるような体制になっておりませんと、やっぱりその上に何かこしらえれば、更に社会復帰を促す動きをなかなか難しくしてしまう。逆に言えば、今回も強制的な入院というものを認めるわけですので、入院した以上、なかなか今の現状の中では社会復帰が困難であるということの、もう何かその上にまた屋上屋を重ねていくと、こういうことになりかねないのではないかというふうに思います。
 今、前回も、社会的入院が七万二千人という、そういう現状があると。そういう中で、本当にこれも今解消の方向にいろんな取組がされているといいながらも、一体本当にこれ、どうやってこの社会的入院というものが解消されるのか。そこの上にまた、できるだけ社会復帰を促そうということを目的にしながらこの法案を作るとしたら、本当に目的を達成することができないのではないかと。仮に社会復帰を本当に促そうという目的をこの法案が持っていたとしても、結果的にはやっぱり復帰できない、長期的な入院を結果的には余儀なくさせると、こういうことにつながっていくのではないかということを私は大変懸念をし、やっぱり考え方の順番が、それがあるから一部でもまず第一段でというのではなくて、やっぱりだれもがこういう手厚く、そしていい医療を受けられる、そこをまず何とかしてから次のステップへというのがやっぱり本来の私は筋だろうというふうに思っております。
 この法案が更にいろんな意味で、片方では社会的復帰、そして手厚い医療ということを掲げながら、しかし片方ではやはり強制的な入院ということもあり、いろいろな手続を定めているんですけれども、いささかやはりその手続の面で本当に強制入院を許すだけの適正な手続保障があるのかどうかというところも疑問点がたくさんございます。
 ちょっと何点か聞かせていただきたいと思いますが、この審判手続を行うに当たりまして鑑定入院がなされることがございます。これは三十四条の一項ですが、最長で三か月まで鑑定入院がなされるわけですが、この間の言わば医療の体制というのは一体どういうことになるのか。やっぱりできるだけ早くいい医療を、そして社会復帰の方向へというのであれば、一刻も早くきちっとした医療の下へその対象者を置くことが大事なんですけれども、この鑑定入院の際の医療の体制というか在り方というのはどういう仕組みになっていくのか。
 例えば、これまで継続して医療を受けていたと、こういうものがそのまま継続して受けることができるのかどうか、そういうこともこの法案の中では全然不明でございます。
 それから、付添人もこの間どういう手だてを講ずることができるのか、あるいは付添人としてどういう権能を行使することができるのか、こういう点がこの鑑定入院ということに関してほとんど記載というか、はっきりされておりません。その点について御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(樋渡利秋君) 今、鑑定入院に関しまして三つの御質問があったと思うわけでありますが、まず最初に、鑑定入院期間中の医療の問題でございますが、鑑定入院期間中におきましても鑑定その他の医療的観察を行うとの鑑定入院の目的を踏まえつつ、対象者に対して必要な精神科の医療が行われることになると考えております。
 鑑定入院先の病院につきましては、具体的に個々の処遇事件を取り扱う裁判所が決定することとなるのでございますが、本制度の対象者の特性等にかんがみますと、国公立病院や精神保健福祉法に基づく指定病院でありまして、急性期や重症患者の治療等について十分な経験を有する医療機関が望ましいと考えております。
 次が、鑑定入院に当たりまして継続的に受けていた治療はどうなるのかという御質問だったと思いますが、これにつきましては、鑑定入院期間中も対象者に対し、鑑定その他の医療的観察という目的を踏まえつつ、症状の悪化を防ぐための投薬や治療の効用を確かめ、その経過を観察するために試験的に行われる精神療法の実施等、必要な医療が行われることとなると考えておりまして、その際、必要がある場合には、鑑定入院先の病院におきまして、対象者のそれまでの病状、治療状況等の情報の提供を求めることとなると考えております。
 次に、付添人の問題でございますが、本制度は刑罰に代わる制裁を科すことを目的とするものではなく、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し、継続的かつ適切な医療等を行うことにより、その者の社会復帰を促進するための制度でございますから、刑事手続とは異なり、そもそも鑑定入院中の対象者と付添人との面会を制限する規定は設けられておりませず、刑事手続上の権利である接見交通権というものも規定しておりません。
 したがいまして、本制度の下では、付添人は接見交通権という形で保障されているわけではございませんが、鑑定入院中の対象者と法律による制限なく面会することができるものであると考えております。
 鑑定入院先の病院の施設管理上の理由や対象者の病状等により、対象者と付添人との面会が事実上制限される場合もあり得ないわけではないでございましょうが、病院等におきましても、本制度における付添人の役割等に照らし、付添人との面会は最大限尊重されることになろうと思われます。
千葉景子君 後ほどもまたお聞きするかと思うんですけれども、今回の手続につきましては、審判手続ということでもあり、いわゆる刑事手続と同じ適正な手続保障というのは特段と認められていないという形になっております。ただ、これは先般、江田委員の方からも指摘がありましたように、やっぱり強制的な身柄の拘束というものにかかわっていく、こういう手続でもございますので、やっぱり厳しい手続保障というものがやはりあってしかるべきだというふうに思います。
