民法親族法

前回(id:kokekokko:20090406:p1)のつづき。

3 親子

1 嫡出
1−1 推定される嫡出子

・実子: 親と血のつながりのある子。(1)嫡出子と(2)非嫡出子がある。
・嫡出子: 婚姻関係にある男女の間の子。
・妻が婚姻中に懐胎した子は、嫡出子と推定される。

(嫡出の推定)
第772条  妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2  婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

・内縁の場合にも、772条の類推により、夫の子であると、事実上嫡出推定される(判例)。
 
・前夫と後夫のいずれにも嫡出推定を受ける子については、訴えによって父を確定する。

(父を定めることを目的とする訴え)
第773条  第733条第1項の規定に違反して再婚をした女が出産した場合において、前条の規定によりその子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。

 
・嫡出否認の訴え: 嫡出推定される父は、否認の訴えによって親子関係を否定できる。被告は、子または親権を行う母。

(嫡出の否認)
第774条  第772条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。
(嫡出否認の訴え)
第775条  前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。
(嫡出否認の訴えの出訴期間)
第777条  嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない。
第778条  夫が成年被後見人であるときは、前条の期間は、後見開始の審判の取消しがあった後夫が子の出生を知った時から起算する。

・夫が嫡出否認の訴えを提起しないで死亡したときは、(1)子のために相続権を害される者や(2)夫の3親等内の血族も、嫡出否認の訴えを提起できる。
 
・否認権: 父が、嫡出を承認すると、否認権を失う。

(嫡出の承認)
第776条  夫は、子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、その否認権を失う。

命名や出生届は、嫡出の承認にはならない。
 
1−2 推定されない嫡出子
・推定されない嫡出子: (1)婚姻成立後200日以内に生まれた子(判例)、(2)内縁関係が先行し、婚姻後200日以内に生まれた子(判例)。
・推定を受けない場合、夫が子との親子関係を争うには、嫡出否認の訴えによる必要はなく、親子関係不存在確認の訴えによることができる。
・婚姻成立から200日以内に出生した子の嫡出性に争いがあるとき、母は実父に対して強制認知の争いを提起できる。
 
1−3 推定の及ばない嫡出子
・妻が夫の子を懐胎できない明白な事実が存在する場合には、嫡出子としての推定が及ばない(判例)。
・長期間の別居の後に離婚したことが判決で認められているときは、夫であったものは、父子関係不存在確認の訴えを提起できる(判例)。
 
2 認知
2−1 非嫡出子

・認知: 父が、嫡出でない子を認知すると、両者の間に法律上の親子関係が発生する。
・母は、分娩の事実によって、子との間に法律上の親子関係が当然に発生する(判例
・認知は、届出によって行われる。
・遺言で認知を行うこともできる。遺言者の死亡により、効力を生じる。
・遺言執行者が、認知の届出を行う。

(認知能力)
第780条  認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。
(認知の方式)
第781条  認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。
2  認知は、遺言によっても、することができる。

・父が、嫡出でない子を嫡出子として出生届をすると、認知としての効力を生じる(判例
・認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。
 
2−2 認知の要件
・認知は、認知者の意思に基づかなければならない。
・両者に親子関係があったとしても、認知者の意思に基づかない認知届は、無効となる(判例)。
・親子関係がないのに行われた認知も、無効となる。認知された子や利害関係人は、認知に対する反対の事実(親子関係の不存在)の主張ができる。
 
・成年になっている子の認知は、その子の承認が必要である。
・成年擬制の場合にも、同じく、その子の承認が必要。
・子が胎児であっても、父は認知できる。

(胎児又は死亡した子の認知)
第783条  父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。
2  父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。

 
2−3 認知の訴え
・認知請求権: 子などは、父(死亡しているときは、検察官)を相手に、認知の訴えを提起できる。

(認知の訴え)
第787条  子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。

・父の死亡の事実が客観的に明らかであるときは、子が父の死亡をしなかったとしても、3年の経過により、認知の訴えを提起できなくなる。
・胎児には、認知請求権はない。
 
2−4 認知の効果

・認知による親子関係の発生は、出生時にさかのぼる。
・父が認知をすると、子を扶養していた第三者は、父に対して扶養料の返還を請求できる。

(認知の効力)
第784条  認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。

・認知後も、親権は、母が単独で行使する。
・ただし、父母の協議で、父が単独で親権を行使するとすることができる。
・父は、認知した時から、子の扶養義務を負う。
 
・嫡出でない子は、母の氏を称する。
・父の認知を受けたときは、家庭裁判所の許可を得て、父の氏を称することができる。
 
3 準正
・準正: 非嫡出子が、認知と父母の婚姻を要件に、嫡出子たる身分を取得すること。
・(1)婚姻準正と、(2)認知準正とがある。
・婚姻準正: 認知後に、父母が婚姻する。
・認知準正: 婚姻後に、認知する。
・子の出生後に父母が婚姻し、離婚後に父が子を認知した場合、子は嫡出子たる身分を取得する。
 
・子が嫡出子たる身分を取得するのは、婚姻の時点。
・認知準正は「その認知の時から」身分取得とあるが、婚姻の時点と解されている。(相続分の不公平を解消するため)
 
・準正の効果が発生するためには、認知は有効なものでなければならない。
・例)直系卑属がいない子が死亡した後で、認知をしても、準正の効果は発生しない。
 
4 子の氏
・嫡出である子は、父母の氏を称する。

(子の氏)
第790条  嫡出である子は、父母の氏を称する。ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。
2  嫡出でない子は、母の氏を称する。

・子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、その父又は母の氏を称することができる。

(子の氏の変更)
第791条  子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2  父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
3  子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。
4  前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。