精神保健福祉法の改正案

精神保健福祉法の改正案がアップされました(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/183.html)。
これにより、保護者制度が廃止され、たとえば引取義務などがなくなることになります。

【現行】
(保護者)
第二十条 精神障害者については、その後見人又は保佐人、配偶者、親権を行う者及び扶養義務者が保護者となる。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は保護者とならない。
 一 行方の知れない者
 二 当該精神障害者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
 三 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
 四 破産者
 五 成年被後見人又は被保佐人
 六 未成年者
2 保護者が数人ある場合において、その義務を行うべき順位は、次のとおりとする。ただし、本人の保護のため特に必要があると認める場合には、後見人又は保佐人以外の者について家庭裁判所は利害関係人の申立てによりその順位を変更することができる。
 一 後見人又は保佐人
 二 配偶者
 三 親権を行う者
 四 前二号の者以外の扶養義務者のうちから家庭裁判所が選任した者

しかし、保護者制度は形を変えて一部残ることになります。その例が、医療保護入院の同意です。

【現行】
医療保護入院
第三十三条 精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、保護者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。
 【1号以下略】

【改正案による改正後】
医療保護入院
第三十三条 精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。
 【1号以下略】
2 前項の「家族等」とは、当該精神障害者の配偶者、親権を行う者、扶養義務者及び後見人又は保佐人をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者を除く。
 一 行方の知れない者
 二 当該精神障害者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
 三 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
 四 成年被後見人又は被保佐人
 五 未成年者

改正後では、家族等の除外規定から破産者が外されています。
 
また、心神喪失医療観察法でも、保護者は残っています。

【改正案による改正後】
第二十三条の二 対象者の後見人若しくは保佐人、配偶者、親権を行う者又は扶養義務者は、次項に定めるところにより、保護者となる。ただし、次の各号のいずれかに該当する者を除く。
 一 行方の知れない者
 二 当該対象者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
 三 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
 四 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
 五 成年被後見人又は被保佐人
 六 未成年者
2 保護者となるべき者の順位は、次のとおりとし、先順位の者が保護者の権限を行うことができないときは、次順位の者が保護者となる。ただし、第一号に掲げる者がいない場合において、対象者の保護のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、利害関係人の申立てによりその順位を変更することができる。
 一 後見人又は保佐人
 二 配偶者
 三 親権を行う者
 四 前二号に掲げる者以外の扶養義務者のうちから家庭裁判所が選任した者

ここでは、対象者の順位や、除外対象に破産者が含まれている点も含めて、現行法と内容が変わっていません。
なお、順位の変更は、申立てにより家裁が行うのですが、その順位の変更により先順位となる者は、以前はかかる決定に対して即時抗告ができたのですが(家事事件手続法(現行法)241条3項1号)、今回の改正によりそれはできなくなっているようです(改正案241条3項)。