内乱罪、その本質と幇助罪との関係(その8・小完)

先日(id:kokekokko:20060222)のつづき。

(2)77条3号「付和随行」と「単に暴動に参加」の関係

旧刑法121条4項について、井上操は、「兵卒役夫の行為を行った者」と説明しています。旧刑法では「教唆に乗じて附和随行」した者と「指揮を受けて雑役に供した」者、という規定でした。しかも、3項の「兵器金穀の資給」という幇助的行為よりも法定刑が軽かったため、この「雑役」も、運搬役などの幇助の性質を持つような行為を指すとされていました。堀田正忠は、雑役とは「指揮を受けて、戦闘に従事したり食糧などを運搬した者」としています。また鶴田文書でも、「内乱では総則の従犯規定を用いるわけにいかないため、従犯の性質を持つものは各則で規定することになる」という説明があります。
ただ、当時から、戦闘行為を行わず単に反乱軍に加入所属しているだけの者について、附和随行か雑役かの見解が分かれていました。
 
現行法では「教唆に乗じて」「指揮を受けて」の文言はないので、これによる両者の区別はできません。となると、たとえば正犯か幇助犯かの区別であると考えることができます。あるいは戦闘に直接参加したのかどうかが判断基準であると考えることもできます。
内乱罪の正犯共犯をどう考えるかにもよりますが、私は、77条は「暴動をした」と書いているとおり正犯に関する規定であり、幇助は79条にあたる、と思います(刑法改正審査委員会決議録第61回参照)。そうなると、ますます「付和随行」と「単に暴動に参加」との区別は困難になってきますが、さしあたり、統治機構の破壊に対する影響の大小でこれを区別し、付和随行については国家秩序への影響が大きいものの群集心理を考慮して刑を減軽し、単なる暴動参加者は国家秩序への影響が小さい文字どおりの「参加者」である、と考えておくことにします。

(3)79条の幇助罪と総則の幇助犯の関係

これについては明確で、立法者は「総則規定は排除される」と考えています。総則によって幇助の刑を科そうとすれば、77条の1〜3号のいずれを幇助したかを画定することになるが、内乱の幇助というのは一体となった組織を幇助するのであるからこの画定はできない、というのがその理由です。
ただ、79条の幇助は77条3号の付和随行よりも刑が重いことを考えると、幇助罪の成立のためにはある程度の重大性のある行為である必要があり、いかなる幇助でもこれに該当するというわけではなさそうです(あるいは77条3号も幇助犯の規定であると解するか、です)。兵器金穀の資給や集会所の給与と同じ程度の行為である必要があるでしょう。
 
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とりあえず、こんなところです。