民法相続法

前回(id:kokekokko:20090427:p1)のつづき。

1 相続

4 共同相続
・遺産分割: 相続人が複数人いる場合、遺産は、共同相続人にその相続分に応じて分配される。
・共有: 分配が終了するまでは、遺産は、共同相続人の共有となる。
 
被相続人は、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
遺留分に反する相続分指定は、遺留分権利者による減殺請求があるまでは有効。
・相続債務については、被相続人(債務者)が相続の割合を決定することができない。よって、法定相続分の割合に応じて承継する。
法定相続分: 相続分の指定がなく、遺産分割協議でも決定できなかったときは、法定相続分の割合による。
代襲相続人の相続分は、被代襲者の相続分と同じ。

法定相続分
第900条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
 1  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
 2  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
 3  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
 4  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

・配偶者と子が相続: 配偶者の相続分が2分の1。残りを、子が均等に分ける。ただし、非嫡出子の相続分は、嫡出子の半分。
 例)相続財産5000万円。配偶者と3人の子、うち1人が非嫡出子: 配偶者が2500万円、子のうち2人の嫡出子が1000万円ずつ、非嫡出子が500万円。
・配偶者と直系尊属: 配偶者の相続分が3分の2。残りを、直系尊属が均等に分ける。
・配偶者と兄弟姉妹: 配偶者の相続分が4分の3。残りを、兄弟姉妹が均等に分ける。
 例)相続財産5000万円。配偶者と2人の兄: 配偶者が3750万円。兄は625万円ずつ。
 
5 特別受益
特別受益者: 被相続人から、遺贈・生前贈与を受けた者。
・相続分は、特別受益を加えた額を、相続財産として算出される。
・つまり、生前に贈与を受けていた者は、その相続分から受益の額を引かれる。
・ただし、相続分を超えた価額を受益したときには、超えた分を返還する必要はない。

特別受益者の相続分)
第903条  共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2  遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3  被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

 
6 寄与分
・共同相続人中に、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、共同相続人の協議で定めた寄与分を控除したものを相続財産とみなす。
・相続分に寄与分を加えた額をもって、その者の相続分とする。
・共同相続人の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、寄与をした者の請求により、寄与分を定める。
・内縁者は、寄与分を取得することができない。

寄与分
第904条の2  共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2  前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3  寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4  第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。

 
7 遺産分割
・遺産分割: 共同相続人の共有になっている遺産を、分割して各相続人の財産にすること。
・遺言による分割: 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定めることができる。
・協議による分割: 共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
・分割請求: 共同相続人の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
家庭裁判所は、特別の事由があるときは、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、分割を禁ずることができる。

(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
第910条  相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

 
・協議によって負担した債務を履行しない相続人がいても、541条による解除はできない(判例)。しかし、全員の合意により解除して、改めて協議することはできる(判例)。
・第三者が、共同相続人から、相続開始後遺産分割前に相続財産に属する特定不動産の持分共有権を譲り受けた場合、その第三者は、遺産分割手続を経ることなく、共同相続人に対して、共有物の分割請求をすることができる(判例)。譲渡された部分は、遺産分割の対象ではなくなる。
・「相続人の1人が債務を相続する」という遺産分割協議は、共同相続人間では有効である。しかし、債務引受となるので、債権者の承諾がないと債権者には対抗できない。債権者は、他の相続人に対して債務の履行を請求できる。