ウィキペディア・激発物破裂罪

ウィキペディアは書き込むのに手続きが必要なので、面倒だからここに書きます。以前(7/30)ここで書いた、爆発物取締罰則と激発物破裂罪についてです。
激発物破裂罪ウィキペディア

激発物破裂罪(げきはつぶつはれつざい、日本刑法117条)人がいるか、またはいると考えられる建造物等で火薬・ボイラーなどを破裂させて損壊させる犯罪を規定したものである。

放火を前近代的なテロとするとこれは近代的なテロであり、放火と同様に多くの国民を危険に遭わせる恐れがあるためである。この犯罪構成要因についても人命の損失は問われなし、殺意の有無も問われない。法定刑は現住建造物等放火罪と同じと規定されているため、死刑、無期懲役、5年以上の有期懲役。

似た法令に爆発物取締罰則がある。爆発物取締罰則は治安を妨げ人の生命を害する目的で爆発物を使用した場合に適用され、激発物破裂罪は建造物等の破壊を基本的な目的としている場合に適用されるという違いがあると考えられる。

これについてひとつづつ書いてみますと、まず、激発物破裂罪は「108条から110条までの例による」わけですから、「人がいるか、またはいると考えられる」建造物等に限りません*1
また、「法定刑は現住建造物等放火罪と同じと規定されている」とありますが、もちろんそうは書かれていなくて、109条の客体を損壊した場合の117条の法定刑は、109条(非現住建造物等放火罪)と同じです。
激発物破裂罪についてわかりやすく書くと、そもそも放火とは文字どおり「火を放つ」ことで成立する犯罪であるが、しかしだからといって化学物質の爆発など厳密には火を使っていない行為を除外するのは適切ではない、というわけで火を使っていなくても危険な行為は放火と同様に扱いますよ、というものです。
 
爆発物取締罰則(目的は「生命を害する」ではなく「身体財産を害する」です。ゆえに公共危険とほぼ重なります)と激発物破裂罪との差異はそこにはありません。双方とも公共危険罪です。だから、両罪の競合についての一罪説*2が主張されるのです。また観念的競合説も、主観面での相違を考慮しているわけではありません(発生結果の相違によります)。
両犯罪の相違は、使用された物が爆発物か激発物かの相違、および発生結果が使用か破裂かの相違です。

*1:それ以前に「いると考えられる」という要件がどこから出てきたかが不明です。放火罪での分類基準は「人がいるかどうか」と「住んでいるかどうか」、「本人の所有するものかどうか」です。

*2:大谷・各論第4版補訂版367ページなど