法律の題名

法例の全改によって、この法律の題名が変更になりました。それによって、法律の題名の末尾が「〜法」「〜法律」ではない法律がまた1つなくなる*1ことになります。
これについて少しだけ考えてみます。
 
まず、当然のことですが、
1:法律ではないもの(例:爆発物取締罰則
2:題名が付されていない法律(例:決闘罪に関する件)
については、題名の末尾が「〜法」「〜法律」ではなくても不思議ではありません。
 
題名がついている現行法律でこれに該当するものは、皇室典範しか思いつかないです。いっぽう、廃止された法律としては、たとえば公証人規則*2明治19年8月13日法律第2号)、市制(明治21年4月25日法律第1号)、徴兵令(明治22年1月22日法律第1号)があります。これらの法律は、官報に題名が(題名の定義にもよりますが)ちゃんとついています。
 
でもっておもしろいのが、これらの法律は、改正されると題名が「〜法」に変えられてしまうのです。
公証人規則は公証人法(明治41年4月14日法律第53号)に、市制は地方自治法(昭和22年4月17日法律第67号)に、徴兵令は兵役法(昭和2年4月1日法律第47号)に受け継がれています。つまり、法律の名称は「〜法」「〜法律」とするというのが法制執務の流れであり、法例もその流れに従ったのです。
ところが、皇室典範は、現行法の制定の時点でとくに議論されることもなく、その名称を承継しています。ということは、次に全面改正があったとしても、名称は変わらないのかもしれません。
 
また、旧皇室典範を改廃するものも皇室典範なので、「〜改正法律」という名称をつけることができず、結局、「皇室典範増補」(題名)「皇室典範増補中改正ノ件」(通称)という名前になっています。
なお、旧皇室典範と現行皇室典範は、形式的には別物であり、全部改正法ではありません。つまり、旧法(明治22年2月11日皇室典範)は皇室典範皇室典範増補廃止ノ件(昭和22年5月1日皇室典範)によって廃止された一方で、現行法(昭和22年1月16日法律第3号)は形式的には旧法とは無関係に制定されています。

*1:以前どこかでこれを紹介する記事がありました。どこかは忘れましたが。

*2:「規則」というと、法律の下位につく省庁の命令(施行規則)を想起します。公証人規則については、公証人規則施行条例(明治19年8月30日司法省令甲第2号)があります。「条例」ですが省令です。