メモ・刑法総論

だいぶラフな記述です。法学検定3級レベル。司法試験レベルの試験だと使えない。
 
*犯罪は、「構成要件(種類ごとに定められた犯罪成立要件)に該当し」、「違法で」「有責な」行為。「構成要件」判断の要素として「実行行為」「結果」そして「因果関係」がある。違法性・責任は、阻却事由に該当するかどうかで判断することが多い。「違法性阻却事由」として、正当業務・正当防衛などがあり、「責任阻却事由」として責任能力がある。故意・過失も犯罪成立要件だが、体系上の位置づけ(構成要件か違法か責任か)については、争いがある。
*例として、殺人罪(199条)を挙げると、「人を殺す行為」といえる行為(たとえば「刺す」「毒を飲ませる」など)をし(実行行為)、人が死亡し(結果)、行為者の行為のために客体(被害者)が死亡したといえる(因果関係)ときに、殺人罪の構成要件該当性が認められる。
*犯罪が成立する場合も、刑を軽くすることがある。分類方法は、必ず(「必要的」)かそうでないか(「任意的」)、軽くする(「減軽」)か刑を免じるか(「免除」)その両方が可能(「減免」)か。たとえば親族相盗(244条1項)は必要的免除、自首(42条1項)は任意的減軽
 

1 刑法の原則

≪1≫罪刑法定主義
*「犯罪と刑罰は、あらかじめ法律で定めておかなければならない」とする原則。国家による恣意的な刑罰権行使から国民の権利を守るもの。罪刑法定主義は、法律主義(憲法31条)と事後法の禁止(39条)から成るとされる。

罪刑法定主義の派生原則は、以下。
(1)事後法の禁止:行為の時点で犯罪でなかった行為を、事後の立法で処罰することはできない。刑罰の不遡及。事後立法で、新たに禁止する場合と、重くする場合がある。なお、刑法6条は、「犯罪後の法律により刑の変更があったときは、その軽いものによる」とする。これは、罪刑法定主義の直接の要請ではないとされる。
(2)絶対的不定期刑の禁止:期間を定めない刑は、科すことができない。
(3)類推解釈の禁止:行為者に不利になる類推解釈はできない。秘密漏洩罪(134条)は「医師が秘密を漏洩する」と処罰されるが、看護師はたとえ「医師のような」職業であったとしても、対象とはならない。
(4)このほかに、慣習刑法の禁止(ただし、条文の解釈のうえで慣習に従うことは許される)、明確性の原則、など。

罪刑法定主義とは異なる原則としては、責任主義(責任がなければ処罰できない。過失や故意が犯罪成立要件として必要。)、二重処罰の禁止、一事不再理がある。罪刑法定主義に抵触しないのは、縮小(拡張)解釈、目的論的解釈など。
 
≪2≫場所的適用範囲
・刑法の原則は、属地主義。『第1条 この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。』 刑法は、日本で罪を犯した者に対して適用される。(1)日本の船舶・日本の航空機は、国外にあったとしても、日本刑法適用。(2)実行行為の一部が日本で行われた場合や、結果が日本で発生した場合に、適用。(3)共犯では、実行した正犯の犯罪地が、すべての共犯(教唆・幇助ふくむ)に適用。
・例外として、
(1)保護主義:国家にとって重要な法益については、国外犯にも適用。ex内乱・通貨偽造 
(2)属人主義:重大な犯罪については、日本国民につき、国外犯にも適用。ex放火・殺人・強盗
(3)重大な犯罪であり、日本人が被害者になるときは、国外犯にも適用。ex殺人・誘拐
(4)公務員の国外犯:日本の公務員が、国外で行った行為について、国外犯にも適用。ex収賄、虚偽公文書作成
・外国ですでに確定判決を受けている者に対しても、重ねて日本刑法を適用することはできる。
 

2 構成要件

≪3≫不作為犯
・何もしないこと(不作為)によって結果を引き起こすこと(たとえば放置により見殺しにすること)が、実行行為に該当するか。(1)真正不作為犯:構成要件が、不作為を内容としているもの。ex不退去(130条後段)。これは、不作為でも当然に犯罪となる。(2)不真正不作為犯:構成要件が、作為を予定しているもの。ex殺人、放火。これは、単なる見殺し・放置では犯罪とならない。
・不真正不作為犯が犯罪成立するためには、いくつかの要件が必要となる。「作為義務」「作為可能性」「結果回避可能性」。作為義務の類型としては、(1)法令による明示 ex民法820条の監護義務、(2)契約・事務管理、(3)先行行為 ex交通事故のひき逃げ。
・不真正不作為犯が認められる例としては、母親が乳児に授乳させずに餓死させる場合(殺人罪)、火気責任者が失火を放置して立ち去る場合(放火罪)がある。
・不作為犯にも、作為犯とおなじく、故意・過失や因果関係などが必要。
 
≪4≫因果関係
・基本は、「その行為がなければ結果が発生しなかった」という場合(条件関係がある場合)に、因果関係を認める考え方(条件説)。条件関係がない場合には、実行行為があっても因果関係がないことになるので、未遂犯は成立するが、既遂犯は成立しない。 ex第三者の行為による因果関係の断絶。
・条件関係がある場合に、すべて因果関係を認めてしまうと、犯罪成立の範囲が広すぎることになる。不測の結果が発生したような場合に、犯罪成立の絞りをかけるために、条件関係のほかに「相当因果関係」を必要とする考え方(相当因果関係説)が通説。相当性の判断材料として、
(1)行為者が行為時点で認識した(できた)事実を材料とする説(主観説)
(2)行為時に客観的に存在していたすべての事情、および行為以後の事情のうち一般人が予見できた事実を材料とする説(客観説)
(3)一般人が認識できた事実、および行為者が現実に認識した特別の事実を材料とする説(折衷説)
がある。