会社法・機関
前回(id:kokekokko:20090402#p1)のつづき。
1 株主総会(承前)
4 議事・株主総会の議長は、秩序を維持し、議事を整理する。
・議長の資格には制限がなく、定款で、議長を株主・代表取締役に限定することができる。
(議長の権限)
第315条 株主総会の議長は、当該株主総会の秩序を維持し、議事を整理する。
2 株主総会の議長は、その命令に従わない者その他当該株主総会の秩序を乱す者を退場させることができる。
・取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。
・例外:(1)当該事項が、総会の目的である事項に関しないものである場合、(2)株主の共同の利益を著しく害する場合、(3)説明をするために調査をすることが必要である場合、(4)説明をすることにより株式会社その他の者の権利を侵害することとなる場合、(5)実質的に同一の事項について繰り返して説明を求める場合、(6)そのほか正当な理由がある場合
(取締役等の説明義務)
第314条 取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。
(取締役等の説明義務)
規則第71条 法第314条に規定する法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
1 株主が説明を求めた事項について説明をするために調査をすることが必要である場合(次に掲げる場合を除く。)
イ 当該株主が株主総会の日より相当の期間前に当該事項を株式会社に対して通知した場合
ロ 当該事項について説明をするために必要な調査が著しく容易である場合
2 株主が説明を求めた事項について説明をすることにより株式会社その他の者(当該株主を除く。)の権利を侵害することとなる場合
3 株主が当該株主総会において実質的に同一の事項について繰り返して説明を求める場合
4 前三号に掲げる場合のほか、株主が説明を求めた事項について説明をしないことにつき正当な理由がある場合
5 議事録
・株主総会の議事については、議事録を作成しなければならない。
・記載・記録しなければならない事項の例:議事の経過の要領・結果、出席役員(出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人)の氏名又は名称、議長の氏名、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
・会社は、株主総会の日から十年間、議事録を本店に備え置かなければならない。
・会社は、株主総会の日から五年間、議事録の写しを支店に備え置かなければならない。
・株主は、会社の営業時間内はいつでも、議事録・写しの閲覧又は謄写などを請求することができる。
・親会社社員は、同様の行為を、裁判所の許可を得て請求することができる。
(議事録)
第318条 株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
2 株式会社は、株主総会の日から十年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。
3 株式会社は、株主総会の日から五年間、第1項の議事録の写しをその支店に備え置かなければならない。ただし、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合であって、支店における次項第2号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっているときは、この限りでない。
4 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
1 第1項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧又は謄写の請求
2 第1項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
5 株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第1項の議事録について前項各号に掲げる請求をすることができる。
6 決議
6−1 普通決議
・普通決議の議決要件は、(1)出席数(定足数)と(2)決議。
・(1)過半数の株主の出席: 「議決権を行使することができる株主の議決権」の過半数を有する株主が出席する
・(2)過半数の決議: 出席した株主の議決権の過半数をもって決議する
・普通決議の議決要件は、定款で厳しくすることも緩くすることもできる。定款による定足数の排除は、有効。
・取締役・会計参与の選任と解任: 普通決議によるが、定款で定められる内容に制限がある。
(株主総会の決議)
第309条1項 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
(役員の選任及び解任の株主総会の決議)
第341条 第309条第1項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。
6−2 特別決議
・特別決議の議決要件は、(1)出席数(定足数)と(2)決議。普通決議よりも成立要件は厳しい。
・(1)過半数の株主の出席: 「議決権を行使することができる株主の議決権」の過半数を有する株主が出席する
・(2)三分の二の決議: 出席した株主の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって決議する
・特別決議の議決要件は、定款で厳しくすることができる。「一定の数以上の株主の賛成を要する」(定数要件)などを付加することもできる。
・監査役の選任と解任: 選任については取締役の場合と同じ(普通決議)、解任については特別決議。
(株主総会の決議)
第309条2項 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
1 第140条第2項及び第5項の株主総会
2 第156条第1項の株主総会(第160条第1項の特定の株主を定める場合に限る。)
3 第171条第1項及び第175条第1項の株主総会
4 第180条第2項の株主総会
5 第199条第2項、第200条第1項、第202条第3項第4号及び第204条第2項の株主総会
6 第238条第2項、第239条第1項、第241条第3項第4号及び第243条第2項の株主総会
7 第339条第1項の株主総会(第342条第3項から第5項までの規定により選任された取締役を解任する場合又は監査役を解任する場合に限る。)
8 第425条第1項の株主総会
9 第447条第1項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)
イ 定時株主総会において第447条第1項各号に掲げる事項を定めること。
ロ 第447条第1項第1号の額がイの定時株主総会の日(第439条前段に規定する場合にあっては、第436条第3項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
10 第454条第4項の株主総会(配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して同項第1号に規定する金銭分配請求権を与えないこととする場合に限る。)
11 第6章から第8章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
12 第5編の規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
