会社法・設立

前回(id:kokekokko:20090430#p1)のつづき。機関が終了したので、6月までの木曜日は、隔週で「設立・株式」と「機関」とを扱うことにします。
今回は設立(会社法第2編第1章)。

1 定款の作成

・株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
・定款は、公証人の認証を受けなければ、効力を生じない。
・定款に記載すべき事項: 目的、商号、発行可能株式総数など。

(定款の記載又は記録事項)
第27条  株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
 1 目的
 2 商号
 3 本店の所在地
 4 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
 5 発起人の氏名又は名称及び住所
 
(発行可能株式総数の定め等)
第37条1項  発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という。)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

 
・定款に定めないとその効力を生じない事項: 「累積投票による取締役の選任を請求できない」など。

(異なる種類の株式)
第108条2項  株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
 1 剰余金の配当 当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容
【2項1号のみ】

(設立時発行株式に関する事項の決定)
32条  発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除く。)を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。
 1  発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
 2  前号の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額
 3  成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項

・つまり、設立時発行株式に関する事項につき、全員の同意を得ていない場合には、所定の事項は定款で定めなければならない。
 
・検査役の調査: 「定款に定めないとその効力を生じない事項」のうち、(1)金銭以外の財産の出資、(2)会社成立後に財産の譲受けを約した場合、(3)会社成立により発起人が報酬を受ける場合には、その事柄につき、検査役の調査を受けなければならない。
・現物出資: 金銭以外の財産の出資。現物出資は、発起人のみが行うことができる。
・発起人は、公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。

第28条  株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第26条第1項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。
 1  金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)
 2  株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
 3  株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
 4  株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)
 
(定款の記載又は記録事項に関する検査役の選任)
第33条  発起人は、定款に第28条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは、第30条第1項の公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。

・現物出資財産等: (1)金銭以外の出資財産、(2)会社の成立後に譲り受けることを約した財産。

第33条10項  前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。
 1  第28条第1号及び第2号の財産(以下この章において「現物出資財産等」という。)について定款に記載され、又は記録された価額の総額が五百万円を超えない場合 同条第1号及び第2号に掲げる事項
 2  現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券(証券取引法(昭和23年法律第25号)第2条第1項に規定する有価証券をいい、同条第2項の規定により有価証券とみなされる権利を含む。以下同じ。)について定款に記載され、又は記録された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合 当該有価証券についての第28条第1号又は第2号に掲げる事項
 3  現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人公認会計士(外国公認会計士公認会計士法(昭和23年法律第103号)第16条の2第5項に規定する外国公認会計士をいう。)を含む。以下同じ。)、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価。以下この号において同じ。)を受けた場合 第28条第1号又は第2号に掲げる事項(当該証明を受けた現物出資財産等に係るものに限る。)

 

2 発起設立

・設立時発行株式: 株式会社の設立に際して発行する株式。
・発起設立: 発起人が、設立時発行株式の全部を引き受ける設立方法。
・出資の履行: 発起人は、設立時発行株式を引受けた後、遅滞なく、その出資に係る金銭の全額を払い込みしなければならない。
・ただし、発起人全員の同意があるときは、登記・登録等の対抗要件具備の行為は、株式会社の成立後にしてもよい。

(出資の履行)
第34条1項  発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。

 
・設立時役員: 定款で設立時役員が定められていないときは、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時役員を選任しなければならない。
・設立時役員の選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定する。
・設立時取締役・設立時監査役監査役設置会社の場合)は、選任後遅滞なく、「現物出資財産等について定款に記載された価額が相当であること」 等を調査しなければならない。
・調査によって、法令若しくは定款に違反し、又は不当な事項があると認めるときは、発起人にその旨を通知しなければならない。
・調査は、設立時取締役・設立時監査役監査役設置会社の場合)が、全員、独立して行う。

第46条1項  設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査役設置会社である場合にあっては、設立時取締役及び設立時監査役。以下この条において同じ。)は、その選任後遅滞なく、次に掲げる事項を調査しなければならない。
1  第33条第10項第1号又は第2号に掲げる場合における現物出資財産等(同号に掲げる場合にあっては、同号の有価証券に限る。)について定款に記載され、又は記録された価額が相当であること。
2  第33条第10項第3号に規定する証明が相当であること。
3  出資の履行が完了していること。
4  前3号に掲げる事項のほか、株式会社の設立の手続が法令又は定款に違反していないこと。
【1項のみ】

 

3 募集設立

・募集設立: 発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法。
・設立時募集株式: 募集に応じて設立時発行株式の引受けの申込みをした者に対して、割り当てる設立時発行株式。
・払込みの履行: 設立時募集株式の引受人は、払込期日・期間内に、発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの設立時募集株式の払込金額の全額の払込みを行わなければならない。
 
・創立総会: 払込みの履行がなされた場合には、発起人は、遅滞なく、設立時株主の総会を招集しなければならない。   
・創立総会の決議要件: (1)当該創立総会において議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数であって、(2)出席した当該設立時株主の議決権の三分の二以上、の多数をもって行う。
 
・招集の決定: 発起人は、創立総会を招集する場合には、創立総会の日時及び場所、 創立総会の目的である事項などを定めなければならない。
・決議事項: 創立総会は、「招集時に定めた事項」以外の事項については、決議をすることができない。ただし、(1)定款の変更、(2)株式会社の設立の廃止については、決議できる。
・創立総会においてその延期又は続行について決議があった場合には、(1)招集の決定、(2)設立時株式への通知は、行う必要がない。
 

4 発起人等の責任

・現物出資財産等の価額が、定款に記載された価額に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。
・ただし、給付者・譲渡人でない発起人及び設立時取締役が、(1)検査役の調査を経た場合、 (2)当該発起人又は設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合、には、支払義務を負わない。
・募集設立では、(1)のみが適用される。

(出資された財産等の価額が不足する場合の責任)
第52条1項  株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。
【1項のみ】

 
・会社に対する損害賠償責任: 発起人・設立時取締役・設立時監査役は、会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
・第三者に対する損害賠償責任: 発起人・設立時取締役・設立時監査役は、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。