心神喪失者等医療観察法の条文・審議(その61)

前回(id:kokekokko:20060307)のつづき。
前回にひきつづき、法務委員会と厚生労働委員会の連合審査会での質疑です。
【森委員質疑】

第156回参議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第2号(同)
森ゆうこ君 国会改革連絡会(自由党無所属の会)の森ゆうこでございます。
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案につきまして伺います。
 まず、冒頭、坂口厚生労働大臣、今日はお元気だということをほかの委員からお聞きしましたので、ちょっと通告してなかったんですけれども、確かめたいことがあるんですが、本日のこの連合審査の開催に当たりましては、日精協の献金問題について、その日精協、日本精神科病院協会から参考人として御出席いただくということが前提になっていたと思うんですね。ところが、ファクスが一枚、たった一枚でございますが、社団法人日本精神科病院協会事務局長森さんからはこのような返事が来ております。法務・厚生労働連合審査会出席の件は、公務、括弧、精神保健指定医研修会等のため応じられませんので御連絡いたします。これ一枚だけなんですよ。この公務って一体何でしょうか。精神保健指定医研修会、これ厚生労働省が主催のものなんでしょうか。
 先日の厚生労働委員会におきましても、この献金問題につきましては大臣といろいろお話しいたしました。献金については、それぞれ個々の議員が自分の自己責任において受け取る。しかし、それは政策決定において著しく公正ではない、そういうことをしないという、それが前提であると。公正中立な立場でやるということが前提であるというふうなお話があったわけですが、やはりこの法案、この日精協の献金問題をきちんと整理するということが必要だと思うんです。ということで、厚生労働大臣、やはりこの日本精神科病院協会からきちんと出席してもらうべきだったと考えますが、コメントをお願いいたします。主務大臣だと思いますので。
国務大臣坂口力君) その先生がお忙しいのか、どういうことなのかということは私には全く分かりません。それは、御本人にお聞きしていただかないと私には分からない話でございます。
 また、委員会の運営につきましては、皆さん方、理事の皆さん方といろいろと御検討をいただいているわけでございますから、私がそれに対してどうこう申し上げるのは差し控えさせていただきたいと存じます。
   〔委員長代理荒木清寛君退席、委員長着席〕
森ゆうこ君 そうおっしゃいますけれども、この社団法人日本精神科病院協会、主務大臣は坂口厚生労働大臣ではないでしょうか。そして、この構成メンバーにつきましては、先日のこの法務委員会でもいろいろ御報告がございました。厚生労働省の方から、後ほど伺いますけれども、大変大きな補助金が行っている、そして一年間でこの日精協の方から厚生関係の議員に対して約一億五千万円の献金があるということで、その件についてきちんと整理する必要があると重ねて申し上げたいと思います。
 通告しておきました問題に移りたいと思います。
 まず、法務大臣に伺います。
 先日も伺いましたが、新たな処遇制度では、最初の審判に限って被害者等の傍聴や審判結果の通知を認めておりますが、被害者等の知る権利に配慮し、その後の審判や治療状況に関する情報、対象者の退院に関する情報を含むそういうことに関しまして被害者に伝えるべきではないか、そのことについてのきちんとしたルール作りが必要ではないかと考えますが、明快な御答弁をお願いしたいと思います。
国務大臣森山眞弓君) 対象者の社会復帰に与える影響を考えますと、その処遇等の事実を他人に知らせるということは本来慎重でなければならないと思いますが、その強い関心に、重大な他害行為の被害者につきましては、その強い関心にこたえるために、当該対象者の処遇に関する最初の審判の傍聴を許し、また対象者の氏名や決定の主文、理由等を通知できることとなっております。
 また、その後の治療状況や退院に関する情報等の取扱いにつきましては一層の慎重さが必要とされますが、法務、保護観察所において対象者の生活環境の調整を行うに当たって、被害者等の心情を確認するなどの必要があると認められる場合には、退院させることとなる事情等を含め、必要な事項を被害者等に説明することもあり得るところでございまして、被害者に対しては誠実に対応することにしたいと考えております。
森ゆうこ君 そのように誠実に是非対応をお願いしたいと思います。
 そこで、この犯罪被害者の問題につきまして、警察庁の方、来ていただいておりますでしょうか。現在、犯罪被害者給付制度というものがあるんですけれども、最近の状況というのはどのようになっていますでしょうか。御説明をお願いします。
○政府参考人(安藤隆春君) いわゆる犯罪被害給付制度と申しますのは、これは昭和五十六年一月一日から運用されておりまして、人の生命又は身体を害する犯罪行為によりまして亡くなられた方の御遺族、又は重傷病を負い、若しくは障害が残った方に対しまして、社会の連帯共助の精神に基づきまして国が犯罪被害者等給付金を支給し、その精神的、経済的打撃の緩和を図ろうと、こういう目的で作られたものでありますが、本制度につきましては三種類給付金がございまして、死亡した被害者の遺族に対しまして支給される遺族給付金、それと重大な負傷又は疾病を受けました方に対して支給されます重傷病給付金、さらには身体に障害が残った方に対しまして支給されます障害給付金の三種類がありまして、いずれも国から一時金として支給されることになっております。
 この支給状況でありますが、過去三年間の給付につきまして年ごとに申しますと、平成十二年は約六億九千六百万円、翌年の十三年は約十二億四千三百万円、昨年の平成十四年は約十一億六千八百万円ということで、過去三年間の給付額の総計というのは約三十一億七百万円となっております。
 以上でございます。
森ゆうこ君 引き続き、少しこれに関連して伺いたいんですけれども、例えば今御説明のありました三つの給付金の中で、重傷病給付金については加療一か月以上、入院期間十四日以上の被害者に三月を限度として保険診療による医療費の自己負担相当額が支給されるというふうになっておりますが、そうしますと、場合によっては、被害を受けた患者さんが自分の自己負担分を払わなければならないという場合もあると考えられますが、いろいろな雑誌等で、例えば加害者は国の税金で、例えば加害行為に及んだときにけがした者については治療されると、一方で被害者については保険の普通の医療保険の範囲で一部負担をしなければならない部分もあると、非常に不公平じゃないかと、被害者なのにというふうな指摘もあるわけですけれども、これについて一言お願いしたいと思います。
