「逆輸入CD」禁止で洋楽海外盤も消える?

先日のつづき。
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20040323ij21.htm

また、ソフトウェア情報センターで著作権問題にかかわる高橋宗利氏も、「レコード業界が最も心配しているのは、邦楽CDが1番安い中国からの還流。これに対しては特別な輸入制限で対処すべきで、法改正は影響が大きすぎる」と批判的。

でいうところの「特別な輸入制限」とはどういうものなのでしょうかね。要は、この「特別な輸入制限」が実効性あるものであれば、この騒動は鎮静化するはずです。
この問題が著作権法の本来の領域ではないというのは、おそらく法学者の通説的見解でしょう。ですが、近年の法改正(立場によっては「改悪」)はたいてい、本来扱うべきでない問題を織り込むことによってその法律の趣旨にそぐわない条項が加えられる、という形でなされてきました。

ただ、還流防止の意図が国内メーカーの保護にあり、そして対象の海外版CDが海賊版対策のために安価であるというのであれば、その状況を保護するのもまた著作権法の任務であるのかもしれません。
少し乱暴な論法でいくと、


1.海賊版は違法であり、著作権法が許さない。
2.よって、海賊版対策のためにメーカーが安価な価格で海外で販売する行為は、著作権法によって保護されるべきだ。
3.現地の安価な商品を逆輸入する行為は、著作権法が許さない。

ということでしょうか。

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その方向を押し出しているのが、以下の文章です。
CD の還流問題と著作権法改正の動きについて
http://deztec.jp/design/04/02/000115.html

これに対し、消費者原理主義が主流のネット世論は総スカン、例によって少なからぬ弁護士がその流れに同調して政府を批判している、という状況です。

私は消費者原理主義者でも弁護士でもありませんが、「著作権法改正に反対するのなら還流問題にはどう対応するというのか?」という問いかけには、なるほど、納得するものがあります。

しかし、ここで参照した文章には、ちょっとした間違いがあります。

予定通りに DVD audio への移行が進んでいれば、なし崩し的に還流は禁止され、不正コピーも困難となっていたはずです。

DVDオーディオにはリージョンコードは設定されていません。この文章では「DVDオーディオが普及すれば、リージョンコードのために、還流問題は自然と解決される」としていますが、おそらくDVDビデオとDVDオーディオとを混同しているのでしょう。DVDオーディオが普及しても還流問題は解消しません。
音楽コンテンツのパッケージ規格をDVDビデオにすればそれなりには解決するので(もともとリージョンコードは、映画上映の時期が地域によって異なるという理由で設けられたものですから、海賊版対策とは無関係ですが)、「ちょっとした」間違いなのですけどね。

というわけで、上記文章では結局、決定的な解決策は示されていないわけなのです。
海賊版対策の保護」を明確にした上でないと著作権法改正は困難ではないかな、と私は思いますが、海賊版対策ならば写真集やTVゲームも同様に保護されなければならず、なぜに音楽CDだけ手厚く保護されるのかという疑問は払拭されません(ですから先日紹介したhttp://blog.melma.com/00089025/で謎工さんが命名されている「音楽障壁」というのは言い得て妙なんですね)。
また後日書きます。