会社法・機関

中級者を対象に、知識の整理と定着をはかることを目的とします。会社法第2編第4章・機関について。
このノートの概要はid:kokekokko:20080610:p1参照。
会社法は、会社組織に関するルールであり、「原則と例外」という構成パターンが多くみられる規定です。たとえば株主総会につき、「株主総会は、取締役が招集する」(296条3項)としておきながら、「ただし、招集手続が滞っているときには、株主が招集できる」とし、その株主も「議決権の3%以上を半年以上有する株主に限る」として、さらにそれにもいくつかの例外がある、という構成です。ここではじめからすべてを押さえてしまおう(覚えてしまおう)とすると、大変な労力を要する上に、全体の構造も把握しにくくなります。ですから、まずは原則をさらっと押さえて、そのあと各項目をていねいにみていく、という方法でいいかな、と思います。機関についてひととおりみていくのを目標とします。はじめは、文頭に・印のついた項目を眺める程度でいいです。そして会社法の場合には、最終的に押さえる水準は、条文です。
6月までの木曜日に書きます。会社法の機関の章で登場する機関は、「株主総会及び種類株主総会」「取締役」「取締役会」「会計参与」「監査役」「監査役会」「会計監査人」「委員会及び執行役」です。このうち株主総会と取締役が、必置機関(どの株式会社も置くべき)です。
【やや詳細な内容をid:kokekokko:20090514:p1へ移しました。ここでは、おおまかな規定趣旨のみを残しています。】

1 株主総会

株主総会の権限)
第295条1項 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
株主総会の招集)
第296条1項  定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。

・最小規模会社: 株主総会と取締役のみ。株主総会の権限が強い。
取締役会設置会社: 経営に関する権限の一部を取締役会に移す。株主総会の権限は相対的に弱くなり、また、招集の方法も厳格になる。

1 招集
1−1 招集の請求

株主総会は、原則として、取締役が招集する。
・株主は、取締役に対し、株主総会の招集を請求することができる。
・ここでの「株主」は、(1)「議決権を行使することができる総株主の議決権」の百分の三以上の議決権を(2)6か月前から引き続き有する株主。これらの要件は、定款で引き下げる(拡大する)ことができる。公開会社でない会社では、「6か月」の要件はない。
・株主が招集請求しても招集の手続が行われない場合には、株主が、裁判所の許可を得て、株主総会を招集する。

1−2 招集の決定
・取締役は、株主総会を招集する場合には、「日時及び場所」「目的である事項」などを定めなければならない。
取締役会設置会社では、この事項は、取締役会の決議によらなければならない。

1−3 招集の通知
・通知は1週間前まででよく(定款でさらに短縮できる)、また口頭の通知でもよい。この場合、「目的である事項」の通知は不要。
・招集通知には、招集の際に決定した事項を記載・記録しなければならない。
取締役会設置会社では、株主総会の日の二週間前までに、書面で、株主に対してその通知を発しなければならない。
・総会の目的が、役員選任・事業譲渡、会社の吸収合併などである場合には、招集通知に議案の概要を記載・記録しなければならない。
・ただし、書面によって議決権行使できる場合、招集通知への議案の概要の記載・記録は不要である。
株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

2 株主提案権
・株主は、取締役に対し、「一定の事項を株主総会の目的とすること」を請求することができる。
取締役会設置会社では、限定された株主のみがこの請求権を有する。さらに、「請求は、株主総会の日の八週間前まで」という制限もある。
・限定された株主: (1)「総株主の議決権の百分の一以上の議決権」又は「三百個以上の議決権」を、(2)6か月前から引き続き有する株主(公開会社の場合)。
・なお、請求をした株主が出席しなかった場合であっても、請求が正当であれば、会社はこれを株主総会の目的としなければならない。
 
・株主は、株主総会において、「株主総会の目的である事項につき」議案を提出することができる。
・ただし、実質的に同一の議案につき、株主総会において総株主の議決権の十分の一以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合は、この限りでない。
・なお、会社・取締役は、これには拘束されずに、かかる議案を提出できる。
 
・株主は、取締役に対し、株主総会の日の八週間前までに、「(株主総会の目的である事項につき)当該株主が提出しようとする議案の要領」を株主に通知することを、請求することができる。
取締役会設置会社では、限定された株主のみがこの請求権を有する。この限定とは、株主総会の目的とすることの請求権と同様である。
 
3 議決権
3−1 議決権の数

株主総会において、株主は、その有する株式一株につき、一個の議決権を有する。株主平等の原則。
・例外は、(1)議決権を制限する株式を、会社が発行した場合(108条1項3号)(2)議決権を行使できる基準日を、会社が定めた場合(124条)(3)相互保有の株式(308条1項かっこ書)(4)単位未満株式(308条1項但書)(5)自己株式(308条2項)など。
 
3−2 代理行使
・株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。
・代理権を証明する書面を提出することが必要。
・代理権の授与は、株主総会ごとにしなければならない。
・会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができる。また、「代理人の資格を株主に制限する」定款は有効とされる(判例)。
 
3−3 不統一行使
・株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。他人のために株式を有する場合があるから。
・不統一行使の権利は、定款で排除することができない。
取締役会設置会社においては、事前に、不統一行使する旨及びその理由を会社に通知しなければならない。

3−4 書面での議決権行使
・第298条1項3号・4号: 書面での議決権行使ができる。
・決議内容を前もって知らせる必要があるので、総会の通知は、2週間前までに書面で行わなければならない。「目的となる事項」の省略もできない。