 特に、実務的に私も感じるんですけれども、多分、刑事事件で、その刑事手続が行われているときは、弁護士が弁護人という形で弁護人としての手続保障を受けながら刑事弁護を行っている。そこのある時点で今度は急に、多分同じ弁護士なりがやっぱり継続してその障害者の方のサポートをしていこうということが多いのだと思うんですけれども、そうすると、そこで急に今度は付添人という形になる、そして手続上もこれまでの刑事手続の保障ではなくして付添人としての一定の権能を持つという形になるわけです。ただ、この一連のある意味では手続の中で、やっぱり弁護人として一定の信頼を得、そしてまた今後の手続についても本人のできるだけのサポートをしていこうという、こういう流れにあるわけですから、そういう中で、でき得るだけ付添人という名でありましても最大限のやっぱり保障をしていただきたいし、そういう取扱いをやっぱりすべきではないかというふうに考えているところでもございます。
 そういうことを考えると、今度は審判期日について、場合によっては今度はこういうことがあるんですね。心身の障害のために本人の出席ができない場合には付添人の出席で審判を行うことができると、こういう規定もございます。逆に言えば、今度は本人の、代わりと言ってはなんですけれども、むしろ付添人が前面に立ってその審判期日を受けると、こういうことが逆な意味では認められている。そうなると、この付添人というのは、単なる補助者ということではなくして、代理人なり弁護人に本当に限りなく近い存在としてやっぱりこういう期日などもサポートをしていくということにならなければいけないのではないかというふうに思います。
 この審判期日に心身の障害のため本人の出席ができない場合というのは、やっぱりこれは本当に本人不在でということはできるだけ避けるべきであろうと思いますが、どういう場合を具体的には想定されるのでしょうか。多分そんなに緩やかに考えるということではなかろうかと思いますが、その点はいかがですか。
○政府参考人(樋渡利秋君) まず、この規定の趣旨から若干説明させていただきたいんでありますが、確かに御指摘のとおりに、本法律案の修正後でいいましたら三十一条の第八項ただし書になるわけでありますが、御指摘のように、心身障害のため審判期日に出席しない場合であっても、付添人が出席できれば審判期日を開くことができるとしておりますが、これは本制度による処遇の目的にかんがみ、裁判所が適切な処遇を迅速に決定することにより、医療が必要と判断される者に対しできる限り速やかに本制度による医療を行うのが重要であると考えられますことから、付添人の出席によって対象者の利益の保障を図りつつ、対象者が不在でも審判を行うことができるとしておくことが適当であろうと考えられたことによるものであります。
 もっとも、この同じ条文の第八項本文では、「対象者が審判期日に出席しないときは、審判を行うことができない。」というのが原則になっておるのでございますから、できる限り対象者が出席した上で審判期日が開かれることが望ましいというのは御指摘のとおりでございます。
 そこで、心身の障害により審判期日に出席しない場合の「心身の障害」という内容はどういうものかということでございますが、個別の事案において判断されるべきものではございますが、例えば対象者の精神等の障害が重く、審判に出席するための場所的移動に耐えられないと思われるような場合などが考えられるのであります。
 しかしながら、これにつきましても、本法律案の修正案におきましては、その第四項におきまして、「審判期日における審判においては、精神障害者精神障害の状態に応じ、必要な配慮をしなければならない。」との規定が設けられているところでございまして、この「必要な配慮」の内容としましては、例えば、その精神障害の状態にかんがみ、本人の裁判所への出頭が難しいと見込まれる場合に入院先の病院において審判期日を開くことなどが考えられるというふうにされておりますから、その具体的な事例において裁判所が本人のためにどういう審判期日を開くかということを決定していくというふうに考えております。
千葉景子君 ところで、この審判にはいろんなケースがあるわけですけれども、一つ、不起訴処分後に申立てが行われる、その審判というのがございます。判決で無罪、心神喪失心神耗弱などの判決が出たというものではなく、その前段階の不起訴処分を受けての申立てと、こういう場合の審判手続を考えてみますと、これはまずどういう審判ということになるのでしょうか。
 まず、その対象行為の存否、そして責任能力の有無というのがまず判断をされ、そしてその後に入院の必要性の有無という、そういう二段構えになるというふうに思われるのですけれども、そういう形の審判と考えてよろしいですか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 御指摘のとおりに考えていただいて差し支えないと思います。
千葉景子君 そうなりますと、これは心神喪失等での判決を受けた者の審判とは若干異なりまして、言わばその対象行為の存否、あるいは責任能力の有無という極めて事実認定手続に準ずるような判断をするということになるわけですね、まず第一段階として。そういう意味では、ここはよく言われますように、審判手続であって、むしろ後見的な手続として、手続保障についてもそういう観点から考えるというだけではなくして、この事実認定手続に準ずるようなやっぱり位置付けをすべきではないか、こう思います。
