ご指摘をいただきました。

CSSと技術的保護手段について、私は1/3に、

私的録音録画補償金の対象機器のように政令で技術を特定する、という線で落ち着くのでしょうか。

と書きました(id:kokekokko:20050103#p1)。もし仮にCSSを技術的保護手段と解したいのであれば、それは立法等の明文化によらなければならない、だとすれば政令での特定になるのかなどうかな、とおぼろげに考えたのです。
これについて松本直樹さまから

 また、法令で技術を特定しようとすると、政令で指定することになりそうですが(現行のデジタル補償金対象の場合のように)、それは、官僚の権限を強める話になる点で疑問です(私は、現行のデジタル補償金対象の政令委任は、違憲の疑いがあると考えています)。

という旨のご指摘をいただきました。

というわけで考えてみると、著作権法30条私的録音録画補償金については、その対象装置・メディアに関しては、デジタル録画・録音装置でかつ汎用装置以外であれば、かなり形式的に指定できます。つまり、誰が判断してもそれほど大差ない指定になるわけです。
いっぽう、技術的保護手段の特定については、技術の普及度(普及可能性)や保護手段回避の困難度などについての判断が必要になります。たとえばあまりにも簡単に回避できる技術を技術的保護手段に指定してしまうと、それの回避が違法になってしまうので、結局、一般的な利用者の行為(悪質な回避ではない行為)を法が禁止することになってしまいます。というわけで、技術的保護手段の特定は形式的・機械的な判断ではできないことになるので(文化庁も、技術的保護手段についてはかなりの実質的検討を行っています*1)、これを省庁や指定団体の判断に委ねるとなると、その判定機関の権限はたしかに大きくなります。松本さまのように私的録音録画補償金政令委任を問題視する見解であれば、なおさら技術的保護手段の特定の政令委任は問題となるでしょう。
しかも技術的保護手段に関しては、これを業として回避すれば刑罰の対象となるので、犯罪構成要件要素にもなるわけです。となると、たとえば覚せい剤の定義について法律で成分を詳細に記述しているように、技術的保護手段の内容についても法律で定義すべきだという見解も十分成り立つところです。
 
(法律か政令かはさておき)技術的保護手段を特定すべきだという主張はいくつか存在し(たとえば山地克郎「著作権保護のための技術的措置(コピープロテクション等)と法制度」(L&T20号9ページ)など)、私も「もし仮にCSSを技術的保護手段とするのであれば、技術の特定が必要である」と考えています。まだ明確な解決はないのですが、(1)私的複製はいかなる態様であっても制限しない、(2)アメリDMCAのように、法律上で技術を特定する、というあたりになるのでしょうか。
 
なお、以前書いたいわゆるCCCDと技術的保護手段の回避のページから独立させてCSSと技術的保護手段の回避のページをアップさせました。