法律効力(3)

前回(id:kokekokko:20080908#p2)のつづき。
法律によって命令が改廃される場合、その命令が「法律としての内容」を持っていると考えられていたということが多いです。罰則規定はもちろんのこと、たとえば、「第○条 内閣は、団体を指定(指定解除)する。」とする内容などは、従来は政令で定められていたものが法律に繰り上げられることはよくみられます。このときには、かかる政令は廃止されて法律が制定されることになるのですが、その政令を別の政令で廃止するという形を取らずに、法律のほうで廃止することがあります。
さらに、その法律が施行令(施行規則)を持っている場合には、対応する政令があるのにその政令ではなく上位の法律で旧政令を廃止することになります。こうなると、「Aの指定に関する政令」があり、そのあと「Aの指定に関する法律」「Aの指定に関する法律施行令」が成立したときに、前の政令を廃止するものが後の政令ではなく法律になる、ということになります。
このケースに該当することを確定するためには、命令で規定されていた内容が、あとの法律でも規定されているかどうかを確認する必要があります。
 
ややこしいのは、法律制定の際に同時に法令整理が行われた時に、上述の「法律としての内容」が認められたうえでの改廃か、あるいは単なる法令整理なのかの区別がつきにくいことです。前回例に挙げた刑事訴訟法施行法での司法省5号・7号布達についても、そのあたりが確定できないのです。
「巡査が警部を代理する」といっても、それが組織内部の規定なのか、それとも捜査についての規定なのかは、検討する必要があります。「巡査の階級にある警察官を司法警察員に指定することができる」という規定は公安委員会規則にみられますから(しかし逮捕状の請求(199条2項)は明文で「警部以上の者に限る」とされています)、微妙なところではあります。
 
一方で、法律が廃止制定されたときには、前法律に基づく命令も廃止制定されますが、このときに新法律によって命令を廃止することがあります。一つ例をみてみます。

都市計画法大正8年法律第36号)
附則第28号 東京市区改正条例、東京市区改正土地建物処分規則及大正7年法律第36号並之ニ基キテ発シタル命令ハ之ヲ廃止ス

これにより、大正7年内務省令第17号が廃止されています。これなどは、制定主体が廃止主体となるという原則からするとやや妙で、当該省令を内務省令で廃止してもよさそうなものです。当該省令は、法律に基づき都市を指定するものでしたが、都市計画法大正8年法)以後はかかる指定は勅令に委任しており、当該省令が「法律としての内容」を認められたというわけでもないのです。
根拠法律が廃止されればそれに基づく命令は失効する、というのが原則ですから、わざわざ廃止手続を取る必要もないのですが(都市計画法附則も、廃止手続ではなく失効宣言であるとも読めます)、それでも法律が当然に命令を廃止できるというわけではないです(効力を失わせることはできます。失効と廃止の区別にこだわらない限りは、大きな問題ではないのですが)。