民法総則

前回の続き。
【8】法人
(1)理事
*法人の権利能力は、法令の制限を受け、また定款・寄附行為に定められた目的の範囲内に限定される。
公益法人の代表機関は、理事である。理事の代表権は、法人の事務一切に及ぶ包括的なものである。
*理事の代表権は定款・総会決議などによって制限できる。ただし、善意の第三者に対しては、その制限を主張できない。
*第三者が代表権の制限を知っていたが、制限の問題を解決していると誤信した場合には、表見代理(権限超過)の規定を類推して保護できる。
*理事が、代理権の範囲内の行為を、自己または第三者の利益を図るために行った場合には、相手方が善意・無過失の場合には有効となる(93条(単独虚偽表示)の類推)
(2)法人の不法行為
*法人は、理事(代表機関)がその職務を行うについて他人に加えた損害を、賠償する責任を負う。
*代表機関が選任した任意代理人など、代表機関以外の者による不法行為は、使用者責任(715条)の問題となる。
*「職務」とは、行為の外形上、代表機関の職務行為とみられる行為であればよい。
*「職務」ではなかったことについて、相手方が悪意または重過失の場合には、法人は損害賠償責任を負わない。
*代表機関の行為が、不法行為の要件を満たすことが必要である。
*法人が責任を負うときには、代表機関個人も、責任を負う。
(3)権利能力なき社団
*団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員が変更しても団体は存続しているものは、権利能力なき社団として扱われる。
権利能力なき社団は法人格をもたないため、その財産は構成員全員が共同で所有する。
*この共同の性質は、総有。構成員は目的物の使用収益権のみを有し、持分権・分割請求権を有しない。
*不動産は、構成員全員の共有登記または、肩書なしの個人名での登記となる。
*債務も、構成員全員に総有的に帰属する。
*社団の総有財産が責任財産となる。構成員は直接責任を負わない。
 
【9】条件・期限
(1)条件・期限
*条件は、法律行為の効力の発生・消滅を不確定的事実にかけるもの。
停止条件は、停止していた法律行為の効力を発生させる条件。
解除条件は、発生していた法律行為の効力を消滅させる条件。
*条件付きの法律行為は、条件成就の時点で効力発生・消滅する。
*期限は、法律行為の効力の発生・消滅を時間の経過にかけるもの。
(2)既成条件など
*既成条件:成否がすでに客観的に確定している条件。
停止条件の成就、解除条件の不成就が確定している場合には、無条件。
停止条件の不成就、解除条件の成就が確定している場合には、無効。
*不法条件: 不法な条件や、不法な行為をしないという条件は、無効。
不能条件: 成就できない内容の条件を付せば、停止条件は無効であり、解除条件は無条件。
*純粋随意条件: 成就の成否が義務者の意思のみにかかる停止条件は、無効。
(3)条件成就の妨害
*成就の妨害が信義則に反する場合には、相手方は、条件成就したものとして扱うことができる。
*成就させることが信義則に反する場合には、相手方は、条件不成就として扱うことができる。