民法物権

前回(id:kokekokko:20120209)の続き。
【6】物権変動
(1)物権変動
*物権は、当事者の意思によって変動する。
*債権発生の意思表示があれば、それによって物権も変動する。(売買契約の成立によって所有権は移転する)
(2)不動産物権変動の対抗要件
*不動産の物権変動を第三者に対抗するには、登記が必要。
*第三者背信的悪意者であれば、登記なしで物権変動を主張できる。
*登記は、実体的権利が存在し、適正手続に基づいている必要がある。
(3)第三者
*第三者は、当事者および包括承継人など以外の者。
*以下の者は、物権変動を主張する正当な利益がなく、第三者に該当しない。
 +無権利者・不法占拠者
 +詐欺・強迫によって登記申請を妨げた者
 +他人のために登記を申請する義務がある者
 +所有者として表示されている架空の権利者
 +一般債権者
*目的物に支配を及ぼしている債権者(差押債権者、破産債権者など)は、177条の第三者となる。
*賃借人も、第三者となる。
(4)登記請求権
*権利変動の有無の実体にあわない登記がされている場合、登記請求権が生じる。
*権利者は、不実の登記の名義人に対して、抹消請求できる。
*登記請求権は、消滅時効にかからない。
*目的物を転売しても、登記請求権は失われない。
(5)明認
*目的物に、自己の所有権を公示する方法。
*公示内容は、所有権。
*公示できる目的物は、独立した取引対象となった立木など。
*立木が、土地とともに取引された場合には、明認によっても対抗できない。
*明認は、存続しないと、第三者に対して主張できない。
(6)取消・解除後の第三者
*詐欺取消しの後で二重譲渡が起きた場合には、登記を備えた側が、所有権を取得できる(対抗要件説)。
*契約解除の後で二重譲渡が起きた場合にも、登記が対抗要件となる。
(7)相続
*相続による取得を第三者に主張するのには、登記は不要。
*共有持分の取得や、相続放棄による取得は、登記なくして第三者に主張できる。
*遺産分割による取得や、遺贈による取得は、第三者に主張するのに登記が必要。
(8)時効
*取得時効完成前に、不動産の売買があったときは、買主は所有者として時効完成を迎えるので、時効取得者が所有権を取得できる。
*取得時効完成後に、不動産の売買があったときは、買主と時効取得者の間での二重譲渡と同じ扱いとなり、対抗要件を備えた側が所有権を主張できる。
*取得時効の起算点の設定は、現実の占有の開始時点に固定される。
(9)動産の物権変動
*動産の物権変動の対抗要件は、引渡し。
*占有改定も、物権変動の対抗要件を満たす。
(10)即時取得
*動産取引では、占有に公信力を認める。
*過失なく占有を信頼して取引した者は、所有権・質権を原始取得する。
*金銭は、取得理由を問わず占有者に所有権があるので、即時取得されない。
*取引時点で善意・無過失が要求される。その後に悪意となっても有効。
*行為能力や代理権について誤信して取引しても、即時取得されない。
*売主の要素の錯誤の場合には、買主が占有を信頼しても、即時取得しない。
*占有改定による占有移転は、外観上の占有状態の変化がないため、即時取得できない。
(11)取引行為
即時取得は、取引行為による占有に限る。
*取引行為は、売買、弁済給付、質権設定など。
*競売の対象動産も、即時取得できる。
(12)即時取得の効果
*取引が質入であれば、質権を即時取得する。
*占有物が盗品・遺失物であった場合には、被害者・遺失者は、2年間、占有者に対して目的物の回復請求ができる。
*盗品・遺失物の場合には、目的物の所有権は、2年間、被害者・遺失者にある。
(13)混同による所有権消滅
*対立する複数の法律上の地位が、同一人に帰属すること。
*2つの物権が帰属した場合には、弱い物権は吸収されて消滅する。
*利害関係者の利益のために2つの物権を並存する必要がある場合には、消滅しない。
*所有権と賃借権が同一人に帰属したときは、賃借権は消滅する。
*ただし、対抗要件を備えた土地賃借権があり、その後に土地に抵当権が設定されたときは、賃借権は消滅しない。