民法物権

前回(id:kokekokko:20120202)の続き。
【3】占有権
(1)占有
*占有は、物を自己の支配化に置くこと。
*間接占有(代理占有)は、占有代理人を通じて間接的にする占有。
*自主占有は、所有の意思のある占有。他主占有は、所有の意思のない占有。
*所有の意思は、権利の性質から客観的に判断して、所有権の行使と認められるもの。
(2)占有者の推定
*占有者は、所有の意思を持って、善意で、平穏に、公然と占有するものと推定される。
*占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定される。
(3)占有権
*占有権は、排他性がなく、消滅時効にかからない。
*占有物の所持を失うと、占有権は消滅する。
被相続人の占有物は、相続人がその物を所持しているかどうかにかかわらず、相続人が占有権を取得する。
(4)占有権の移転
*現実の引渡しは、物を現実に引き渡す。
*簡易の引渡しは、譲受人(その占有代理人)が目的物を所持しているとき、占有移転の合意で、占有が移転する。
*占有改定は、譲渡人が占有移転後も、占有代理人として占有を継続する。
*指図による占有移転は、間接占有者に対して、占有移転後も譲受人のために占有を継続することを指図する。
(5)占有訴権
*事実的支配の回復のための請求権。
*占有回復・占有保持・占有保全の訴えの3種類がある。
*占有者に認められる請求権なので、悪意の占有者、間接占有者にも認められる。
*占有訴権は、本権とは別のものなので、占有訴権に対して本権に基づいて判断することはできない。
*ただし、本権に基づく反訴は、できる。
(6)占有回収の訴え
*占有者の意思に反して所持が奪われた場合に、侵奪から1年以内に、物の返還請求ができる。
*占有者が、所持している者に対して、訴えを提起する。
侵奪者の悪意の特定承継人に対しても、訴えを提起できる。ただしいったん善意の特定承継人に所持が移ると、提起できない。
*占有回収の訴えに勝訴すると、占有を奪われていた間も、占有が継続していたものとみなされる。
侵奪不法行為に該当するときは、損害賠償請求もできる。
(7)占有保持の訴え
*占有を妨害された場合に、妨害する間または妨害消滅から1年以内に、妨害者の費用で妨害を排除するように請求できる。
*妨害は、社会通念上一般に受忍すべき程度を超える必要がある。
*妨害者の過失などは、妨害排除請求権の要件ではない。妨害が不法行為に該当するときは、損害賠償請求もできる。
(8)占有保全の訴え
*占有を妨害されるおそれがある場合に、妨害の予防あるいは損害賠償の担保のいずれかを選択して請求できる。
*請求の相手方は、占有を妨害するおそれのある者であり、相手方の過失などは要件ではない。
*期限はなく、妨害の危険がある限り訴えを提起できる。
(9)占有物と果実
*本権に基づく返還請求がされた場合でも、善意の占有者は、占有物からの果実を得ることができる。
*本権に基づく訴訟に敗訴すると、善意の占有者も、起訴の時から悪意であったものとみなされる。
*悪意の占有者は、果実を返還しなければならない。
*果実を消費したり、収取しなかったときは、果実の代価を償還しなければならない。
(10)占有者の責任
*本権のない占有者が、過失により占有物を滅損させたときは、損害賠償しなければならない。
*善意の占有者は、現に利益を受けている限度の賠償でよい。
*悪意の占有者は、全損害を賠償する。
(11)占有者の権利
*占有物の返還のときに、占有者は、必要費(修繕費・維持費など)の償還を請求できる。
*有益費は、価格の増加が現存している場合にのみ、償還請求できる。
*額は、支出額と価格増加額のいずれかを、返還請求者が選択できる。