○政府参考人(安藤隆春君) 実は、平成十三年に法改正を行いまして、それ以前につきましては、先生、残念ながら重傷病の給付金についてそういう制度はございませんでしたんですが、先生御指摘のようないろんな諸情勢も踏まえまして、十三年の法改正によりまして、加療一か月以上、入院期間十四日以上の被害者に三か月を限度といたしまして、保険医療による医療費の自己負担額が支給されるという新しい制度で今施行して実施している状況でございます。
森ゆうこ君 ちょっと肝心なところ答えていただいていないと思うんですけれども。
 いずれにせよ、被害者については自己負担もある場合があるということだと思うんですけれども、法務大臣に伺いたいんですが、我が国では、これまで加害者の人権がどちらかといえば重視され、被害者の人権は軽視されていたのではないかというふうに言われておりますが、今後、法務省としてどのように犯罪被害者対策に取り組んでいこうとお考えなのか、御見解をお願い申し上げます。
国務大臣森山眞弓君) 犯罪の被害者や御遺族等の心情を真摯に受け止めることは刑事司法の重要な責務であると考えております。このような観点から、検察におきましては、現行法によって与えられた権限を適切に行使しまして、事案の真相を解明する中で、被害者や御遺族等の苦痛、悲嘆や怒りに十分耳を傾けて適正な事件処理を行うとともに、公判においても被害感情を含む事案の全貌について効果的な立証活動を行うことに努めてきたと承知しております。また、被害者や御遺族の心情に配意し、配慮し、被害者等が刑事裁判で直接その心情等を陳述する制度を設けたり、損害賠償請求を容易にするために被害者等が公判記録を閲覧、謄写する制度を設けるなど、犯罪被害者保護のための法整備を行ってまいりました。
 犯罪被害者の保護、配慮の在り方は多岐にわたるものでございまして、法務省といたしましても、更に様々な角度から検討を行い、今後とも制度及び運用の充実を図ってまいりたいと考えております。
森ゆうこ君 その方向で更に充実していただきたいと思います。
 次の質問に移りたいんですけれども、次の質問につきましては、先ほど井上委員のところで詳しく述べられました。つまり、もし仮にこの本制度が施行された場合の指定入院医療機関等の環境の改善ということについて議論がございましたので、これは省略させていただきまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 諸外国に比べても、他の障害に比べましても貧困だと言われております精神障害者全体に対する施策の向上につきましては、我が国において長年の懸案とされてきた課題であり、かつ早急に取り組むべき課題と考えます。そして、先般、精神保健福祉対策本部の中間報告として「精神保健福祉の改革に向けた今後の対策の方向」という資料が公表されたことは、政府が本腰を入れて精神障害者全体に対する施策の向上を図っていく上でその第一歩となるものであり、この点については与野党を問わず、共通の認識を持てるのではないかと考えております。
 もちろん、第一歩であることは強調しておきたいと思いますが、この中間報告の概要を御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(上田茂君) 精神保健福祉対策本部は、我が国の精神保健福祉をめぐる諸課題についての検討を行いまして、省を挙げてその解決に向けて計画的かつ着実な推進に取り組むため、昨年末、厚生労働大臣を本部長として設置されて以降、関係課長会議の開催、専門家を招いての勉強会、精神病院や社会復帰サービスの視察等を行ってまいりました。
 本年五月十五日に取りまとめられた中間報告には、これまでの検討結果としまして、精神保健福祉に関する普及啓発の推進、病床機能の強化、地域ケア体制の整備など精神医療の改革、住居や雇用、相談支援機能など地域生活の支援、それからいわゆる社会的入院者の対策、こういった柱を立てまして、今後進めるべき精神保健福祉対策の大きな方向を示したものであります。
 ここで示しました方向に沿いまして、直ちに着手できる事項から順次実施していくこととしております。
森ゆうこ君 ありがとうございました。
 今ほど御説明のありました中で、いわゆる社会的入院の解決ということで、受入れ条件が整えば退院可能な七万二千人の対策ということが柱の一つとして掲げられているわけでございますが、一般社会とは隔絶されている一種の閉鎖空間である病院において長年生活してきた入院患者の多くは、自活能力も著しく減退していることがあるため、今すぐ退院させることは不可能ではあると思いますが、政府がこうした部分を補完しながら対策を講じていかなければならないということは言うまでもありません。
 社会的入院を解消するためにどのような対策を講じていかれるのか、伺います。
○政府参考人(上田茂君) 議員御指摘のように、いわゆる社会的入院者については、長く社会生活から遠ざかっているために、退院して地域生活を行おうとする際に、近隣の方との対人関係、あるいは家事などの日常生活を送る上で困難があることなどが指摘されているところでございます。
 こうした者に対しては、本人の生活能力を高めるため、日常生活に適応することができるように必要な訓練あるいは指導、こういったことを行う生活訓練施設の整備ですとか、あるいは本人の生活能力を補うため、日常生活を営むに支障のある精神障害者に対し食事、身体の清潔の保持等の介助、その他必要な便宜を図るホームヘルプサービス、こういうものを充実していくこととしております。
 さらに、今年度から、いわゆる社会的入院を解消することを目的としまして、こうした者に対し作業所等の活動の場を確保し、医療機関と協力して退院訓練を行うことにより精神障害者の自立を促進する退院促進支援事業を新たに行うこととしております。
 こういった事業を通じながら、その退院促進を今後進めてまいりたいというふうに考えております。