 やはりここでも、そうはいっても付添人というのはあくまでも付添人という形しか取られておりませんし、これも既にございましたように、例えば記録の閲覧とか謄写などについても一般の刑事弁護までの保障はされていない。それから、例えば、こういう対象行為の存否とか責任能力の有無を判断するに当たって捜査記録などはそのまま審判廷に提出される、しかしそれに対して、付添人ということしかありませんので、通常の刑事弁護的な手続として、例えば伝聞の証拠であるとか、自白の任意性はどうだとか、あるいは違法収集証拠ではないかとか、こういう言わば相対論的な手続というのが取れない、そういう意味ではチェックが非常に難しくなってくるということも言えるのではないか。それから、これはまた重なりますけれども、そういう手続を進めるに当たってやっぱり本人との接見交通権などが本当に十分に保障されるのかと、こういう問題がございます。
 そういう意味では、この法案での手続が、確かに医療、そして医療をどうやって十分に与えていこうか、そして社会復帰の道を作っていこうかというだけではない、非常に刑事手続的な部分があるということを是非私たちも認識をしておかなければいけないというふうに思います。
 今の、不起訴処分を受けての申立てについての幾つかの今指摘をさせていただいたような問題点について、手続上の考え方を御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(樋渡利秋君) まず、本法律案による処遇制度の目的は、対象者の社会復帰を促進することにあるのでございまして、委員御指摘のように、この審判廷は刑事訴訟手続より柔軟で、十分な資料に基づいて適切な処遇を迅速に決定することができる審判手続によることとしたものでございます。
 本制度におきましても、付添人は、自らが必要と判断する資料を自由に裁判所に提出して証拠としてもらうことができ、また自由に意見を述べ、さらに証人として採用された者に対して反対尋問を行うこともできるのでございまして、少年審判の場合と同様に、事実関係に争いがある場合でありましても、対象者の利益のため十分な活動を行うことができると考えられます。
 確かに、証拠を不同意とする権利と、対立する両当事者による訴訟手続を前提とする権利は付添人には認められませんが、例えば証拠調べ請求につきましても、裁判所に対し証拠調べの申出を行うことが可能であり、実際上の支障は全くないというふうに考えております。
千葉景子君 実際上の支障がないというお話ですけれども、果たしてそうだろうかと率直に思います。
 やはり、普通の手続上、捜査記録、検察官の捜査記録というのはかなりそのまま採用されるということが多いわけでして、やっぱりそれに対して自らの側から証拠を出したりすることができるといっても、その捜査の記録あるいは捜査の状況についてやっぱりきちっとした反論とか、あるいはそれに対するチェック、そういうことができませんと、ここは本当に手続として、対象行為が本当にあったかどうかというところが問題になる部分ですから、正にこれは後見的な審判というよりは、まずその前提としてのやっぱり事実関係の確定というような側面が非常に強いというふうに思っております。
 やっぱり、そもそもその対象行為というものの存否がはっきりしていなかったらこの手続に当然のせるわけにはいかないわけですから、そういうことを考えますと、この点のやっぱり手続というのもかなり厳格に、付添人ということでありましても、私は本来、弁護人としての手続保障に限りなく近い形を取っていただくべきものではないかというふうに思っているところでございます。
 さて、時間がもう限られておりますので、若干通告をさせていただいたもの全部できませんけれども、ちょっと再入院の件について御答弁をいただきたいというふうに思います。
 再入院については、通院命令を受けた者に対して、保護観察所の長からの申立てによりまして再入院ということが確定されるわけですけれども、五十九条の一項、二項、それぞれ要件が定められております。特に五十二条の二項ですと、継続的な医療を行うことが確保できないというような状況において再入院というのが認められるということ、この要件がございます。
 ただ、考えてみますと、本来、医療そして社会的な処遇というのが重要だということで、元々通院でできるだけ早く社会復帰をしなさいということが決められるわけですので、この再入院というのは、よほどのことでない限り今度は入院をさせるということにはならないんだろうというふうに思います。
 ただ、心配をするのは、これも最初に戻りますけれども、やっぱり今、社会一般の医療が非常に脆弱なところがあり、そして社会復帰ができずに、これもまた重ねて言いますけれども、非常に、七万人以上の社会的入院が存在しているということになりますと、その地域で、あるいは通院で継続的な医療を行うというのが非常に何か困難だと言われがちなのではないかと。やっぱり難しい、そういう通院体制とかあるいは社会的な体制というのはもう難しいから、やっぱり入院の方がいいんじゃないかということで安易にこういう再入院などが使われる危険がないのだろうか。