・おもな内容は、(1)譲渡制限株式を譲渡不承認とした場合の、会社又は指定買取人による買取り、(2)特定の株主からの自己株式の取得、(3)全部取得条項付き種類株式の取得、(4)相続人等に対する売渡しの請求、(5)事業の譲渡等、(6)公開会社でない会社の募集株式の発行等・募集新株予約権の発行における募集事項の決定、(7)募集株式、募集新株予約権の有利発行、(8)累積投票で選任された取締役および監査役の解任、(9)役員等の株式会社に対する損害賠償責任の免除、(10)資本金の額の減少(「欠損の額を超えない」など309条2項9号の要件を満たす場合は、普通決議でよい)(447条3項の要件を満たす場合は、取締役の決定でよい)、(11)定款の変更、(12)株式の併合、(13)事後設立、(14)解散、(15)会社の継続、(16)吸収合併契約、吸収分割契約、株式交換契約の承認、(17)新設合併契約、新設分割契約、株式移転計画の承認。
6−3 特殊決議
・特殊決議は、決議の要件が、普通決議・特別決議よりも厳しい。
・特殊決議の決議要件は、定款で厳しくすることができる。
(株主総会の決議)
第309条3項 前二項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く。)の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
1 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会
2 第783条第1項の株主総会(合併により消滅する株式会社又は株式交換をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(同条第三項に規定する譲渡制限株式等をいう。次号において同じ。)である場合における当該株主総会に限る。)
3 第804条第1項の株主総会(合併又は株式移転をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該株主総会に限る。)
・内容は、(1)株式の譲渡による取得について、会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける場合、(2)公開会社であり「株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等」である会社が、吸収合併する場合の、合併の承認。
7 決議に関する訴え
・株主総会の決議に瑕疵があった場合、訴えを提起できる。
・訴えの種類は、(1)決議不存在確認の訴え、(2)決議無効確認の訴え、(3)決議の取消しの訴え、の3種類。
・訴えは、被告となる会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
・訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。 (対世効)
・決議無効確認の訴え: 決議の内容が法令に違反する場合。判決が確定するまで有効ではなく、当然無効。
・決議取消しの訴え: (1)「招集の手続又は決議の方法」が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正な場合、(2)「決議の内容」が定款に違反する場合、(3) 「決議について特別の利害関係を有する者」が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がされた場合。
・取消しの訴えの請求権者: (1)株主、(2)当該決議の取消しにより取締役、監査役又は清算人となる者、など。
・株主総会での手続や方法が法令・定款に違反する場合でも、裁判所は、その違反する事実が重大でなくかつ決議に影響を及ぼさないと認めるときは、その請求を棄却することができる。(裁量棄却)
(株主総会等の決議の取消しの訴え)
第831条 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第346条第1項(第479条第4項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
1 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
2 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
3 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
2 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。
(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え)
第830条 株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(以下この節及び第937条第1項第1号トにおいて「株主総会等」という。)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。
2 株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。
8 種類株主総会
・種類株主総会: 種類株式発行会社の特定の行為は、種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。
・要件: 種類株式発行会社の行為が、種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき。
・例外: 議決権を行使することができる種類株主が存しない場合。
・定款で、種類株主総会の決議を要しない旨を定めることができる。種類株式発行後に定款を変更してこの旨を定めるときには、当該種類株主全員の同意が必要。
(ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会)
第322条 種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
1 次に掲げる事項についての定款の変更(第111条第1項又は第2項に規定するものを除く。)
イ 株式の種類の追加
ロ 株式の内容の変更
ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
2 株式の併合又は株式の分割
3 第百八十五条に規定する株式無償割当て
4 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第202条第1項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)
5 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集(第241条第1項各号に掲げる事項を定めるものに限る。)
6 第277条に規定する新株予約権無償割当て
7 合併
8 吸収分割
9 吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継
10 新設分割
11 株式交換
12 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得
13 株式移転
2 種類株式発行会社は、ある種類の株式の内容として、前項の規定による種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めることができる。
3 第1項の規定は、前項の規定による定款の定めがある種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会については、適用しない。ただし、第1項第1号に規定する定款の変更(単元株式数についてのものを除く。)を行う場合は、この限りでない。
4 ある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式について第2項の規定による定款の定めを設けようとするときは、当該種類の種類株主全員の同意を得なければならない。