監獄法の件

監獄法を改正する法案が可決されましたが(id:kokekokko:20050520)、立法形式上、旧監獄法(明治41年法律第28号)は廃止されてはいないので、附則は残ることになります。
そうすると

2 監獄則ハ之ヲ廃止ス但懲治人ニ関スル規定ハ当分ノ内仍ホ其効力ヲ有ス

という規定が残ってしまいます。しかし「陸海軍ニ属スル監獄」(旧10条)以上に「懲治人」という文言は馴染みが薄いです。
これについて、会議録では以下のような説明がありました。

監獄法案外四件委員会議録第4回明治41年3月5日)
○花井卓蔵君 【略】現在収容せられて居る不良少年のことである、毎度出すやうですが、此現在収容されて居る不良少年、即ち懲治場に収容さるる不良少年は新刑法の面目上監獄に置きたくないのです、併ながら実際設備が完全でない、感化法が完全でないから、我慢して暫く預かって居るやうに相成って居るのでありませうが、事実上の問題として、懲治場の現在の有様と云ふものには、非常に不公平があると私は思ふ、【略】
○政府委員(法学博士小河滋次郎君) 【略】此方針は縦令将来に於て監獄内から懲治場を除くと云ふことになりましても、当分預かって居る以上はやはり是迄の方針を継続して、努めて懲治人に対しては、教育的相当の処置をなす考えであります、【略】

明治33年制定の感化法が諸般の点で不十分であったために、懲治人を監獄に収容するという、いわば苦肉の策としての附則第2項だったわけです。
少なくとも現行少年法(昭和23年)の制定とともにこの附則第2項は廃止すべきだったのですが、旧第2条*1と同様に、手当てなく現在まで残ってしまったわけです。しかも、附則であるためか、「懲治人ニ関スル規定」の部分だけは今回の改正でもなお残ってしまいました。
なんだか、感化法の不備が未だに尾を引いているという感じです。

*1:2条1項「二月以上ノ懲役ニ処セラレタル十八歳未満ノ者ハ特ニ設ケタル監獄又ハ監獄内ニ於テ特ニ分界ヲ設ケタル場所ニ之ヲ拘禁ス」、現行少年法が制定されてからは少年法56条が優先適用されるために監獄法2条は意義を失っていました。