 これが一般の医療が非常に十分に体制が整っていれば心配は少ないんだろうと思いますけれども、このような一般医療の状況では、やっぱり入院ということが非常に重視をされていく可能性が高いのではないかというふうに思いますが、その危険性などについて、そして安易に使われるようなおそれがないのかどうか、その点について御答弁いただきたいと思います。
○政府参考人(津田賛平君) 保護観察所の長が五十九条二項に基づきまして再入院の申立てを行いますには、対象者が第四十三条第二項に規定する指定通院医療機関による医療を受ける義務に違反し、又は第百七条に規定する一定の住居に居住すること等の守るべき事項を守らず、そのため継続的な医療を行うことが確保できないと認められる場合に初めて行うこととしておりますので、御懸念のようなことはないものと考えております。
千葉景子君 簡単に、危険はないのだ、おそれはないとおっしゃいますけれども、この点は私はまだちょっと疑問が残っているところでもございます。
 まだ抗告、不服申立て等々お尋ねしなければいけない部分もございますけれども、時間の関係ありますので、この部分、最後にこの一点だけ指摘をさせておいていただきたいと思います。
 それは、今これは公判が終わって、あるいは不起訴になって申し立てられた手続のことがこの法案の対象ではございますけれども、実は公判段階、ここのやっぱり医療というのが私は非常に抜け落ちているのではないかというふうに感じております。
 やっぱり重大な他害行為を行った場合に、そういう重大な他害行為を行ったとはいっても、継続してやっぱり医療が続けられている、そしてできるだけ早くその医療の体制の下にまた復帰をするということが非常にその後の治療あるいは社会復帰に大きな条件になるのではないかというふうに思います。ところが、この公判段階というのが、これまでもでしたけれども、この中の医療の確保、とりわけ身柄拘束中の医療というのは非常に問題になっています。そこがすっぽりと抜け落ちてしまって、より一層治療がしにくくなる、あるいは回復を遅らせる、こういうことが言えるのではないかというふうに思います。
 この委員会でも、この間ずっと刑務所あるいは拘置所等にかかわる問題が議論をされてまいりました。その中でも医療の非常に実態というのが極めて問題であるということはもうこの委員会での共通の認識ではないかというふうに思います。そういう意味では、ここの部分もこの議論の中で本当に抜け落ちていたのでは、その後、一生懸命手厚い手厚いと言っておりましても、本当に一体何のためなんだということになりかねません。
 そういう意味で、刑務所あるいは拘置所、とりわけこの法案とかかわるとすれば拘置所ということになるんでしょうけれども、医療のここのやっぱり充実等については一体どう考えているのか、この法案とともに一体どういう御認識でおられるのか。法務省、そして拘置所内もやっぱり診療所扱いということになるわけですので、ここは厚生省もやっぱりそこに監督のいろんな責任も持っておられる。それぞれのお考え方をお聞かせをいただいて、今日の私の部分は終わりたいと思います。
○政府参考人(横田尤孝君) お答えいたします。
 刑務所やあるいは拘置所における精神科の医療につきましては、刑や勾留の執行機関という枠組みの中でその医療体制を整え、近隣の医療機関等の協力を得ながら、できる限りその充実に努めることが重要であると考えております。そのようなことから、医療刑務所等を中心に精神科医を配置し、精神疾患を有する者に対する適切な医療の実施に努めているところでございますけれども、刑務所や拘置所の医療体制につきましては、医師の確保を始めとして難しい問題が多うございますので、先般、当矯正局において発足させました矯正医療問題対策プロジェクトチームによる検討や行刑改革会議の御議論などを踏まえながら、関係省庁の御協力も得ながら、なお一層の充実に努めたいと考えております。
○政府参考人(篠崎英夫君) ただいま御答弁がございましたけれども、刑務所内における医療機関におきましても、これは国の開設する医療機関として医療法の適用を受けることになっておりますので、厚生労働省としても、所在地の都道府県知事と連携しながら、刑務所内の医療機関に対して、医療法に基づき必要に応じ適切な指導監督を行うようにしたいと考えておりますし、また、一次的には法務省の責任の下で医療の充実を図っていただきたいと思っておるわけでございますけれども、私どもとしても、御要請があれば積極的に御協力申し上げたいと思っております。

【朝日委員質疑】

第156回参議院 法務委員会会議録第15号(同)
○朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日です。同僚の千葉議員に続いて、私の方からも幾つか質問をさせていただきます。
 質問に入る前に、委員長にお願いが二つあります。委員長、二つお願いがあります。
 一つは、今週の月曜日に連合審査を行いました。そのときに、私の方から毎日新聞の報道について指摘をして、もう中身は省略しますが、これが事実であれば大変なことですね、警察庁厚生労働省でちゃんと調べて調査結果を出してくださいということをお願いしました。今日の先ほど昼休みに、調査結果が出ましたということでお持ちいただきました。私は説明をお聞きしたんですが、是非これは、できるだけ近い連合審査の機会に、委員の皆さんにもこの調査結果をお知らせして、新聞報道ときちっと対比、検討していただくということを理事会の方でお諮りいただきたいというのが一つ。
