法律効力(2)

今回取り上げる法令をみてみます。まずは、刑事訴訟法施行法です。

刑事訴訟法施行法(昭和23年12月18日法律第249号)
第17条 司法警察事務上巡査に於て警部代理方(明治14年司法省布達甲第5号)及び裁判言渡の謄本等を求むる者費用上納額(明治14年司法省布達甲第7号)は、廃止する。

ここでは、法律で司法省布達を廃止しています。これが少し珍しいのです。
まず、これらの命令が命令効力をもつのであれば、法律によって廃止することができないはずです。となると、法律効力を認められていることになるのですが、そうなると「法律効力をもつ命令」として昭和22年法律第72号によって昭和22年限りで失効しています。しかも太政官布告以外で法律効力をもつものはそれほど多くありません*1。というわけで、ポツダム勅令でも緊急勅令でもない命令(省令に相当)が法律によって廃止されるということになり、これが珍しいのです。
これらの法令の内容はいずれも表題のとおりで、5号のほうが、司法警察の事務では巡査が警部の代理を行うことができるというものであり、7号は、治罪法での裁判謄本の請求の際に支払うべき費用を定めたものです。明治20年代ころの法令集には掲載されていますが、昭和初期の六法や法令解説書には見当たりませんでした。
7号のほうは、その文言に「治罪法第315条での裁判言渡し」と規定されていますから、治罪法の廃止とともにこの法令も廃止されてもよかったのですが、旧々刑訴では「治罪法を廃止する」としか書かれていないために、治罪法に付随する法令が形式的には廃止されずに残ったというようです。これについては、同様の規定が刑事訴訟法施行法(第10条)に規定されていますから、法律効力をもつとみなされたはずです。
一方の5号は、現行刑訴(第199条2項)の例外規定となりますから、やはり法律効力をもつ、と考えることができるかもしれません。

*1:当時は、必ずしも公布名義が効力の強さを示すわけではなかったので、この例が皆無だったわけではありません