会社法・機関

中級者を対象に、知識の整理と定着をはかることを目的とします。会社法第2編第4章・機関について。
以前(id:kokekokko:20090402:p1)書いた内容を補足して、やや詳細にしてみます。「機関」については隔週木曜日に書きます。

1 株主総会

株主総会の権限)
第295条1項 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
株主総会の招集)
第296条1項  定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。

・最小規模会社: 株主総会と取締役のみ。株主総会の権限が強い。
取締役会設置会社: 経営に関する権限の一部を取締役会に移す。株主総会の権限は相対的に弱くなり、また、招集の方法も厳格になる。

1 招集
1−1 招集の請求

株主総会は、原則として、取締役が招集する。
・株主(297条1項の条件を満たす株主)は、取締役に対し、株主総会の招集を請求することができる。
・要件(297条4項)を満たす場合には、株主が、裁判所の許可を得て、株主総会を招集する。

(株主による招集の請求)
第297条  総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
2  公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3  第1項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
4  次に掲げる場合には、第1項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
 1 第1項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
 2 第1項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合


1−2 招集の決定
・取締役は、株主総会を招集する場合には、「日時及び場所」「目的である事項」などを定めなければならない。
取締役会設置会社では、この事項は、取締役会の決議によらなければならない。

株主総会の招集の決定)
第298条  取締役(前条第4項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第302条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
 1 株主総会の日時及び場所
 2 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
 3 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
 4 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
 5 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2  取締役は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次条から第302条までにおいて同じ。)の数が千人以上である場合には、前項第3号に掲げる事項を定めなければならない。ただし、当該株式会社が証券取引法第2条第16項に規定する証券取引所に上場されている株式を発行している株式会社であって法務省令で定めるものである場合は、この限りでない。
3  取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは、「前項第2号に掲げる事項」とする。
4  取締役会設置会社においては、前条第4項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

・議決権のある株主の数が1000人以上である場合には、書面による議決権行使を認めなければならない。

1−3 招集の通知
・通知は1週間前まででよく(定款でさらに短縮できる)、また口頭の通知でもよい。この場合、「目的である事項」の通知は不要。
・招集通知には、招集の際に決定した事項を記載・記録しなければならない。
取締役会設置会社では、株主総会の日の二週間前までに、書面で、株主に対してその通知を発しなければならない。
・総会の目的が、役員選任など(規則第63条7号で定めるもの)である場合には、招集通知に議案の概要を記載・記録しなければならない。
・規則第63条7号: 役員等の選任、報酬等、有利発行の場合における募集株式・募集新株予約権を引き受ける者の募集、事業譲渡等、定款の変更、合併、吸収分割、吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継、新設分割、株式交換株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得、株式移転
・ただし、書面によって議決権行使できる場合、招集通知への議案の概要の記載・記録は不要である。

株主総会の招集の通知)
第299条  株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。
2  次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。
 1 前条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めた場合
 2 株式会社が取締役会設置会社である場合
3  取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
4  前2項の通知には、前条第1項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
(招集の決定事項)
規則第63条  法第298条第1項第5号に規定する法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
第7号  第3号に規定する場合以外の場合において、次に掲げる事項が株主総会の目的である事項であるときは、当該事項に係る議案の概要(議案が確定していない場合にあっては、その旨)
 イ 役員等の選任
【ロ以下略】

株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

(招集手続の省略)
第300条  前条の規定にかかわらず、株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第298条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。


2 株主提案権
・株主は、取締役に対し、「一定の事項を株主総会の目的とすること」を請求することができる。
取締役会設置会社では、限定された株主のみがこの請求権を有する。この限定とは、「総株主の議決権の百分の一以上の議決権」又は「三百個以上の議決権」を六箇月前から引き続き有する株主。さらに、「請求は、株主総会の日の八週間前まで」という制限もある。
・なお、請求をした株主が出席しなかった場合であっても、請求が正当であれば、会社はこれを株主総会の目的としなければならない。

(株主提案権)
第303条  株主は、取締役に対し、一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次項において同じ。)を株主総会の目的とすることを請求することができる。
2  前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。この場合において、その請求は、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならない。
3  公開会社でない取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
4  第2項の一定の事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。

