民法担保物権

前回(id:kokekokko:20120213)の続き。
【1】留置権
(1)留置権
*他人の物を占有している者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまでの間、その物を継続占有(留置)する権利。
留置権は、法定担保物権。一定の状態によって、当然に発生する担保物権
*優先弁済権(物を換価して優先弁済を受ける権利)はないが、留置によって間接的に履行を強制することができる。
留置権は、誰に対しても主張できる(絶対的権利)。
*付従性、随伴性、不可分性はあるが、物上代位性はない。担保物が滅失すれば、留置権も消滅する。
(2)成立要件
*目的物を占有していること。
*その物に関して生じた債権を持っていること。
*債権が弁済期にあること。
*占有が不法行為によって始まったものでないこと。
(3)牽連性
*その物に関して生じた債権とは、物自体から生じた債権、または物の返還請求権と同一の法律関係・事実関係から生じた債権。
*借地権者は、建物買取請求権を被担保債権として、建物・敷地について留置権を主張できる。
*しかし、造作買取請求権は、建物に関して生じた債権ではないので、建物についての留置権は認められない。
*債権は、物の留置によって間接的に履行を強制できるものであることを要する。
*他人物売買の買主が、所有者から返還を求められたとき、売主に対する損害賠償請求権を被担保債権として留置権を行使することはできない。
*二重譲渡の場合も同様。
(4)占有の開始
*無権限で占有を取得したときは、留置権は成立しない。
*当初は権限があったが、途中から無権限となった場合には、そのことについて善意無過失であれば、留置権は成立する。
(5)不可分性
留置権には、不可分性がある。全額の弁済を受けるまで、目的物全てを留置できる。
*目的物の一部だけでも、被担保債権の全部について留置権を行使できる。
(6)債権の消滅時効
*目的物の留置は、被担保債権の主張とはならない。留置権を行使し続けていても、債権の消滅時効は進行する。
*訴訟において抗弁として留置権を主張した場合には、催告としての効力が認められる。
(7)留置物の占有
留置権者は、善管注意義務をもって保管しなければならない。
*所有者に無断で、目的物を使用・賃貸・担保供与することはできない。
*ただし、保存行為はできる。
*留置建物に居住することはできる(保存行為)が、賃料相当額の支払が必要。
*保管義務違反・無断使用等があれば、債務者・所有者は、留置権の消滅を請求することができる。
(8)費用償還請求権
留置権者は、所有者に対して、支出した費用の償還請求ができる。
*有益費については、価格の増加が現存する場合に、支出額・増加額いずれか所有者が選択したほうを請求できる。
*費用償還請求権を被担保債権として、留置権を行使できる。
*有益費については、期限付与があった場合には、弁済期が到来していないことになるので、留置権は消滅する。
(9)留置権の消滅
留置権者が目的物の占有を失うと、留置権は消滅する。
*目的物が消滅しても、留置権は消滅する。
*債務者は、留置物のかわりになる担保を提供して、留置権の消滅を請求することができる。