森ゆうこ君 そこで、次の質問に移らせていただきたいんですが、まず民間精神科病院に対して支出した公的補助金につきまして、直近の一年間、そして及び過去五年間の金額をそれぞれまずお示しいただきたいと思います。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 厚生労働省から民間の精神病院に対して行う国庫補助としまして、老人性痴呆疾患治療やアルコール、児童・思春期等特殊病棟の施設整備事業に対する保健衛生施設等施設整備費補助金、それから患者の療養環境や患者サービスの向上等のために、老朽化した病棟の建て替えなどを行う医療施設近代化施設整備事業として、都道府県が補助する場合に当該都道府県に対して国庫補助を行います医療施設等施設整備費補助金、こういう大きく二つの補助金がございます。
 そして、この二つの補助金を合わせた交付実績につきましては、直近の一年間、これは平成十四年度でございますが、合計七十八億九千二百二十四万円、百六件でございます。また、過去五年間、これは平成十年から十四年度でございますが、合計四百五十六億二千百六万三千円、六百九十九件となっております。
森ゆうこ君 最初の質問に戻るつもりはありませんが、入院医療中心、今ほどお示しいただきましたように、大変高額な補助金が出ているわけです。
 私は、この入院医療中心から地域保健福祉中心へと、この流れからしますと、これらの補助金は病院側が開放処遇や地域精神保健福祉の充実に協力するようしむけるための施策に回すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(上田茂君) ただいま申し上げました補助金につきましては、児童・思春期病棟などの専門病棟の整備ですとか、あるいは病棟の出入口を自動ドアに変えるなど、開放処遇の促進を図るなど精神病院における療養環境の改善にも使われるなど、必要な施設整備に使われているところでございます。
 確かに、もう一方で、地域社会を中心とする流れを促進するための各種の受皿を整備することも重要というふうに考えておりまして、先ほど申し上げました精神保健福祉対策本部の中間報告で示した方向に沿って必要な施策の推進に努めてまいりたいというふうに考えております。
森ゆうこ君 今の部分も含めまして坂口厚生労働大臣に最後に伺いたいんですけれども、精神障害者の社会復帰、重大な他害行為を犯したとしても、再犯を防止するとともに、社会復帰ということが本来、この今審議しております法律の目的でございます。
 他国に比べて二十年は後れているという様々な指摘がございますが、精神障害者の社会復帰の促進を阻むものとして精神障害者に対する差別と偏見が挙げられます。精神障害者に対する差別や偏見は精神障害に対する無理解や誤解に基づく場合が多いため、精神障害に関する正しい知識の普及に努め、社会の差別や偏見の是非を図っていくことが重要であると考えております。
 厚生労働省の中間報告においても、この問題が柱の一つとして取り上げられておりますが、精神障害者に対する差別、偏見の是正に向けてどのように取り組んでいくおつもりなのか。そしてあわせて、先ほど政府参考人からお答えいただきましたが、厚生労働省の予算、補助金の使い方としてもそれを誘導するような形で使っていくべきではないかと考えておりますが、その点についても併せてお答えいただきたいと思います。
 私は、イタリアの例がこの委員会でも披露されたと思いますが、精神病院の廃止宣言というもののように一つの数値目標的なスローガンをやはり掲げて、この問題の解決を国全体で取り組んでいくんだというふうなスローガンというものを掲げる必要もあるのではないかと思いますが、この点につきましても坂口厚生労働大臣の見解を伺いたいと思います。
国務大臣坂口力君) やはり、患者の皆さん方をそれぞれの地域で受け入れる、そのためにはやはり人材が必要だと思うんですね。いろいろの様々な、保健師さんも必要でしょう、あるいは、もちろん地域の医師もそうですが、民生委員の方、あるいはその他様々な皆さん方が連携を密にして、そしてこの社会復帰をしようとされる皆さん方をバックアップをしなきゃいけない。その体制が組めることがまず私は大事だというふうに思っています。だから、この人材はそう一朝一夕でできるわけではありませんから、一番早くスタートさせなければならないのはこの人材の養成、そしてそういう人たちにどういう連係プレーをしてもらうかということだろうというふうに思っております。この皆さん方が連係プレーを取っていただくようになれば、私はそれぞれの地域における偏見等につきましてもだんだんと見直されていくのではないかというふうに思います。
 現在、退院をされましても一人ぼっちで生活をしておみえになる、それがだれもそこに訪れもしないというような状況が続いておりますと、またこの方も病気を再発するというようなことになりかねない。したがいまして、常に多くの皆さん方が手を差し伸べている、そして連携して皆さん方がその人々をバックアップをしているということになってくれば、やはり地域の皆さんも自分たちもバックアップをしなきゃいけないんだというようなお気持ちに私はなられるのではないかというふうに思っています。
 七万二千という数字が挙げられまして、これが本当に正しいのかどうかという話もございますけれども、その皆さん方を完全に受け入れていくのには私はやっぱり十年掛かるということを衆議院でも申し上げましたら、それは掛かり過ぎじゃないか、もっと早くしろという御意見をちょうだいしたわけでございますが、できるだけ早くやらなければならないというふうに思っておりますが、それは人材次第というふうに思っている次第でございます。
森ゆうこ君 時間ですので終わりますが、やはり、去年ですか、統合失調症につきまして、全国紙ほぼ全紙にわたって全面広告が出されました。だれも分裂してはいないからという大きな広告があったわけですけれども、やはりスローガン的に、例えば今のお話でもいいんです、十年後にはこの七万二千人の社会的入院は完全にゼロにするというような国民に分かりやすい目標を掲げて、それについてすべての皆さんの御協力を得るということも必要だと思いますので、併せて申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

【福島委員質疑】

第156回参議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第2号(同)
福島瑞穂君 社民党福島瑞穂です。
 治療処分を解除するときに精神医学的に、あっ、ごめんなさい。治療処分を、言い直します。済みません。治療処分を解除するときに、精神医学的には判断困難な精神障害者の再犯予測を精神科医は要請されることはないのでしょうか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 本法案では、退院の可否の審判におきましては、精神科医による鑑定を必要的なものとはしておりませんが、裁判所が必要があると認める場合には鑑定を命ずることができることとしております。この場合に、裁判所が精神科医に求める鑑定の内容につきましては、衆議院において、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要があるか否かであると修正されておりまして、このような鑑定が命じられることになると理解しております。
