民法担保物権

前回(id:kokekokko:20120223)の続き。
【5】抵当権の消滅・処分
(1)代価弁済
抵当不動産の所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じて抵当権者に代価を弁済したときは、抵当権は消滅する。
*物上保証人は、代価弁済をすることができない。
(2)抵当権消滅請求
抵当不動産の第三取得者は、抵当権者に対して、代価を提供して抵当権の消滅を請求することができる。
*請求権者は、所有権を所得した者。ただし、主債務者・保証人・承継人は請求できない。
*複数の抵当権が設定されているときは、一部だけの消滅を請求することはできない。
*共有関係にある1個の不動産全体に抵当権が設定されている場合、持分の第三取得者は、持分について抵当権消滅請求をすることはできない。
停止条件付きで所有権を取得した者は、消滅請求することはできない。
解除条件付きで所有権を取得した者は、消滅請求することができる。
(3)相対的処分
*抵当権は、被担保債権から切り離して処分することができる。転抵当・抵当権譲渡・抵当権放棄。
*抵当権の相対的処分を債務者・設定者に主張するには、債務者への通知または債務者の承諾を要する。
(4)転抵当
*転抵当は、抵当権者が抵当権を他の債権の担保とする処分。
*転抵当を行った場合、原抵当権者は、その被担保債権が転抵当権の被担保債権を超過しているときに限って、原抵当権を実行できる。
(5)譲渡・放棄
*抵当権者は、抵当権・順位を譲渡することができる。
*譲渡があった場合にその抵当権が実行されると、譲受人が優先弁済を受け、残りを譲渡人が受ける。
*抵当権者は、抵当権・順位を放棄することができる。
*放棄があった場合にその抵当権が実行されると、受益者と放棄者が同じ地位になり、債権額の比によって両者が優先弁済を受ける。
(6)実行
*土地に抵当権が設定された後に建物が建てられたときは、抵当権者は土地とともに建物も競売することができる。
*ただし、優先弁済権をもつのは、土地の代価のみ。
*なお、建物所有者が、抵当権者に対抗できる権利を持っているときは、抵当権者は建物を競売することはできない。
*担保される被担保債権の利息(定期金)・遅延損害金は、最後の2年分に限定される。後順位抵当権者の保護のため。
*なお、抵当権消滅のためには、この限定はなく全額の弁済が必要。
(7)劣後する賃貸借
*抵当権に劣後する賃貸借は、抵当権者に対抗できない。
*ただし、優先する抵当権者すべての同意を得て、対抗要件(登記)を備えた場合には、賃借権を抵当権者に対抗できる。
*競売手続開始前から使用収益する賃借人は、明渡猶予を6か月間認められる。
(8)消滅
*被担保債権の消滅により、抵当権も消滅する(付従性)。
*付従性による抵当権の消滅は、登記なしで第三者に対抗できる。
*被担保債権の一部消滅の場合には、抵当権は全部残る(不可分性)。
*債務者・物上保証人との関係では、抵当権は単独では時効消滅しない。
*第三取得者・後順位抵当権者との関係では、抵当権は20年で時効消滅する。
*地上権を目的とする抵当権も、付従性をもつ。しかし、地上権の放棄による消滅は、抵当権者に対抗できない。