おおやにきといえば

以前(http://d.hatena.ne.jp/kokekokko/20040604)私が書いた軍刑法と銃殺刑について、帝国議会会議録での説明がありました。

陸軍刑法案外一件委員会議録第3回(明治41年3月20日
○政府委員(志水小一郎君) 是は殆ど現行刑法と同じやうな規定でありまして、僅に違って居るのであります、御承知の通り此軍事裁判所は、戦時の如きは軍隊と共に行動致しますので、其一事から致しましても、此死刑に絞首を用ゆると云ふやうなことは事情も許しませぬ、何れから致しましても、軍事裁判所の言渡の死刑に付ては、銃殺すると云ふことが殆ど除外例がないと思ふのであります、それから刑法の総則に従ひますると、監獄内に於てせんければならぬ、最も今申します通り、軍法会議は移動時のものに戦時はなって居りますから、監獄内で執行すると云ふ訳には往かぬで、此執行の方法が絞びるでなく、銃殺することになって居りますから、監獄内で必ずすると云う訳にも往かぬのであります、現行法は斯うなって居る、所が現行法と少し違ひますのは、現行法では軍法会議で言渡した死刑は必ず銃殺すると云ふことになって居ります、併しそれにも限るまいと云ふので、斯く云ふことになって居ます
○阿部徳三郎君 此死刑執行手続きのことに付て御尋しますが、現に陸軍省に於て死刑を執行するに付ては、公行の手続をやらして居りますか、此銃殺の模様を見せるのですか
○政府委員(志水小一郎君) 是は現行陸軍刑法の以前、即ち陸海軍刑律と云ふものがございまして、此時代には刑を執行するには軍隊を整列せしめ、而して其前で執行して居たのであります、所が此現行陸軍刑法施行後に至っては、其事は止めまして、軍隊整列前に於て執行はしないことになったのであります、固より公行する趣意ではないのでありますが、併ながら僅かな少数の軍人は或はそれを見る機会があるかも知れませぬ、併し近頃は成るべく公行しない方針で、場所の選定、時間の選定を以て公行しない方針を執って居ります。

しかし懲役刑は監獄内で執行するわけですから、死刑だけが「監獄内で執行すると云ふ訳には往かぬ」というのも奇妙な話なんですけどね。
軍刑法での死刑が銃殺刑である理由は、「当時の日本が参考にしたフランスの制度である」と説明されるのが一般的ですが(前に書いたとおり)、ではなぜフランスが軍刑法で銃殺刑を用いたのか(当時のフランスの普通刑法では死刑は斬首刑でした)については、よく説明されていませんでした。機会があればもうすこし調べてみます。