福島瑞穂君 再犯予測、再犯を予測というか、同種の行為を行うか、同種の行為を行うかどうかの判断を精神科医がやるのか司法がやるのか、これはどうでしょうか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 精神科医である精神保健審判員と裁判官との合議で、合議して決めるわけでございます。
福島瑞穂君 精神科医の人たちからも様々な手紙やあるいは話を聞くことがあります。精神医学的には治療処分を解除するとき同種の行為をするかどうか判断することは困難であると。
 じゃ、逆にはっきり聞きます。同種の行為を行うかどうかについて、では精神科医は判断を求められる。これでよろしいですか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 先ほども申し上げましたように、精神科医が鑑定人であるとすれば、鑑定人は、政府原案においては、第五十二条に規定する鑑定内容について、継続的な医療を行わなければ心神喪失の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれの有無について鑑定を命じることとされておりましたが、これまで修正案を御提案された委員がお答えなされているとおり、政府原案に対する様々な批判を踏まえまして、その問題を解消するために処遇の要件が修正され、これに伴って鑑定の内容についても修正されたものと理解しております。その修正の内容は政府提案後された説明の中において説明されているとおりだと理解しております。
福島瑞穂君 私は、再犯予測ということと同種の行為を行うかどうかというのは結局、同義語ではないかというふうに思います。
 では、逆にお聞きします。同種の行為を行う可能性があるかどうかについて、精神科医は鑑定人となれば判断を求められるのですね。
○政府参考人(樋渡利秋君) 何度もお答えしているとおりでございますが、政府原案に対する修正案によりましたら、同様の行為を行うことなく社会に復帰させることが要件でございまして、これはワンフレーズになっておりますから、その全体を判断されることになるんだろうと思います。
福島瑞穂君 同種の行為を行うことなく社会復帰ができる、社会復帰も重要な要件かもしれませんが、同種の行為を行うことがあるかどうか。
 じゃ、逆にお聞きします。もうイエスかノーかで結構です。同種の行為を行うかどうかについて、じゃ、同種の行為を行うかどうかについて精神科医は判断を求められる。それでよろしいですね。
○政府参考人(樋渡利秋君) 同様の行為を行うことなく社会に復帰することを促進するため入院させて、この法律の医療を受けさせる必要があるか否かの要件の判断を求められるということであります。
福島瑞穂君 私は、再犯予測ということとこの同種の行為を行うかどうかについて、社会復帰ができるかどうかについてというのは、結局は言い直しているだけであるというふうに思います。結局、精神科医の人たちは、その長いフレーズでも結構です、そのことが、社会復帰できるかどうかの判断はもっと難しいと思いますが、治療を解除する際にそのことを要求されるということは、精神科医の人たちは大変難しいと言っていることを今日改めてまた強調したいと思います。
 映画で「マイノリティ・リポート」というトム・クルーズ主演の映画があります。未来はだれにも分からない、それがこの映画のテーマであると思います。その人間が同種の行為を行うか、社会復帰ができるかどうかは、未来のこと、だれにもそれはできないことです。
 じゃ、逆にお聞きしますが、この入院の処分は不利益処分でしょうか、不利益処分ではないのでしょうか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 本制度による処遇は、本人の精神障害の特性に応じ、その円滑な社会復帰を促進するために必要な医療を行うことを内容とする意味では、本人にとりまして利益な面を有しますが、他方、人身の自由に対する何らかの制約や干渉を伴うものであるという点で、本人にとって不利益な面をも有するものであると考えられます。そこで、本法案におきましては、本制度による処遇はこのような本人にとって不利益な面をも有するものであるとの認識の下、その処遇の要否、内容の決定に当たり、裁判官が関与をする慎重な手続を定める等の配慮をしておるところでございます。
福島瑞穂君 入院をされた人間が、自分が同種行為を行って社会復帰できるかどうかの判断が誤っていたと、では国家賠償請求訴訟は可能なのでしょうか。
○政府参考人(樋渡利秋君) 国家賠償請求をすることは国家賠償の要件が備わっているかどうかでございまして、公務員の故意又は過失によることが明らかである必要があるだろうというふうに思います。
福島瑞穂君 同種行為を行う人もいるかもしれない、同種行為を行わない人は大部分だろうと思います。そうすると、同種行為を行わない、結果的にですね、人にとっては、自分は他害行為を行ったという理由でとにかく入院をさせられる、強制隔離をされる、こんなひどい人権侵害あるいは保安処分はないだろうというふうに思います。
 ところで、具体的にどんな設備になるのかということについては、ちょっと答弁が衆議院参議院で少し違うところもあるのですが、別棟を建てる、塀の内側に別の塀を立てて、敷地面積は三千から四千平方メートル、そこで急性も慢性期も社会復帰病棟も含めて四十床で個室である、こういうことの理解でよろしいのでしょうか。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 現在、私ども考えておりますのは一病棟三十床程度ということで、これはあくまでも国立あるいは都道府県立等の医療機関においての一ユニットで、こういった指定入院医療を行うものでございます。
福島瑞穂君 別棟で塀の中に、塀を立てるのでしょうか。セキュリティーはどうするのでしょうか。
○政府参考人(上田茂君) 基準の詳細についてはまだ決めておりません。今後、具体的に詰めていきたいというふうに考えています。
福島瑞穂君 具体的に決まってなくて、どういう施設になるか分からないことを国会で審議することはできないですよ。