 それからもう一つは、二十七日、厚生労働委員会で一般質疑をさせていただいたときに、この法案と密接にかかわり合う今後の日本の精神保健医療政策にかかわって、日本精神科病院協会のかかわりが大変、良くも悪くもかかわりが深いという意味で、是非、連合審査の場で参考人として意見を聞かせていただけないだろうかというお願いをしました。というのは、衆議院の方でも同じ日本精神科病院協会から参考人として連合審査の場に御出席いただいているということもお聞きしましたので、是非その点も理事会の方で御検討いただければと。
 以上二点、委員長にお願いしたいと思いますが、いかがですか。
○委員長(魚住裕一郎君) 後刻、理事会において協議いたします。
○朝日俊弘君 よろしくお願いします。
 それで、今日の私の質問は、月曜日の連合審査のときの宿題から、残った質問の部分からもう一度始めたいと思っています。
 前回の連合審査のときに、私の方から平成十四年度の厚生科学研究、「責任能力鑑定における精神医学的評価に関する研究」という、こういう研究が行われて、既に分担執筆の部分は報告書がまとまっていますと、その中身について概略御紹介をし、大変この法案と関連が深いので、是非資料として公表してほしいというお願いを厚生労働省にいたしました。そのときの御答弁では、努力しますというお話でした。
 今日はまだ出せませんか、厚生労働省の方としては。──あれ、いないな。厚生労働省の政府参考人はいないんですか。
○委員長(魚住裕一郎君) お呼びになっていないようですが。
○朝日俊弘君 ああ、そうか。分かりました。
 じゃ、今日の段階でまだ出されていませんので、引き続き、この審議に関係するので、是非早い段階での公表を改めてお願いをしたいと思います。
 そこで、その詳しい中身については言いませんが、この報告書は、一つは、現在行われているいわゆる起訴前の簡易鑑定の実施状況について実態を調査すると、非常に、二つの特徴的な傾向がある。一つは、少数の鑑定医が多数の鑑定を実施する、これを寡占型の地域、ここでは判定基準の偏りが見られる。それから、もう一つのパターンは、多数の鑑定医が鑑定業務を分担する分散型の地域、ここでは判定基準の不統一が懸念された、こういうことを指摘をし、結論的には、今回の調査によって簡易鑑定の実施状況には鑑定の精度や人権擁護の観点から無視できない地域差、精度差、個人差のあることが判明した、こういうことが指摘されております。先日、井上議員の方からもこのような質問がございました。
 そこで、この分担研究の結論について法務省法務大臣はどういうふうに受け止めておられるのか、是非お伺いしたいわけです。
 そのことと併せてお伺いしたいのは、既に私どもの民主党から提出をした案の提案理由説明のところでも申し上げましたが、私たちは以前からこの点についてかなり問題だという認識を持っていまして、今度の私たちの案の第一に、起訴前及び起訴後における精神鑑定の適正な実施を目的として、最高裁判所最高検察庁のそれぞれに司法精神鑑定支援センターを設置して、そこで鑑定人の選定事務とか精神鑑定に係る情報と資料の収集とか、調査分析等を行う。このことによって、鑑定人の選定に関して裁判官や検察官の負担を軽減することができるとともに、鑑定に当たる精神科医を適切に選定し、鑑定結果の偏りやばらつきを防ぐことができます。また、情報の収集、分析を通じて、より精緻な鑑定技能を開発していく道をも開くことが期待できます、こういうふうに提案を申し上げました。
 この部分については、ある意味では問題意識は共有できるんではないかというふうに思うんですが、この点も含めて、法務大臣にお答えをいただきます。
国務大臣森山眞弓君) まず最初の御質問についてお答えいたします。
 先生御指摘の研究結果につきましては、担当部局から一応の簡単な報告を受けましたんですが、いわゆる簡易鑑定の実施状況に関して地域差とか鑑定医ごとの個人差などが指摘されておりまして、簡易鑑定者のモデルを作成することを提案するなどの内容のものであると聞いております。
 個別の研究結果を論評する立場にはございませんけれども、精神鑑定については、特に御指摘の簡易鑑定に関して適正に実施されているかなど、様々な御意見や御批判があるということは十分承知いたしておりまして、法務省といたしましても一層その適正な運用を図り、不十分な鑑定に基づいて安易な処理が行われないように、そういうことが行われているのではないかというような御批判を決して招くことのないようにする必要があると考えております。
 そこで、委員が御指摘の研究報告を含め、これまでなされた様々な御批判や御意見を踏まえながら、簡易鑑定の際に適正な実施を図る上でどのような方法が有益かについて検討していきたいと考えております。
 それから、次の御質問につきまして、民主党案における、御提案のその内容についてでございますが、民主党の案におきましては、最高裁判所最高検察庁に司法精神鑑定支援センターを設置して、精神鑑定に係る調査研究等や鑑定人候補者の選定を行うものとされていると承知しておりますが、司法精神医学の向上を図ること自体は重要であると思います。しかし、本来、そのような研究や専門家の養成は、それを行うのにふさわしい専門性や中立性を備えた組織において行われるべきものではないかと思いますし、医療を所管しない裁判所や検察庁にこのような組織を置くことが適当であるかどうか、多少の疑問を感じるわけでございます。
