会社法・機関

前回(id:kokekokko:20090416#p1)のつづき。

3 取締役会

1 権限
・取締役会: すべての取締役で組織する会議体。株主総会・取締役の権限の一部が、取締役会へ移る。
・職務: (1)取締役会設置会社の業務執行の決定、(2)取締役の職務の執行の監督、(3)代表取締役の選定及び解職
・置くべき取締役の人数: 3人以上。設置会社以外では、1人で足りる。
・会社の意思決定: 原則として、取締役会。設置会社以外では、株主総会の決議。
・取締役会で決議するべき事項: (1)株主総会の招集の決定、(2)募集株式の発行における募集事項の決定の委任、(3)株式の発行と同時にする資本金の額の減少に関する事項の決定。設置会社以外では、これらは取締役の決議で決定する。
・取締役に委任できない事項: (1)重要な財産の処分及び譲受け、(2)多額の借財、(3)支配人の選任及び解任、(4)支店の設置及び廃止、など。
 
・取締役会の主な決議事項1: (1)譲渡制限株式の、譲渡についての承認、及び買受人の指定、(2)取得条項付株式を取得する日の決定、(3)株式無償割り当てに関する事項の決定、(4)募集株式が譲渡制限株式である場合の、割当ての決定、(5)募集する新株予約権が譲渡制限新株予約権である場合における、割当ての決定、(6)新株予約権の無償割当に関する事項の決定。
会社法では、『株主総会取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。』などと規定されている。
・取締役会の主な決議事項2: (1)子会社が有する自己株式の取得に関する事項の決定、(2)株式分割に関する事項の決定、(3)代表取締役の選定及び解職、(4)取締役の競業取引、利益相反取引についての承認、(5)会社が取得する取得条項付新株予約権の決定。
会社法では、『株主総会取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。』などと規定されている。定款での変更は不可。
 
2 招集
・招集権: 取締役会は、各取締役が招集する。
・定款又は取締役会で、取締役会を招集する特定の取締役(招集権者)を定めることができる。
・招集権者以外の取締役は、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができる。

(招集権者)
第366条  取締役会は、各取締役が招集する。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集する。
2  前項ただし書に規定する場合には、同項ただし書の規定により定められた取締役(以下この章において「招集権者」という。)以外の取締役は、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができる。
3  前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は、取締役会を招集することができる。

  
・招集手続: 招集権者は、取締役会の日の一週間前までに、各取締役に対して、その通知を発しなければならない。
・取締役の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

(招集手続)
第368条  取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならない。
2  前項の規定にかかわらず、取締役会は、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

 
監査役: 取締役会への出席義務がある。取締役・招集権者に対し、取締役会の招集を請求することもできる。
・「監査役の監査の範囲を、会計に関するものに限定する定款を定めた」場合は、出席義務はない。(出席してもよい)
 
3 決議
・決議要件: (1)議決に加わることができる取締役の過半数が出席(定足数)、(2)その過半数の決議。
・定款: 要件を加重することができる。
・議決権: 代理行使、不統一行使などは認められない。
・特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
・決議内容や手続に瑕疵があれば、原則として決議は無効となる(訴えの制度がない)。

(取締役会の決議)
第369条1項  取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
2項  前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。

 
・書面の決議: 原則として、書面のみによる決議は認められない(協議によるべきことになる)。
・定款により、「取締役の全員が書面により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす」ことができる。

(取締役会の決議の省略)
第370条  取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

 
4 議事録
・議事録: 取締役会の議事録は、必ず作成し、出席した取締役及び監査役の署名・押印が必要。

(取締役会の決議)
第369条3項  取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4  前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
5  取締役会の決議に参加した取締役であって第3項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。

 
・議事録の備置: 取締役会の日から十年間、議事録を本店に備え置かなければならない。
・株主の請求権: 株主は、権利を行使するため必要があるときには、会社の営業時間内はいつでも、議事録の閲覧又は謄写の請求をすることができる。
・ただし、監査役設置会社又は委員会設置会社では、株主の閲覧・謄写請求は、裁判所の許可が必要になる。
・会社債権者・親会社社員の請求権: 以下の場合、裁判所の許可を得て、議事録の閲覧又は謄写の請求をすることができる。(1)会社債権者は、役員又は執行役の責任を追及するため必要があるとき。(2)親会社社員は、権利を行使するため必要があるとき。

(議事録等)
第371条  取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間、第369条第3項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。
2  株主は、その権利を行使するため必要があるときは、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
 1  前項の議事録等が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
 2  前項の議事録等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
3  監査役設置会社又は委員会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社の営業時間内は、いつでも」とあるのは、「裁判所の許可を得て」とする。
4  取締役会設置会社の債権者は、役員又は執行役の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該取締役会設置会社の議事録等について第2項各号に掲げる請求をすることができる。
5  前項の規定は、取締役会設置会社の親会社社員がその権利を行使するため必要があるときについて準用する。
6  裁判所は、第3項において読み替えて適用する第2項各号に掲げる請求又は第4項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の請求に係る閲覧又は謄写をすることにより、当該取締役会設置会社又はその親会社若しくは子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、第3項において読み替えて適用する第2項の許可又は第4項の許可をすることができない。

 
5 特別取締役
・特別取締役: あらかじめ選定した三人以上の取締役。
・特別取締役による決議: 取締役会は、特別取締役による決議を行うことができる旨を定めることができる。
・条件: (1)取締役の数が六人以上、(2)取締役のうち社外取締役が一人以上、の両者をみたすこと。
・決議要件: 特別取締役のうち議決に加わることができるものの過半数が出席し、その過半数の決議。取締役会と同様。
・内容: (1)重要な財産の処分及び譲受け、(2)多額の借財。
・特別取締役以外の取締役は、当該決議に対する出席義務はない(出席することはできる)。

(特別取締役による取締役会の決議)
第373条  第369条第1項の規定にかかわらず、取締役会設置会社委員会設置会社を除く。)が次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、取締役会は、第362条第4項第1号及び第2号に掲げる事項についての取締役会の決議については、あらかじめ選定した三人以上の取締役(以下この章において「特別取締役」という。)のうち、議決に加わることができるものの過半数(これを上回る割合を取締役会で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を取締役会で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行うことができる旨を定めることができる。
 1  取締役の数が六人以上であること。
 2  取締役のうち一人以上が社外取締役であること。
2  前項の規定による特別取締役による議決の定めがある場合には、特別取締役以外の取締役は、第362条第4項第1号及び第2号に掲げる事項の決定をする取締役会に出席することを要しない。この場合における第366条第1項本文及び第368条の規定の適用については、第366条第1項本文中「各取締役」とあるのは「各特別取締役(第373条第1項に規定する特別取締役をいう。第368条において同じ。)」と、第368条第1項中「定款」とあるのは「取締役会」と、「各取締役」とあるのは「各特別取締役」と、同条第2項中「取締役(」とあるのは「特別取締役(」と、「取締役及び」とあるのは「特別取締役及び」とする。
3  特別取締役の互選によって定められた者は、前項の取締役会の決議後、遅滞なく、当該決議の内容を特別取締役以外の取締役に報告しなければならない。
4  第366条(第1項本文を除く。)、第367条、第369条第1項及び第370条の規定は、第2項の取締役会については、適用しない。

 
監査役: 監査役が2人以上ある場合に、監査役の互選によって、特別取締役による議決の定めがある取締役会に出席する監査役を定めることができる。この場合は、他の監査役は、出席義務を負わない。