 個室ということであれば、これ一歩間違えると独居房、刑務所と精神病院は全く違うものですが、独居房となってしまう。それはどうですか。
○政府参考人(上田茂君) 基本的に全室個室という考えでございますし、あるいはこういった治療を行うに当たっては、やはり療養環境、ストレスの少ない環境ですとか、そういう意味での開放処遇というような視点を私ども考えてまいりたいというふうに考えております。
福島瑞穂君 そうすると、病院の敷地内に別の病棟を建てて、そこはまた別に塀で囲うというふうな言われ方がすることもありますが、これは、では間違いで、そうではないと、開放病棟になるということでしょうか、監視する人はいないんでしょうか。
○政府参考人(上田茂君) 病棟につきましては閉鎖病棟を考えております。
 しかしながら、先ほど申し上げましたように、治療の処遇については安全の面、それから先ほど申し上げました開放的な処遇、こういった点のバランスも考えながら、これから具体的に詰めてまいりたいというふうに考えております。
福島瑞穂君 閉鎖病棟における開放的処遇とはいかがなものでしょうか。
○政府参考人(上田茂君) お答え申し上げます。
 当初、入院される状況というのはかなり急性期で非常に病状も悪いような状況、そういう場合にはどうしてもそういった点、閉鎖病棟といいますか、その中での保護室と申しましょうか、どうしてもそういう点をならざるを得ない。しかし、そういう場合でもできるだけ、先ほどこれまで申し上げておりますが、スタッフを厚くしておりますので、できるだけそういった患者さんに対する治療というものは積極的に行います。そして、だんだんだんだん病状が改善されますと、作業療法ですとかリハビリ療法ですとか、集団精神療法ですとか、できるだけ、先ほど言いましたように、開放的な処遇を進めながらできるだけ早く社会復帰を進めるような治療を積極的に進めるものでございます。
福島瑞穂君 個室で手厚くやりながら開放的処遇というのは自己矛盾じゃないですか。今は厳しく隔離するぞということしかお答えになっていないと思いますが。
○政府参考人(上田茂君) ですから、先ほど申し上げましたが、病室から更には社会復帰訓練ですとか、作業療法ですとか、レクリエーション療法、いわゆるそういった社会復帰に向けてのプログラムを用意いたしております。ですから、そういった治療を積極的に進めるということで、そういった配慮のある病棟なり構造を考え、そしてその点については、運営については、安全の面も併せながらもう一方では開放的、社会復帰を進めるということで考えております。
福島瑞穂君 じゃ、なぜ個室にするのかとか、なぜ個室にして一人ずつにするのか、これは今言ったのはちっとも社会復帰にならないじゃないですか。グループホームをやるとか地域に開放するとかいうなら少しは分かります。しかし、今のままではちっとも開放的処遇というふうには理解ができません。
 運動場その他はどうするんですか。
○政府参考人(上田茂君) 失礼いたしました。
 私、先ほど治療を中心に御説明申し上げましたが、もう一方、こういう点も補足したいと思っております。
 入院患者と来院者との面会は、家族、地域社会との接触を保つ点で、医療上も患者の人権の観点からも重要でありますので、原則として自由に行うことが、行われることが必要でございます。こういった点について十分対応していきたいというふうに考えております。
福島瑞穂君 先日、精神病床入院患者の入院期間別人数について厚生労働省から教えていただきました。
 平成十三年六月三十日現在、合計で三十三万二千七百十四人のうち、二十年以上の人が四万九千七百七十七人、つまり五万人が二十年以上、精神病院の病床におります。二十年以上が五万人なわけですが、最も長期、二十年以上の分布はどうなっているんでしょうか。
 つまり、何を言いたいかといいますと、民間の今、精神病院で二十年以上という人が五万人いると。現在、それとは別に国立病院等で他害行為を行った人間を、私の考えからすれば、強制隔離するのを作ろうとしている。両方とも、現在の精神病院も実は非常に長期であると。だって、刑法だって累犯加重で二十年以下ですから、二十年以上が五万人いると。一方で五万人もいて、一方で民間でよりも手厚くやって、別にこの法律で作ろうとしていると。両方とも物すごく長期の入院ということになるのではないかと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(上田茂君) ここで言う指定入院医療機関における医療におきましては、これまで申し上げておりますように、職員、医師、看護師あるいはPSW等々のスタッフを厚くし、そして、より積極的に先ほど来申し上げておりましたような治療を進め、できるだけ早い社会復帰を目指して医療を進めていきたいというふうに考えております。
福島瑞穂君 大臣、二十年以上、入院している人が五万人いるわけです。もちろん、退院できない人もいらっしゃると思うのですが、二十年以上、もちろん十年以上二十年未満も約五万人なんですが、二十年以上いる人が五万人いると、こういう実態についてどう思われますか。
国務大臣坂口力君) その五万人の人がすべて社会的入院というわけではないと思うんですね。やはり、精神医学上どうしても帰す、帰ることのできない人たちもおみえになるんだろうと思うんです。しかし、そうではなくて、本当は帰れるんだけれども、あるいは家庭的にそれを見てもらう人がいないとか、あるいはまた、地域に帰ることができないというようなことでずっといるという人たちも中にはいる。だから、そこは区別をしなければならないわけで、帰れる方につきましては、その復帰をするための、例えばグループホームを作りますとか様々な制度を作って、そして受け入れていく。しかし、病気としてやはりどうしても帰ることのできない皆さん方は、それは病気の、この病院の中で様々な形の治療をお受けをいただくということにこれはなるんだろうというふうに理解いたしております。
福島瑞穂君 ちょっと初歩的な質問かもしれないんですが、民間、特に精神病院の中で二十年以上いる人が五万人いると。例えばその中で、長期が特にそうですが、人権侵害などが起きているんではないか。先日、電気ショックですぐ亡くなった人の例を挙げさせていただきましたが、中でひもでつながれているとか、いろんな例も言われています。
 厚生労働省としては、長期入院の人たち、あるいは強制隔離をされている人たちの中での人権侵害についてはどのような調査、対策を講じていらっしゃるのでしょうか。