 
・株主は、株主総会において、「株主総会の目的である事項につき」議案を提出することができる。
・ただし、実質的に同一の議案につき、株主総会において総株主の議決権の十分の一以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合は、この限りでない。
・なお、会社は、これには拘束されずに、かかる議案を提出できる。

第304条  株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次条第一項において同じ。)につき議案を提出することができる。ただし、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合は、この限りでない。

 
・株主は、取締役に対し、株主総会の日の八週間前までに、「(株主総会の目的である事項につき)当該株主が提出しようとする議案の要領」を株主に通知することを、請求することができる。
取締役会設置会社では、限定された株主のみがこの請求権を有する。この限定とは、株主総会の目的とすることの請求権と同様である。

第305条  株主は、取締役に対し、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、株主総会の目的である事項につき当該株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知すること(第299条第2項又は第3項の通知をする場合にあっては、その通知に記載し、又は記録すること)を請求することができる。ただし、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、当該請求をすることができる。
2  公開会社でない取締役会設置会社における前項ただし書の規定の適用については、同項ただし書中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3  第1項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項ただし書の総株主の議決権の数に算入しない。
4  前3項の規定は、第一項の議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合には、適用しない。

 
3 議決権
3−1 議決権の数

株主総会において、株主は、その有する株式一株につき、一個の議決権を有する。株主平等の原則。
・例外は、(1)議決権を制限する株式を、会社が発行した場合(108条1項3号)(2)議決権を行使できる基準日を、会社が定めた場合(124条)(3)相互保有の株式(308条1項かっこ書)(4)単位未満株式(308条1項但書)(5)自己株式(308条2項)など。

(議決権の数)
第308条  株主(株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する。
2  前項の規定にかかわらず、株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。
(実質的に支配することが可能となる関係)
規則第67条 法第308条第1項に規定する法務省令で定める株主は、株式会社(当該株式会社の子会社を含む。)が、当該株式会社の株主である会社等の議決権(同項その他これに準ずる法以外の法令(外国の法令を含む。)の規定により行使することができないとされる議決権を含み、役員等(会計監査人を除く。)の選任及び定款の変更に関する議案(これらの議案に相当するものを含む。)の全部につき株主総会(これに相当するものを含む。)において議決権を行使することができない株式(これに相当するものを含む。)に係る議決権を除く。)の総数の四分の一以上を有する場合における当該株主であるもの(当該株主であるもの以外の者が当該株式会社の株主総会の議案につき議決権を行使することができない場合(当該議案を決議する場合に限る。)における当該株主を除く。)とする。
(株主の平等)
第109条1項  株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。

 
3−2 代理行使
・株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。
・代理権を証明する書面を提出することが必要。
・代理権の授与は、個別の株主総会ごとに具体的にしなければならない。
・会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができる。また、「代理人の資格を株主に制限する」定款は有効とされる(判例)。

(議決権の代理行使)
第310条  株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該株主又は代理人は、代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければならない。
2  前項の代理権の授与は、株主総会ごとにしなければならない。
3  第1項の株主又は代理人は、代理権を証明する書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該株主又は代理人は、当該書面を提出したものとみなす。
4  株主が第299条第3項の承諾をした者である場合には、株式会社は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。
5  株式会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができる。
【6項以下略】

 
3−3 不統一行使
・株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。他人のために株式を有する場合があるから。
・不統一行使の権利は、定款で排除することができない。
取締役会設置会社においては、事前に、不統一行使する旨及びその理由を会社に通知しなければならない。

(議決権の不統一行使)
第313条  株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。
2  取締役会設置会社においては、前項の株主は、株主総会の日の三日前までに、取締役会設置会社に対してその有する議決権を統一しないで行使する旨及びその理由を通知しなければならない。
3  株式会社は、第1項の株主が他人のために株式を有する者でないときは、当該株主が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。

3−4 書面での議決権行使
・第298条1項3号・4号: 書面での議決権行使ができる。
・決議内容を前もって知らせる必要があるので、総会の通知は、2週間前までに書面で行わなければならない。「目的となる事項」の省略もできない。