(資料)責任に関する条文・審議(その8・現行刑法〜第二次大戦-8-)

前回(6/25)のつづきです。初回は6/7。
 
行為後に法律の変更があった場合の規定として、仮案では保安処分について特別の規定を置いています。準備草案では「犯罪終了シタル後法律ノ変更アリタルトキハ判決時法ヲ適用ス但シ犯罪時法ニ依リ処罰セサル行為ヲ者罰シ又ハ犯罪時法ニ定メタル刑ヨリ重キ刑ヲ科スルコトヲ得ス」(6条)として、刑についての規定のみでした。

改正刑法仮案(昭和6年昭和15年=6条については同一の文言)
 第一編 総則
  第一章 法例
第六条
犯罪後法律ノ変更アリタルトキハ新法ヲ適用ス但シ旧法ニ定メタルモノヨリ重ク処断スルコトヲ得ス
保安処分ニ付テハ新法ニ従フ

仮案注釈
第六条
〔註〕
【前段落略=1項に関する】
以上ハ本条第一項ノ趣旨ナルガ同第二項ハ保安処分ニ付テハ全然新法ニ従フベキ旨ヲ規定セリ
【後段落略=1項に関する】

保安処分は「現在の危険性」を根拠として処分が言渡されるので、判決時点の法律に従うことも許される場合があります。
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あと、6/14にアップした条文は「昭和6年(1931年)に改正刑法仮案の総則部分を公表しました。」と私は書きましたが、その条文は昭和15年時点のものでした。昭和6年の時点の条文は6/25にアップさせています。
なお、仮案は総則を昭和6年に公表し、昭和15年には総則と各則をあわせたものを公表しています。
また、「第一編 総則」の注釈が抜けていたのでここでアップさせてみます。

第一編 総則
〔註〕 刑法総則ニ於テハ通常犯罪並ニ刑罰二関スル一般原則ヲ規定ス。本案ニ於テハ近代刑法ノ特色トシテ保安処分並ニ保護処分ヲ採用シタルヲ以テ此等ニ関スル規定モ亦総則中ニ収メタリ。更ニ初章ニ於テハ「法例」トシテ本法並ニ本法ノ総則ノ効力ニ関シテ規定スル外、各則ニ用イラレタル四語ニ付立法的解釈ヲ施シ又末章ニ於テ期間ニ関スル規定ヲ収ム

これで一段落つきました。次回は別のものをアップさせます。