レクイエム・フォー・ドリーム

ドラッグにのめりこむ人間が遭遇する悲劇、みたいな作品です。
この作品のキモはもちろん、ダーレン・アロノフスキー監督。「π」のときの、6万ドル監督です。筋書きなんてあってないようなもので、とにかく描写が印象的です。現実離れした映像じゃなくて、「寝不足が続くとあんな感覚になるよな」といったレベルの描写で攻めてくるので、かなりリアリティがあります。どこまでが現実でどこからが幻覚なのか、当の本人も観ている私もわからなくて、でもってそのうちそんなことはもうどうでもよくなってきて、破滅へ急転直下するクライマックスに魅入ってしまいました。
同じシーンの繰り返しも、この監督の特徴的手法です。ドラッグを服用(注射、嚥下)するシーンが何度も出てくるので、観ている側のアタマの中にこびりつきます。繰り返しのシーンがあっても、全体的にテンポがよいので、くどさは感じませんでした。
色の使い方もよかったです。カラー版「π」といった感じが強かったです。錠剤の「色」、女優の服の「色」、そして血の「色」、肌の「色」。監督がすごく楽しく色を使っている様子がよくわかりました。そういうケバケバしさも、気持ちが良かった一因でした。
 
サイコアニメなんかでは時々こういう味わいの作品に出会うのですが(パーフェクトブルーの雰囲気にちょっと近かった気がします)、実写でこのレベルの画を出してくるあたり、かなり強烈な作品でした。