会社法・株式

前回(id:kokekokko:20090430#p1)のつづき。「設立」は終了したので「株式」(第2編第2章)です。

1 株式の共有

・株式が共有に属するとき: 共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければならない。

(共有者による権利の行使)
第106条  株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

・権利を行使する者は、共有者の中から選任しなければならない。権利を行使する者は、単独で議決権を行使できる。
 
・株主に対する通知: 株式が共有に属するときは、共有者は、会社が株主に対してする通知又は催告を受領する者一人を定め、会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければならない。会社は、その者にあてて、「株主に対してする通知又は催告」を発する。
・共有者の通知がない場合には、会社がする当該通知・催告は、共有者のうちの一人に対してすれば足りる。
・株主の権利(剰余金の配当)などは、共有者のうちの一人に対してすれば足りるということはない。
 

2 株主の権利

2−1.全ての株主の権利
・全ての株主が行使できる権利: (1)責任追及等の訴え、(2)違法行為をやめるよう請求する権利、(3)株主名簿の閲覧請求権、(4)無効の訴えを提起する権利
・(1)責任追及等の訴え: 6か月前から引き続き株式を有する株主は、会社に対し、書面により、発起人・役員(取締役)等・清算人の責任を追及する訴えの提起を請求することができる。

(責任追及等の訴え)
第847条1項本文  六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第189条第2項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第423条第1項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え、第120条第3項の利益の返還を求める訴え又は第212条第1項若しくは第285条第1項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。

・(2)違法行為をやめるよう請求する権利: 6か月前から引き続き株式を有する株主は、取締役・執行役・清算人に対し、法令・定款に違反する行為によって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該行為をやめることを請求することができる。

(株主による取締役の行為の差止め)
第360条1項  六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。

・公開会社でない株式会社では、(1)(2)の「6か月前から引き続き」の要件はない。
 
・(3)株主名簿の閲覧請求権: 株主名簿、新株予約権原簿、社債原簿、株主総会議事録、定款、計算書類などの閲覧又は謄写の請求をすることができる。
・株式会社の営業時間内に、当該請求の理由を明らかにして行う。
 
・(4)無効の訴えを提起する権利: 会社設立や会社の吸収合併など、一定の行為については、株主は無効を主張して訴えを提起することができる。
・条件は、法で定める期間内に、訴えをもってのみ主張する。
・行為:(1)会社の設立、(2)株式会社の成立後における株式の発行、(3)自己株式の処分、(4)新株予約権の発行、(5)株式会社における資本金の額の減少、(6)会社の組織変更、(7)会社の吸収合併、(8)会社の新設合併、(9)会社の吸収分割、(10)会社の新設分割、(11)株式会社の株式交換、(12)株式会社の株式移転。
 
2−2.「100分の3以上」株主の権利
・特定の株主: 総株主の議決権の百分の三以上の議決権を有する株主、又は発行済株式の百分の三以上の数の株式を有する株主。
・行使できる権利: (1)会計帳簿・資料の閲覧又は謄写を請求すること、(2)業務の執行に関する検査役の選任を裁判所に申立てること。
・会計帳簿の閲覧等の請求: 会社の営業時間内に、当該請求の理由を明らかにして行う。
・検査役の選任: 会社の業務の執行に関し、不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるとき、会社の業務及び財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。
 
・株主による招集の請求: 総株主の議決権の百分の三以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、(1)株主総会の目的である事項、(2)招集の理由、を示して、株主総会の招集を請求することができる。
株主総会の目的: 当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。
・役員の解任の訴え: 総株主の議決権の百分の三以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主は、役員の不正、法令・定款違反にもかかわらず、当該役員の解任の議案が株主総会において否決されたときには、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。
 
・公開会社でない株式会社では、6か月の要件はない。
・「百分の三」「6か月」の数は、定款で下回らせることができる。

(会計帳簿の閲覧等の請求)
第433条  総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
 1 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
 2 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

(株式会社の役員の解任の訴え)
第854条1項  役員(第329条第1項に規定する役員をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第323条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から三十日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。
 1  総株主(次に掲げる株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
 イ 当該役員を解任する旨の議案について議決権を行使することができない株主
 ロ 当該請求に係る役員である株主
 2  発行済株式(次に掲げる株主の有する株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
 イ 当該株式会社である株主
 ロ 当該請求に係る役員である株主
2項 公開会社でない株式会社における前項各号の規定の適用については、これらの規定中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
【1項・2項のみ】

 

3 発行する全部の株式の内容

3−1 内容
・株式の内容についての特別の定め: 会社は、その発行する全部の株式の内容として、(1)譲渡制限、(2)取得請求権、(3)取得条項についての事項を定めることができる。
・(1)譲渡制限: 譲渡による当該株式の取得について、当該会社の承認を要すること。
・(2)取得請求権: 当該株式について、株主が当該会社に対してその取得を請求することができること。
・(3)取得条項: 当該株式について、当該会社が、「一定の事由が生じたこと」を条件としてこれを取得することができること。
 
・譲渡制限: 定款で、次の事項を定めなければならない。
・(1)株式を譲渡により取得することについて、会社の承認を要する旨
・(2)一定の場合において会社が譲渡の承認をしたものとみなすときは、その旨及び当該一定の場合
・譲渡等の承認の決定: 株主総会取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
・承認を得ずにされた譲渡: 譲渡当事者間では有効だが、会社に対しては効力を持たない。
・一般承継: 相続などの場合には、当然に権利移転するために、会社に対しても効力を持つ。
 
・取得請求権付き株式: 定款で、次の事項を定めなければならない。
・(1)株主が、会社に対して株式を取得することを請求することができる旨
・(2)株式一株を取得するのと引換えに、当該株主に対して交付する対価の内容
・(3)取得請求することができる期間
・交付する対価とその内容: (1)社債を交付するときは、当該社債の種類・金額又は算定方法。(2)新株予約権を交付するときは、当該新株予約権の内容・数又は算定方法。(3)新株予約権社債を交付するときは、社債新株予約権についての各事項、(4)その他の財産を交付するときは、当該財産の内容・数・額又は算定方法。
・取得請求権は、株式の内容なので、株式から分離して譲渡することはできない。
 
3−2 異なる種類の株式
・異なる種類の株式: 会社は、(1)剰余金の配当、(2)株主総会での議決権、などについて、その内容が異なる二以上の種類の株式を発行することができる。

(異なる種類の株式)
第108条  株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第9号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
 1  剰余金の配当
 2  残余財産の分配
 3  株主総会において議決権を行使することができる事項
 4  譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
 5  当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。
 6  当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
 7  当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。
 8  株主総会取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第478条第6項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの
 9  当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること。

・定款で、その内容や発行可能種類株式総数を定めなければならない。