(資料)責任に関する条文・審議(その9・旧刑法〜現行刑法-1-)

初回は6/7。
刑法での責任論に関する条文などの資料です。なお、文字化けを防ぐために一部の漢字や記号を書き換えています。たとえば「いんあ」はひらがなに直しました。また、引用文中の【 】部分は私が挿入したものです。
責任論の範囲は、違法性の意識(それに関連して故意)、責任能力心神喪失心神耗弱、刑事未成年)、および責任無能力者処遇(それに関連して保安処分、少年法制)です。
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明治13年刑法は、明治13年1880年)7月17日に公布されて、明治15年(1882年)1月1日に施行されました。これが「旧刑法」です。旧刑法ボアソナード草案をもとに作成されたため、そこでの責任の規定はフランス刑法の影響を強く受けています。

刑法 (明治13年太政官布告第36号) -旧刑法-
第七十七条 罪ヲ犯ス意ナキノ所為ハ其罪ヲ論セス但法律規則ニ於テ別ニ罪ヲ定メタル者ハ此限ニ在ラス
罪ト為ル可キ事実ヲ知ラスシテ犯シタル者ハ其罪ヲ論セス
罪本重カル可クシテ犯ス時知ラサル者ハ其重キニ従テ論スルコトヲ得ス
法律規則ヲ知ラサルヲ以テ罪ヲ犯ス意ナシト為スコトヲ得ス
 
第七十八条 罪ヲ犯ス時知覚精神ノ喪失ニ因テ是非ヲ弁別セサル者ハ其罪ヲ論セス
第七十九条 罪ヲ犯ス時十二歳ニ満サル者ハ其罪ヲ論セス但満八歳以上ノ者ハ情状ニ因リ満十六歳ニ過キサル時間之ヲ懲治場ニ留置スル事ヲ得
第八十条 罪ヲ犯ス時満十二歳以上十六歳ニ満サル者ハ其所為是非ヲ弁別シタルト否トヲ審案シ弁別ナクシテ犯シタル時ハ其罪ヲ論セス但情状ニ因リ満二十歳ニ過キサル時間之ヲ懲治場ニ留置スル事ヲ得若シ弁別アリテ犯シタル時ハ其罪ヲ宥恕シテ本刑ニ二等ヲ減ス
第八十一条 罪ヲ犯ス時満十六歳以上二十歳ニ満サル者ハ其罪ヲ宥恕シテ本刑ニ一等ヲ減ス
第八十二条 いんあ者罪ヲ犯シタル時ハ其罪ヲ論セス但情状ニ因リ五年ニ過キサル時間之ヲ懲治場ニ留置スル事ヲ得
第八十三条 違警罪ハ満十六歳以上二十歳ニ満サル者ト雖モ其罪ヲ宥恕スル事ヲ得ス
満十二歳以上十六歳ニ満サル者ハ其罪ヲ宥恕シテ本刑ニ一等ヲ減ス十二歳ニ満サル者及ヒいんあ者ハ其罪ヲ論セス

旧刑法は施行直後から改正作業に入り、数度の改正案が提出されます。そして最終的には、明治40年(1907年)の貴族院衆議院の「両院協議会成案」が可決され、それが現行刑法として公布されます。