○政府参考人(上田茂君) 都道府県におきまして、原則として年一回、医療機関、医療施設へ調査を入り、そこで指導を行っているところでございます、調査及び指導を行っているところでございます。
福島瑞穂君 じゃ、その中身とどんな事例が救済されたかについては、また後日教えてください。
 ところで、電話の問題なんですが、病院内の公衆電話設置率が最近著しく低くなっていると。閉鎖病棟において公衆電話がないところが六%。ごめんなさい、閉鎖病棟の入院者の八・七%の人が電話で処遇改善の訴えができない病棟にいると。二〇〇三年の厚生労働省資料でも、六・二%が未設置であると。先ほど面会についてありましたけれども、むしろ閉鎖病棟でも自由に電話ができる、このような環境は必要ではないのでしょうか。
○政府参考人(上田茂君) お答えいたします。
 通信の自由については、患者の個人としての尊厳を尊重し人権に配慮する観点から、精神病院入院患者の処遇に関する基準において、電話機は自由に利用できるような場所に設置される必要があり、閉鎖病棟内にも公衆電話等を設置することとしております。
 精神病院の閉鎖病棟における公衆電話の設置状況は、平成十三年度末現在におきまして、三千二百九十一病棟のうち二百七病棟、約六%において未設置となっております。
 国といたしましては、いつでも電話を使用できるように公衆電話の設置を推進しており、各都道府県及び指定都市が各病院において、先ほど申し上げましたが、年一回実施しております実地指導においてその設置を促しているところであり、またNTT東日本及びNTT西日本に対し特段の配慮をお願いしており、今後引き続き関係者に御理解、御協力をいただくよう努めてまいりたいというふうに考えております。
福島瑞穂君 是非、その六%をゼロにすべくよろしくお願いします。
 人材育成のため、海外派遣活動を行っていると聞きますが、実際にはどのような研修派遣活動をしているのでしょうか。
○政府参考人(上田茂君) 司法精神医学の向上を図るために医師等を海外へ派遣する事業につきましては、国立及び都道府県立医療機関の精神科において将来的に指導的な役割が期待される医療従事者に対し、司法精神医療を含む最先端の精神科医療等を習得させ、もって我が国における精神科医療の向上に資することを目的としまして平成十四年度より実施しております。
 十四年度におきましては、イギリスのロンドン大学精神医学研究所の司法精神医学部門及びその関連医療施設に対し、医師及び看護師をそれぞれ二名、六か月、また看護師一名を四か月、また看護師一名を二か月、精神保健福祉士二名を三か月、派遣したところでございます。合計八名を派遣しております。
 なお、十五年度の派遣先及び派遣者につきましては現在検討を進めているところでありまして、今後速やかに選定し、派遣を進めてまいりたいというふうに考えております。
福島瑞穂君 本法案についての予算をかつてお聞きをいたしました。ハード、箱物の予算はあってもソフト面での予算がないじゃないかという質問をいたしました。今、派遣の研修について教えていただいたんですが、ようやく平成十四年から八名、短期間、数か月出すということだけなわけですね。
 今回、この法案を作るに当たって、本当に手厚くきちっと治療をし、社会復帰というためには余りに研修やマンパワーが不足していると考えますが、いかがですか。
○政府参考人(上田茂君) 先ほど申し上げましたように、十五年度もこのように海外に派遣する研修を行うわけでありますが、これと併せまして、このような研修から帰国された方あるいは我が国の専門家が中心となりまして、国内の医療関係者に対し研修をこれから積極的に実施することによりまして、その人材確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
福島瑞穂君 平成十四年から派遣をし始めたということで、十分、派遣をし、研修してからこの法案のような中身を検討するので十分ではないかと。まだ、ようやく去年から派遣するようになって人材もいないし、この法案をとにかく前提する要件はないというふうに思っております。
 大臣が来られて、特例やいろんなことについてもお聞きしたかったんですが、ちょっと時間もなくなりました。また、別の機会にでも質問させていただきたいと思います。
 この法案が、先ほど「マイノリティ・リポート」と言いましたが、同種の行為を行うかどうかという全く訳の分からないことで拘束する人を出してしまうということについて、極めて問題があるということを申し上げて、私の質問を終わります。

【西川委員質疑】

第156回参議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第2号(同)
西川きよし君 よろしくお願いいたします。
 連合審査、二回目ということでございまして、日ごろ私は厚生労働委員会に所属をさせていただいております。そういった立場から御質問をさせていただきたいと思います。
 いろいろな施設へ私ももう四十年近くお邪魔をいたしておりますが、あるところでは、なかなか現場、いろんなところでお伺いするんですが、諸先生方がお越しいただいても、本当に細部まできっちりと御視察をいただいて、時間を何時間も掛けてというようなことはなかなか西川さん珍しいですと、そういった方はなかなかいらっしゃらない。現場と、そして本当に国会でこうして御質問をさせていただく、なかなか難しゅうございます、実感です。なるべく現場の皆さん方がお仕事がしやすいように、そしてまた関係者や家族の方々が本当に心配なさらないような、より良い方向の法律ができればというふうにいつも願っておりますが、私の方からは、素人ですのでどうぞ分かりやすくよろしくお願いをいたします。
 まず、衆議院で修正をされた修正内容でございますが、その趣旨についてお伺いしたいんですけれども、目的の明確化あるいは退院許可、退院許可の申立てなどの期間制限の撤廃、政府の提案に対して数項目の修正が行われたわけですけれども、その修正の目的、どういったことであったのか、またその点で衆議院ではどういう議論がなされたのか、塩崎先生、よろしくお願いいたします。
衆議院議員塩崎恭久君) 今回の修正案は大きく分けて三つの柱があったかと思います。ただいま御指摘のとおりでありますけれども、入院等の要件の明確化と限定をするということ、それから社会復帰のための制度であるということをより明確化しようということ、そしてまた一般の精神医療等の水準の向上を図るという実務の明確化ということで、この三本柱であったわけでありますが、先生も御案内のように、特に、俗に言う触法精神障害者の扱いというものについては長い歴史があったことはもう御案内のとおりであります。