 しかし、先ほども申しましたように、これまでなされた様々な御批判や御意見を踏まえまして、簡易鑑定の更に適正な実施を図る上でどのような方法が有益かということについて検討していきたいと思っております。
○朝日俊弘君 確かに、私たちも、最高裁判所最高検察庁のそれぞれに司法鑑定支援センターを作るという仕組み方が一番いい形なのかどうなのか、必ずしもこれしかないというふうには思っていません。ただ、我々野党の立場からすると、何らかの法律表現でこういうものを作ろうというふうにしないと明確になりませんので、あえてこういう形で提案をさせていただいたわけで、例えば法務省厚生労働省の共管の施設を作る、研究施設を作るということもあり得るというふうに思います。
 ですから、問題は、要するに、かなり精神医療の現場とそれから司法サイドとが必ずしも従来意思疎通というか、連係プレーというか、あるいは相互のフォローアップができていなかったことから、まずは、基礎データそのものが十分ないんではないかという気がしてならないんですね。そこから随分双方に不信感があるんですよ。
 今、お台場で日本精神神経学会が行われていまして、昨日でしたか、日本精神神経学会の理事会があったそうです。そこでもこんな議論があったそうです。検察官通報問題は、検察が検察の役割を果たさず、精神医療へ押し付けてきたという見方が全理事共通認識となったというふうに言われているんですね。これではまずいわけですよ。是非これは今後の重要な課題としてお互いに確認をしておきたいなと、こんなふうにまず思います。
 それから、次の問題に移ります。
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者、まず第一に、心神喪失等の状態であるか否かというところがまず一つ問われます。で、私の理解では、心神喪失等の判断はあくまでも司法的判断、つまり精神医学的診断ではなくて、もちろんそれを根拠というか材料にはしますけれども、心神喪失等の判断はあくまでも司法的判断で、精神科医は精神医学的な診断を行うが、心神喪失か否かの判断は裁判官が行うというふうに理解してよろしいかどうか。精神の障害の有無と、理非善悪を認識し、それに従って行為する能力の有無、この二点を確認することが裁判官の任務として私は理解しておりますが、そういう理解でよろしいかどうか、お尋ねします。
国務大臣森山眞弓君) 心神喪失とは、精神の障害により、事物の理非善悪を弁識する能力がないか、又はこの弁識に従って行動する能力がない状態をいいまして、心神喪失者の行為は処罰しないこととされております。
 刑事手続におきまして、被疑者や被告人が犯行当時このような状態にあったかどうかを判断するに当たりましては、精神科医による精神医学的な診断結果が極めて重要であると考えられますけれども、被告人の精神状態が心神喪失等に該当するかどうかについては法律判断でございまして、専ら裁判所にゆだねられるべき問題であると解されます。この制度におきましても、不起訴処分をされた対象者について裁判所が心神喪失者等であるか否かを確認することとしていますが、この判断については合議体の構成員である職業裁判官のみが行うこととしております。
○朝日俊弘君 そうしますと、ちょっとこれ、更に説明をいただけると有り難いんですが、今おっしゃったように、心神喪失等の判断はあくまでも裁判官が法律的に基づいて判断をすると。
 そうすると、その中には精神医学的な、診断名からいうと随分といろんな診断名の事例が入ってもおかしくないと。要するに、逆に言うと、精神医学的な診断名でこれこれですというふうに限定はできない、しないというふうに考えてよろしいか。
国務大臣森山眞弓君) 精神科の先生の御判断、診断の結果が非常に重要であるということは確かでございますが、さっき申しましたように、心神喪失心神耗弱等は精神科の診断とはまた違いますので、食い違いがあり得ると思います。
○朝日俊弘君 なぜそのことをくどくど聞きますかというと、同じ精神科医の仲間と議論をしていますと、じゃこういう診断は入るのか入らないのかとか、すぐそういう診断名の話になるんですよ。で、いやこれは司法上の判断なんですよということで説明をしているわけですが、そういうこともありますのであえてお尋ねをしました。
 じゃその次に、そういう心神喪失等の状態の者が、今度はある重大な他害行為、対象行為を行ったかどうかがまず次の判断のポイントになります。そういう重大な他害行為、対象行為を行ったかどうかの事実確認というか、事実取調べというか、そこはだれがどう行うのか。そして、その判断はだれがどう行うのか。その際、精神保健審判員及び精神保健参与員が関与することはあるのかどうか。この点について御説明ください。
○政府参考人(樋渡利秋君) 不起訴事件につきまして、検察官から本制度による処遇の申立てがなされた場合には、合議体を構成する裁判官が、検察官や対象者、付添人の意見を聴き、提出された資料を検討し、又は必要な事実の取調べを行って、対象者が対象行為を行ったか否かという事実の認定を行うこととされております。
 これは、対象者が対象行為を行ったか否かという判断が、関係証拠によって過去に行われた行為が一定の犯罪に該当するものであるか否かを認定するものでありますところ、このような犯罪事実の認定は正に裁判官の判断になじむものでありますことから、裁判官のみがこの判断を行うこととしたものであります。このように、対象者が対象行為を行ったか否かの認定は裁判官のみによって行われることとされており、精神保健審判員が対象行為の存否に関する判断に加わるものではございません。
