民法総則

前回の続き。
【4】無効と取消し
(1)無効と取消し
*無効は、いつでも、誰でも、誰に対しても主張できる。
*取消しは、取消権者が、相手方に対して行う。
*取消権が行使されると、遡及的に無効となる。行使されるまでは、不確定有効。
*意思表示によって発生していた義務はなくなり、すでにされていた履行は原状回復する必要がある。
(2)返還義務
*取消原因の存在につき悪意の場合は、受けた利益に利息をつけて返還する義務があり、損害賠償責任を負う。
*取消原因の存在につき善意の場合は、現存利益の返還で足りる。
*制限行為能力による取消しの場合には、つねに現存利益の返還で足りる。
*受けた財産を浪費している場合には、現存利益はないとされる。
(3)相手方の催告権
*不確定有効の相手方を保護するため、相手方は、催告をすることができる。
法定代理人・保佐人・補助人に対して1か月以内に回答するように催告できる。
*行為能力の制限がなくなった本人に対しても、催告できる。
(4)回答がない場合
*期間内に回答がない場合には、追認したものとみなされる。
*特別の方式を要する場合は、回答がなければ、取消したものとみなされる。
被保佐人・被補助人に対して、追認を得るように催告できる。ここで回答がなければ、取り消したものとみなされる。
(5)詐術
制限行為能力者が、自己の判断能力・同意について相手方をだました場合には、その行為を取り消すことはできない。
*行為能力の制限を黙っているにすぎない場合には、詐術にあたらない。
*他の言動とあいまって誤信させ・誤信を強めた場合には、詐術にあたる。
(6)追認
*無効であることを知りつつ追認すると、新しい行為をしたものとみなされる。
*第三者に不利益を及ぼさない限り、無効な行為も遡及的に追認できる。
*取り消しうる行為は、追認によって、遡及的に有効となる。
*追認は、取消権者が、取消原因の消滅後に、取消権があることを知ったうえで行う。
法定代理人は、取消原因の消滅前でも、追認できる。
法定代理人の同意によって、未成年者も追認できる。
(7)法定追認
*取消権者が、異議をとどめずに、追認とみなされる行為を行った場合。
 +未成年者が、成年になった後で(追認可能となった後)、債務を履行した場合。
 +取消権者が履行を請求・受領した場合。
 +取消権者が催促・相殺意思表示した場合。
 +債権譲渡・保証契約をした場合。
*未成年者が、成年になる前でも、法定代理人の行為を得て行為すれば、法定追認となる。