会社法・機関

前回(id:kokekokko:20090409:p1)のつづき。

2 取締役

1 資格
・法令による制限: (1)法人、(2)成年被後見人被保佐人、(3)会社法等の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者、(4)(3)以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
会社法等の違反の場合は、執行猶予中の者も、取締役になれない。
・定款による制限: 公開会社でない株式会社は、「取締役を株主に限定する」旨を定款で定めることができる。
・兼任禁止: 委員会設置会社の取締役は、当該委員会設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることができない。

(取締役の資格等)
第331条  次に掲げる者は、取締役となることができない。
 1 法人
 2 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
 3 この法律若しくは中間法人法(平成13年法律第49号)の規定に違反し、又は証券取引法【中略】の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
 4 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
2  株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない。ただし、公開会社でない株式会社においては、この限りでない。
3  委員会設置会社の取締役は、当該委員会設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることができない。
【略】

 
2 選任
・取締役は、株主総会において選任される。
・普通決議によるが、定足数の緩和には制限がある。(株主総会/普通決議の項目参照)
・累積投票: 議決権1個につき、選任する取締役の数だけ議決権を付与する投票方法。
 例)株主ABCが取締役候補XYZから2名選任する。A(10株)はX・Yを推し、B(6株)・C(1株)はZを推す。
   通常の投票では、候補X・Yにつき選任議案可決(賛成10、反対7)、候補Zにつき選任議案否決(賛成7、反対10)。
   累積投票では、A20票、B12票、C2票となる。候補Zは14票を獲得する。Aの20票をX・Yにどのように割り振っても、Zは選任される。
・累積投票は、定款で排除できる。
・累積投票で選任された取締役は、普通決議で解任することができず、特別決議で解任することになる。
 例)上例で、もし普通決議で解任できるとなると、株主Aは取締役Zを解任できる(賛成10、反対7)ことになり、累積投票を認めた趣旨が没却される。
・累積投票の要件: (1)二人以上の取締役の選任、(3)株主総会の日の五日前までに株主から請求があること。

(累積投票による取締役の選任)
第342条  株主総会の目的である事項が二人以上の取締役の選任である場合には、株主(取締役の選任について議決権を行使することができる株主に限る。以下この条において同じ。)は、定款に別段の定めがあるときを除き、株式会社に対し、第3項から第5項までに規定するところにより取締役を選任すべきことを請求することができる。
2  前項の規定による請求は、同項の株主総会の日の五日前までにしなければならない。
3  第308条第1項の規定にかかわらず、第1項の規定による請求があった場合には、取締役の選任の決議については、株主は、その有する株式一株(単元株式数を定款で定めている場合にあっては、一単元の株式)につき、当該株主総会において選任する取締役の数と同数の議決権を有する。この場合においては、株主は、一人のみに投票し、又は二人以上に投票して、その議決権を行使することができる。
4  前項の場合には、投票の最多数を得た者から順次取締役に選任されたものとする。
5  前二項に定めるもののほか、第1項の規定による請求があった場合における取締役の選任に関し必要な事項は、法務省令で定める。
6  前条の規定は、前三項に規定するところにより選任された取締役の解任の決議については、適用しない。

 
3 任期
・原則: 選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時まで。
・同時に選任した複数の取締役について、任期を各別に定めてもよい(揃える必要がない)。
・例外: (1)定款又は株主総会の決議によって、任期を短縮できる、(2)公開会社でない株式会社において、定款によって、「選任後十年以内〜」まで伸長することができる。

(取締役の任期)
第332条  取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
2  前項の規定は、公開会社でない株式会社(委員会設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時まで伸長することを妨げない。
3  委員会設置会社の取締役についての第1項の規定の適用については、同項中「二年」とあるのは、「一年」とする。
4  前3項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、取締役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。
 1 委員会を置く旨の定款の変更
 2 委員会を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更
 3 その発行する株式の全部の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更(委員会設置会社がするものを除く。)

・定款変更による任期終了: 定款変更の効力が生じた時に、取締役の任期が満了する。
・定款変更の内容: (1)委員会の設置、廃止、(2)公開会社となる場合
 
4 退任
・取締役の退任事由: (1)辞任、(2)任期満了、(3)解任、(4)委任の終了、(5)会社の解散、(6)定款で定めた資格の喪失、(7)欠格事由(法令・定款で定められた制限)。
・委任の終了(民第653条): 取締役の死亡、破産手続開始の決定、後見開始の審判、会社の破産手続開始。
・破産手続開始: 既に破産手続開始の決定を受けている者を、取締役に選任することはできる。選任後に破産手続開始の決定を受けた取締役は、(委任の終了により)退任する。
 
5 解任
・取締役の解任事由: (1)株主総会の決議、(2)少数株主の解任請求に基づく裁判。
 
株主総会: いつでも、決議によって取締役を解任することができる。
・解任された取締役は、その解任について正当な理由がある場合を除き、会社に対して、「解任によって生じた損害の賠償」を請求できる。
・解任決議は、普通決議によるが、定足数の緩和には制限がある。(株主総会/普通決議の項目参照)
・公開会社でない会社で、取締役の選任に関する種類株式が発行された場合: 取締役は、「当該種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会」の決議で、解任される。
 
・少数株主の解任請求の要件: (1)取締役の職務の執行に関し、不正の行為又は法令・定款に違反する重大な事実があり、(2)それにもかかわらず、解任議案が株主総会において否決されたとき。
・少数株主は、株主総会の決議の日から三十日以内に、訴えをもって、当該役員の解任を請求することができる。
・被告: 会社と当該取締役。

(株式会社の役員の解任の訴え)
第854条  役員(第329条第1項に規定する役員をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第323条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から三十日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。
 1 総株主(次に掲げる株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
  イ 当該役員を解任する旨の議案について議決権を行使することができない株主
  ロ 当該請求に係る役員である株主
 2 発行済株式(次に掲げる株主の有する株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
  イ 当該株式会社である株主
  ロ 当該請求に係る役員である株主
2  公開会社でない株式会社における前項各号の規定の適用については、これらの規定中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
【略】

 
6 競業・利益相反取引
・競業: 取締役が、自己又は第三者のために、「株式会社の事業の部類に属する」取引をすること。
利益相反取引: (1)取締役が、自己又は第三者のために、株式会社と取引をすること(直接取引)、(2) 会社が、取締役の債務の保証など、第三者との間において会社と当該取締役との利益が相反する取引をすること(間接取引)。
・取締役は、競業・利益相反取引をしようとするときには、株主総会(取締役会)において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
・会社に特段の不利益が生じない場合には、承認は要しない。
・事後の承認は有効。
・承認を受けずにされた取引は、無効となるが、この無効は善意無重過失の第三者に対抗できない。会社が、相手方の悪意または重過失を立証するべきとなる。

(競業及び利益相反取引の制限)
第356条  取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
 1 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
 2 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
 3 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2  民法第108条の規定は、前項の承認を受けた同項第2号の取引については、適用しない。
 
(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)
第365条  取締役会設置会社における第356条の規定の適用については、同条第1項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。
2 取締役会設置会社においては、第356条第1項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。