リンク上等についての再検討

昨日書いた話のつづきです。

しかしリンクにおける儀礼的無関心というのは、本来、「そっとしておいてくれ」という趣旨だったはずです。
私が昨日書いたような「不適当な人が入ってくるから大手からのリンクはちょっと・・・」というのは、少し筋が違う気もしてきました。小さいところからのリンクでも自分のサイトと合わない人がくる可能性があるわけですし、大手といえどもいい感じのリンク(なんじゃそりゃ)があるかもしれないわけで、訪問者数でそれを選ぶというのは適切じゃなかったかな、と思いました。
というわけで、変更。

まあ、いくら考えても、いまのところ大手さんからのリンクはないかな。

えっとですね、私の場合は、大勢に雑に読まれるよりは、少数にちゃんと読まれるほうがいいなと思っています。でもって、「大勢にちゃんと読まれる」というのがあればそれはありがたいのですがその状況はありえないので、結局アクセス数は犠牲にしてるわけです。
「リンクを張られると嬉しい」というのは事実ですが、その理由は、アクセスアップというよりはむしろその管理人さんが私の文章を読んでくれているからです。

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ここで、「私にとっての問題」という側面をいったん離れて、考えてみます。
リンクにおける儀礼的無関心、というのは電車内の話に例えられます。電車内で友人と交わしていた会話に、アカの他人がいきなり相槌を打ったり反論をしたりすればどうか。その他人にはそうする「権利」が確かにあるかもしれない。でも普通はみんなそんなことはしない。なぜなら、そうやって無関心をもってふるまうことでうまく社会生活を送ろうとしているからだ、と。
ではなぜ、アカの他人が会話に入ることは非儀礼的なのでしょうか。
それはまず、その会話が他人向けではないからです。Aさん宛ての言葉をBさんが勝手に受け取って反応しても、言葉を出した側は困惑します。
そして次に、人間どおしの距離を適切に図ろうとするからです。会話は「自分の情報を発する行為」であり、それはいわゆる「自己開示(self-disclosure)」です。自己開示は通常、「相手に対して自分が感じている距離」に関するアピールとして使われます。平たく言えば、人間は親しい相手にはいろいろ打ち明けるのですが、それは打ち明けることによって「親しさを持っていること」をアピール(主張というほど強いものではなく醸し出しているという程度です)しているわけです。ですから逆に、親しくもない人からいろいろプライベートなことを打ち明けられても、人は戸惑うわけです。

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さて他人からのリンクです。なぜある種のリンクが非儀礼的とされるのでしょうか。
それはまず、会話のように、他人向けでないものを広く公開されることへの困惑があるからでしょう。「君たちに向けて書いてるんじゃないのに」という気持ちです。これに対しては従来、「いや、サーバにアップさせるという行為がすなわち世界への発信なのだ」と反論されてきました。そしてそれは、その通りです。ですからさすがに「読むな」とか「訪問するな」とかまでは要求しないでしょう。ですが、リンクはどうでしょうか。これも従来、「リンクは情報の所在を教えているにすぎない」と言われてきました。なるほどこれもその通りです。
でも、情報の所在を教えることによって、管理人の予期せぬ訪問が起こってしまいます。他人向けではない言葉を、他人が受け取るわけです。アップロードは世界への発信なのだとはいっても、さすがにコンテンツの一字一句がことごとく世界人類すべてに向けて発しているというわけではないのです。仮想読者として想定した規模を超えて閲覧される、というのは、苦痛になります。会話では、ですから声を落とします。ですがネットでは、何かを落とす、ということができないので、かわりに「リンクはちょっと、ね」となるわけです。たぶん。
そして自己開示です。少数相手と多数相手では、書く内容は当然変わります。多数を相手とする文章では、当然、開示のレベルを落とします。そうやって書き手は、文章の内容に、「読者に対するスタンス」みたいなものを含めるわけです。ところがそういう前提を崩されて多数に訪問されると、書き手は戸惑うことになります。

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もうひとつ、リンクの性質について。
私の場合は、リンクを張られることは、張った人(管理人)が私の文章を読んでくれたという証拠であると感じます。ですから、読んでくれさえすれば、リンクを張ってもらう必要がないわけです。余談ですが、これがちょっと困った話で、管理人さんに自分のコンテンツを読んでもらおうとして掲示板に書いたりしてアドレスを教えると、ほぼ、リンクの催促ととられるのです。まあ、私が同じことをされたらリンクの催促ととりますけどね。
話を戻して、しかしリンクにはそれ以外の機能、たとえば親密さのあかしみたいな機能があるわけです。このあたりの話はすでに論じ尽くされていますから書きませんけど。
でもって、大手中小にかかわらず、そういう機能から外れたリンクって、困るわけです。
私の場合の困るリンクは、ですから、よく読んでいない方からのリンクです。幸いにもいままではそういう例はありませんでしたけどね。というわけなので、誤読されて好意的に取られるくらいなら正確に批判されたほうが嬉しいです(前者は、最初はこちらも嬉しいのですが、そのうちすごくやりにくくなります。誤読されての批判ならこちらも遠慮なく叩けばすむのですが、好意的な場合は、好意的なだけにこちらはどう言っていいかわからなくなるのです)。