 もっとも、対象行為の存否及び内容に関する資料や審判期日における対象者の供述態度等は、処遇の要否、内容を判断するための資料ともなり得ますことから、精神保健審判員は、対象行為の存否の判断が行われる審判期日につきましても、原則として出席することができます。
 また、精神保健参与員につきましても、処遇事件の係属裁判所において必要があると認めた場合には、対象行為の存否が判断される審判期日に出席することができます。しかし、その存否は裁判官のみが判断するということでございます。
○朝日俊弘君 分かりました。
 その次に、その重大な他害行為、対象行為を行ったどうかの事実確認の段階から、今お話があったように、弁護士が付添人として様々な形で援助することはできるという規定があるというのは理解できたんですが、ここでお尋ねしたいのは、弁護士、つまり付添人以外に、例を挙げれば、以前治療を受けていた主治医とか、あるいは入院していたところの看護師さんとか、あるいは地域でいろいろと相談役に乗ってもらっていたPSWとか、そういう方がおいでになったとして、付添人である弁護士がいろいろ本人から話を聞こうと思ってもうまく事情が聴けないような場合もあるかもしれない。そういうときに、弁護士、付添人である弁護士からの要請があれば、そういう精神科医とか看護師とかPSWなどの人が言わば補佐役を務めるという形で協力することが可能ですかどうですか。その場合、可能であれば、その根拠はどこにありますか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 本法律案におきまして付添人と対象者の面会を制限する規定は設けられておらず、付添人が対象者と面会するに当たり、委員御指摘のように、精神科医等を立ち会わせることについても特に制限はございません。
 対象者が鑑定入院中の場合につきましては、鑑定入院先の病院の施設管理上の理由や対象者の病状等により対象者と付添人との面会が事実上制限される場合もあり得ないわけではないでしょうが、病院等におきましても、本制度における付添人の役割等に照らし、付添人との面会は最大限尊重されると思われます。そして、付添人が鑑定入院中の対象者と面会するに当たりまして、精神科医精神保健福祉士等を立ち会わせることも、対象者の病状や付添人の役割等に照らして必要と認める範囲内におきましては、付添人による面会を実効性あるものにするためのものとして同様に最大限尊重されるものと思われます。委員御指摘のとおり、できると思います。
○朝日俊弘君 それで、その根拠はどこに書いてあります。
○政府参考人(樋渡利秋君) 根拠を書いてあるといいますよりは、何ら制限していないということでございます。
○朝日俊弘君 じゃ、今の御答弁でそういうことはできるというふうに理解をしたいと思いますが、本当ならこれどこかに書くべきじゃないですかね。意外とこういう場合が多いんじゃないかと私は思うんですよ。
 例えば、ある取調べ、事実をいろいろ話を聞くときにも、急に黙ってしまって何もしゃべれなくなっちゃうとか、黙秘権ではなくて、そういう場合だってあるんじゃないか。あるいは、非常に怖い裁判官が出てきてしゃべれなくなっちゃって、親しい精神科の先生呼んできてよという場合だってあるんじゃないかと思うんですね。意外とあると思うんです。
 だから、これはどういう、できるということですから、できるということをどこかに何らかの形で表現してあげないと、ああ、なるほど、そういうことができるんかというふうに分からないので、ちょっとそれは検討してみていただきたいなと思います。
 さて、そうすると、ずっと今お聞きしてきました。つまり、この心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者について、さて、いよいよ裁判官と精神保健審判員が合議で決めるという仕組みになっているんですが、結局のところは合議で決めるのはいろいろ心神喪失状態であったかどうか、それから対象行為を事実として行ったかどうかということを確認、主として裁判官が確認をした上で入院等の決定について精神保健審判員と合議をすると、こういうことになるのかなと思うんですが、そういう理解でいいですか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 御指摘のとおりでございまして、裁判官と精神保健審判員の合議体で行う、要するに、合議をしてやるのは、入院させるか通院させるか何もしないかというようなことの合議でございます。
○朝日俊弘君 そうすると、法律上、裁判官と精神保健審判員が合議してという形にはなっているけれども、かなり、心神喪失かどうかという判断あるいは対象となる行為を行ったかどうかの判断など、裁判官が判断すべき部分というのが相当大きいというか重いというか、ということだなというふうに理解をいたします。
 さて、そこで、いよいよ、じゃ、どういう要件で入院等の決定をするのかということになります。今、ずっと、私がもし対象者になったらどういうプロセスをたどっていくかということを頭に描きながら質問をしているんですが、そこで修正案提案者と法務大臣と双方にお聞きしたいと思うんですが、政府原案では、第一条の「目的」のところの前半部分に、病状の改善及び同様の行為の再発の防止を図るということが第一段にあって、それで、修正案はその後半に、社会復帰を促進するんだということを改めて強調された。そして、その病状の、「目的」のところに書いてある「病状の改善」と「同様の行為の再発の防止」というところをそのまま残しておいて、その上で入院等の判断について、同様の行為を行うことなく、社会復帰することを促進するというふうに規定をされました。