 しかし、いわゆる触法精神障害者だけではなくて、一般の、今までのあります措置入院の問題についても随分、医療と司法との間でせめぎ合いがあって、今までは、どちらかというと医療に全部、言ってみれば押し付けてきたような格好で、そしてまた、特にこの触法精神障害者の問題については、言わば開かずの間のような形でタブー視して余り議論がされてこなかった。いろんな形で国会の中でも議論が始まりつつあったわけでありますけれども。
 そういった一方で、やはり一般の精神医療に対しても非常に、何というか医療界でも理解が不十分だし、そして我々の国政の場でも行政の場でも十分ではない。そして、恐らく一般の精神科医療が底上げすることによってこういった問題も本当は避けられる可能性が高くなるにもかかわらず、そこにも十分な思いが致されてこなくて、措置制度の不備であるとか、そういうものがずっと放置され、そして結果として隔離をされるような形で社会的入院というものがずっと行われてきたということで。
 そこで、我々考えたのは、やっぱりこういった法律を作ることによって、言わば一つの起爆剤にして、一般の精神科医療についての底上げもそうですし、それからいわゆる司法精神医学というものについても、これをしっかりと今まで十分やっていなかったわけでありますからやっていかなきゃいけないということで、もちろんいろいろな、結果として、先ほど来お話があったとおり、隔離をするんじゃないか、再犯のおそれを見て結局、隔離をするんじゃないかという疑問がたくさん出て、いやそうじゃないと、やっぱり社会復帰だと。
 そういうことで、実は最終的には五年後の見直しということで、我々も実は本当にこれが思い切りいくかどうかということをずっとウオッチしていかなきゃいけない。もしうまくいかないんだったら、やっぱり五年後にみんなで、これ立法府の責任において変えていかなきゃいけないんじゃないかと、そんな思いで修正案を議論していただいて今日に至っているというふうに思っております。
西川きよし君 ありがとうございます。
 修正項目の一つに、附則の第三条、精神医療の向上と、新たな規定がございますんですが、その内容と趣旨、引き続きよろしくお願いいたします。
衆議院議員塩崎恭久君) 第一条ですね。
西川きよし君 いや、三条。
衆議院議員塩崎恭久君) 三条の第一項。
西川きよし君 附則の第三条。
衆議院議員塩崎恭久君) ごめんなさい。附則の第三条の第一項につきましては、いわゆる司法精神医学というもので、先ほどちょっと申し上げましたように、今までのいわゆる触法精神障害者に対する医療というものについては、十分な知見も蓄積されていない中で従来型の精神科医療が適用されることは間々あったわけであって、先ほど政府側から答弁もありましたように、今鋭意、急ぎこの司法精神医学、つまり司法と精神医療の両方にかかわる患者とそれを取り巻く諸問題に、扱うこの医療の分野である精神、司法精神医学というものを深めていってそれを今回のいわゆる手厚い医療の中で生かしていこうということだろうと。
 今まではどうしても責任能力というものが一番の主眼でありましたが、今度は積極的に治療するということを主眼にこの司法精神医学というものを考えていかなければならないということだろうということで、一番進んでいると言われているイギリスであるとか、そういうところに行って今研修を積んでいるということだと思っております。
西川きよし君 次に、この附則についてですけれども、衆議院における厚生労働省の答弁ではこのようにございます。例えば、今出ましたが、欧米諸国の司法精神医療機関で広く実施されている精神療法を導入するなど、高度かつ専門的な精神医療を行うものと、こういうふうに説明がございます。
 この高度かつ専門的な精神医療という分野、この分野におきまして我が国ではどういった現状に今あるのか、今後具体的にはどういった手法によって水準を向上させて努めていくのか、そこら辺りを厚生労働省、政府参考人にお伺いをしたいと思います。
○政府参考人(上田茂君) 指定入院医療機関には一般の精神障害者よりも過敏かつ衝動的で被害者意識が高まりやすく攻撃的な行動によって問題解決を図ろうとする者も少なからず入院することが予想されることから、指定入院医療機関には高度かつ専門的な医療が求められますが、その内容を具体的に申し上げますと、まず治療環境としまして、このような患者を適切に治療するために一般の精神障害者以上にストレスの少ない環境が必要であり、このため、指定入院医療機関の病棟は原則として全室個室とし、十分なスペースを取った明るく開放的な療養環境とする必要があります。
 次に、医療スタッフについては、患者の病状悪化に伴う攻撃的な行動が生じた際に迅速かつ適切に介入できるよう一般の精神科病棟よりも医療スタッフを手厚く配置し、個々のスタッフにはその前兆となる行動を事前に察知し適切に評価する技術を身に付けさせ、また患者が興奮した場合においても説得によってそれを鎮める技術を身に付けさせ、さらには医療スタッフがストレスによって疲労しないようにスタッフへのカウンセリング等の体制も整備する必要があると、このようなことを考えております。
 さらに、退院後も視野に入れた患者に対する専門治療プログラムとしまして、他害行為の問題を認識させ、自分でそれを防止する力を高め、様々な問題を前向きに解決することを促し、被害者に対する共感性を養い、多大な他害行為を行ってしまったことによる患者のトラウマを和らげる、こういった精神療法をそれぞれ実施する必要があるというふうに考えております。
 このほか、一般の精神病院と同様に、スポーツですとかレクリエーション、音楽等の病棟プログラムを提供し、患者同士の交流を深めたり、病棟内の緊張感を和らげるとともに、各種の作業療法生活技能訓練を実施することによって患者ができるだけ速やかに社会復帰できるよう、指定入院医療機関における医療の内容を充実させてまいりたいというふうに考えております。
西川きよし君 ありがとうございました。
 今御答弁をいただきまして、御答弁の内容どおりにいけば本当にこんな幸せなことはないわけですけれども、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思うんですけれども、勉強すればするほど本当に難しい法律でございまして、引き続き第二十条、社会復帰調整官について僕なりにお伺いをしたいと思いますが、この修正の趣旨について、引き続き先生、よろしくお願いいたします。
