民法親族法

前回(id:kokekokko:20090413:p1)のつづき。

3 親子(承前)

5 養子
5−1 普通養子

・養子縁組: 養親子関係を発生させること。
・養子縁組は、当事者の縁組意思に基づいた届出が受理されることにより成立する。
・代諾養子: 養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、縁組の承諾をすることができる。 (監護者の同意が必要)
 
・養子は、縁組の日から、養親の嫡出子たる身分を取得する。
・養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。
 
・養子縁組の成立により、養子と養親の親族との間に、血族と同一の親族関係が成立する。
・養子と実父母との親族関係も存続する。
・養父と実母が婚姻関係にあるときは、親権は、両者が共同して行使する。
 
・縁組の当事者は、その協議で離縁をすることができる。

(協議上の離縁等)
第811条  縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
2  養子が十五歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
(夫婦である養親と未成年者との離縁)
第811条の2 養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦が共にしなければならない。ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、この限りでない。

 
・養父母双方と未成年者が離縁をした場合、実父母の親権が復活する。

(離縁による復氏等)
第816条  養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
2  縁組の日から七年を経過した後に前項の規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。

 
5−2 要件
・(1)成年: 養親は、成年でなければならない。
・(2)尊属又は年長者: 尊属又は年長者を養子とすることはできない。
・胎児を養子とすることもできない。
・(3)後見人: 後見人が被後見人を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
 
・(4)配偶者のある者: 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。
・夫婦の一方だけが、未成年者を養子とすることは、できない。
・ただし、「配偶者の嫡出である子を養子とする場合」は、この限りでない。たとえば、妻と前夫の実子(嫡出子)を、現夫の養子とすることはできる。

(配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組)
第795条  配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
 
(配偶者のある者の縁組)
第796条  配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。

・(5)未成年者: 未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
・ただし、「自己又は配偶者の直系卑属」を養子とする場合は、この限りでない。 たとえば、妻と前夫の実子(嫡出子)を、現夫の養子とするとき。
 
5−3 特別養子
特別養子縁組 : 実方の血族との親族関係が終了する養子縁組。「実父母による監護が著しく困難又は不適当であること」がある場合の縁組。
・養親となる者の請求により、家庭裁判所が審判して、成立する。
 
・要件1: 養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。
・要件2: 夫婦ともに養親にならなければならない。例外は、夫婦の一方の嫡出子(普通縁組による養子を除く)の養親となる場合。
・要件3: 養親となる者は、原則25歳以上。
・要件4: 養子となる者は、原則6歳以下。
・要件5: 特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、この父母による虐待などがある場合は、この限りでない。
・要件6: 6か月以上の期間、試験養育して、その状況を考慮して決定する。
 
・効果: 養子と「実方の父母及びその血族」との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。実方の父母は実父母・養父母ともに含む。
特別養子縁組により、普通養子縁組は終了する。
・嫡出でない子が特別養子となった場合、認知はできない(判例)。
 
・終了: 特別養子縁組によって終了した親族関係は、特別養子縁組の離縁によって、回復する。
特別養子縁組の離縁は、家庭裁判所の審判のみで成立する。

特別養子縁組の離縁)
第817条の10 次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
 1  養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
 2  実父母が相当の監護をすることができること。
2  離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。

 
6 親権
・親権: 成年に達しない子は、父母の親権に服する。子が養子であるときは、養親の親権に服する。
・親権は、父母の婚姻中は、原則として父母が共同して行う。
・親権の行使は、父母の共同意思に基づく必要がある。父母の共同名義で行う必要はない(判例)。
 
利益相反行為: 親権を行う父又は母と、その子との利益が、相反する行為。親子間の売買など。
利益相反行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
利益相反行為に該当するかどうかについて、判例は、「行為の客観的な外形」から判断するとする。
 例)子の養育費に充てる目的であっても、親の債務の担保のために子の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為に該当する。
・子が親権者から贈与を受けることは、子が一方的に有利であるため、利益相反行為に該当しない(判例)。
・親権者が、子の代理人として利益相反行為を行った場合は、無権代理となる(判例)。
 
・財産の管理: 親権者は、「自己のためにするのと同一の注意」をもって、管理権(財産管理)を行わなければならない。「善良な管理者の注意」よりは軽い。
・親権又は管理権の辞任: 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
 
7 未成年後見
・後見の開始: (1)未成年者に対して親権を行う者がないとき、(2)親権を行う者が管理権を有しないとき、(3)後見開始の審判があったとき。
・(2)の場合の後見人は、財産管理に関する権限だけを有する。
・遺言による指定: 親権者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。

(未成年後見人の指定)
第839条  未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
2  親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。

・未成年者、破産者などは、後見人となることができない。
 
8 扶養義務者
・扶養義務: 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
家庭裁判所は、特別の事情があるときは、三親等内の親族間においても、扶養の義務を負わせることができる。
・直系血族は、嫡出・非嫡出の区別を問わない。兄弟姉妹は、父母の一方だけが同じ者も含む。