 私は、この「目的」のところと、同様の行為を行うことなく、社会復帰することを促進するということと合わせて読めば、結局は、再び同様の行為、再び同様の対象行為を行うおそれを判断するということにどうしてもならざるを得ないと、どう読んでもそうにしか読めない。
 修正案提案者はそこのところをどういうふうに理解をされてこういう提案をされたのか、あるいはどういうふうなところを意図してこういう修正をされたのか、まず修正案提案者にお尋ねします。
衆議院議員塩崎恭久君) もう大分前の話でありますけれども、朝日先生とたまたま同じ勉強会に同席をさせていただいたことがありまして、そのときに、政府案は再犯のおそれを書いてあるからおれは反対だと、こうおっしゃったのを鮮明に覚えております。
 そのお言葉を念頭に入れながら、衆議院で、通常国会の方で私も質問に立って、そこのところが一つの大きなポイントであったものですから、この目的は一体何だということを法務大臣にそっち側の立場から質問者として聞いたわけでありますが、それはやはり最終的には社会復帰を促進することが目的だということでありました。
 しかしながら、審議の経過の中でそのような御理解をいただけないということで、今回、修正をすることになったわけでありますけれども、この衆議院における修正は、まず第一に、本制度による処遇の対象となる者は、対象行為を行った際の精神障害を改善するために、この法律により医療が必要と認められる者に限られることであり、そして、二番目に、このような医療の必要性が認められる中で、すべてではなくて、精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰できるよう配慮することが必要な者だけが対象となることを明確にするということによりまして、本制度の処遇の要件というものを制度の目的に即した、今申し上げた社会復帰を促進するという目的に即した限定的なものにしようということでございまして、様々な批判を踏まえてこのような修正を行ったわけであります。
 したがって、例えば政府案に対しましては、何度も繰り返して申しておりますけれども、漠然とした危険性のようなものを感じられるにすぎないような場合でもこの制度による入院を強いるのではないかというような批判もありました。
 そこで、修正案では、対象行為を行った際と同様の症状が再発する具体的、現実的な可能性もないような場合には、それが社会復帰の妨げとなることがないので、修正案の要件を満たさず、本制度による処遇は行われないということとしたわけでございます。
 また、「これに伴って同様の行為を行うことなく、」との要件を加えた趣旨は、仮に同様の行為が行われることになれば、そのような事実は本人の目的である社会復帰の重大な障害となってしまうということでありまして、本案の第一条の精神障害の「改善」、「これに伴う同様の行為の再発の防止を図り、」というのも同様の趣旨だということでございます。
○委員長(魚住裕一郎君) 時間ですが。
○朝日俊弘君 ごめんなさい。
 じゃ、大臣からの御答弁は次に残しておきます。楽しみにしております。
 それで、一点だけは確認させてください。
 そうすると、おっしゃっているのは、「同様の行為」というのは政府案で言っている「再び対象行為」と言っている対象行為のことだと理解していいですかということと、提案者の趣旨をそのまま生かそうと思えば、「同様の行為を行う」ということをなくしちゃって、対象行為を行った際の精神障害者を改善し、社会復帰することを促進するために医療を受けさせるというふうに書いた方がよっぽどすっきりすると思うんですが、どうですか。それだけ聞いて、終わります。
衆議院議員塩崎恭久君) 対象行為ということで結構でございますが。
 それから、削除をすべきじゃないかというお話がございました。「これに伴って同様の行為を行うことなく、」との文言を要件として加えた趣旨は、仮に同様の行為が行われることとなれば、そのような事実は本人の社会復帰の重大な障害となると、先ほど申し上げたとおりでありますけれども、法案第一条も同様の趣旨でございます。したがって、この結果、例えば社会復帰の妨げになるような同様の行為を行う具体的、現実的な可能性もないような場合には、一般の精神医療が行われ得ることは別として、本案による処遇が行われることはないということになります。
 他方、仮に、「これに伴って同様の行為を行うことなく、」という言葉を、今、先生おっしゃったように削除したらどうなんだということでありますけれども、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者については、精神障害を有する限りそのすべてが本制度による処遇の対象となりかねないこととなりまして、精神障害を有するというだけで常に、何度も言われている強制的な入院をさせて医療を受けさせることになるということで、それには疑問があって、本制度による処遇の対象となる者をいたずらに拡大することはやはり適当ではないということで、削除をすべきではないんじゃないかというふうに思っております。
○朝日俊弘君 時間ですからやめますが、また引き続き。