衆議院議員塩崎恭久君) 当初、精神保健観察官という名前になっておりました。これを社会復帰調整官という名前に変えたわけでありますが、まず一番最初に、我々、この精神保健観察官、我々でも何だかおっかない感じだなと。もう一つは、保護司の皆さん方が、保護司の皆さん方なんかが、おれたちにこういうことをやらすのかというようなことを言われました。実は、我々、元々そんなことを考えているわけじゃなくて、PSWであるとか、やはりこの精神医療に、そして社会復帰に知見のある方々、専門家の方々にやってもらおうと思っていたわけでありますけれども、この観察官という言葉からいろんな誤解を招いてまいりました。そこで、やっぱり社会復帰調整官と。
 つまり、我々が期待している役割というのは、やっぱり円滑な社会復帰をする、そしてその前提は、医療を引き続き受ける必要がある人は医療を受けていただかなきゃいけないわけですから、それをコーディネート、地域の社会の中でできるということが、やっていただく方の一番大事な要件であるわけであります。生活環境の、いわゆる精神保健だけじゃなくて、生活環境であるとか処遇の実施計画であるとか、それからもっと大事なのは、やっぱりいろんな関係機関との連係プレーの中で医療のまだまだ必要な障害者の方を社会復帰するためのコーディネートをどうやってしていくのかという。今まで措置入院だと、ぽんと出されて、お医者さんに来なさいねと言われても来なくなってしまって、結局またいろいろな問題に落ち込んでいってしまうということがございました。そういうことをやるために、よりその目的に合った名称ということで社会復帰調整官という名称に変えたということでございます。
西川きよし君 この新たな社会復帰調整官、これについては精神保健福祉士などから採用されることになるわけですけれども、やはり当然ながら、これは、一般の精神保健についての知識であるとか経験だけでは十分な対応を取るのは非常にやっぱり難しいというふうに思うわけですね。こうした方々の人材の確保、物すごくそういうことが、我々はやっぱり現場を回らせていただいて、そう思います。
 それから、そうした養成ですね、具体的には一体どういうふうにおやりになるのかなと、どういった方策なのかなというようなことを大変心配するわけですけれども、これは法務省の政府参考人から御答弁をいただけたらと思います。
○政府参考人(津田賛平君) 社会復帰調整官につきましては、精神保健福祉士の有資格者等の精神保健や精神障害者福祉等に関する専門的な知識や経験を有する適切な人材を充てることが必要であると考えております。
 保護観察所におきましては、地方自治体や関係機関、団体にこの制度の趣旨や社会復帰調整官の役割などにつきまして十分に御説明いたしまして、人材情報の提供などを含めた様々な協力を得まして社会復帰調整官の適任者を確保できるよう努めることといたしております。
 また、採用後におきましては、本制度の趣旨や各種手続の要件等を始め司法精神医学など、本制度における処遇に必要とされる知識や精神保健観察等の実務に即した技術を習得させるため、相当期間の研修を実施することといたしております。
西川きよし君 ありがとうございました。
 なかなか難しい問題でございます。本当に、世界で二番目か三番目かと言われるようなすごい国になって、なかなか思うようにいかないという本当に難しい問題。お金があればすぐに、そしてまた、すぐにそういった人材を確保するというようなことの努力をできるなというふうに思うわけですけれども、してもらいたいなというふうに思うわけですけれども、それがなかなか遅々として進まない。その中にはいろんなことがあるわけですけれども、どうぞ、やっぱりより良い方向によろしくお願いをしたいと思うわけですが。
 衆議院参考人の質疑の中で、精神保健福祉士であります大塚参考人の方から次のような発言がございました。読ませていただきます。お聞きいただきたいと思いますが、「今、地域の精神保健福祉のマンパワーも圧倒的に足りません。」、そのとおりだと思います。「足りません。こういう中にあって、なぜ新たな法案では、現行の精神保健福祉領域の機関の中にマンパワーを充足することをしないで、いきなり保護観察所といったようなところに名前だけを変えた社会復帰調整官を置こうとしているのか。社会復帰調整というのは言葉を唱えればできるものではありません。」、このように大塚参考人は発言をなさっているわけですけれども、この法律成立後の精神保健福祉士の役割について最後に坂口厚生労働大臣に御答弁をいただいて、僕の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
国務大臣坂口力君) お話のございました精神保健福祉士というのは、御承知のとおり、平成九年に制定されました。精神保健福祉法というのができまして、いわゆる国家資格になったわけでございます。平成十年以降、平成十四年までの間に約一万九千人の方が合格をされております。特に、平成十四年におきましては、前年に比べて一・七倍の五千六百七十人もの方が合格、出ているわけでございます。
 さて、この専門的な皆さん方でございますが、それじゃ、この皆さん方が特別に働いていただく場所がうまく提供できているかということになりますと、必ずしもそうはいっていないことは御指摘のとおりでございます。これはどこに大きな原因があるかといいますと、一つは、これは診療報酬制度の中にちゃんと裏打ちされていないというところに大きな私は原因があるというふうに思っております。
 こうしたこともこれから整理をしていかなければならないというふうに思いますし、社会復帰ということをこれから進めていくということになりますと、最も精神医療領域の中で大変よくその内容も御存じであって活躍をしていただけるのはこのPSWの皆さんではないかというふうに思う次第でございます。そういうことになってまいりますと、この皆さん方にもっと働いていただくのに、どういう立場で働いていただくかということを明確にして、そして諸制度の中にもそれをやはり裏付けるようにしていかなければならないというふうに考えている次第でございます。
 大変そうした面がまだ充実をいたしておりませんけれども、これからそれらの点を充実をさせまして、せっかく作りまして勉強をしていただきましたこの皆さん方が活躍をしていただけるように是非したいと、お願いをしたいと、むしろお願いをしたいというふうに思っている次第でございます。
西川きよし君 どうぞよろしくお願いします。
 ありがとうございました。
○委員長(魚住裕一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。